コラム


78    「道州制・弱者切り捨て論」は視野狭窄的
更新日時:
2003/12/12 
地方の自立をとなえる道州制に対して、それでは首都圏が益々栄え、地方は益々過疎に追い込まれてやっていけなくなる、つまり弱者切り捨て論なので道州制には反対であるという意見がある。勿論国の権限即ち中央官庁の大幅縮小と国会議員の大幅減員に対して根深い抵抗があるとは思われ、どこの政党も道州制の導入に躊躇し、表向きは弱者切り捨ては怪しからんということになっている。
 
 しかしこの議論は、世の中或いは世界の現実を見ない視野狭窄的ともいうべき暴論である。これを国内的、国際的に数字を交えて証明してみよう。
 
 まず国内的には、中央集権制度の最も悪い所が現れている。例えば人口76万人の島根県と857万人の神奈川県を比較すると色々なことが分かる。例えば県民所得は一人当たり島根県は神奈川県の75%である。しかし一人当たりの歳出決算額は島根県が神奈川県の268%もかけている。歳出に対する地方税は、神奈川県の54%に対し、島根県は僅かに11%に過ぎない。それでも世帯当たりの貯蓄高から負債を引いた残高は、島根県は神奈川県の88%である。このことは神奈川県をはじめ首都圏の税金が大量に島根県をはじめとする財政力の弱い地方に、地方交付金や補助金の形で流れ、地方は経営努力をすると中央からの金が来なくなるので、税金を集める努力もそこそこ、無駄遣いしながらひたすら中央にぶら下がっている恰好になっている。一本立ちの努力もしないで、旧態依然としていれば、そこそこに中央即ち首都圏や中京、関西地域からの税金が懐に転がり込むようになっていることが明らかである。従って自立心を前提とする道州制には馴染まないが、現実は弱者ではなくて、ぶら下がり族が自立に反対しているだけであると思われる。
 
 次に世界に目を向けると、人口が少ないとか僻地にあることが、今や全く問題ない事が分かる。例えば一人当たり国民所得の世界ベストテンを調べると明らかである。順位、国名、人口を列記すると、1位ルクセンブルグ(42万人)、2位ノルウェー(441万人)、3位アメリカ、4位スイス(709万人)、5位日本、6位デンマーク(526万人)、7位アイスランド(27万人)、8位アイルランド(362万人)、9位スウェーデン(885万人)、10位オランダ(1,560万人)で、北欧のフィンランドも13位で(514万人)である。1億人を超すアメリカと日本を除けば、1位から9位までは人口1,000万人以下であり、ドイツ、イギリス、フランスといった強国が直ぐ近くにあっても、上記小国が上位に来ている。特に、ドイツ・フランス・ベルギーに囲まれたルクセンブルグや北海の孤島アイスランドが、島根県以下の僅かな人口なのに、天晴れ世界のトップクラスにいるのが注目される。
 
 これら上位にいる国を調べてみると、いずれも時代に適合した産業に乗り換えており、外部の力も充分活用して、国際的な活動を展開していることが分かる。要するに少し智慧を働かせて地域として特色を出し、自分たちに出来なければ外部、場合によって外国の企業を呼び寄せて新しい事業を展開している。古い産業をそのまま継続していれば、競争力がなくなるのは自明である。このように地域の発展には経営センスを要するようになってきたが、要は特色ある新しい価値を創造していかなければ、経済が発展し、生活が良くなることはないという公理通りに世の中は動いている。その為には地域の人口はあまり多くない方がよく、道州制で考えている程度の地域単位が、自立して特色を発揮し、経済発展を実現するには最も都合がよいと断言してもおかしくない。
 
 道州制は弱者切り捨てなどといって反対しているのは、明らかに視野狭窄的である。


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