コラム


63    地方主権の条件
更新日時:
2003/03/01 
 
(まえがき)
 たまたま近所の大田区立図書館で、館内の整理に伴い、何冊かの図書がリサイクル資料として無料放出された。その中に大前研一の一新塾編「無党派時代の智慧」があったので貰ってきた。本書は一新塾第一期(94年、95年)の講義の中から12種選んだもので、大前さんの地域国家論や平松さんの九州府構想などもあるが、行革国民会議事務局長並河信乃さんの「地方主権の条件」が非常に印象的だったので、その特徴的な部分を紹介する。
 
(「地方分権」から「地方主権」へ)
 並河氏は1990年11月に「地方主権の提唱」を発表し、94年4月には公開討論会を開き、「日本連邦基本構想」を発表している。要するに「地方分権」という考え方ではなく、「地方主権」でものを考えなくてはいけないとしている。又一般に改革というと「一部」できる所から、「表層」的に取り組み、「当面」やれるところから取り組むのが現実的とされているが、それでは改革にならないので、そのような取り組みは現実的ではないと断言している。
 
(連邦制のイメージ)
 「三層の政府」として我々個人(主権者・生活者・市民)に一番近い所に第一の政府として市政府があり、次に第二の政府として州政府があり、最後に第三の政府として連邦政府がある。連邦国家は三層の政府で構成され、「主権在民」「小さな政府」「補完性」を構成の原則とする。
 一般に政府というと「行政府」を指す場合が多いが、本来は「立法」「行政」「司法」の三権を合わせて初めて「政府」と言える。地方分権では行政権ばかり議論されているが、地方主権では立法、司法も合わせて権限の委譲が必要である。
 
(立法府)
 市、州、連邦いずれも衆議院を持ち、市の衆議院から州の参議院が選出され、州の衆議院から連邦の参議院が構成される。
 市、州、連邦それぞれが憲法を持ち、但し民法、刑法、訴訟法などの一般法は連邦法とする。
 行政法に関しては「基本法」と「個別法」に分け、例えば文化、福祉は市の所管として個別法は市だけで、州や連邦は基本法のみとし、都市、環境、教育は州の所管として、個別法は州のみ、連邦は基本法のみとする。
 
(司法府)
 市立、州立、連邦立でそれぞれ行政裁判所と二審の憲法裁判所を置く。行政法については市、州、連邦でそれぞれ裁判するが、共通分野については、市→州→連邦という場合もある。
 但し一般法は連邦法なので、連邦初審裁判所→連邦控訴裁判所→連邦憲法裁判所とする。
 
(行政府)
*市は大統領制でも、議員内閣制でも、シティマネージャー制でも何れでも良い。
*州は現在の都道府県知事と同様に大統領制とする。
*連邦はできるだけ小さな政府とするため、強い総理は必要ないので議員内閣制とする。
*連邦で政策を担当するのが「省」、単に事務を行うのは「庁」とする。並河案は6省12庁制
  となっているが、本件の内容は他の提案と比較検討を要する。
 
(政府スタッフの充実)
 今の日本政府は各省庁が大威張りする縦割り行政になっているが、連邦や州の各部局の独走を抑えるためには、州及び連邦の首相府と議会スタッフを充実し、それぞれが切磋琢磨するパターンを推奨している。
 
(むすび)
 従来の議論が行政府の分権と財源の委譲に主眼があるのに対し、並河氏の提案は立法府、司法府について明快な構想を展開している。勿論こまかく言えば、特に立法府の場合、行政府の市、州、連邦の分担と密接に関係してくるが、三権合わせて初めて政府と言えるという点は正に図星である。今後の道州制推進活動に取り入れを計りたい。


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