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48    世界の憲法・日本の憲法
更新日時:
2004/10/31 
 
[1] 世界の憲法生成の歴史
 憲法の存在は、普遍的に受け入れられている近代統治形態の唯一の定着物である。世界のほぼ170ヶ国のうち、一つの成文憲法を持たない国は僅か6ヶ国である。この中でオマーン、リビア、サウジアラビアの3ヶ国は、イスラム教のコーランが憲法との立場をとっている。イギリス、ニュージーランド、イスラエルは複数文書からなる憲法を有している。例えばイギリスでは制定法、判例法、憲法習律、及び学説からなり、制定法にはマグナカルタをはじめ446の法律がある。
 
 アメリカ合衆国の憲法は1787年に公布された世界最初の成文憲法で、以後世界の憲法のモデルとなった。しかし実は13州の憲法が先行していた。
 世界で2番目の憲法はポーランド憲法で、1791年に制定されたが、ロシア、プロシャ、オーストリアの諸国に3次に亘って分割され、1795年には政府が解体してしまい、短命に終わった。しかし君主制原理と啓蒙主義時代の理念の大きなヨーロッパ的妥協の具体化したものとして歴史的であり、第一次世界大戦後復活した。
 
 3番目はフランス憲法で、之も1年と持たなかったが、歴史上最も重要で且つ影響力のある憲法の一つであった。「人及び市民の権利宣言」が人権に関する文書の先例となった。 
 
 1812一二年のスペイン憲法は急速にラテン・アメリカ全体、又ヨーロッパ中の革命運動の旗印となった。
 
 1831年のベルギー憲法は、イギリス憲法を成文化した再生産物に極めて近い。第78条に制限君主として「国王は、憲法及び憲法下で制定される特別の法律が国王に授ける以外の権能を有しない」と定めている。
 
 スイス憲法は1848年に制定し1874年に改訂したが、世界で最も古い連邦国家の形態をとっている。
 
 1889年明治憲法が起草される前に、日本人は立憲政府への移行を円滑に行うため、次の三つの措置を講じた。
@ドイツをモデルに500人の新貴族階級を創設し、前封建領主の影響力を制度化した。 
Aイギリスの慣行を取り入れ、天皇の補弼ということで内閣制度を確立した。   
B従来の猟官制に替え、イギリス、ドイツを模範とする公務員制度を創設  した。
 
 1917年メキシコ憲法は、経済的、文化的権利を強調し、ラテン・アメリカ諸国に大きな影響を与えた。
 
 1919年ドイツ・ワイマール憲法は民主的ではあったが、48条の「緊急権に関する非民主的規定」を結果的にヒトラーに利用されてしまった。
 
 1946年2月3日の日本の新憲法に対するマッカーサー三原則は次の如くであった。
@天皇は元首、皇位の継承は世襲、天皇の職務と機能は憲法に基づき、
  国民の基本的意志に責任を負う。
A国の主権的権利としての戦争は廃止。戦争を放棄し、軍は認められ
  ず、交戦者の権利も与えられない。
B封建制度廃止。華族の権利は一代限りで終わり。予算の型はイギリス
  の制度にならうこと。
 
 ところで世界の憲法の3分の2以上が1970年以降に書かれており、日本の憲法は古い方である。
  1787年アメリカ〜1945年インドネシア  15ヶ国 (20世紀前は6ヶ国)
  1946年日本  〜1959年ブルネイ    11ヶ国
  1960年キプロス〜1968年モルジブ    22ヶ国
  1970年ガンビア〜1979年イラン      41ヶ国
  1980年ジンバブエ〜1989年レバノン   29ヶ国
  1990年ナミビア 〜1994年パラオ     58ヶ国
 
参考文献:
「世界の憲法−その生成と発展」アルバート・P・ブラウスタイン著 西修訳 成文堂
 
 
(二) 世界の憲法いろいろ
 外国の憲法はまちまちで、国によってそれぞれ特色があり、価値観が多様である。
 
 世界の憲法のモデルとなったアメリカ合衆国の憲法は典型的な三権分立制であり。議会への権力集中を避けるため、大統領の選出は議会によらない、大統領は議会を解散し得ない、又大統領及び閣僚は議員と兼職できない、大統領は行政の長であり、国家元首とは言っていないが、通常の国家元首の役は果たしている。
 
 世界は大きく分けて共和制の国と立憲君主制(又は王制)の国と二通りある。後者はオーストラリア連邦、オランダ、ギリシャ、スェーデン、スペイン、デンマーク、ノルウェー、ベルギー 等である。 日本もこの範疇に入る。
 
 共和制の国ではトップは大統領であるが、大別してアメリカ型の行政の長として首相もおかないタイプとドイツのように連邦議会で選出するがやや名目的で、実質的には首相が行政に当たるタイプがあり、更にフランスのように議員内閣制と大統領制の中間のようなタイプがある。それぞれの国の成り立ちの歴史と国民の価値観によってバラエティがある。 しかし何れも立法は議会、行政は政府、司法は裁判所と大筋は一致している。
 
