肝臓病教室

急性肝炎(前編)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2006年06月15日
ウイルス学の進歩に伴い、なぜ一部のウイルス性肝炎は急性肝炎として治癒するのか? 一部は慢性化するのか? さらに一部は劇症化するのか? が明らかになってきました。それによれば急性肝炎で治るということは原因ウイルスが短期間に排除され、肝細胞破壊も短期間で終息するという意味ですし、慢性肝炎とは原因ウイルスが短期間のうちには排除されず、感染が持続し、よって肝炎が持続するという意味です。臨床上はこの短期間を6カ月間を目安としているので、6カ月以内に肝機能異常が軽快すれば急性肝炎、6カ月以上持続すれば慢性肝炎と一応区分しています。しかし、6カ月という期間は便宜的に決めただけですから、A型急性肝炎などでは6カ月以上肝機能異常が続いてもそのうちに治ってしまう場合もあります。
 
 肝生検を行ってみると、急性肝炎と慢性肝炎とは異なる所見がみられるので、ウイルス学が進歩していないころはこの所見が重視されていました。急性肝炎の組織像の特徴は、肝細胞の破壊像がめだつことと、破壊から再生への変化がどの細胞をみても均質であることで、破壊から再生、つまり回復への過程が肝臓全体で同一歩調で起こっていることを示しています。これに対して、詳しくは後で述べますが、慢性肝炎では肝臓の実質(肝細胞の集団のこと)よりもそれを取り囲む門脈域(肝臓の小葉の周辺にあって門脈、動脈、胆管の終末枝が流れている領域)の変化がめだつようになります。ここに以前述べた肝細胞を障害するリンパ球が浸潤してきます。そして門脈域から肝実質内に線維が伸びてきます。この線維化が急性と慢性を分ける変化とされてきました。このように、ウイルスがよくわからなかった時代は肝炎であれば、なるべく肝生検を行って急性肝炎か慢性肝炎かをはっきりさせることや、急性肝炎が慢性化するかどうか明らかにすることが盛んに行われてきました。しかし、A型、B型の肝炎ウイルスが証明され、さらにC型ウイルスの存在が明確にされ、結局、急性肝炎とは早期にウイルスが排除される病気、慢性肝炎とはウイルスがいつまでも排除されない病気であり、しかもそれが原因のウイルスの種類によって決まってしまうことがわかってくると、急性肝炎の場合まず知らなければならないことは原因ウイルスであり、それ以外は患者さんに負担のかかる肝生検などはあまり行われなくなってきました。
 
 ですから、急に肝臓が悪くなって病院を受診した場合はまず、原因が何かを急いで確定してもらわなければなりません。このために、行うべき検査を表にまとめました。(下記) これらの検査が確実に行われ、その結果についてきちんとした説明がなされ、また今後の経過の見込みまで触れてもらえるようならば、安心して任せることのできる病院であり、主治医であるといってよいと思います。そして発熱、尿濃染、黄疸、強い全身倦怠感、食欲不振などの自覚症状が強い場合は、なるべく早く現状の把握、とくに入院の適応かどうかを決定するために、いくつかの項目についは緊急検査にしたほうがよいのです。体制の整った病院ですと、かならず日ごろから一部緊急検査については1?2時間のうちに検査結果がでるように検査室を訓練しています。
 続きは次回の後編にて掲載します。
 
 与芝 真 : 肝臓病の生活ガイド, 医歯薬出版, 東京, 1998 より改変
 与芝の略歴はコラム1を御参照下さい。
 
 


前ページ 目次へ 次ページ

ホーム 医局紹介 コラム ● 肝臓病教室 リンク集