新規就農のための
具体的方法

片岡永の百姓随想
 
残された命をどう生きるかということ(季刊午前掲載)
1960年生まれだから、私の年齢は勘定がしやすい。1980年に二十歳、2000年に40、2030年に70である。
 父は1930年というやはり数えやすい年に生まれ、1998年68歳で去った。私もまあ、世のために働ける年齢は70までだろうと思っている。そう考えると、残された人生は概ね30年である。しかしこれは、大病もせず、大怪我もせず、事故にも遭わずという幸運が続いたという仮定の話であるが。
 さて、その残り30年間をどう生きていけばいいのかという問題に、ここ数年間悩んできた。そうして3年前、ようやく決心がついた。決心はついたものの、将来に対する不安が払拭されたわけではない。むしろ不安は増大した。決心とはただ、生きていく行くべき方向が決まったというだけの話である。
 不思議なもので、決心がつくと今まで見えなかったものが見え始め、感じられなかったことが感じられるようになってきた。その上、死への恐怖心が薄らいだようにさえ思えてきた。
 いずれは死ぬのだということを判ってはいても、自分の死はずっとずっと先のまだ影さえみえぬところにあるものだと思っていたから、現実として考えたことなどなかったし、考えようとしたこともなかった。それが「残された30年をどう生きようか」と悩むようになった。マラソンでいえば21キロの折り返しを過ぎ、25キロ辺りを走っている段階だろうか。ゴールまでの残り18キロ足らずにどういう走りをしようかと考え始めたのだ。
 わが同人に、「今度の例会が最後かもしれぬと思いながら、今日も来られたことにただ感謝している」と話してくれた人がいた。その人は残された自分の時間をナイフで削ぎ取るが如く、自分の魂を一文字一文字に置き換えながら原稿用紙に書き残している。聞いていて涙が出た。その人から見ると、まだ若いくせに傲慢だと思われるかもしれない。死の恐怖が薄らいだなど生意気だと思われるなら「自分も死ぬのだということが、ようやく腹に落ちた」とでも言おうか。
 巧く生き通せても30年。ならば、やはり思うように生きるしか道はない。それがために苦労しようが貧乏しようが、あるいは死んでしまおうが、納得のいく生き方をするより他、自分の生き方はない。
 友人からは、家族のある身で自分勝手だとも言われた。妻には判ってもらえるまで説得すればいいし、子に残すべきは金でも財産でもなく、親の生き方なのだと考えている。 
 自分の身の周りにいる人たちを幸せにすること、次の次の世代にまで少なくとも自分たちと同じ地球を残すこと、それらのことに努力したことを語り継いでもらえること。そんな生き方への決心がついて、残された30年間を農業に費やそうと決めたのだ。(2002年9月掲載)
 
 
更新日時:
2007.08.02
農業への転身、信念貫き実現(西日本新聞掲載)
土地もない、家もない、施設も機械も道具もない。全くなにもないところから農業を始めようと言うのだから、確かに大変なことではあった。「残りの人生を農業者として生きていきたい」という強い信念だけがあった39歳。
 それから3年間の計画で畑を借り、道具をそろえ、植物生理を勉強し、農業塾に通い、農家研修に行き、資金を貯めた。
 恩ある会社にはできる限り迷惑を掛けぬよう1年半前に辞意を伝え、部下の育成と仕事の引継に十分な時間をとった。3年間でほぼ計画に近い準備を整え、昨年3月に退社。それからさらに9ヶ月を経た今月、農地法第3条の規定による認定を受け、ようやく町の認める農業者となることができた。
 新規就農を目指す人の多さは就農セミナーに行ってみてよく分かる。多くはこの農地法の壁で挫折するとも聞いた。しかし、あなたが本気ならできる。何もなくても、信念と時間があれば必ず突破できる。(2004年1月23日掲載)
 
 
更新日時:
2007.08.01
農業担い手へ規制緩めて(朝日新聞掲載)
 40歳になったら農業をしようと思っていた。準備に3年間を費やし、42歳で17年間勤めた会社を辞めた。それから更に1年、今月ようやく新規就農者の認定を受け、町の認める農業者となることができた。
 農地法では、農地の売買、賃貸については農業者でなければならないとされ、一方で新規に農業を始めようとする者は農地を確保していなければ新規就農者として認められない。
 日本の食糧自給率の驚くべき低さを知り、農産物の生産者となって自給率改善の一助となりたいと渇望しても、農地を持たない者は容易に生産者になれないのだ。
 確かに、農地を守るという法律の趣旨は理解できるが、担い手不足に悩む地域農業の将来を考えると、時代にそぐわない。
 私は強い信念を持ち、長い時間を掛け、ようやく第一歩を踏み出すことができた。この上は農業者として自活し、地域に安全な食糧を供給していくことが目標である。
(2004年1月30日掲載)
 
 
 
 
更新日時:
2007.08.23
新規就農者の壁、農地法
農家の息子でない者が農業者になろうと思えば、農地法第三条に関わる認定を、地域の農業委員会から受けなければならない。実はこれがかなり難しい壁になっていて、新規就農者の受け入れを拒んでいる大きな要因となっている。
 元来は田畑を簡単に転用できないようにするための法律なのだが、新規就農者にとってはかなり高いハードルとなっていて、ここで諦めてしまう人も多いのだ。問題は農地の取得にある。田畑などの農地は農業委員会が認めた農業者でないと売買も賃貸もできないと定められている。一方で、新規に就農しようとする者は5反以上の農地を確保していなければ農業委員会は認めない。ここに大いなる矛盾がある。では新規就農者は、どうやってその5反の農地を確保するのかということだ。
 現実には闇で借りるしかない。地主との個人契約でとにかく5反の借地契約をするしかないのだ。この農地の斡旋は、役場でも農業改良普及センターでも、農協でもやってくれはしない。あくまで自分で探して個人契約をするしかないのだ。そんなことができるのか、と普通なら思ってしまう。実際はかなり困難なことである。それがまかり通っているこの法律自体がおかしいのだ。
 だが、方法はある。実際に私は個人契約で7反の畑を借り、農業委員会に申請をして認められた。どうすれば地主と個人契約が結べるのかと言えば、地域の仲介者を立てるしか方法はないだろう。農地はいくら空いていても、見知らぬ者には貸してはくれない。小作権が発生し盗られてしまうとの危惧を地主が抱くからだ。信用のできる地元の農家と仲良くなり、時間を掛けて、空いている畑を借りたいと言い続けることだ。農家は情報が通じているから、何処の畑が空いているなどと良く知っている。焦らず、いかに自分が真剣に農業をしたいのかということが判ってもらえれば、必ず良き仲介者となってくれるだろう。
 諦めてはいけない。 
 
更新日時:
2007.08.03
第3条申請が認可された
 新規就農者にとって最も難関な条件が、この農地法第3条の申請である。最も難関でありながら、まず最初に越えなければならない壁なのだ。これを越えると後は比較的楽なものだ。
 農地法第3条とは、町(あるいは居住する自治体)の農業委員会がその人を農業者として認めるかどうかということだ。この後、農業資金を借りるにしろ、新たな土地を借りるにしろ、まずここで農業者として認めてもらわなければ後が続かないから、ここが肝心である。
 条件はまず5反の田畑を確保すること。その方法に付いてはコラム「新規就農者の壁、農地法」を参考にしていただきたい。僕が実際に行ってきた認可方法に付いて記していきましょう。 
 とにかくまず、5反の畑を個人的に借用する。それから僕の町の場合は産業振興課の農業委員会事務局に行き、事情を説明し、申請書類を入手する。記する内容は「農地法第3条の規定による許可申請書」で、土地の所在地、面積、所有者など。「営農計画書」で、農業従事者及び農機具等所有状況、申請農地に対する作付計画、通作の方法(自宅から畑まで何で何分かかるかという意味)、今後の計画、作目名(野菜の種類)、生産規模(面積)、単位規模あたり生産量(1反当たりの収穫量)、総生産量、月別の作付け体系、月別の労働時間・・・まあ概ねこんなところか。
 これを提出すると翌月の農業委員会に諮って審議され、次に面接がある。まあ2−3人の面接官かと思っていたら、全農業委員が参加していて、20人ほどいる中に放り込まれた。現状と今後の計画を自ら説明し、質問に答えた。退室後委員会で諮られ、後日通知があるという仕組みだ。僕の場合は一発で認可され、後日町から許可申請書を交付された。ここで初めて町の認める百姓になることが出来る訳だ。
 これをクリアしないと耕作証明書が発行されない。資金の借用、就農認定などに必要な書類だから、どうしても越えなければならぬ壁である。
 僕は制度資金を借りるために必要であったために申請をした。必要に迫られない限り面倒だと思うかもしれない。しかし今後の日本の農業政策はやる気のあると認める認定農業者を中心に資金が回っていく。家庭菜園で満足できる人ならそれで良いが、事業として農業を考えるなら闇農家ではいつまでたっても拡大を図ることはできないだろう。
 
更新日時:
2007.08.02
百姓は環境保全者か?
農業の多面的機能を評価しようと言う動きがあり、これはこれで良いことだと思う。食糧自給を支えるだけではない農業の役割。農業者にとっては自分の日々の生活そのものを評価されている気持ちになる。
 では百姓はどれほど環境保全に寄与しているかと言うと、僕が実際に畑に出て見ている限り、大いなる疑問がある。畑に出てみて初めて知ったことだ。
 僕の畑の隣は、冬に大根、夏にキャベツを広大な面積で作る専業農家である。ご主人はもう70を超えているだろうか。奥さんと二人で、休日にはサラリーマンの息子も手伝っている。彼らはやたらとゴミを捨てる。それが風に吹かれて近隣の畑へと流れてくる。農薬や肥料の袋、お菓子の袋、煙草の吸い殻やパッケージ・・・風で飛んでいけば消えて無くなるとでも思っているかのようだ。
 大根の葉やキャベツの葉などの残さは隣接している畦に捨てる。広大な自分の畑があるのに、そこには鋤き込まず、隣地との境に捨てるから、それが腐って悪臭を放つ。自分の畑ではなく、わざわざ他人の畑に向かって小便をする。
 農薬は驚くほど散布する。キャベツに使う殺虫剤である。捨てていく袋でそれが判る。これほどまで農薬を撒くのかと、同じ農業者として驚くほど撒く。消費者が見ると、もうキャベツは食いたくなくなるだろう。僕もそれ以来キャベツを買わなくなった。草刈りなどしない。畑が広大だから、周囲は全て除草剤で処理している。
 彼らの畑には草一本生えてはいない。それが自慢なのだろう。しょっちゅうトラクターでかき回しているから、草の生える暇がない。いかにもエネルギーの無駄に思える。草がないから大雨が降ると一挙に土が流れ出す。周辺のアスファルトには彼らの畑の土がたまっている。それが側溝を埋め、除草剤と農薬のたっぷり含まれた土が表面を流れて川に入っていくという仕組みだ。
 百姓はまず、自らの襟を正すべきだと思う。彼らだけに限ったことでなく、多くの百姓が同じようなものだ。自分の畑にゴミを捨てるから、その習慣が他に行っても出てしまうのだ。
 
