中国には現役時代何度か行ったが、リタイアしてから、1998年に北京、西安、蘭州、敦煌、桂林、広州、上海、蘇州と15日間訪問し、2002年9月には大連からハルピンへ8日間、同年12月から2003年1月にかけて雲南各地へ9日間旅行した。勿論1980年頃とは随分様子が変わり、行く度に民度などにかなりの変化が見られた。
最近元通産省にいて、1994年の中国WTO加盟交渉に参加し、1996年から4年間北京の日本大使館に勤務した津上俊哉氏が日本経済新聞社より「中国台頭−日本は何をなすべきか」という図書を2003年1月23日に発刊した。ここには同感したり、同感できない部分もあるが、今まで知らなかった事も随分沢山書かれている。どちらかというと、今までよく知らなかった点に焦点を当てて、中国の経済問題とそれに関連した日本の問題について触れてみたい。
最近の中国経済の成長は著しく、日本国内では空洞化が進んでいるので、「中国経済脅威論」が出ているが、これは間違いである。中国もようやく改革努力の配当を受け始めたのであり、中国の社会主義は名ばかりであり、今は実質は資本主義であり、ポスト文革世代の人材が強みである。昔日本経済が急成長してアメリカが困ったのと同様の問題で、日本は追いつかれたら改革しなければいけない立場である。中国はどちらかというと低人件費による賃仕事が多く、付加価値率は低い。又日本企業が現地で儲けても、日本の税金が高いため、現地で再投資する傾向も有る様である。
一方中国経済にも知られざる深刻な悩みがある。政府の財政にカネがなく日本同様危機にあり、WTO加盟に伴い、農産物の割高、失業問題、高齢化現象で8億人もいる農村、農民問題の将来には見通しすら立っていない。又砂漠化が急速に進行しており、厖大な対策コストがかかり、やがて来る社会不安で政治体制がどうなるか、うまく民主化で収まるかどうか、中国も背後に物凄く大きな問題を抱えている。
中国では、国有企業が民営企業に転換しつつあり、私営企業も出てきた。所詮、政府には経済はやれないということで、これからの中国経済の担い手は民営企業である。逝江省の私営企業と江蘇省の民営企業を調べると、逝江より江蘇の民営企業の方が日本の支援を必要とし、その可能性も大きい。又ハイテクもいろいろと振興策を講じているが、悩みも少なくない。又中国新興企業との交流を諸外国と同様「窓口」に頼らずに進める必要があり、それには彼等にマルチビザの発行が必要である。
以上中国経済もようやく大人になってきたので、日本も競争と協調が必要であり、アジア地区の経済統合にも積極的に対処して行く必要がある。又日本としても、アジアから人材を呼び込み、資金の流入を促進し、投資や技術移転も必要である。特に経済は生き物であり、世界的に時々刻々と変化しており、同じ状態がいつまでも続くことは絶対にない。特にFTA(自由貿易協定)で日本はミソばかりつけているが、一番の問題は農業問題である。
日本の農業は完全に社会主義化しており、多額の税金を投入しているにも拘わらず、全く国際競争力を失っている。未だに国民の食料確保のための農業ではなく、旧態依然とした農家と農協の保護ばかりしており、技術革新を遂行するために必要な株式会社の参入を拒否している。農業はFTAを阻害する最大の要因であるが、実は製造業でも国際競争力のある分野は僅かに13%と言われており、特に官の影響のある分野は競争力がない。一国平和主義の幻想に浸っている内に、世界的競争が毎日進行している現実を見失っているらしい。
又歴史問題を中心とする日中間の問題について、著者は「いつ中国に詫びるべきか」などと言っているが、戦争を知らない世代に、いかに正確な歴史を伝えるか予想以上に大きな問題であることを感じた。戦争とは国と国との喧嘩であり、どちらが良くて、どちらが悪いと言えない場合が多いのが実態である。まず中国に対しては、反日教育を止めさせることと、靖国問題は内政干渉として拒絶することが第一に必要であり、15世紀以来の西欧諸国のアメリカ、アフリカ、アジア、オセアニア侵略支配にとどめを刺したのが、中国ではなく、日本であることを背景として、一国も早く一国平和主義を脱却し、新しい世界を作ることに、日本はもっと真面目に取り組む必要があると思わざるを得ない。
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