肝臓病教室

急性肝炎の特徴 B型急性肝炎(前編)・・・・・・・・・・・・・・・2006年06月16日
キャリアから感染するヘパドナウイルス
B型急性肝炎はB型ウイルス(HBV)の感染によって起こるウイルスです。このウイルスはヘパドナウイルスと総称されるDNAウイルスです(右写真の大きい粒子がウイルス 広島大学吉澤浩司教授提供)。ヘパドナウイルスには他にリスや北京ダックに感染する似たウイルスがありますが、人に感染するウイルスではありません。通常はHBキャリアとよばれるウイルス保有者のうち、血中に大量にウイルスをもっている人(HBe抗原陽性者が多い)から感染します。
 わが国でのHBキャリア数は人口の1.6%とされていますが、十数年前から行われるようになった公費負担による母児感染の阻止(HBキャリアの母親から生まれた子に対してHBグロブリンとHBワクチンを投与して母から子へのHBVの感染を阻止する国の事業)により15歳以下のHBキャリアは激減しています。もう2世代回転すればわが国からほとんどHBキャリアは減滅すると考えられています。
 一時“HBキャリアはAIDS患者より恐ろしい”というキャンペーンがなされ、HBキャリアが村八分のような目に会うという気の毒な状況になりました。しかし、これは明らかな誤りです。というのは、HBキャリアの人もAIDS患者の人も、一緒に勉学するとか仕事をするとかといった一般的・社会的な付き合いではけっしてうつりません。また、家庭内でカミソリなど血液が付着するかもしれない特殊な用具を除けば、共同で使うことにそれほど神経質になることはありません。昔、東大病院ではウイルス肝炎患者は隔離病棟に入院させられ、発泡スチロール性の使い捨て食器を使わせられていたのですが、B型肝炎は食器でうつるわけではありませんから、患者さんに無意味な味気ない思いをさせていたことになります。
 B型肝炎の患者さんの血液中にはHBVが流れています。とくにHBキャリアやB型慢性肝炎の患者さんのなかでHBe抗原陽性の人の血液中には大量のHBVが存在します。たとえば、HBe抗原陽性の人の血液を1億倍に希釈して1mlをチンパンジーに接種するとB型肝炎を発症します。一方、急性B型肝炎の場合も血液中にHBVが存在することもありますが、短期間なので急性B型肝炎の人が感染源となることはまれと考えられます。
B型肝炎の感染は基本的にはこの血中のHBVが体内に入り肝臓に到達して起こるわけです。ですから昔は輸血によって多数のひとがB型急性肝炎になりました。売血時代の“黄色い血”です。しかし、その後の献血制度が普及し、供血者に対するHBs抗原スクリーニングにより輸血後B型肝炎は激減しました。それでもごく少数例にB型肝炎が発症し、しかもそのなかにしばしば劇症肝炎がみられることから、日赤ではさらにHBs抗原に加えてHBc抗体が高値の人の血液も輸血に使わないようにしています。これより、輸血後B型肝炎はほぼ撲滅されるに至りました。
 
続きは次回(来週)の後編にて。
 
 
 与芝 真 : 肝臓病の生活ガイド, 医歯薬出版, 東京, 1998 より改変
 
 与芝の略歴はコラム1を御参照下さい。
 
 

前ページ 目次へ 次ページ

ホーム 医局紹介 コラム ● 肝臓病教室 リンク集