更新日時:
2007.08.02
師匠からの手紙(西日本新聞掲載)
会社員を辞し、新規に就農してから3年目。年賀状代わりに送る農園通信を昨年末もお世話になった方々に送った。文学の師匠と仰ぐ、古希を過ぎた同人誌の先輩から返事をいただいた。
 師は「21世紀は原点回帰の世紀、人類は自然に対しあまりにも傲慢無礼であった。人間は紛れもなく自然の一部であることを思い知るべきだ」と現状を憂い、「同窓会で、昭和20年代中学生だった頃の弁当が話題になった。あのころの弁当は何故あんなに旨かったのだろう。久々の銀飯の真ん中に梅干しが一つ、目刺し三匹に沢庵が二切れ。飽食の世にあって、あれ以来あんなに旨い弁当を食べたことがない。人間は極みにきて初めて、何が本物で何が偽物であるのかが判るのかもしれない」と書かれてあった。
 会社員時代より長時間働いても収入のついてこない現実。いまだ挫折せぬまでも、掌を見て溜め息の出る日々。しかし自分がやろうとしている営為の意味を再考し、方向は間違ってはいないのだと、勇気と希望を与えられた正月であった。
(2005年1月24日掲載)
更新日時:
2007.08.02
できないのは、決めないから
日めくりの標語カレンダーというものがあり、それをトイレに吊り下げている。
 一日一日違う標語が31枚、毎朝今日の標語を読むのが習慣だ。倫理研究所の発行している「今日の道しるべ」というもので、丸山敏雄名言集と記してある。実に良い言葉ばかりなので、もう3年間も毎日めくりながら読んでいる。
 その中で最も僕の好きな言葉が表題の「できないのは、決めないから」というものだ。カレンダーには標語の解説がしてあり、そこにはこう書いてある。「きっとやるぞと決心すると不思議なことが起こってくる。これまで知らなかった強い力が自分の中に湧いてくる。思いがけない応援者が現れる。ついには天地が加勢してくれる。決心の持つ力を知った者は成功者となる」と。
 深い言葉だ。
 確かにそう思う。人間はなかなか腹が括れない。頭ではそうした方が良いと判っていても、別の頭でできない理由を探している。そうは判っていても俺にはこれがあるからとか、あれを放っておくわけにはいかないからとか、世間には理解されないが俺にはそんな事情があるのだからとか・・・。どうすればできるかを考える前に、一生懸命できない理由を考え、それで自分を納得させようとしていることがある。そうして時間は確実に過ぎ、気がついたときには溜め息を吐いて、今更もう遅いはと諦めてしまう。人生を左右するような大きなことばかりではない。日常の仕事に対してもこういうことは時々ある。僕はその度にこの言葉を思い出す。いま自分がしようとしていることは何なのか、本当にしなければならないことは何なのかと問い直してみる。
 腹を括れば諦めがつく。他に選択の余地がなくなる。自分にはそれしかないのだと確信できれば迷いがなくなる。迷いがなくなれば怖いものもなくなってくる。僕は腹を括って百姓することを選んだ。だから他に選択の余地はないが、人生に迷いもなくなった。
更新日時:
2007.08.02
妻の決心
人間の、習慣は勿論、性格でさえ変えられると僕は思っている。
 妻はくよくよすることの多い性格だった。まだ起こってもおらぬ将来の不安を心配することが今までによくあった。そんなことを今から心配していてもしょうがないじゃないかと、何度も言ったことがあった。
 その妻が決心をした。心配してもしょうがないことに悩むことを止め、前向きに気持ちを切り替えるのだと言った。それは素晴らしいことだと大いに賛成し、そのために僕にできることがあれば手伝おうと思った。
 早速妻は、本から気に入った言葉を抜き書きし、それを持ち歩き用と、自宅用に拡大コピーをしてトイレに張った。項目は30程もある。タイトルは「かけがえのない人生を楽しく過ごすために」だ。僕にとっても励まされる言葉がいくつもあった。それを書き出してみよう。
●「過去のことは気にするな、明日のことは心配するな、今日一日だけを思い切って生きよ」
●「あなたの今の落ち込みは、過去に囚われているか、これから起こる何かを心配している。そうだとしたらあなたは、今のかけがえのない時間を無駄にしている。どのようにも使える真っ白な時間を、後悔や心配に占領されている」
●「人生は潜在意識の働きで、良くも悪くも考えた通りになる。だからひたすら良い方へ考えること」
●「こうありたい自分を常に想像し、そのように振る舞うことによってだんだんそうなってくる」
●「人生は一回限り。誰もが自分の人生を素晴らしいものにしたいと考えている。これからはいつでも、どこでも、どんなことでもプラスに考えるようにしよう」
 こういった言葉を毎日毎日読み続けていくと、彼女はきっと「プラス思考」になっていくだろう。僕が一番評価したいのは、そうなりたいと考え、そのためにどうすればよいかと悩み、その結果自らを励ます言葉を抜き書きして張り出し、少しずつでも自分を変えていこうとすぐに実行に移したことだ。彼女は必ずや自分の心に明るい気持ち宿し、前向きな素晴らしい人生に立て直すことだろう。人はその気になれば、自分の性格さえ良いように変えることができるのだ。
 
更新日時:
2007.08.02
パソコンとトラクタ
福津市には認定農業者が90人いる。その人たちに「農業するのにパソコンとトラクタとどちらが必要でしょうか」と聞いてみるとすると、ほとんどの人は「そりゃあトラクタに決まっとる」と仰るでしょう。そうして実際、その90人のうち養鶏などを除いた作物栽培農家の中でトラクタを所有していないのは、恐らく私ひとりだけではないかと思う。
 私はトラクタを使わないのではない、所有をしていないのだ。トラクタは近くの組合で必要なときに借りている。もちろん賃貸料は必要で、年に2回まとめてお支払いをする。しかしその賃貸料金は仮に150万円の中古を買って10年ローンで払うよりも安い。借り物だからメンテナンス費用はかからないし、爪の交換費用も要らない。その上駐車しておく場所も要らない。使いたいときに他の人が使っていたらどうするんだと言われそうだが、ほとんどの農家は所有しているので、借りる人は極めて少なく、その心配はない。現在は全く所有する必要性を感じてはいない。
 一方、パソコンは私にとって必要不可欠である。農業用のデータは全てパソコンに入っているし、経営管理も帳簿類も全てパソコンで行う。普及センターや市役所の担当者とのやり取りはメールで行っているし、商品に貼るシールや私の名刺もパソコンで作る。新たな作物に挑戦するときにはまずインターネットで調べるし、他の農家の様子もネットで知ることができる。
 また農業資材や農業関連書籍もネットで購入する。こうしてHPで私自身の情報も発信できる。パソコンなくして私の農業は成り立っては行かないのである。そうしてパソコンは借用するわけにはいかない。先の質問は実際にしたわけではないが、私は迷わずにトラクタよりパソコンの方が必要だと言える。
 新規に就農したいのだがどうすれば良いかと私のところへ何人もの人がやって来られる。その中でパソコンの使えない人が結構多い。現在サラリーマンで将来就農したいと考えておられるなら、是非今パソコンを購入し勉強しておかれることをお勧めする。
 就農してからパソコンを購入するのは金銭的に厳しいし、勉強する時間的余裕もなくなってしまう。サラリーマンなら会社で使いながら勉強もできる。農業にパソコンなど要るものか、とお考えなら大きな間違いである。農業であるからこそパソコンはなくてはならない重要品目である。もっともこの文章を読んでおられる方は全員パソコンを使える方であるから、ここで言う必要はないのであるが・・・。
 
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2007.08.04
新規就農のための具体的方法1『逃げてはいけない』
私のところに時折、「農業をしてみたいが、どうすればよいだろうか」と相談に来られる方がある。私はよく話を聞き、出来るだけ前向きなアドバイスをするようにしている。それは「どんなに条件が悪くても、新規に就農することは可能である」との、私の持論からである。
 恐らく私以上に条件の悪い人は、そう多くはないだろうと思っている。その私でさえ就農することは出来たのだ。誰だってやろうと思えば出来るのだ。
 
 ただし、本気であることが条件である。自分の人生を掛けて農業をしていこうとする信念がないといけない。今の会社に嫌気が刺した、上司も得意先もうっとうしい、人間相手の仕事に疲れ、自然を相手にのんびりと暮らしていきたい・・・なんという理由で来られる人がいるが、こういう理由で農業をしようとしても、それは無理な話なのである。そんな人には「農業を甘く見てはいけない」と厳しく言う。
 サラリーマンさえ勤まらない人が、経営の出来るはずはないからである。農業は立派な経営であり、農業者は経営者、社長なのである。サラリーマンに疲れ、嫌になり、そこから逃れたいと思って農業を選ぶのであれば、それは大きな間違いであり、農業者を馬鹿にしていることであり、決して成功はできない。
 こういう農業をするために私の残された人生を掛けて挑戦してみたいのだ、という強い信念を持って会社を辞し、会社からは何とか思いとどまってくれと頼まれるが、それでもその好条件を振り切って、しかも会社に迷惑を掛けず、部下の育成と仕事の引継を万全にし、充分な時間と綿密な計画をもって農業に転職するのであれば、少々の悪条件であっても気にすることはない。必ず生活を築いていくことはできる、と私は思っている。
 今の仕事や生活が嫌だからと農業へ逃げてはいけない。
 