 とはいうものの立法では上下二院制が多いが、スェーデン、デンマーク、大韓民国などは一院制である。又それぞれの任期、人数、上院の性格などはまちまちであり、どのような形がよいか一義的には決まらない。スェーデンでは国会議員には代理が認められ、議員が大臣になったり、休暇不在時には議員代理が職務代行する。
 
 行政の中でもスェーデンは少し変わっていて、各省は百人以内で、大臣は政府に決定して貰う準備をするスタフに過ぎない。行政部門は直接政府所轄で大臣に従属しない。又スイスもかなり変わっていて、両院合同会で4年任期で任命される連邦参事会が執行(行政)にあたることになっているが、連邦大統領、副大統領は7人の連邦参事会閣員(外相、内相、蔵相、軍事相、司法・警察相、経済相、鉄道・通信相)の間から1年任期で指名され、大統領が参事会議長になることになっている。連邦制にすれば大臣はこのくらいでよいのかも知れない。
 
 司法についても、名前はいろいろで、最高裁や地方裁が一般的であるが、行政裁判所をはじめ特殊な名前の裁判所が少なくない。中でも憲法裁判所を設けている国は、オーストリア、スペイン、大韓民国、ドイツ、フランス、ポーランド、ロシア等少なくない。日本では憲法問題も最高裁で扱う事になっているが、一切の法律、命令、規則、又は処分が憲法に適合するかどうか憲法裁判所を新設して専門に対処するのが世界の流れの様である。 更に日本の憲法でブランクになっている国防の義務を明記したもの(例えば韓国)や非常事態に対処する詳しい規定(例えばスェーデン)などがあり、お隣の韓国の憲法(1987年改訂)など非常によくできていると評されている。今後日本の憲法を改正するにあたり、国際的な常識として世界の憲法を参考とすべきである。
 
参考文献:
「世界の憲法集(第二版)」阿部照哉、畑博行編、有信堂
「世界の憲法−正文と解説」大西節敏監修、比較憲法研究会編 
「解説 世界憲法集 第三版」樋口陽一、吉田善明編、三省堂 
 
 
(三) 日本国憲法の問題点
 日本国憲法では、国民主権、平和主義、基本的人権の尊重といった面で功績があったが、反面問題点として個人のエゴが民主主義の証のような観念を生み出したり、絶対非武装が平和主義の唯一の方策であるかのような幻想を与えてきた。このような問題が生ずるということは、憲法の規範と現実の乖離を絶えず検証し、広く国民に報告する義務と責任のある国会議員の怠慢である。又憲法調査の為の委員会設置を妨害するのは、之また反憲法的行動である。日本は憲法制定後一度も改訂していないが、アメリカは1787年以来18回改訂し27ヶ条追補しており、ドイツは1949年以来46回改訂、フランスは1958年以来11回、スイスは1874年以来130回改訂している。このように憲法は絶えず検討して改定するのが国際的常識であるが、日本が一度も改訂していないのは次ぎのような誤解があるからであろう。
 
(1) 日本国憲法 四つの神話は完全な誤解
@世界的にも新しい憲法である。
(178ヶ国中日本は15番目に古い。163ヶ国の  憲法は日本より新しい。日本より古いもので無改正は日本のみであるので、結論として日本の憲法が世界で一番古いということになる。)
 
A世界で唯一の平和主義憲法である。
(平和主義条項のある国は124ヶ国もあるが、平和主義が非武装と考えている国は皆無である。他方外国軍隊の非駐留、核兵器の廃絶などもっと徹底した国もある。)
 
B基本的人権条項を完備している。
(1948年の世界人権宣言、1966年の国際人権規約に比較して遅れている。新しい権利として環境権、プライバシーの権利、知る  権利の他、外国人の権利保護、高齢者・身体不自由者の保護、消費者の保護、文化及  び伝統の保護育成等、世界的には多様化している。)
 
C非常に整った憲法である。
(速成のため誤った表現が多い。例えば第1条で天皇の地位は国民の総意に基づくとあるが、共産党は反対している。第7条4項で国会議員の総選挙とあるが、総選挙は衆議院のみ。又第41条で国会は国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関とあるが、これは権力の分立と矛盾するし、立法は唯一ではない。)
 
(2) 成立過程の問題点
@日本国憲法は松本委員会案がマッカーサー元帥に一蹴され、総司令部民政局で短期間に草案が作られた。
A占領者は占領地の現行法を尊重しなければならないという1907年のハーグ陸戦法規に違反している疑いがある。
B草案に対して、一院制を二院制に変えたとか、土地国有化などの赤い規定を削除しただけで、多少とも自主性をもって憲法を制定したというのは自己欺瞞に過ぎない。
 
