2003/06/10
第1位 天国と地獄 監督 黒澤明 |
63年 東宝
靴製造メーカーの社長・権藤金吾(三船敏郎)は自宅を抵当に入れてまで金を作り、会社の株を買占め今まさに主導権を得ようとしていた。そこへ「子供を預かった」という脅迫電話が。だが誘拐されたのはお抱え運転手の子供の方だった、それでも犯人は身代金を要求する。金額は3000万円、奇しくも彼が用意していた金額と同じである。苦悩する権藤はついに要求をのんだ。果たして子供は無事に解放されるのか。うだるような蒸し暑い部屋の中で丘の上に立つ豪邸を見上げる犯人(山崎努)の飢えた目つき、この対比が映画の題名。
特急「こだま」(新幹線ではない)のトイレの窓が7cm開き、犯人が指定した鞄を多摩川の土手に落すように指示され身代金を奪われるが、子供は無事に解放される。
警察は戸倉警部(仲代達也)をチーフに、奪われた身代金と犯人を逮捕するべく公開捜査を始めるが、犯人は貧乏な医大生だが高い知能を有する男で足跡を辿れず捜査は難航する。
犯人が伊勢崎町のドヤ街を歩くシーンは秀逸。飯屋とディスコとバーがごった煮になった店、ジャンキー(麻薬中毒)の女が印象深い。
黒澤明のいちばん脂ののりきった時期の作品であり、よく練られたストーリーによってサスペンス映画の傑作となった。完璧主義者の黒澤監督は当時のカラー技術は完全でないとして、カラー映画に手を染めなかったが、わずか1ショットだけカラーを入れて効果的だ(映画『踊る大捜査線』もこのアイデアをパクる)。
原作は、エド・マクベインの87分署シリーズ「キングの身代金」とタイトルにあるが、人違い誘拐のアイデアをもらっただけで完全なオリジナル作品。
当時、87分署シリーズは随分読んでいた、映画を観た後「キングの身代金」を読んだでみたがシリーズの中でも出来の悪いほうの作品だった。
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2003/06/07
第2位 砂の器 監督 野村芳太郎 |
蒲田操車場構内で殺人死体が発見されるが、身元がわからず捜査は難航をきわめる。警視庁の今西刑事(丹波哲郎)と蒲田署の吉村刑事(森田健作)の聞き込みで前夜、蒲田駅前のバーで被害者と酒を飲んでいた男がいることが判り、東北なまりで交わされていた「カメダ」という言葉に注目される。
被害者の身元が岡山県の三木謙一(緒形拳)と確認され、三木が20年間巡査をしていた場所が出雲の「亀嵩」(カメダケ)で、出雲弁ではこれが「カメダ」に聞こえることが判明する。
三木が映画館で見たポスターに、亀嵩に在職中、哀れな乞食の父子の世話をし、親を病院に入れた後、我が子のように育てるが、やがて失踪した子供の成長した姿を見つけ東京へ会いに行くのが悲劇の始まりだった。前大蔵大臣の令嬢と婚約し、前途洋々な未来が約束された天才音楽家・和賀英良(加藤剛)は、自分の生い立ちを知る三木の出現に驚き殺人を犯す。
捜査会議で事件の解明をする今西刑事と、天才音楽家が指揮する交響曲の発表会、そして彼の暗い過去でもある日本全土を貫く父と子の道行きの回想シ−ンがカットバックで描かれる、映像と音楽が一体化した構成がこの映画の見所、もう泣けて泣けて。最近話題になってハンセン病の悲劇を聞いてこの映画をまた思い出した。
松本清張の傑作推理小説とは視点を変えて描く、まったく別物の野村芳太郎の『砂の器』が完成した。
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2003/06/05
第3位 飢餓海峡 監督 内田吐夢 |
65年 東映
北海道岩内の質店に押し入り一家三人を惨殺し放火。折からの台風10号のため転覆した青函連絡船の大事故に紛れ、津軽海峡の闇に消えた三人組の男たち。逃亡中の男犬飼(三國連太郎)は一夜を共にした娼婦八重(左幸子)に何も語らずに金を手渡し去った。10年後、成功した犬飼の前に現れた八重を・・・・。一途な女の愛は、愛する男を新たなる犯罪の渦中へと引きずり込んでゆく。執念の刑事元函館署主任、伴淳三郎と三国連太郎は映画史に残る名演技、左幸子も適役。
昭和29年9月26日海難事故が函館沖で発生した。青函連絡船洞爺丸他4隻が台風15号マリー(洞爺丸台風)により沈没し、多くの人命(計1420名)が失われた。この台風通過に合わせて岩内で火事が発生し、たちまち全町を焼き尽くす大火となった。この二つの事実をもとにした水上勉原作を内田吐夢が最高の映画に仕上げた。
蛇足。