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2007.08.03
新規就農のための具体的方法2『3年計画を立てよう』
何事も事始めには計画が必要である。あなたが今サラリーマンであり、将来就農したいと考えているのであれば、最短でも3年間の計画を立てよう。「3年後に就農する」という計画である。
 何故3年間なのか。
 人間は3年間ひとつのことを思い続けることができたなら、大抵それを成就することができると、私が信じているからである。逆に言えば、3年間思い続けられなければ、その程度のことであったのだと諦めた方が良い。
 3年後に就農するために、今何をしなければならないのか。まず家族を説得し、協力を得られる環境を作っていかなければならない。資金も貯めなければならないし、農業技術の勉強もしなければならない。また販売方法も研究しなければならないし、土地探し、家探し、その後の生活設計など、やらなければならないことは限りなくある。そう思えば、3年でも足らないくらいなのだ。
 思い浮かぶことをひとつひとつノートに記していき、ある程度書き溜まってきたらそれに優先順位を付けて整理しよう。あなたにはまだ何ら具体的なことは決まっていないかも知れない。それでも構わない。どんな些細なことであっても良いから、どんどん書き出していこう。それを整理していく中で、何が大切なのか、何を優先していかなければならないのかが自然と見えてくるはずだ。
 家族を持つ人なら、自分だけの計画では駄目で、3年後に子供は何年生になっているか、就農後3年でいくつになっていて、どの程度の金が必要かなどと家族全体を見渡した計画が必要である。高校や大学への進学時期と重なるかも知れない。その時子供たちに充分な対応を取ることができるだろうかということへも思いを馳せなければならない。
 そんなことを考えていくと、本当に農業で喰っていけるのかと心配になってくる。就農までに3年、就農後軌道に乗るまで3年の6年間を俯瞰してみて、今の会社にいれば課長になっていて、給料もこの程度まで上がるのにと計算してみて、やはりこのまま会社にいる方が得だと思うならそうすれば良い。つまりはその程度の思いであったのであり、新規就農への夢は、辛いことの多い今の現実からの逃避であったのだと自分を笑ってしまえばよいだけのことである。そうすれば誰も不安に陥れることなく、手堅く幸せな家庭生活を継続していける。
 しかし、そんな不安を抱えながらも自分の人生を掛けて挑戦してみたいという思いを押さえきれない人だけが新規に就農でき、そこに無限の楽しみと成功とが待ちかまえているのだろうと私は考えている。
 
 そのための時間が3年間なのである。
更新日時:
2007.08.03
新規就農のための具体的方法3『今の仕事に最善を尽くそう』
サラリーマンが新規に就農したいからと、そのことばかりに考えを巡らせ、今の仕事に身の入らない人がいる。それは、今の仕事からの逃げである。先の随想にも書いたことであるが、逃げてはいけない。
 将来、新規に就農したいと考えているのであれば、今最も大切なことは、今の仕事に最善を尽くすことである。
 どうして? と思うでしょう。今の仕事と、農業とは全く違うのにと思うでしょう。
 それが人生の綾なのである。
 貴方の今の仕事は何ですか? 
 経営者、営業マン、事務職、運転手・・・どんな仕事であっても同じだ。将来新規に就農したいのであれば、今の仕事を一生懸命にすることである。それが、就農した後、必ず役に立つ。今はまだ、ピンと来ないかもしれない。それは、今貴方が就農したいということばかりが先行しているからだ。そのことばかりに思いの偏っているのは現状からの逃避である。
 焦ってはいけない。貴方の年齢がいくつであろうと関係ない。
 もう一度言います。新規就農者にとって一番大切なことは、今の仕事を一生懸命にすることなのだ。
 私は二十歳の頃、小説家になりたかった。ある小説家に手紙を書き、「小説家になるにはどうすればよいのでしょう」と訊ねたことがあった。その答えは「今、貴方がやっていることを一生懸命にやることです」ということであった。私はがっかりした。もっと具体的なことを聞きたかった。
 しかし今、私も同じことを伝えられるようになった。それは、その当時の作家が教えてくれた意味が判るようになったからだ。
 
 貴方が新規に就農したいと本気で考えているのであれば、今の貴方の仕事に最善を尽くすことである。
 今の仕事が、就農した将来必ず役に立ちます。
 
更新日時:
2007.08.04
新規就農のための具体的方法4『農的生活と農業』
「農的生活」と「農業」との違いが判るでしょうか?
 私のところに相談に来られる方に、これを混同している人がいる。
 煩わしい人間社会から離れ、自然の中で土と戯れ、四季それぞれの作物を作り、自然のリズムで、自給自足に近い暮らしがしてみたい・・・これが「農的生活」である。
 では「農業」とは何か?
 農業とは、農で生業(なりわい)を立てていくことである。畑で生産した作物を商品として販売し、その収益によって自らの生計を立てていくことである。これは経営であり、商売である。
 これを混同してはいけない。
 新規就農者には特に、これを混同している人が多い。私がそんな人に尋ねるのは、「貴方はどちらがやりたいのですか?」ということである。私がお教えできるのは「農業」であり、「農的生活」ではありません、と言う。
 
 「農的生活」は、生活費さえあれば簡単にできる。いわば趣味の世界である。
 一方、「農業」は経営である。商売であるから、儲けなければならない。儲からないのであればやらない方がましなのだ。
 新規就農希望者に、「経営」とか「商売」とか「ビジネス」という単語を使うと拒否反応を示す人が多い。実は私もそうであった。だからその心情は理解できる。
 しかし、実際に就農してみて、「農的生活」の考えでは生きていけないことが判った。だから今の私は「農業者」であり、「経営者」であることに、いささかの後ろめたさも感じない。そうしないと、私の夢が実現できないからである。
 この違いを真に理解できていない人には何をいっても通じない。それは、教える作業のひとつひとつが判らないからだ。
 私は「農的生活」を否定する者ではない。私自身が選択していないだけのことである。
 金さえあれば「農的生活」は簡単にできる。
 一方、「農業」は金がなくても始められる。
 ただし、信念と努力と才能が必要である。
 
更新日時:
2007.08.04
新規就農のための具体的方法5『早寝早起き体質になろう』
農業者たる者、朝は4時に起きなければならない。いや、4時でなければならない訳ではないが、まあそのくらいの気持ちで日々の仕事に対しなければならない。
 
 朝が弱くて、と芸術家を気取り、半分自慢げに言う人がいる。こういう人は農業には向かない。
 また、体質的に朝が起きられないという人もいる。低血圧だからと。私は低血圧ではないから本当に起きられないのかどうかよく判らないが、低血圧を自分が起きられない言い訳にしている感じを受けることがある。
 朝起きられるか起きられないかは気合いの問題だと私は思っている。今日、何があってもやらなければならないことがある日に寝坊するだろうか? 毎日、今日何があってもやらなければならないという生活をすればいいのだ。
 起きられないというのは、今日の貴方に、一日を最大限有効に使って為すべきことがないからである。
 早起きは気持ちが良い。頭が冴えていて新しい発想ができるし、気力がみなぎっている。朝日を浴びることで体内時計がリセットされるし、午前中が長いので一日を有効に使える。早起きは良いことが多い。
 特に夏場は、10時頃には暑くなる。だから百姓は夜明け前から働くのである。そうしてゆっくりと昼寝をする。
 これが自然のリズムに沿った生活である。百姓は自然と共に生きなければならないのだ。
 
 貴方がまだ夜更かし体質であるなら、早速今夜から早寝早起き生活に改善しよう。就農してから早起きする、などと言っていてはいけない。サラリーマンの時からこの癖を付けておくべきである。
 遅くまでこんなHPを見ている場合ではない。
 
更新日時:
2007.08.04
新規就農のための具体的方法6『得意技を持とう』
貴方の今の仕事は何ですか? 趣味はどんなことがありますか?
 これから農業をしていくにおいて、農業分野で貴方の得意技を発揮していかなければなりません。
 新規に農業をするには、その個人の得意技が是非必要である。それがないと、既存の農業者と勝負ができない。何故なら、既存の農業者はもう何年(人によっては何十年)も農業一筋でやってこられているのだ。そういう人と同じ土俵で勝負をしていかなければならない。
 例えば私が出荷している町の産直場の場合、何十年選手と新規就農者の商品が同じコーナーに並べられる。
 消費者の中に、
「まあこの方はまだ新規だから私が買って応援してあげよう」
 と言って買って下さる人はいない。品の善し悪しと価格だけで選ばれるのだ。当然のことである。
 では何十年選手が150円の値段を付けていたとしよう。私はまだそこまでの品質に至っていないから70円でいいや、と毎日半額セールを開いていては自分が喰ってはいけない。
 そこで、頭を使わなくてはならない。貴方が今まで培ってきた得意技を出すのだ。
 営業をしてきた人なら、どういう売り方、見せ方、提案の仕方をすればよいかを知っているはずだ。
 パソコンの得意な人なら消費者に提案できるシールを作り商品に貼ることは簡単なことである。
 企画や文章が得意なら商品の中に栽培情報や自分の思いを記すことだってできる。
 カメラが得意ならHPで栽培現場を再現すればいいし、喋りの得意な人なら、店頭に立って消費者に売り込めばいい。
 経理をしてきた人なら、他の人がいくらで出し、いくら売れ、この時期に何が出ていて何が売れているかのデータを分析することだってできる。
 つまり、得意技さえ持っていれば何だって応用が利くのだ。それが既存農業者に勝てる部分である。逆に言えば、それがないと同じ土俵では勝負にならない。
 売り場に自分の商品が並んでいることを想像してみて、自分なら何ができるだろうかと真剣に考えてみればいい。
 そのためには今、貴方の得意技に更なる磨きを掛けておかねばならない。
 
更新日時:
2007.08.04
新規就農のための具体的方法7『パソコンを使いこなそう』
上記の「得意技を持とう」にも関係するし、12番の「パソコンとトラクタ」にも書いたが、私が就農して最も役に立っているのはパソコンである。これなくして私の農業は立ち行かないのである。
 
 これを見ている人は全てパソコンを使える人であるからくどくど説明しないが、その恩恵は計り知れない。
 しかし、私のところに相談に来る人の中には触ったこともないという人がよくいる。これは大きな損失であると私は思う。パソコンを使いこなせるのと使えないのとでは、農業の能率がかなり違ってくる。
 貴方が今サラリーマンで、会社でパソコンを使える環境にあるのであれば、是非マスターしておくべきである。少しくらいなら使える、という人であるなら金と時間のある今、自腹を切ってパソコン教室に行くべきだ。就農してからゆっくりと、などと考えていては遅い。すぐに始めることである。そしてまだ自分のパソコンを持っていないという人は、サラリーマンである今のうちに買っておこう。就農してからは想像以上の経費が掛かるから、なかなか農業以外に回せない。今のうちに是非買っておくことをお勧めする。
 何故これほどパソコンにこだわるのか。
 最大のメリットは効率化である。
 一人で農業をすることを想定して話をするが、いかに日々の作業を効率化していくかということは最も深刻な問題である。理解ある妻と一緒にするという人ならそれでいい。楽しく手を取り合って農業すればよろしい。私は独りで農業を始めたし、未だに妻は農業者ではない。そうなると嫌でも効率化を追求していかざるを得ないのだ。
 
