西欧近代の制度の究極の姿を示すアメリカンスタンダードは、現実を主体と客体に分離し、その「主体の自由」を徹底させたリベラリズムだと言って良い。個人、地域、国家というそれぞれの主体が自由に活動できる世界を理想としている。しかし日本は、全体と個、主体と客体が分離できない世界にこだわり続け、その調和を理想都市、独自の近代世界を切り開いてきた。日本人がこの理想を投げ捨て、主体の自由を理想とするイデオロギーに乗り換えてゆくことが果たして可能であろうか。改革、改革と声は大きいものの、それがなかなか進まない最大の理由はそこにあるのではないか。呉善花の提案は、これまで独自の近代世界を切り開いてきた日本は、自らを振り返って、アメリカンスタンダードの先を見通す「超欧」のヴィジョンを獲得して行くことである。これができれば改革は急速に進展することは疑いない。という観点から日本及び日本人の未来的な可能性を探ったのが末尾の参考文献である。これにより日本が元気回復のきっかけをつかんで欲しいと著者は述べている。
(1) なぜ日本人は誤解されるのか
日本には大言壮語を慎む倫理があるので、日本人はスケールが小さいと誤解される。
一億中間層社会は素晴らしい個性である。日本のODAが誤解されるのは援助の精神があるから。欧米ジャーナリストの欧米中心主義や「日本はもうだめ」というマスコミのマインドコントロールが恐ろしい。
(2) 日本はアジアのリーダーになれる
竹島問題を契機に、建前ではなく実質の伴った平和外交を展開せよ。日本人の「集団主義」はかけがえのない財産、自我を抑え、他人と協調できるのは素晴らしい。日韓関係がうまくいかない半分の理由は韓国人の偏見。「たまごっち」がもつソフト・アニミズムは世界が求めだした。
(3) 「生の文化」に見る日本人の創造力
自然の素材を生かす「生の文化」が、日本の未来を創造する。茶室を造った日本人が、創造力に乏しいとは誤解である。人工の日本庭園は精神の遊園地。西欧近代の原理を超えるヒントは日本語文化にある。
(4) 日本的システムの復権
日本的な企業システムが、個人の能力を殺すとは大いなる誤解である。知的特権階級の台頭を許さなかった日本の社会を愛す。日本人の労働意欲はボランティア精神に通じるものがある。コンサルティング・サービスは日本独自の文化。日本人が作るナチュラル・サービスが世界的な傾向となる日を期待。日本のハイテク技術を支える「自然に対する受け身の思想」。
(5) 日本が目指す「脱亜超欧」
伝統を保持しつつ、国際化を受け入れた日本の不思議、日本がやるべきは新リベラリズムを超えた行政改革だ。優勝劣敗を是とするアメリカ型改革に日本は追随するなかれ。(日本は欧米より分配の平等が進んでいる。貧富の差が拡大せぬ日本独自の改革を模索すべき) 法律の規制を強めるよりも、モラルの向上を重んずる国民、今尚根強い農耕社会の共同意識。論理的な制度より美で身を律する文化。
参考文献:呉善花著 「日本が嫌いな日本人へ」 PHP研究所 !,333円+税
1998年9月17日 初版第1刷発行 大田図書館361.4オ
|