コラム


34    失われた10年とその背景
更新日時:
2001/11/16 
 たまたま本日日本工業倶楽部の産業講演会で、日本総合研究所理事長柿本寿明氏の講演「日本経済の現状と展望−構造改革で自立型成長の実現を−」を聞いた。日本経済は日本自身の問題の他、米国をはじめEUやアジアも軒並み成長率が落ちており、実質GDPの伸び率はマイナスが続き、2003年度でようやく0となり、回復は2004年度からという暗い見通しである。
 
 バブル崩壊による不況の下で、政府・日銀は財政・金融両面から思い切った景気てこ入れ策を実施し、公共投資と減税を中心に、事業規模で総額146兆円を投入した。
 その結果、何度か景気回復の兆しをみせたものの、結局、自律回復の軌道に乗りきれないまま後退局面を迎えるというパターンを繰り返し、90年代の平均実質成長率は1.3%に過ぎなかった。
 
 このように10年間に亘って低迷状態が持続したのは、単に循環的要因によるものではなく、次のような構造的要因が作動したものである。
@バブル破壊とそれに続く長期不況による不良債権の大量発生と、この処理
 の先送り。それに伴い、一部の低成長分野、高コスト・低採算分野にヒト・
 モノ・カネが滞留。
 (不良債権処理は日本経済再生の必要条件ではあるが、新産業・ニュー
 ビジネスを創造しないと十分条件にならない。)
A戦後50年続いてきた先進国へのキャッチアップを目指す政治、経済、社会
 の「日本型システム」が制度疲労を起こし、新しい環境の変化への対応が
 困難になった。
 
 この結果、現在の日本には、二つの国が存在し、両者のせめぎ合いが続いている。
@ニュー・ジャパン・・「グローバル、技術革新、市場化」を行動原理とする
 成長産業・企業、先進的な取り組みを行っている一部の自治体。
Aオールド・ジャパン・・「国内事情優先・既得権保護・政府依存」を行動原理
 とする成熟産業・企業、非効率な公的部門。
 日本再生の為には、オールド・ジャパンからニュー・ジャパンへの切り換えが不可欠である。
 
 オールド・ジャパンは以上のように「日本型システム」を引きずっており、官民協調体制−規制社会、系列取引、メインバンク制、日本的労働慣行(終身雇用、年功賃金)、更に社会主義国以上の結果平等主義である。これらが環境の変化(冷戦終結による市場のグローバル化、IT革命など)に耐えられなくなってきているのが現状である。
 
 構造改革の推進により、低生産性・成熟分野の整理淘汰と高生産性・成長分野の創造という創造的破壊が進めば、成熟分野から成長分野への経営資源のシフトを通じ、経済全体の効率性が高まり、内需主導型安定成長への復帰も可能になると柿本氏は主張している。
 
 これらの話に関連して二三気の付いた点を述べる。
@オールド・ジャパンの世界情勢に疎い、お上依存というスタイルは戦前
 からのわが国の通弊で、だから戦争に負けた原因でもあるが、環境が変
 わればいつまでもしがみついていれば、結局身を滅ぼすことになる。
A古来の世界の歴史を見れば、どんな大国でも国家は必ず衰亡している。
 それは国家のサバイバルに関する危機意識の欠如が原因で、現在の
 日本では占領期間中に米軍に骨抜きにされた日本人の国家意識の稀薄
 さが日本の危うさである。
B既に刑事事件の検挙率は30%を割っていて、犯罪は増加し、刑務所が
 パンクしている。失業率の増大に伴い、警察力を補強しておかないと治
 安が維持できなくなるおそれが大である。


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