 例を挙げよう。私が出品している産直場では、定番品以外は品目を記さないといけないことになっている。自分のバーコードの隅に、「ヤーコン」とか「アシタバ」とか、ひとつひとつに書かなくてはならないのだ。新規就農者の場合、人と違った作物を作る機会が多いから、この記入が結構手間なのである。毎日10袋程度なら手で記入できる。50袋ならどうだろう。100袋なら一枚一枚手書きできるだろうか。毎日のことである。
 私はパソコンでシール印刷をし、それを張り付けている。手で書くより数倍早いし、綺麗で見た目も良い。こんな知恵を持たない爺さん婆さんはひとつづつ手書きをしている。人ごとながら大変な作業だと思う。
 家に帰ってからするのだろうが、貴方が独り暮らしで、疲れて帰ってきた後夕食を作り、風呂に入り、酒を飲み、勉強をし、さらにそれを記入する時間が取れるだろうか。
 私にはできなかった。だからパソコンでシールを作り、どんどん張り付ける方法を取った。お陰で随分と楽になった。パソコンは様々な農業シーンで活躍してくれる重要なツールである。
 トラクタ買うより、まずパソコンを買おう。
更新日時:
2007.08.04
新規就農のための具体的方法8『プラス思考で行こう』
これはどんな仕事に就いていてもそうだが、物事を明るく、前向きにとらえることはたいへん重要な生きる要件である。ソフトバンクホークスの王監督も、選手にそう指導していた。
 どんな仕事にも失敗は付き物である。同じ失敗をしたとしても、それをグチグチと思い悩み、あの時こうすれば良かったと後悔の日々を送り、挙げ句の果てはあいつのせいでこうなったのだと、失敗を人のせいにする。
 一方では、失敗の原因をよく考え、「よし次はこうしよう」と新たな方法を模索し、今度の失敗は自分への試練である、次はきっと巧くやるぞと意欲を燃やし、失敗をバネにして更に大きな仕事に取り組んで行く。
 この考え方の違いには将来、何倍にもなるほど大きな差が出てくる。
 かつての私の部下にも、物事を悪い方へ悪い方へと考える癖のある人がいた。いつも愚痴ばかりを言っていた。巧く仕事の運ばないことをすぐに人のせいにしていた。まだ起きてもいないことを心配し、そうなったらどうしようと思い悩み、不機嫌になっていた。人の良いところを見ず、悪いところばかりを見、相手がこうしてくれないから自分はできなかったのだと人のせいにして、常に不満を口にしていた。
 そんな性格では、どんな場面、どんな状況になっても、心配と不満だけしか出てこなくなる。そんな人間といても暗いばかりでちっとも面白くないから、人も付いてこなくなる。友達もできない。そうなると益々、自分が苦しいのは人が判ってくれないからだ、あいつが悪い、会社が悪い、上司が悪い、社長が悪い、政府が悪い、総理大臣が悪いとなり、巧くいかなければ不満、偶然にでも巧くいけばいったで次が心配で心配でしょうがない。つまりどう転んでも心配と不満としか遭遇しないのだ。
 経営者になれば最悪の事態を想定しておくことも必要である。上記のことと、これとは同じではない。
 「全ての責任は自分にある」ということを肝に銘じておけば、どんな状況になっても人のせいにしないし、社会への不満も出ては来ないし、逃げもしない。
 もう一度言うが、「全ての責任は自分にある」のだ。このことが心底判っていない人は、いざとなった時逃げようとする。
 誰にでも逆境はある。それをどう乗り越えるかで自分の将来は決まる。逆境になればなるほど燃え上がる意気込みを持てるよう、常にプラス思考でいくことだ。
 自分は悲観的だと思う人は、意識をして前向きに考えるよう今から努力しておくことだ。ひとりで農業をするようになったとき、いつまでも失敗を悩んでいてもしょうがない。素早く頭を切り換え、次の戦略を立てられる癖をつけておくことだ。そんなことができるのか、と思うかも知れないが、そんなことはできるのである。
 性格は変えられる。意気込みと努力と習慣によって、どのようにでもなれる。
 
更新日時:
2007.08.04
新規就農のための具体的方法9『記帳の癖をつけておこう』
貴方は昨日の夕食に何を食べましたか? すき焼きですか。それは羨ましい。では一昨日の夕食は何でしたか? その前の夕食はどうでしたか。
 昨日の仕事は何をしましたか? 一昨日は何でしたか? その前はどうでしたか・・・
 躊躇なくすぐに言える人はの項目を読まなくて結構です。素晴らしい記憶力の人です。
 我々凡人はなかなかそうはいかない。人間の記憶力など、たかが知れているのである。
 だから私は記録を付けている。日々の農作業を毎日書き込んでいる。私の記憶力は良くないが、記録力は良いのである。就農以来、毎日作業日誌を書いているから、去年の今日何をしたかはすぐに判る。一昨年の今日も判る。就農以来全ての日に、どんな作業をしたかは調べればすぐに判るのである。
 去年のネギの播種日が結果的に遅かったと思えば今年は数日早くできるし、アスパラの立茎開始日が適切であったかどうか、反省を込めて振り返ることができるのである。
 また試行錯誤で取り組む新作物に対し、その栽培方法がどのような結果を示したかを細かく記帳してあるから、翌年の栽培方法を比較検討できるのである。
 ボカシ肥料も毎回自作するが、今回は何をどの程度混ぜ合わせたかを全て記帳してあるから、結果を見ながら調整していくことも可能である、という具合だ。
 私のところに来ている研修生には、何度も記帳をせよと言ってある。毎日の作業はその時には覚えている気がしていても、いざ自分でやろうと思った時にはそう簡単に思い返せるものでなはい。
 私の記帳の方法はサラリーマン時代に自分で編み出したものだ。ノートはA6版の横書き。このサイズはポケットにも入れられ、一番使いやすい。これに専用のペン(今は4色のボールペン)を挟んでいる。
 使うのは1日1ページ。その日に記載項目が少なく下の方が空いていたとしても、翌日は次のページを使う。調べたい日はすぐに判る仕組みだ。
 これはその習慣さえつけておれば何も難しいことではない。今からその習慣を付けておこう。
 就農すれば、サラリーマン時代以上に記帳の習慣は大切である。
更新日時:
2007.08.04
新規就農のための具体的方法10『経営感覚を身につけよう』
農園には色々な人が訊ねて来てくれる。ある日、農業資材の営業マンが来られた。通常は農業専門店から通信販売で買っているのだが、何か良い物があればと話を聞いてみた。
 私が新規就農者だと言えば彼は身を乗り出すように興味を示し、「実は私も新規に就農したくてこの会社に入ったんです」と言った。
 彼は以前、全く異業種の営業をしていたが、将来農業をしたくて少しでも農業に関係のある会社へ転職したのだと言う。年齢を尋ねると50代で、独身だという。どうしてすぐに就農という道を選ばなかったのかと尋ねた。彼は、まだ知識もなく、いきなり就農となると不安があったと言った。
 私は、失礼ながら年齢も私より上だし、家族を養う必要もないのであればすぐに就農したほうがよいのではないか、というような意味の返答をした。彼はそうですねえ、と言って頷いていた。
 その後2度ほど彼はやって来たが、それきり顔を見せなくなった。彼は思い通り就農することができただろうか。多分、未だにサラリーマンをやっているだろうと、私には思える。何故か? サラリーマンと経営者とは決定的に違うのだということが、彼には判っていなかったからだ。
 彼の選んだ道は農業者へ一歩近づいた訳ではなく、たんにサラリーマンが転職しただけのことであったのだ。
 前置きが長くなった。貴方が今サラリーマンであるなら、努力して経営者の感覚(考え方、人の使い方、利益、経費など)を身に付けていくべきである。
 営業マンは物を売りさえすれば良いと思うのはサラリーマンの感覚である。それを作るためにいくらの原価が掛かっていて、営業経費がいくらで、利益がいくらであったのか、そこまで考えて営業をする必要がある。
 自社の商品を、自分の作った農産物だと考えて売ってみればよい。売れればそれでよいのか、結果的に損をしていなかったか、顧客に本当の満足感を与えられたか・・・自分の胸に手を当てればすぐに判ることである。
 
 日々の仕事の中で、こうした考え方を常に持っているか否かで、貴方の将来は大きく変わる。今日から社長になったつもりで始めてみよう。
 サラリーマン感覚のままでは農業はできない。
更新日時:
2007.08.04
新規就農のための具体的方法11『作物と農法をきめよう』
さて、今までの精神論的コラムからもう少し現場に近づいた話をしていこう。
 農業とsd言っても、その内容は実に幅が広い。その中でどんな農業をしていこうとしているのかを明確にしていくことは、新規就農するに於いてたいへん重要なことである。
 ざっと大別しても、稲作、野菜、花、果樹、畜産、きのこ類などに分かれるし、またそれぞれが細分化される。私は野菜であるが、その中にも葉物、果菜、根菜などがある。「農業」とひとくくりにされてはいるが、内容は全く別物なのである。
 トマトとかイチゴとか、ひとつに決めてしまう必要はないが、ある程度の絞り込みをしておかないと、畑を借りる時に決めようがないし、他人がアドバイスのしようもないのである。
 私の例で言う。
 私もさんざん迷った挙げ句、主要作物をアスパラと決めた。アスパラを作るためにはビニールハウスが必要である。ハウスで栽培をしようと思えば必ず水が要る。だから初めから、「灌水設備がありハウスを建てられる畑」という条件で探していった。「ハウスを建てられる畑」とは、地主がそれを了解してくれ、尚かつ長期間(10年以上)に渡って借用できるという意味である。
 それが逆になって、畑を借りてから「ではアスパラをしよう」と決め、ハウスを建てるために地下水をボーリングしていては初期投資に100万も200万もかかってしまう。その上ハウスを建てた後に、地主から3年で返してくれなどと言われた日にはたいへんな損失である。
 また、就農するに当たり、農業改良普及センターや役場や農業委員会に行く機会が多くなるが、「何をやりたいのか」は必ず聞かれることである。その時に曖昧なことしか答えられぬようでは話が進まないし、相手にもしてもらえなくなってしまう。
 
