■エンテロウイルスは腸で増殖
A型肝炎ウイルス(HAV)の感染によって起こる病気です。このウイルスはピコルナウイルス科のエンテロウイルス属に属するRNAウイルスです。エンテロとは腸管の意味で、この意味からわかるように経口的に感染したウイルスは腸管でまず増殖します。エンテロウイルス属にはほかに、小児麻痺を起こすことで有名なポリオウイルスなどがあります。これらのエンテロウイルス属のウイルスは皆共通してまず腸管で増殖し、それから各ウイルスに親和性をもつ臓器に、すなわちHAVは肝細胞、ポリオウイルスは脊髄前角細胞というように感染してきます。
理由は不明ですが、A型肝炎は初春から初夏にかけて高頻度に発生します。渡り鳥が運んでくるなどという奇抜な考えもありますが、本当のところはわかりません。HAVがほかのウイルスと異なる点は、おそらく宿主の免疫応答を刺激しやすいためか症状が派手なことです。A型急性肝炎はしばしば高熱で発症し、風邪と間違えられることが多いので注意が必要です。黄疸もしばしばみられます。しかし排除が速いので慢性化することはまれですし、同様の理由から劇症化もまれです。流行する年とそうでない年がありますが、最近は減少している印象があります。
■感染は便から口へ
ウイルスは便中にはでやすいので、便から口へと感染します。昔、上水道が完備していないころはしばしば井戸や簡易水道などを介して感染が拡大しました(水系感染)。現在はこのようなことはなくなり、散発的にあちこちでポツポツと発生します。よく生ガキを食べてなどという話があります。これも昔は生ガキを育てるのに人の糞尿をかけていたからで、現在はそんなことはないと思います。A型急性肝炎の潜伏期は平均1ヶ月ですから、発症1ヶ月前に口に入れた食物や飲料水などが原因ということになります。東南アジア旅行のさいは生水や加熱していない食物は危険です。
診断はIgM型のHA抗体の陽性で確定します。B型肝炎のところでも触れますが、IgM型の抗体というのは急性期の抗体で感染後1週間以内で陽性化し、3?6ヶ月後には消失します。よって、IgM型の抗体が陽性であることは3?6ヶ月以内に感染があったことを示していることになり、原因の推定に役立ちます。
一方、一般にIgG型の抗体は感染後時間がたってから出現し、場合によっては一生陽性が続きます。これが陽性の場合は、たんに過去に感染を受けたことがわかるだけでいつかはわかりません。ですから、これが陽性でもいま起こっている肝炎の原因であるとはいえないわけです。
総じて、A型急性肝炎はウイルス肝炎のなかでももっとも治りやすい肝炎といえるでしょう。ただし、一部の症例で胆汁うっ滞といって肝炎はよくなっても胆汁の流れが悪くなり、それが長期化することもありますが、時間をかければ治ります。
与芝 真 : 肝臓病の生活ガイド, 医歯薬出版, 東京, 1998 より改変
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