(先週のつづきです。)
一方、小規模の診療所や小病院では自前の検査室をもっておらず、専門の検査センターに検体をだして、そこで測定してもらい、その結果を後日報告するという形で、高度化する検査に対応しているところが多いのです。この場合検体の集配や報告にどうしても時間がかかり、即日に結果をだすことが難しくなります。もっとも、小病院のなかにも緊急検査だけは自前の検査室でできるようにしたり、検査センターと特別な契約を結んでなるべく迅速に結果がでるようにしているところもあります。不幸にして最低の緊急検査もできない病院や診療所にいってしまったら、その検査ができる病院に早めに移ったほうがよいと思います。
各項目の検査の意義は後ほど詳述しますが、緊急検査により、すくなくとも@肝臓病の有無、A肝臓病の種類、とくに障害されている部分、B入院を必要とするかどうか、くらいは判断できます。緊急検査以外のたとえばウイルスの検査などは2日、遅いと1週から2週かかります。(最近、リアルタイムPCR法という、より迅速な検査法が実用化されました。)
緊急検査を行うことにより、肝臓自体に問題があるのか、それとも肝臓ではなく胆道、または膵臓に問題がありそうだということが推測されます。とくに肝臓か胆道か膵臓かの判断には超音波検査が重要です。緊急の場合は初診日に行います。この場合、食事をしていると胆嚢などの所見がみえにくくなるので、急に具合が悪くなって病院へ行く場合はぜひ朝食抜きで、早い時刻にお越しください。
緊急検査でGOT、GPTの数字が高いと肝臓の細胞が壊れていることになり、急性肝炎の疑いが濃くなります。そして、他人がみてもわかる程度に黄疸があったりGOT、GPTが500台以上の高値の場合は一般に入院が勧められますし、病院によっては急性肝炎、即入院ということもあります。だいたいわが国は入院費が安いため医者も患者も入院に対して抵抗がないのですが、アメリカでは一流病院ですと、入院すると何もしなくても1日10?30万円くらいかかるし、いったんは病院の支払いは自分の財布からでるので(後から認められた部分だけが保険会社から支払われる)、患者はその必要がなければ入院したがらず、医者も勧めようとはしません。日本では、人気や評判でその病院が混んでいるかで決まってしまいます。私の所属する病院の消化器内科は周囲から信頼が篤いためでしょうか、いつも混んでいますし、また吐血、下血とか胆石発作とか緊急入院を必要とする人も飛び込んで来られ、そのベッド捜しでいつも苦労しています。いきおい、入院をしなくてもなんとかなりそうな人は自宅安静と通院で療養していただくことになります。
本来、急性肝炎は予後のよい治りやすい病気ですから、治る急性肝炎と診断されればそれほど入院の必要のない疾患のはずです。ですから入院の適応は、そう診断できない症例ということになります。具体的には重症化が心配される例と慢性化が予測される症例です。
古い一般向けの本などを読むと、初期に入院して安静を十分とらないと慢性化するとか劇症化すると書いてありますが、これはまだウイルス学が進歩せず、慢性化や劇症化の機序などがわからなかった時代の話で、現在はたんに安静をとることだけを目的に入院することはありません。むしろ慢性化や劇症化のおそれのある患者さんを入院させて、信頼できる薬剤療法で積極的にそれを阻止するというのが現代的な正しい入院の考え方です。
次回以降は各ウイルスによる急性肝炎の特徴をすこし詳しく触れてみたいと思います。
与芝 真 : 肝臓病の生活ガイド, 医歯薬出版, 東京, 1998 より改変
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