 私のところへ相談に来られる人の中に、これを決めていない人が多い。ただ漠然と「農業をしたい」というのは、まだ「農的生活への憧れ」の域を脱していない証拠である。
 有機農業を目指す人に多いのは「露地栽培で多品種少量を宅配で」という場合であるが、それであってさえ年間20種類くらいの作物名を挙げられるようにはしておくべきだ。そのためには実際に作ってみることが一番良い。可能であるならばサラリーマン時代に家庭菜園を借りて、何でもかんでも作ってみることだ。30種類も40種類も自分で作ってみると、自分に合う作物が自然と判ってくる。
 もうひとつ決めておかねばならないことは農法である。
 農薬や化学肥料や除草剤を使う一般的な慣行農法であるのか、農薬を使わず有機質肥料で育てる有機農法なのか、さらにそれらも使わない自然農法でいくのか。
 これもよくある話であるが、「できれば農薬も化学肥料も使わずにやりたい」という場合である。こういう人に私は「できれば使わないというのであれば必ず使ってしまいます。そんな考えで有機農法は無理です」と答える。
 慣行農法の人でも「できれば使いたくない」のである。「例え虫や病気で全滅しても絶対に使わない」という信念がないと有機農法や自然農法はできるものではない。その覚悟がありますか、と私は問うのである。
 どちらにしても、就農前にじっくりと考えておくべきことである。現状逃避やうわついた気持ちのままではこの2点を決められない。じっくりと腰を据え、自分の気持ちに正直になり、そうして信念を持って決めていこう。
 信念のない人に、成功はない。
 
更新日時:
2007.08.04
新規就農のための具体的方法12『農地を借りる方法』
新規就農者にとって、最初に立ちはだかる大きな壁は農地の借用である。とにもかくにも、これがないとどうしようもないのであるから、大きな問題である。
 
 結論から言えば、農家と交渉して自分で借りるしかない。冷たい言い方だと思うかもしれないが、現実はそういうことなのだ。
 農業改良普及センターに新規就農窓口があるからそこに行って相談すればどうだろうか、あるいは町役場や市役所に農業振興課があるからそこで頼んで見ればどうだろう・・・まず行くだけ無駄である。いや、行ってみること構わないが、期待をしないようにしておくことだ。多分がっかりするから。
 
 そんなことはないだろう、現に普及センターには「新規就農相談窓口」というものがありそこに担当者がいるじゃないか、と思うかも知れないが、まあ行ってみれば判る。いかに農業で喰っていくことがたいへんであり、そんな馬鹿なことを考えずおとなしくサラリーマンをしていなさいと説得されるだけである。これは私の経験であるから全国の担当者がそうであるとは言わないが、まあ大きな違いはないだろうと私は思っている。
 
 しかし、農地がないとどうにもならない。
 そこで貴方がすべきことは農家と仲良くなることである。どうして仲良くなればよいかはまた改めて書くとして、仲良くなった農家の所に何度も足を運び、話を聞き、空いている畑がないかと相談してみよう。田圃は水利権などの問題があり最初から借りることは難しい。まず畑から借りる方が良い。
 
 農家を訪れる時には手ぶらで行ってはいけない。酒やお菓子などちょっとした手土産は必要である。相手の作業の手を止めさせる訳だからそれなりの礼儀をつくさなければならない。
 相手が恐縮するほどの物は必要ない。「すまないねえ」と言って気軽に受け取れる程度の物で充分だ。何度も行けるようになったら缶ジュースなどでも構わない。
 
 そのうちに、どこの爺さんはもう引退したとか、どこどこの畑はもう何年も放ってあるなどと、農家の人はよく知っているから、そんな情報を得たら見せてもらい、仲介を頼んでみればいい。直接地主に会うより、仲介をしてもらった方が話はスムーズに進むだろう。
 地主に会うときにも勿論、手土産が必要である。仮に断られたとしても、また他の人を紹介してもらえる可能性もあるからだ。
 
 農地を借りるということは大変なことなのである。信用してもらうことが最も大切なことだ。焦ってはいけない。焦って借りようとすると、何か魂胆があるんじゃないかと疑られてしまう。時間を掛け、とにかく自分は一生を掛けてこの地で農業をしていきたいということを理解してもらうことである。
 
 このテーマは重要であるから次回続きを書く。
更新日時:
2007.08.07
新規就農のための具体的方法13『続 農地を借りる方法』
いったん農地を借り、そこに就農し、第3条申請の認可を受け、農業者としての実績を積み、地域の農業者に仲間として受け入れられるようになってしまえば、新たな農地を借りることはさほど難しいことではない。問題はそこに至るまでの最初の農地である。
 可能であるならば、就農したいと思う町に移住し、そこで時間を掛けて探すのが最も確実な方法である。ただ都会でサラリーマンをしているとなるとそれも難しいだろう。
 そうなると月に何度かでも通って行って、信用を得ることから始めなければならない。まずは自分が就農したいと思う町(村)を決めることだ。農地を貸してくれるならどこでも良いなどと言っても、それは雲をつかむような話なのである。そんな計画性の無いことでは就農はできない。
 
 就農したいと思う町を決めたなら、そこの役場の農業関連の部署に行き、事情を話し、週末だけでも受け入れてくれる研修先農家を紹介してもらう方法がある。只働きをするのであるから、割と受け入れ先は多いと想像できる。このときも、自分のやりたい作物を決めておく必要はある。
 そうしてそこで週末研修を受けながら、この地で就農したいと思うからどこかに空いている畑を紹介してもらえないかと話しておけば良い。人を介し、更に人を経たとしても、1反程の畑を借りることはできるだろう。
 
 最初に借りた畑を、自分の物のように慈しみ、大切にし、十分手入れをして地主の信用を得ておくことだ。そうすると次の畑も近いうちに見つかってくるだろう。
 どの時点で会社を辞め、その地に移住するのが良いか・・・それはそれぞれの事情があるだろうから一概に言えないが、いったん畑を借りたなら、できる限り早いほうが良いだろう。
 心配ばかりしていてもしょうがない。何事も第一歩を踏み出さないと先には進めないのだ。勇気を出し、その一歩を踏み出してみることだ。諦めてはいけない。そして焦ってもいけない。
 
 因みに、我が「永香自然農園」でも研修生を受け入れている。福岡県福津市で就農したいと思う人がいるなら、研修生として受け入れますから、遠慮なく相談して下さい
更新日時:
2007.08.23
新規就農のための具体的方法14『新規なら是非、有機農法で』い
 どんな農法を選ぶかが大事とは「その11」の随想で書いたが、新規就農の人には是非有機農法をお勧めしたい。
 何故なら、有機農法で農の生業をなすには少なくとも3年は掛かるからである。
「なに?では3年は喰えないのか?」
 その通り。3年は喰えない。その覚悟は初めから必要である。
 
 では何故勧めるのか? 
 ある時期が来ればどんどん良くなっていくからである。農業収入は右肩上がりに良くなっていく。これが有機農業の面白さなのだ。
 
 新規就農者の借りられる畑は、交通の便が悪いとか、トラクタを入れにくいとか、日当たりが悪いとか、水はけが悪いとか、とにかく条件の悪い場所である。そこを半ば開拓しつつ、自分の畑にしていかなければならない。そんなところで化学肥料を使っていても数年は良いだろうが、後々必ず苦労をする。収穫は右肩下がりに、必ずなってくる。
 
 慣行農法でやっている農家の息子が有機農業を始めることは難しい。頭の固い親父が必ず反対する。その上、毎年何百万円かの収穫を得ていた畑の収量が、3年間は半減する。そんなことを親父が許すはずがない。息子も、1反50万円上がっていた畑が、有機農業に転換して3年間は20万円しか上がらなかったとしたら、嫌になって止めてしまうだろう。
 
 新規就農者はそんな計算ができない。だから有機農業をやれるのである。新規就農者はゼロからの出発である。これ以上下がることは無いのである。だからこそ有機農業へ挑戦できるのである。
 有機農業は新規就農したその時でないとできない。一度慣行農法で作ってしまっては、翌年の目標がそこに置かれてしまう。そうなるとより多くの収益を求めるようになる。人間は一度甘い汁を吸ってしまうと、なかなか後退できないのである。
 
 知り合いの新規就農者に慣行栽培でアスパラを作っている人がいる。有機農業に興味があり、その研究もしているのに自分は慣行栽培をしている。
「どうして無農薬でやらないのか」
 と問うと、
「今はまだ喰っていくのにたいへんだから。いずれ余裕ができたら無農薬栽培に転換する」
 と言っていた。私はそれ以上追求をしなかったが、まず彼は無農薬に転換できないだろう。無農薬でアスパラを作るのは至難の業であることを彼は良く知っているはずだ。夏場に病気が出て、収量は激減する。殺菌剤の効果を体験した人は、目の前の病気にその農薬を使わずにいられる訳がない。だからこそ、何もない状態、ゼロの状態から農薬も化学肥料も除草剤も使わない農法を実践していかなければならないのである。
 
 いったん甘い汁を吸った者に、それを止めろと言っても無理な話なのだ。ゼロからの出発なら、何も怖れる物はない。
 
更新日時:
2007.08.23
新規就農のための具体的方法15『農地法第3条の申請方法』
地域の認める「農家」となるためには、農地法第3条の申請を行い、認可されなければならない。
 
 これがいわゆる「第3条申請」で、農地確保の次に来る難関である。何が難関なのかと言うと、5反の農地を確保しておかないとこの申請ができないからである。
 
 以下、その方法に付いて説明するが、これは私自身が経験したことで、あくまで我が町での例である。地域によって多少の違いがあるであろうから、申請に当たってはまず貴方の地域の方法を確認されたい。
 
 農地法第3条の(権利移動)の項目に、
・自ら耕作すること。
・50a以上であること。
・常時従事すること。
・効率的に利用し耕作することの認められること。
 などの条文があり、これらに付いて農業委員会の認可が必要である、とされている。
 
 新規就農者は、この壁を乗り越えなければならない。今後貴方が、認定就農者となり、制度資金を借りるようになり、将来的には認定農業者になっていくためには、この第3条認定がないと進まないのだ。この認可を受けなければいくら耕作しようが、それはヤミ農家であり、町の認める農業者とはなれないのである。さらに、我が町の産直場に出荷しようと思えば、この認定がないと出荷資格を得られないのであるから、重要な問題である。
 
