歴史というものは本来多面的なものであるが、昨日たまたま末尾に示す講演1件、読書2件で、歴史の新しい断面に触れることができたので、概要を紹介したい。
1.日本とヨーロッパの出会い
1549年ポルトガルのフランシスコ・ザビエルがインドのゴアからマラッカを経て鹿児島にきたことは、このHPの歴史道楽26で紹介した。その参考文献は清水書院の「ザビエル・人と思想」で、その著者は本日の講演者の上智大学名誉教授尾原悟氏であった。講演では、ザビエルが日本の文化に対して敬意をこめて本国に報告している内容が主であった。イエズス会では、セミナリオ、コレジョ、ノヴィシアード等の教育機関を作り、天正派遣使節の持ち帰った印刷機も日本語が印刷出来るように改良されて有効に利用され、新しい文明を日本に持ち込むことに成功したが、同時に世界各国と比べて日本文化のレベルが如何に優れているかをザビエルは感得し報告したものと思われる。日本では、特に戦後自虐思想が強いが、これも島国根性の一断面で、400年以上前から日本の文化レベルは相対的にかなり高かったことを証する有力な根拠であると思われる。
2.張作霖と張学良
「張家三代の興亡」の著者古野直也氏は中学の2年先輩で、陸士出身の戦闘機パイロットであったが、戦後復員省史実部で戦史を調べ、法務調査部で東京裁判に関係したりした歴史研究家で、かつて中学の有志同窓会の十徳会で、当時ハワイにいた張学良との会見の話を聞いたことがある。又中国の西安には張学良が蒋介石をだまして連れ込み、国共合作抗日へ転換した記念の施設がある。張家三代は、初代孝文が賭博の所有者を夢見て射殺され、その子作霖は紫禁城の主、即ち皇帝即位を夢見て爆殺され、その子学良は中華民国首席を夢見て逮捕され、五十余年間自由を奪われた。三代に亘る張家の夢はすべて破れたのである。中国は常に混迷、混乱、混雑、混沌の国であるとしてかなり詳細に従来あまり知られていない事実を述べている。例えば日本の中でも、新宿御苑に皇室の36ホールのゴルフ場があったとか、なぜ張作霖を爆殺したか、又満州事変や支那事変がどのようにして起こったか、昨年見た偽満州国国務院の総理張景恵も嘗ての張学良の部下だったとか、今まで知らなかったことが一杯書かれている。20世紀前半の日本と支那の歴史、更にはそれにからむアメリカ、イギリス、ソ連などの裏舞台を知るには絶好の図書であり、未だ読まれていない方には是非ご一読をお勧めする次第である。
3.歴代天皇総覧
歴代天皇の顔写真が箱根神社の宝物殿に飾られていたが、この書物は「皇位はどう継承されたか」を中心にして、神武天皇から昭和天皇まで124代の天皇すべてについて書かれている。まず神話時代の天皇として第1代の神武天皇から第14代の仲哀天皇まで、日本書紀や古事記の伝承を主体に述べ、第15代応神天皇から第81第安徳天皇までが古代の天皇、次いで中世の天皇として第82代後鳥羽天皇から第107代後陽成天皇まで、更に近世の天皇として第108代後水尾天皇から第121代孝明天皇まで、最後に近現代の天皇として第122代明治天皇、第123代大正天皇、第124代昭和天皇について書かれている。更に天皇家系図が示され、年表もあるが神話時代を含め4世紀まではあまり明確ではない。
天皇の権威や権力にも何度か浮き沈みがあったが、とにかくこれだけ連綿と皇室が続いた例は諸外国にはない。実はこれから読むのであるが、かつてコラムの57番目に「ドナルド・キーンと明治天皇」を書いたが、どれだけ新知識が得られるか楽しみである。
参考文献
1.「日本とヨーロッパの出会い」尾原 悟、日本工業倶楽部第351回素修会講演030408
2.「張家三代の興亡」古野直也著 芙蓉書房出版 991110
3. 「歴代天皇総覧」笠原英彦著 中公新書1617 011125
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