小学生の頃一度、洞爺丸に乗船したことがある。沈没の後しばらく冗談で洞爺丸の生き残りと言っていたが、後年この大惨事を詳しく知って忸怩たる思いがあった。
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2003/06/04
第4位 八甲田山 監督 森谷司郎 |
77年 東宝
「冬の八甲田山を歩いてみたいと思わないか」友田旅団長から直接声をかけられた青森第5連隊の神田大尉(北大路欣也)と弘前第31連隊の徳島大尉(高倉健) は全身を硬直させて息をつめた。日露開戦を目前にした明治34年末、寒地装備・寒地訓練の不足して いる陸軍はロシアと戦うために寒さとは何か、雪とは何か、その真の姿を知る必要があった。
二人の大尉はお互い苛烈な使命に不安を感じながら、「雪の八甲田山で会いましょう」と約束し、それぞれが逆ルートで出発する。全判断を自分が請け負う確約を取りつけた徳島大尉が、連隊を小隊編成にしたのに対し、神田大尉は、上官・山田少佐(三國連太郎)に抗しきれず、大隊本部がくっついた中隊で出発することになった。
弘前第31連隊は地元の案内人に従い順調に行軍を進める。その同じ頃、青森第5連隊は中隊の指揮を勝手に山田少佐が取り始め、指揮系統は乱れたうえ、山田少佐が勘と気まぐれで進路を決め、猛吹雪の中を右往左往し始め、食事も凍り、眠ることも許されない、極寒と疲弊による死への彷徨が始まる。
上司に恵まれない北大路欣也が可哀相、『あー天は、我を見捨てたのか』と嘆くが、そうではなく山田少佐がみんな悪い、生還した山田少佐が『全責任は私にある』と自害する。(その通り)
当時、神田大尉と同じような経験をしていたサラリーマンの私は北大路欣也に感情移入していた。
新田次郎が199名が犠牲になった実話をもとに書いた「八甲田山死の彷徨」を映画化した森谷司郎は「悪い奴ほどよく眠る」から「赤ひげ」まで、全盛期の黒澤明の助監督をつとめ、「日本沈没」「動乱」「海峡」など良い作品があるが85年「小説吉田学校」以来メガホンを取っていない、どうしているのかな。
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2003/06/02
第5位 人間の条件 監督 小林正樹 |
59年 松竹
五味川純平の1300万部売上げた大ベストセラー小説を原作に小林正樹が6部、9時間に及ぶ大作に仕上げた。
高校の頃、オールナイト上映が池袋であり友人と出かけ、夜9時から朝まで通しで全6部作を観た、 『日本映画に燦然と輝く壮大な叙事詩!』とパンフレットに記されている。まさにその通りの作品だ。
梶(仲代達也)という正義感の強い一人の人間が戦争に翻弄されながらも、人間らしく生きていこうとする物語である。あらゆる試練が彼に降り掛かる。その中で彼は葛藤をくり返し、挫折を重ねる。背景は第二次大戦に於ける中国であるが、その残酷な出来事は古今東西の戦争で、幾度となく繰り返されてきた事であろう。人間は極限状態でどう生きるか…。愛する妻、美千子(新珠美千代)のところへ帰り着くために、人殺しを繰り返さなければならない、という自己矛盾に苦しみながらも、人間らしく生きようとする主人公の姿に胸を打たれた。
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2003/05/31
第6位 喜びも悲しみも幾歳月 監督 木下恵介 |
57年 松竹
上海事変勃発の年、新婚夫婦(佐田啓二、高峰秀子)が観音埼燈台に赴任、石狩燈台、長崎県の孤島・女島燈台、佐渡島の弾埼燈台、静岡の御前埼燈台、三重県の安乗埼燈台、香川県の男木島燈台、再び御前埼燈台、最後は小樽の日和山燈台で退職するまで、黙々と海を守る灯台夫婦の戦争を挟んだ25年にわたる愛情物語。
♪おいら岬の 灯台守は 妻と2人で 沖く船の無事を祈って 灯をてらす 灯〜をてらす♪
若山彰の歌う主題歌が随所で使われ効果的だ。(今でも歌える)
木下恵介は43年『花咲く港』から88年『父』まで49作の作品を監督、阪妻の『破れ太鼓』、高峰秀子の『二十四の瞳』、田中絹代の『楢山節孝』等いづれも高い評価を受け、同じ年にデビューした黒澤明ともに日本映画の黄金時代を築きあげた。86年 加藤剛、大原麗子でリメーク版を監督したが未見。
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2003/05/29
第7位 新幹線大爆破 監督 佐藤純弥 |
75年 東映