 さて、この申請をするためにはまず、5反(町によってはそれより少ない場合もある)の畑を借りておく必要がある。畑の借り方は先にも書いたが、とりあえず農家と直接交渉をして、いわゆるヤミで借りておく。役場や農業委員会や普及センターは仲介も紹介もしてくれない。
 
 次に役場の農業委員会に行き、「農地法第3条の規定による許可申請書」をもらう。これには「営農計画書」が付いているので、これらを記載し、農業委員会に提出する。農業委員会は毎月1回開かれているから、次回の会議に諮られ、面接を受け、委員会が認可すると役場から許可証が交付され、耕作証明証ももらえるという仕組みである。まあ書いてしまうとこれだけのものなのである。
 
 まずその申請書には貸し主の捺印がいる。そのため地主さんには充分説明をして納得しておいてもらわないと、提出の段階になって判子を押してもらえないということが起こりうる。誰でもそうであるが、自分が良く理解していないものに捺印するには抵抗があるものだ。時間を掛けて充分に説明し、必要があれば役場に同行して主旨を説明してもらう必要もあろう。
 申請書には
・土地の所在地
・面積
・所有者
・耕作者
・契約期間
・賃貸料
・農業従事日数
・畑までの距離
・所有する農機具と自動車
・何故借りたいのかという理由
・何故貸すのかという地主の理由
 などを記入する。これらは地主さんさえ納得して下されば簡単なことばかりである。
 
 問題は営農計画書である。
記入項目は、
・現在の経営状況
・農業従事者と農機具の所有状況
・今後の計画
 などは文章で記載する。
 
 次に概要に付いては
・作目名、生産規模、1反当たりの生産量、総生産量を表に記載する。
 
 作付体系に付いては
・作目名、品種名、面積と、それぞれの播種、生育期間、収穫期などを表に記載する。
 労働配分に付いては
・作目名、品種、総労働時間を月ごとに表に記載する。
 これらを記載し提出する。
 後日面接の通知があるから、農業委員会に行って面接を受ける。私の場合、委員全員が出席していたから20人程いただろうか。その中で、何故自分がこの地で農業をしたいのか、どういう経営をしていきたいのか、それについてどのような方法を取るのかなどを説明しなければならない。そして質問を受け、それに答えなければならない。
 面倒くさいとか、緊張するなどと言っている場合ではない。これをクリアしなければ新規就農できないのである。
 20人の委員を前にこのような説明をするためには、事前に充分考えておく必要がある。相手は農業のプロであるから、記入した数値に矛盾点があるようではそれを突っ込まれる。しどろもどろしていては「大丈夫なのか」と不安がらせるだけである。自信を持って答えなければならない。
 
 先に「作物を決めよう」と書いたが、こういう場面でもしっかりとした計画を持っていないと人を説得することはできない。栽培計画はこの後も何度か必要になってくる。
 必ず綿密な栽培計画を立てておく必要がある。
 
更新日時:
2007.08.07
新規就農のための具体的方法16『新規就農者の特権』
新規就農者は多くの場面で、条件的に不利な場合が多い。
 技術も経験もなく、地域との人的交流もなく、設備も機械もなく、土地も金もない。そんな我々に特権などあるのか、と思うだろうが、ひとつだけある。
 それは自分の好きな場所で就農できるという点である。
 
 これは農家の息子には絶対にできないことなのだ。農家の息子は、先祖代々の土地を守っていかなければならないから、生まれ育った地を離れることはできないのだ。就学や就職で生家を出るということはあろうが、そうでもない限り引っ越しをしたことのない人はたくさんいる。
 
私は兵庫県に生まれ、三田市、東京の武蔵野市、京都の宇治市、兵庫の川西市、福岡市、福間町と転居を繰り返してきた。10年間は毎月新潟に出張していた。しかし、生まれてから一度もその町を出たことのない農家というのは珍しくないのである。
 
 さて、新規就農者はそんな農家に比べるとフットワークが軽い。自分の気に入った土地を求め、そこに暮らしてみて、気に入ればそこで就農するということが可能なのである。これは、土地を探したり、借りたりする面倒臭さはあるものの、大変大きな特権である。
 自分の思い描く農業環境を求め、日本国内だけでなく、海外ででも農業ができるのである。暖地が好きなら南の島に行けば良いし、広い面積で大きな農業がしたければ北海道に行けば良い。その地域にしかできない物を作りたければ、そこに移住すれば良いのだ。そう考えると、実に自由でなのであり、その自由さは全ての農家が羨ましがることであろう。そんな大きな特権があることを、忘れてはならない。
 さらに言えば、辞めたくなれば辞められるという特権もある。地主や地域の人々に礼を失しないようにさえすれば、「農業辞めて旅に出よう」と言うことも可能なのである。
 
 畑がない、家がない、機械がない、設備がないなどと無いことばかりを嘆いていてもしょうがない。自分にある「自由」という特権を生かし、自分の一番気に入った土地で、自分の好きな物を作ることができるという「特権」を生かしてみようではないか。
 
 全ては自分自身の決断にかかっているのである。
 
 
 
更新日時:
2007.08.07
新規就農のための具体的方法17『産直場分析』
作物の換金方法について悩んでいる人は多いと思う。いくら作っても、それが換金できないと暮らしが立っていかない。
 
 市場に持っていく、農協の共選に出す、業務用としてレストランや弁当屋に卸す、消費者に直接届ける、インターネットで通信販売するなど様々な方法がある。
 私が選んだのは地域の産直場での販売である。産直場というのは全国的にも増えていて、多くの消費者に認知されている。今回は私の出荷している産直場についてその内容を分析してみるので、出荷先のひとつとして参考にしていただきたい。
 
 販売しているのは、野菜、果物、花、漬け物、米、味噌、お茶、パン・ケーキ・饅頭などの加工品、卵、鶏肉、弁当などであり、売上高に占める割合では約半分が野菜、約7割がいわゆる農産物である。
 
 売上高は年間約5億5千万円。レジ通過者数は年間延べ40万人で、この近隣にある産直場では集客、売上とも最も大きい規模である。平日で約1200人、土日祝日で約1500人の来客がある。客単価は季節によるが、1100円から1300円、1日平均150万から200万円を売る。
 
 出荷者数は約360人。半数は年間販売額が100万円以下であるが、3割は100万から500万円クラス、1割は500万から1000万円クラスで、1000万円を超える人も数人いる。出荷者は自分で価格を決め、名前と価格の入ったバーコード(1枚1円で作ってくれる)を貼って朝8時までに店頭に並べる。売れ残った物は午後5時に引き取る。販売手数料は1割で、毎月末に締め、翌月振り込まれるという仕組みだ。
 
 自分で価格を決めるというのは良い面が多いが、この産直場の中での価格競争にもなってくる。品物のだぶついている時期や出荷者の多い作物などはどんどん価格が下がってくる。専業農家ばかりでなく、兼業農家や爺ちゃん婆ちゃんの小遣い稼ぎ的な人もいるから、売れ残りを嫌がり、専業農家ではとても太刀打ちできない価格を付けてくる場合もある。
 契約販売は安定している反面、良い物ができなかったらどうしようとか、熱があっても休めないなどという精神的な重圧感が大きい。それに対して産直場での販売は、出来が悪くて1品しかなくても出せるし、休みたければ休んでも構わない(その分売上が減るだけだ)。
 ただ、こういった価格競争とどう戦っていくかという、専業農家であれば常に考えていかなければならない面もある。
 
 
 
更新日時:
2007.08.07
新規就農のための具体的方法18『金が無くても大丈夫』
新規就農したくて農業改良普及センターの「新規就農相談窓口」に行った。
 7年ほど前の話である。対応に出てくれたのは男性と女性の2人の職員であった。渡された紙に住所と氏名を書いた。開口一番に言われたのは
「新規に就農するには1000万円の資金が必要ですよ」
 であった。
 私は当時30代のサラリーマンだった。冷静にその男性職員に問うた。
「30代のサラリーマンで、1000万円の金が自由になる人なんているんですか?」
 職員はただ、1000万円の金と5反の畑がないと新規就農できないと言い張るだけであった。面倒臭い相談に、嫌々付き合っているという態度が見え見えであった。
 
 私はこんな所に相談に行った自分が馬鹿だったと思った。自分自身で何とかしようと決意した。
 考えてみるに、公務員の一番嫌がることは責任を取らされることなのである。役場に行ってようく観察してみると判る。自分に責任がのしかからないよう、そのことばかりを気にして喋っているのが良く判る。相談に行った普及センターの職員も多分そうなのだ。「頑張って下さい」と言ってしまうと、もし就農できなかったときに責任を追及されるのが怖いのだ。だから「1000万円の金と5反の畑」と言い張るのであろうと想像できる。就農が巧くいかなかった時、
「だから1000万円無いと無理だと言ったでしょう」
 と相談内容を聞く前からバリアを張っているのである。まあ、こんな担当者に相談をするだけ、時間の無駄である。
 
 さて、だからといって全く貯金のない状況でも困る。少なくとも2年分の生活費は頑張って貯めておこう。貴方が今、年間300万円の生活をしているならまず200万円の生活にすべきである。そうすれば400万円の資金でとにかくスタートできる。
 ある程度の資金は必要だが、逆にありすぎてもまた就農はできないと思う。
 数千万円もの金があれば雨の日は畑に行きたくなくなる。二日酔いの朝は「今日は出荷しなくていいや」と朝寝を決め込んでしまうだろう。例え1000円でも、今日の売上を作ろうという気にはならないのだ。そうしてそんな癖がついてしまうと、百姓など馬鹿らしくてやっていられない、となってしまう。まあ、4−500万ほどの資金がちょうど良いような気がする。
 
 
 就農当初は、鎌1本、鍬一丁、一輪車1台から金が要る。初年度はそんな細々とした物が必要になってくる。
 ハウスを建てようと思えば、単棟のパイプハウス50メートルで100万円近くかかる。(自分で建てれば材料費だけで済むが、その間他の仕事ができない)。
 ハウスや機械類の購入には制度資金を使えば良い。無利子、無担保、保証人無しで貸してくれる国や県の農業資金がある。借りるための手続きは面倒臭いし時間もかかるが、担保の無い新規就農者の大きな出費にはこれより他に借りる手は無いだろう。
 
