コラム


44    日本の危機と四つの対策
更新日時:
2002/02/24 
 京大の法学部を出てから、英国ケンブリッジ大学歴史学部の大学院を出て、現在京大総合人間学部の教授をしている中西輝政氏は本来近代ヨーロッパ外交史が専門であるが、大英帝国衰退の歴史に詳しく、「大英帝国衰亡史」(PHP研究所・1997)をはじめとして、最近でも「国まさに滅びんとす」(集英社・1998)、「なぜ国家は衰亡するのか」(PHP新書・1998)、「日本の「敵」」(文芸春秋2001)と発表し、今回「いま本当の危機が始まった」(集英社・2001-12-19)を発表した。趣旨はやはり歴史と国際政治の実態をよく認識する必要があり、経済危機といっても経済対策だけでは対処できない深刻な問題があることを指摘し、合わせて今回は先送りしてきた積年の問題点の解決を対策として挙げている。
 
 21世紀の初頭、日本は三つの危機に直面している。
1.「デフレ・スパイラル」の入り口にたちつつある「日本経済の未曾有の危機」
2.同時テロ事件に始まった21世紀初頭の「世界秩序の危機」
3.「小泉改革」挫折がもたらす「日本政治の危機」
 これらの危機の重なりは、おそらく日本の戦後最大の危機となる潜在性を持っており、日本が衰退から衰亡に向かっているという見方も出てくる。
 
 さらにもう一つ日本には「中国という危機」が横たわっていると指摘している。
1.中国は21世紀のある時点で日本にとって安全保障上の脅威となりうる。
2.日本企業の進出で日本経済の空洞化とデフレ圧力となり、国内不況を加速
  している。
3.遠からず国内経済と社会、政治面でのバランス喪失で中国は大混乱に陥る
  筈である。
 
 以上の危機に対する対策として、著者は、憲法改正、教育改革、リーダー改革、情報改革の四つの提案を行っている。
 
[憲法改正] 国家や文明の衰退をもたらす最大の要因は「自己決定能力の喪失」であると言われている。国家はいかにあるべきかが憲法であり、戦後憲法は日本に主権のない占領期間中にGHQの強制によってできたもので、第9条は大いなる「ウソ」であり、これを改正できない所に自己決定能力の喪失がある。自己決定に支えられた自我意識と、文化と歴史の上に成り立つ共同体の観念を取り戻して改正し、戦後憲法と訣別すべきである。
 
[教育改革] 最近は大学進学率の上昇と共に知性の崩落が著しい。国家を否定するのは日本独特で、戦後イデオロギーと共に左翼進歩主義的理想主義の敗北に伴う清算が済んでいない為であろう。戦後英米の改革には「倫理の再生」「古い美徳の復活」が強調されたが、日本の改革には「哲学の転換」「精神革命」「教育改革」が必要である。具体的には、モノと心、進歩と伝統、個人と共同体、といった三つのバランスを回復することが精神改革国家百年の計であり、愛国心や伝統の尊重を含めて教育基本法を改正すべきである。
 
[リーダー改革] 民主主義は世論に従うだけで完結するというのは根本的間違いで、戦後日本のリーダーレベルは国際比較で低い。一つは戦後教育で、モラルと使命感の厳しさに欠けたり、決断の為の剛直な精神を欠くという欠陥がある。優れたリーダーを得るには育成の文化が必要であり、エリート教育をした中から集中的試練と厳しい競争ではい上がったものを、監視しながら、最大限に能力を引き出すという文化が必要である。
 
[情報改革] グローバル化すればする程国家の役割と機能が革新され深化して行くのが人類文明の法則であり、新世紀の根本的趨勢は「国家の再生」である。国家観念の希薄化を終了させるには、「戦後の克服」「自己像の回復」「戦略の構想」の作業が必要である。戦略の核心が情報(インテリジェンス)であり、国家の情報力が世界秩序の支柱となる。国力を支える知の体系として「国家運営の学」があり、そのソフトが国家情報論である。インテリジェンスは収集、分析・評価の段階を経て「政策への反映」が重要である。


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