■直接肝臓を傷つける悪者
わが国に多い肝臓病についてそのメカニズムを説明します。患者さんの持つべき知識ですから細かいことは必要ありません。大づかみに理解すればよいのです。
肝細胞が壊れるメカニズムは、
[1] 原因自体に肝臓を障害する作用がある場合。
[2] 原因には肝臓を障害する作用はなく原因の作用を契機とした宿主の反応
(主として免疫応答)によって細胞が破壊される場合。
の大きく2つに分類することができます。
[1]の『原因に肝細胞障害性がある場合』とは、たとえば肝細胞障害性のある薬剤またはその代謝物の直接毒性を原因として肝細胞が破壊される状態をいいます。代表的薬剤としてはイギリスの劇症肝炎(厳密には肝炎ではないのですが)の原因の60%以上を占めるパラセタモールがあります。この薬剤はわが国ではアセトアミノフェンとよばれる鎮痛解熱剤で市販の合剤風邪薬に少量含まれています。イギリスでは安価で大量に買えるので、しばしば自殺目的で服用されます。だいたい15g以上服用すると重症の肝障害を起こします。服用した量に応じてだれでも重症肝障害を起こすので、中毒性肝障害とよばれます。このような薬剤にはほかに四塩化炭素、アフラトキシンB1がありますが特殊な薬剤です。抗結核剤のINHは代謝物に肝障害作用があるといわれています。
そのほかに直接肝障害性をもつメカニズムとしては、虚血による低酸素状態(肝静脈血栓症、バット・キアリ症候群)、重金属による障害〔ヘモクロマトーシス(鉄)、ウイルソン病(銅)〕、アルコールなどがあります。
[2]の原因に直接肝毒性がない場合は次週に掲載します。
【 シリーズ ウイルス以外を原因とする肝臓病A 肝膿瘍 】
肝臓のなかに膿の塊ができる病気です。原因は一般の細菌とアメーバーとに大別されます。一般の細菌による肝膿瘍は胆道系の感染(胆嚢炎、胆管炎)に引き継いで起こることがもっとも多いのですが、何も先行する他臓器の感染がない場合もあります。昔は虫垂炎後が多かったのですが、抗生剤投与の普及でほとんどみられなくなりました。代わりに胆管炎などに伴って細菌感染が上行して肝膿瘍になるケースが増えています。アメーバーによる肝膿瘍は東南アジアなどの流行地で生ものを食べ、下痢を起こした人(アメーバー赤痢)が帰国後に起こすことが多いのですが、最近は外国に行ったことのない人でも国内で感染する事例もあるようです。
肝膿瘍には三大主徴というのがあって、発熱、黄疸、右季肋部痛といわれていますが、そのような典型例は最近少なく、原因のわからない発熱で検査のためにたまたま超音波検査をしたら見つかったという症例が増えています。原因不明の発熱が続く場合は一度は超音波検査を希望したほうがよいと思います。治療としては薬のほかに膿瘍に管を入れて膿瘍の内容物を体外に出すことが必要です。
与芝 真 : 肝臓病の生活ガイド, 医歯薬出版, 東京, 1998 より改変

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