 ただこの資金を借りるためには普及センターが窓口になる。いくら最初に嫌なことを言われたからといっても喧嘩して行くにくくなってしまっては元も子もない。注意しておこう。
 
更新日時:
2007.08.07
新規就農のための具体的方法19『アルバイトはするな』
新規に就農しても、最初はなかなか売上ができない。最も大きな要因は作物ができないからである。モノがなければ出荷もできない。当然売り上げもない。これが最大の悩みになる。焦ってみても野菜は急いで大きくなってはくれない。貴方がいくら徹夜で頑張ってみても野菜は知らぬ顔である。
 
 そうなるとついアルバイトをして日銭を稼ぎたくなる。
 しかし私はこの方法には反対である。何故ならアルバイトで稼ぐ方が楽だからだ。
 時給700円で働けば1日5−6000円にでもなる。月に15万円の金が入ってくるのだ。これを野菜を売って稼ぎ出そうと思えば大変なのだ。1本100円の大根(実際にはもっと安いが)を毎日60本引き抜き、家まで運び、洗い、葉を切り、袋に入れ、バーコードを貼り、翌朝産直場に出荷し、それが全て売れ、そんな日が毎日続いたとして、ようやく15万円の売上ができる。経費を引けば手取りは10万円にもならないだろう。それなら鼻くそほじくりながらアルバイトをして15万円稼ぐ方がよほど楽なのだ。
 
 しかしその「楽」をしてしまうと、農業を続けるのが嫌になってくる。みんなそれで辞めていく。苦しくとも歯を食いしばり農業で売上を作る方法を考えるべきだ。
 二十日大根でもほうれん草でも小松菜でもいい、本意でなくとも短期間で収穫できる物を作り、出荷し、売上を作っていく癖をつけておくべきだ。それをすることで農業技術は向上し、生産と販売努力をし、何を作れば良いかが自ずと見えてくる。
 
 スーパーの野菜売り場なら野菜に接しているから何かの役に立つだろう、と考えるのは自分で農業のできない言い訳を作っているだけである。
 今の苦しみを自力で乗り越えない限り、次の苦しみもまたアルバイトに走ってしまう。
 とにかく畑から収入を得るという基本姿勢を忘れてはならない。
 
 とはいえ、来月の家賃も払えない状況ではこの限りではない。
 そんな人はもっと早くに手を打っておくべきなのだ。
更新日時:
2007.08.07
新規就農のための具体的方法20『女性1人でも大丈夫』
女1人で新規に就農したい、という人が増えている。
 農家に嫁ぐという安易な方法をとらず自力で頑張ろうという考えは大いに評価できる。
 26歳の女性が私の所に相談に来たこともあったし、23歳の女性が週末研修に来たり、28歳の女性が短期間の研修に来たりもした。
 知り合いに女性1人で新規就農した人もいるし、若くしてご主人を亡くし一人頑張っている人もいる。
 
 女性1人で農業をするにはリスクもある。例えば重たい物を運べないということだったり、トイレの心配である。
 野菜農家で持たなければならないのは概ね20キロである。コンテナの収穫物であったり、肥料袋であったり、堆肥を運ぶ一輪車であったりする。米を作るなら30キロの袋を運ぶ場合もある。これらは鍛えれば何とかなる。就農前から20キロの袋を担いで運ぶ訓練をしておけば良い。
 トイレの問題は竹藪の中に専用のトイレを作っておけば良いし、初めに畑を借りるときにトイレにできそうな場所のある畑を選ぶのも方法だ。あまり人通りの多い道に面した畑は借りない方が良いだろう。
 機械類は大丈夫だろうかと心配する人もいるが、これは問題ない。慣れれば誰でも使える。実際に婆ちゃんでもエンジン式草刈機を使っているし、管理機を押したりトラクタにも乗っている。 
 
 若い女性の場合は、周囲の好奇の目が気になるかもしれない。「女一人でやれる訳はなかろう」と既存の百姓達から見られるだろう。「早く辞めてうちの息子の嫁に来い」などと露骨なことを言われるかもしれない。
 しかしそんなことを気にしていてはいけない。既存の百姓や男達に負けない強い信念を持って頑張れば助けてくれる人も出てくる。むしろ女性は周囲の手助けを受けやすいこともある。手伝ってくれる人がいれば遠慮なく手伝ってもらいながら我が道を進めば良い。
 
 女性特有の感性で、その地域にない新たな作物を栽培したり、料理法を研究したり、きめ細かな消費者サービスを行ったり、あるいは地域のグリーンコンシューマーと連携してイベントを開催したりと、既存百姓や野暮な男達では想像もつかない発想で周囲を驚かしてやろうと、そのくらいの気概を持って就農すれば良い。 
 
更新日時:
2007.08.07
新規就農のための具体的方法21『嫁さんいなくても大丈夫』
新規就農のガイドブックや普及センターのアドバイスには必ず「配偶者の理解と協力を得ましょう」と書いてある。理解を得る必要はあるが、農作業は協力してもらわなくても1人でできる。農業が1人ではできないように書いてあるのは、実に不満である。
 
 私は就農当初から農作業は1人であった。たいへんではあるが、1町歩くらいは1人でもできる。夫婦が力を合わせないとできない、というのは錯覚である。もしそうであるなら、独身者は農業ができないということになる。そんなことはないのだ。
 
 例えば50メートルの畝に植え付けをしようとしてメジャーを張るとしよう。片方を固定し、50メートル歩きもう片方を固定する。更に50メートルを戻りようやく植え付け作業に掛かれる。微調整があればもう一往復しなければならない。
 まあこの程度のことはしょっちゅうある。手間ではあるが時間を掛けてそれをすればよいだけの話なのだ。
 2人いれば作業効率の格段に上がることは事実である。ただ、それが妻(夫)でなくてはならない必要は全くない。パートを雇えばよい。パートの方が一生懸命にやってくれる場合もある。また暇な時期には一人でやり、忙しい時期にだけ来てもらうこともできる。
 
 既存の百姓を見てみると、ほとんど夫婦でやっている。私はその姿を見ていて羨ましいと思ったことはない。むしろ喧嘩をした翌朝はどうしているのだろうと変な詮索をしてしまう。
 また多くの場合、主導権は地主である夫が持っているから、妻はそれに従っていればよいが、新規就農の場合にはどちらも素人なのだ。やり方に意見の違いがあるときには却ってややこしいという場面も想像できる。
 更に、最も困ることは妻が病気になったり亡くなったりしたときである。今まで只働きしてくれていた妻がいなくなったらたちまち作業ができなくなる。その時に初めてパートを雇うと、賃金が必要になる。今まで人件費など考えたこともなかった経営に、急に出費が増え、利益がなくなってしまうということにもなりかねないのだ。
 
 私が将来目指している方法は、妻を雇用することである。現在妻は会社員をしているが、今と同程度の給料が払えるようになったら私が雇用しようと考えている。まずはそこまでの経営を安定させることが先決である。
 
 独身だから新規に就農できないと考えている人がいるとすれば、1人で就農する勇気がないだけの話なのだ。
 
更新日時:
2007.08.07
新規就農のための具体的方法22『週休半日は覚悟しよう』
私が就農してから、2年間はほとんど休まなかった。3年目くらいから、これでは体が持たないと思い、産直場の店休日に合わせ火曜日の午前中を休むようになった。これは今でもそうである。忙しくなった今はむしろ、午前中も畑に出るようになったから、またほとんど休みのない毎日である。全然畑に行かない日は、正月2日間だけだろう。
 
 ほとんどのサラリーマンは土日、祝祭日が休みの上、盆と正月の休みがあり、年間120日程休んでいる。約3分の1は休みである。年間でならせば3日に1日休んでいる訳だ。正に「サラリーマンは気楽な稼業ときたもんだ」である。
 それと同じ感覚で就農していてはいつまでたっても喰えない。休みなしで働けとは言わないが、せいぜい週休半日程度は覚悟しておかなければならない。
 それは困る、どうしても週休2日でないと嫌だという人は就農を諦めた方が良い。そんな甘い考えでは農業経営は無理である。
 
 サラリーマンのように会社に使われて仕事をしているのではないから農業は面白い。自分で考え、自分で計画し、自分が実行していく毎日である。サラリーマンよりずっと忙しい。農業はエンドレスワークなのである。
 しかし心配しなくとも、毎日わくわくしながら仕事ができるから休みなどなくても平気になる。早く畑に行きたくてしょうがない、という気持ちになってくるものだ。これこそが農業の醍醐味なのである。
 
 相手が人なら、頼み込んだり値引きをすれば待ってもくれる。しかし自然はそうはいかない。季節が来れば種を播かなければ正常な生育はしてくれない。その種を播くためには畑の準備を整えておかなければならない。つまり、常に逆算して先手先手を打っておかなければならない。
 
 今日は日曜日だから、祭日だからといって休んでいる訳にはいかないのである。
 植物には日曜も祭日も関係ないのだから。
 
更新日時:
2007.08.07
新規就農のための具体的方法23『栽培計画を立てよう』
どんな仕事をするにせよ、計画を立てるということは大切なことである。サラリーマンである貴方も、常に販売計画や生産計画を立てていることであろう。
 
 農業にも当然、栽培計画が必要である。それは年間の売上を左右する重大な計画になるから、しっかりとしたものを作っておかなければならない。
 サラリーマン時代は上司に言われ渋々作っていたかもしれないが、農業者となればそういう訳には行かない。会社のための計画ではない、自分のための計画なのである。
 
 何故、農業でこの栽培計画が特に大切なのか? 
 するべき仕事の時期を逸すれば1年間を棒に振るからである。
 年に何度も種の蒔ける葉物野菜もあるが、私のように年1作の根物を中心に作っている者にとって、播種時期を逸すればその年はお終いになる。播種をするためには周囲の草刈りをし、ボカシ肥料を作っておき、それを元肥として畑に撒き、トラクタで畝を立て、そうしてようやく播種となる。思い付いて明日種を播くという訳にはいかないのだ。
 
 またアスパラの立茎のように、少しでも気を抜いて立茎時期を間違うと、もうその株自体をダメにしてしまうということにもなりかねない。だから年間の栽培計画をしっかりと立てておかなければ、作物が多くなるほど時期を逸すという失敗が多くなるのである。
 
