幻の伝統工芸

COLUMN

現代に蘇った幻の技法  金杢目金
不可能とされた幻の技法はいかにして現代に蘇ったのか
 1      杢目金の現在と未来
硬質素材(ステンレス)の鍛金作家としては唯一とされ、その技術と独創性を世界に高く評価されている秋田市在住の金属工芸作家 林 美光(はやし びこう) が自身のライフワークとし50余年の歳月をかけて試行錯誤の研究を続けてきた金杢目金の技法再現について、遂にこの度、諸処の謎を解明しその作品を完成させるに至った。
林美光が辿ってきた研究過程には想像を絶する苦心と失敗の集積があったことは想像に難くない。にも拘わらずこの偉業を成し得たかげには、幼い頃から長年携わってきた鍛金工芸の経験と、金属を流体力学の応用や粒子の流れに着目するなど、独創的、且つ持続的な彼の研究の成果が身を結んだといえる。
 彼が真に正阿弥伝兵衛や正阿弥派の伝統作品の創出に成功したことは、単に古の伝統工芸技術を現代に蘇らせた事ばかりではなく、秋田が過去に世に知らしめた高い文化水準と、現代まで連綿と続いてきた秋田の工芸の基盤において空白域を埋め、きちんとした体系を与えた点で意義は大きいものである。この日本の工芸界の歴史的な偉業が達成されたのが、発祥の地である秋田であり、秋田の鍛金工芸を支えてきた地元の作家がそれを成し得たという点には、更なる意義を見出すものである。
以上の事などから金鍛金張合地(金杢目金)の作品および技法は、秋田が歴史的な価値、文化的な価値、他に類を見ない希少性などから世に誇れるものであり、後世に継がれてゆくべき文化であるといえる。
 しかし、その技法の特殊性などから、復元した作家一代限りで再び途絶える危険性を併せ持っている。他の伝統工芸にも同様の問題はあるであろうが、保護育成が急務であると思われる。
更新日時:
2003/05/10
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更新日2003/5/10

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