時速80km/h以下に速度を落とすと作動する爆弾を東京発博多行きひかり109号に仕掛け、1000人以上 の乗客を人質にし、日本政府に15億円を要求する犯人と、その犯人を追 う警察、爆弾を除去できないか必死に検討する国鉄関係者、パニック寸前の乗客達と爆弾の恐怖におののく乗務員。爆弾列車と化して停まることが出来ない。
先行列車が故障で立ち往生したり、犯人グループの一人が事故死してしまったり、事件解決のカギを握る店が不慮の火災で焼けてしまったり、政府が乗客を犠牲にして爆発させる決定をしたりと、スリリングな展開で飽きさせないパニック映画の傑作。
犯人役に高倉健・山本圭、爆弾列車の運転士役に千葉真一、警察の捜査責任者役に丹波哲郎など、豪華な顔ぶれが並ぶが、高倉健もいいが、もう一人の『健さん』新幹線運行指令官役宇津井健が緊迫感を盛り上げる。この頃では珍しくフランスで上映されていたので、キヌア・リーブスが主演した『スピード』を観た時この映画のパクリかと思った。
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2003/05/27
第8位 幸福の黄色いハンカチ 監督 山田洋次 |
77年 松竹
真っ赤なファミリアで北海道を旅する欣也(武田鉄矢)は、網走でナンパした朱美(桃井かおり)とともにドライブをしているが、そこに途中で知り合った勇作(高倉健)も加えて三人でのドライブが始まる。
炭鉱夫として夕張で働いていた勇作は妻光枝(倍賞千恵子)と二人で暮らしていたが、光枝が流産したことをきっかけに、荒れた勇作は殺人事件を起こしてしまった。刑期を終えた勇作は光枝に「もし今でも独りで暮らしていて、自分を待っていてくれるなら、黄色いハンカチを出してくれ」と葉書を出していたのだ。
シャイで、すこし古風で、礼儀正しい高倉健と現代っ子(当時の)の桃井かおり、武田鉄矢が網走から夕張まで北海道の自然の中を旅しながら、時には衝突し、やがてお互いを理解していく。ラストシーンのはためく30枚以上の黄色いハンカチを見た時の健さんの表情がいい。
ビート・ハミルがNYポスト紙上に掲載した短いコラムから生まれた歌「幸福の黄色いリボン」からヒントを得て山田洋次がリボンをハンカチに替えて撮った。高倉健は今までの仁侠映画のキャラクターを受け継ぎながらも、この映画から新たな高倉健を作り上げた。
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2003/05/23
第9位 独立愚連隊 監督 岡本喜八 |
59年 東宝
第二次大戦末期の北支戦線。山岳地帯で敵と対峙している日本軍に各隊のクズばかりを集めて作った警備隊、通称・独立愚連隊(堺左千夫他ユニークな配役で魅力的)があった。そこへ身分を隠し、弟の死の真相を究明するべくひとりの男(佐藤允)が現われた。
岡本喜八はそれまで悪役専門の脇役だった佐藤允を主役に抜擢して、オープニングの乗馬シーン、クライマックスの乾いた砂の上でピストルでの一対一の決闘、駄目押しはインデアン(間違えました、相手は中国軍)との戦いと、痛快無類の西部劇を撮った(決して戦争映画ではない)。
あまりの好評のため全員死亡した筈が、続編『独立愚連隊西へ』では戦死公報が出た後でひょっこり生きて戻ってきた男たちが、加山雄三扮する隊長に率いられて失われた軍旗の捜索をするお話。これも面白く、最後に登場するフランキー堺の八路軍の将軍は秀逸。二本まとめて第9位。
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2003/05/22
第10位 蒲田行進曲 監督 深作欣二 |
82年 松竹
売出し中の映画俳優・倉岡銀四郎(風間)は、自分の子供を身ごもった落ち目の女優・小夏(松坂)を、取り巻きの大部屋俳優・村岡安次(平田)に押し付ける。盲目的に銀四郎を崇拝し、結婚すら黙って受け入れるヤスを初めは苛立たしく思う小夏だったが、やがてヤスの献身的な愛情を受け入れるようになる。
そんな時、銀四郎の主演映画「新撰組魔性剣」の見せ場、池田屋・階段落ちシーンの中止が決まる。危険な撮影にスタントマンさえ嫌がったのである。ヤスは小夏の反対を押し切り自ら志願して39段、高さ10メートルの階段落ちに挑む。
「つかこうへい」原作の舞台劇を『仁義なき戦い』などで絶好調の深作欣二が得意の映画制作の舞台裏を涙と笑いで描く傑作コメディ。最後の階段落ちが話題になったが風間杜夫と平田満の絶妙の掛け合いがいい、松坂慶子もよかった。
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