 私は色々と考え、自分なりの年間栽培計画表を作った。エクセルを使い、縦軸に作物を、横軸に月を入れてある。月は上中下旬に3分割してある。
 例えば4月上旬にはこの作物に何をしなければならないか、あの作物にはどんな作業が必要かが一目で判るようになっている。この表を畑の事務所と自宅においていて、常にチェックしている。その年に気が付けば赤ペンで付け加え、来年に同じ失敗をしないよう気を付けている。
 
 この計画書をしっかりと作っておかなければ、ぱたりと何も出荷できる物がない、という状況になる。常に出荷作物を切らさぬよう、これが終わると次にあれが出せるというようにしておかなければならない。
 まあ初年度から巧くはいかないが、年々慣れてきて、隙間なく出荷できるようになってくる。そうなるためにも初年度から栽培計画を立てる癖をつけておこう。
 
 
 栽培においてはこの計画が最も大切だと言える。
 
更新日時:
2007.08.07
新規就農のための具体的方法24『売り物を作る難しさ』
野菜を作ることはさほど難しいことではない。種を播き、成長するのを待てばとにかく何か形はできる。無肥料だろうと無農薬だろうと、何とかなる。
 難しいのは「売り物を作る」ということだ。
 
 これは実に難しい。何年も経験を持つプロが、化学肥料と農薬を使って作っても難しいものを、素人が、しかも無農薬で作ろうというのであるから、想像すれば判ってもらえることであろう。
 その同じ野菜が、同じ売り場に並ぶということは、プロ野球選手と少年野球選手が試合をするようなものである。産直場に来るお客さんに、頑張っている新規就農者だから助けてやろうと買ってくれる人は1人もいないのである。農業経験40年のプロと同じ土俵で、同じ条件で勝負をしていかなければならない。
 
 家庭菜園で野菜を作るのは楽しい。虫食いだろうが、いびつだろうが、自分で丹誠込めて作った物は美味しい。ただそれをお金を出して買ってくれる人がいるかどうかである。
 どんなに貴方が一生懸命に作ろうが、一切農薬も除草剤も使わず作ろうが、虫喰いだらけのキャベツではたとえ10円でも買ってはくれない。ここのところを良く理解しておかないとストレスばかり溜まることになる。
 
 
 「農業」をするということは「商品」を作るということである。家庭菜園で作った物は商品ではない。「自己満足の趣味の世界」である。
 タダでご近所に分けてあげるから喜んでもらえるが、1個50円ですと言えば「結構です」と断られる。
 産直場に出す価格はせいぜい100円から200円程度であるが、自分の作った野菜をつくづくと眺め、さて100円の価値があるだろうかと考えてみればよい。自分なら全然知らない人の作ったこの野菜を100円出して買うだろうかと、客観的に眺めてみることだ。
 
 家庭菜園の延長と考えていては、売り物を作る「農業」はできない。
 
更新日時:
2007.08.07
新規就農のための具体的方法25『露地栽培はますます難しくなる』
新規に就農する場合、当初は露地栽培でということが多い。初期投資を押さえるためには仕方のないことであるし、初めからハウスを借りることも難しい。
 しかし、ある程度の時期が来ればハウスでの栽培も取り入れた経営を考えていった方が良い。それの方が経営は安定する。
 
 今後露地栽培はますます難しくなる。それは温暖化などにより天候が不安定になるからだ。
 昨年も一昨年も、ほとんどひと月間雨の降らないことがあった。定植したてのヤーコンが枯れたり、成長すべき時期のネギが伸びなかったりした。たまりかねて20リットルの水缶3本を畑に運び、毎日夕方如雨露で散水したが、焼け石に水であり、却って土の表面を堅くしたり、作物を弱らせてしまったことがあった。
 長年の農業者も「こんなことはなかった」と驚く気象が、毎年のように起きてきているのである。経験未熟な私でさえそう思う。降らなければひと月降らず、降れば洪水というパターンである。
 そのため土中の腐植を増やし、保湿効果を高めるために大量の有機物を投入してはいるが、その効果の出るにはまだ何年も掛かるだろう。
 
 50メートルの単棟1つでもよい。ハウスがあればいつでも灌水できるし、育苗することだってできる。露地と同じ物を作り、時期をずらして出荷することもできる。
 露地の旬が自然、ハウスは不自然だと頑なに拒んでいては経営安定までに何年も掛かってしまう。体力が持たず離農してしまっては元も子もないのだ。
 
 一日も早く我が経営を安定させることを考えるべきだ。
 
更新日時:
2007.08.07
新規就農のための具体的方法26『農業関連への転職はムダ』
農業と全く関係のない会社でサラリーマンをしていた人が新規に就農したくて会社を辞めたが、いきなり就農も難しく、とりあえず農業関連の企業に転職した。それは農業資材を扱う問屋で、農家を回り注文を取る営業マンだった。
 その人が私のハウスに営業に来た。私が新規就農だと言うと、「私も新規就農したいんですよ」と自らの話をしてくれた。
 私は「どうしてすぐに就農しなかったんですか」と問うた。彼は、いきなり就農は難しいと思い、とにかく少しでも農業環境に近づきたく、この会社に転職したのだと言った。彼は51歳で独身だと言った。
 
 貴方は彼の行動をどう思うだろうか? 私は、彼の転職は時間のムダに思える。前の会社にいるうちに準備を整え、そのまま就農すべきであったと思う。
 では、何故彼は転職をしたのだろうか? 恐らく農業資材の問屋に行くことで1歩でも農業に近づけたと考えたのだろう。しかし私に言わせれば、彼は半歩たりとも近づいてはいないのだ。
 
 前にも書いたが、農業者は経営者である。いくら農業関連企業に転職しても、それはサラリーマンであることに変わりがなく、そんな転職を何度繰り返しても一向に農業者には近づけないのである。それなら一気に就農し、1回でも多くの栽培を経験した方がよほど将来のためになる。
 農業と関係のないサラリーマンが、少しでも農業に近づきたいと思う気持ちは判る。しかしスーパーの野菜売り場に転職しようが、農協に勤めようが、野菜市場の競り人になろうが、産直場の売り場入ろうがそれらは結局サラリーマンであり、経営者ではない。 
 また、農業研修に行く場合も注意をしなくてはならないことは、たとえ僅かであっても時給をもらっていれば人に使われていることに変わりはない。研修に行くなら無給でやるべきで、それでこそ1日も早く独立しようと考えることになる。
 
 給料を貰うことは自分の時間を売ることであるから、何ら生産性のない仕事をしていても時給が入ってくるのだ。それが農業だと考える癖が付くと、就農後に却って辛くなるような気がする。
 
更新日時:
2007.08.07
新規就農のための具体的方法27『どこに売るか』
自分の作った野菜をどこに売り、どうやって換金するか?
 新規就農を考える上で大きな悩みであろう。
 
 私は最初から町の産直場に出品し、現在も売上の80%はそれである。他の方法としては、農協の共同選果場に出す、直接市場に持ち込む、直接消費者に宅配する、町のレストランなど業務用に販売する、インターネットで販売するなどの方法がある。
 私の場合、残りの20%は自然食レストランへの販売とネットでの販売であり、他の販売方法は経験がないからそれぞれの善し悪しはよく判らない。
 
 販売方法はその地域性や、その人の得手不得手、人手の有無などにもよるからどれが良いとは言えないが、私の場合は今の販売方法を今後も継続していこうと考えている。それはまだまだ売上を伸ばす余地があるし、産直場の面白さも感じているからである。
 
 有機農業をする新規就農者が良く考えるのは消費者への宅配である。私も考えたことがあったが、結局やらなかった。それは営業、生産、荷造り、配達、集金にかなりの手間が掛かると思ったからだ。
 まず営業面では、チラシを配布したり口伝てで拡張していっても、1軒契約してもせいぜい月に4−5000円のものであり、そのための顧客開拓に時間が掛かる。次に生産面では多品種少量生産をしなければならず、そのための栽培計画を立てたり、準備に手間が掛かる。また荷造りと配達を1人でやるとなると時間と経費が掛かるし、集金も面倒である。これはとても1人でできるものではないと判断した。
 直接消費者と接することの面白さはあろうと思うから、将来的にやるとなると、こうしたこだわり野菜の生産者グループを作り、複数で協力しながらする方法である。まあこれならできるかもしれない。
 
 農協や市場への出荷は、誰が作った物か消費者は判らないから農法や味にこだわる気力が湧かないだろう。とにかく規定に合う野菜の形さえあれば良いのである。消費者の声も聴けないし、ファン作りもできない。従って初めから考えてはいなかった。
 そうして産直場への出荷をしている訳だが、これは名前を記して売るのであるから自己責任を負う反面、良い物を作ればファンも付いてくれる。まだまだ売上を伸ばす余地のあるほど来店者も多い。
 
 貴方が就農しようと思う町に大きな産直場があればまずそこで換金することを考えてみればよい。まだ就農地が決まっていないのであれば、そんな産直場のある町を選ぶというのも候補地選択のひとつになる。
 
 気を付けなければならないのは、産直場によっては町の住民でないと出荷できないとか、新規就農者はダメだなどと言う決まりがあるかもしれないので、事前に良く確認しておくことだ。
 
更新日時:
2007.08.07
新規就農のための具体的方法28『家は退職前に借りておこう』
 新規に就農するにおいて、今までの家を売り払ったり、より家賃の安い家に移るという必要が出てくる。その際、新たな家は就農前に借りておく必要がある。
 何故なら、通常不動産屋に行き家を借りるが、収入の少ない(あるいは全く無い)者には貸してもらえない可能性があるからである。
 契約書には連帯保証人が必要である。頼める人間のいる人は良いが、私の場合適当な人がおらず、保証協会に連帯保証を頼んだ。その際、当時私の在籍していた会社に電話があり、該当者が本当にいるかどうかを確認された。
 
 新規就農者の場合、保証協会が保証を受けてくれるかどうか確認はしてないが、極めて不安である。サラリーマン時代に契約さえしておけば、後は転職しようがどうしようが構わない。不動産屋にも家主にも安心して貸してもらうためにはサラリーマンが一番手堅い。折角いい家があっても新規就農者であるが故に貸してもらえないということの無いよう、会社に籍のあるうちに家を確保しておくべできある。
 
 またクレジットカードの類もそうである。契約時の職業が重要なのであって、契約後の転職は問われない。年会費無料のカードなどは就農前にたくさん作っておくといい。
 いざというとき借りられる金のあるということは心強いものである。
 
更新日時:
2008.03.22
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Last updated: 2008/3/22