今まで「現代日本史の問題点」乃至は「戦後50年の検証」を続けてきたが、それでは21世紀を迎え、激しい世界の流れの中で日本はどうなるか、或いはどうあるべきかが問題になる。たまたま下記図書が図書館にあり、この中から興味ある事項をまとめてみる。
政策科学研究所日本のかたち研究会編著「これからの日本のかたち」ダイヤモンド社
97-10-16初版発行 定価1800円
たまたま現在日本が行き詰まっていることもあるが、情報革命をはじめとして世界も国家も企業も大きな変化に直面しており、過去の分析に止まらず、将来に対する予測や目標の検討を余儀なくされている。その中で注目すべきと考えたものを以下列挙する。
1.日本人の二つの価値観−農民原理と商人原理
前者は集団で勤勉に働くことを基本とする原理で、社会を支える中心倫理は「忠」「孝」、後者は勤勉より才気、独創性が尊ばれる。之は欧州のルネサンス経験国だけにあった現象で、商人は勿論個人主義で都市に暮らし、移動(旅)に価値を見出し、「信」「正直」を原理としている。明治以来国の運営が農業的になり、工業も商業より農業に近い。21世紀にはこの100年間眠っていた商人原理が大切になる。
2.ボーダレス化しても必要な国家の実用的価値−富の再分配
経済はボーダレス化しても国家をなくせないのは、富の再分配など暴力的強制が必要なものである。富の再分配を一切やらないと治安が悪くなり、国家なしに再分配すると世界的規模で一斉に過密過疎が起きる。今国境を取り払ったら、かならず共倒れになる。
3.新しい中間組織−NPO,ボランティア
昔は村、職人組合、同業組合、教会の信者集団等があったが、近代の民主主義はこのような中間的な集団を壊すか無力化して、個人対国家という単純な図式を作ってきた。唯一の例外が企業であるが、今又新しい中間組織としてNPO、ボランティア、市民講座、趣味の会などが増えてきている。特にNPOがうまい具合に作用して行くことが期待される。
4.「日本のかたちは」はどのように作られたか?
日本は中心になったことが一度もない国で、文化・文明の中心を外れた周縁、周辺地域として出発した。今後は国際環境の変化、地球環境の悪化、安全保障、国内改革を考慮して日本のかたちを構想する必要がある。
5.国際関係の四つの見方−リアリズム・リベラル・中華秩序論、海域アジア中世論
前二者は欧米近代国際政治学の見方で、後二者は伝統アジア的国際政治学の見方である。リアリズムは軍事力やそのバランスを重視し、リベラルは民主主義、経済関係、国際機関も合わせて見る。中華秩序論は阿片戦争前の中華中心主義であり、海域アジア中世論は領土がはっきりしない時代の考え方である。これらを組み合わせて考えるとよい。
6.来るべき時代の五つの世界像
第一はフランシス・フクヤマが「歴史の終わり」で提唱した市場経済と民主主義の普遍化、第二はサミュエル・ハンチントンの「文明の衝突」、第三は、「主権国家の終焉」というボーダレスな世界像、第四は経済至上主義とナショナリズムの結びついた「大競争時代」、第五は新しい世界は大国間の勢力均衡で秩序が生まれるという発想である。現代は過渡期で、大きな分岐路にある。日本の課題としては経済構造の改革、政治・行政システムの変革、安全保障の合理化、ナショナル・アイデンティティの正当化であり、選択のありかとしてはグローバリゼーションにどう対処するか、政治のリーダーシップをどう高めるか、アジアへどう入って行くか、マスコミ、大衆文化の向上をどうはかるか、というような事がある。
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