(3) 「前文」は憲法の顔である
 「前文」は完全なアメリカ製で欧米風であり、アメリカのクリスチャン・サイエンス・ モニター紙も「日本の現実から生まれた思想でなく、日本に対するアメリカの憲法」と評した。崇高な理想と日本らしさが欠如しており、詫び証文と他力本願で主権国家としての自助努力が欠如している。「前文」の必須事項は、世界標準としての基本理念、健全な愛国心の源となるナショナル・アイデンティティ、それに日本国民が誇りを持てる内容と文体、である。
 
(4) 「象徴天皇制」の意義
 天皇が、「日本国と日本国民統合の象徴」というのは英国憲法の流用で、草案者プール氏によれば権限を与えずとも権威によって意義ある役割を期待したものという。この考え方はスペイン、ネパール、カンボジャ、モロッコ等に伝搬している。
 又君主制か共和制か、国家元首は誰か、解釈の上で混乱を来さぬよう憲法上に明記することが必要である。
世界190ヶ国中44ヶ国が君主制であるが、君主を国民の模範とする象徴化現象が進んでいる。それにしても皇室典範の第1条皇位の継承を男子としているのは、憲法第14条の男女平等に反している。又第99条で天皇は憲法を擁護する義務がある。
 
(5) 第9条と「特殊日本的平和観念」
@マッカーサーは自衛戦争も禁止したが、民政局次長ケーディス大佐は非現実的であると削除した。第2項の「前項の目的を達するため」は芦田修正で、絶対的非武装をさける為であった。
Aそれにしても第9条の解釈は多様であり、現憲法の最大の問題点である。
B政府は自衛隊を戦力にあらずと言い張っている。集団的自衛権を保有しているが行使できないというのも問題だが、最高裁も本件は逃げている。
C平和は非武装というのは国際的に非常識であり、一国平和主義、一国繁栄主義は孤立する。日本は武装が可能か?どの程度の武力保持が認められるか?PKOで海外派遣が可能か?周辺有事で自衛隊はいかに行動できるか?これらの課題を解決する必要がある。
 
(6) その他の問題点
@人権の概念を再構築する必要がある。欧米とは「神」の概念が違うし、日本人が大切にしてきた「共生」の概念を取り入れるべきである。
A第4章国会で、「国権の最高機関」は言葉のマジックであり、衆議院の優越性は非合理的であるが、参議院の改革論議もはがゆく、存在価値を問われている。
B内閣の危機管理能力が疑問視されている。在外法人の自衛隊による救出の法的問題、テロリストへの対応、首相のリーダーシップ、有事の為の法体系の見直しなど、現状では有事の際は無法状態となる。
C最高裁判所の裁判官の選任方法など司法権独立を再考する必要がある。又憲法裁判所制が世界の流れとなっている。
D財政政策の迷走による借金漬けは果たして可か?現状では私学助成も違憲であるが、憲法としても財政について再検討が必要と思われる。
E地方自治に関しては「地方自治の本旨」を明確にする必要がある。今や中央集権制は先進国では日本だけとなっており、地方分権から地方主権による連邦制が世界の流れである。地方の自立なくして日本の国力の衰退を防ぐ方法はない。
F第10章最高法規で、第97条は第11条と同じであり、ホイットニーが導入したと言われている。それをそのままにしておくのも問題だが、憲法と条約とどちらが上位であるか、集団的自衛権など国連憲章との矛盾にどう対処するかなど問題である。
G社会党も初めは護憲ではなく改憲であった。憲法学者と一般の間にかなりの遊離が見られる。最近の世論調査では改憲が多くなってきており、いつまでも世界から遅れた世界一古くさい憲法にしがみつくべきではない。
 
参考文献
「日本国憲法を考える」 西 修 著 文芸春秋社
 
 
(四) 日本国憲法改正の主な論点
 最後に日本国憲法の改正に対して、主な論点を提起している参考文献を下記に示す。
A)「ここがヘンだよ日本国憲法」 産経新聞 2000年2月13日 朝刊
B)「よくわかる平成憲法講座」 西 修 著 TBSブリタニカ
C)「平成憲法・愛知私案 第三次改訂版」愛知和男 インターネット・ホームページ 
D)「新・日本国憲法草案」 中川八洋著 山手書房
E)「日本国憲法改正草案」自主憲法期成議員同盟、自主憲法制定国民会議編現代書林
F)「現代の憲法問題と改正論」竹花光範著 成文堂
G)「憲法改正論−21世紀の繁栄のために」 吉田和男著 PHP研究所
H)「憲法改正論−日本国憲法改正試案」 西部 邁著 徳間書店
I)「日本国憲法改正試案」 小沢一郎著 文芸春秋 99年9月特別号
J)「憲法改正試案」 読売新聞 1994年11月3日 朝刊
 


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