肝臓病教室

急性肝炎の特徴 B型急性肝炎(後編)・・・・・・・・・・・・・・・2006年06月16日
 (先週のつづきです。)
性行為でも感染
 しかし、HBe抗原陽性の人の場合、血中ウイルス量が極端に多いため、血中のウイルスが他の体液、たとえば精液や膣液中にもでてきます。このため、輸血や入れ墨、針刺し事故など直接血液に触れるルート以外の性行為などによって感染します。極端な例では新婚旅行中に配偶者をB型劇症肝炎で失ったHBキャリアの報告などもあります。HBキャリアやB型慢性肝炎で、しかもHBe抗原陽性の人は、もし真剣に結婚を考えている場合は相手にうちあけてHBe抗体の含有量の多い免疫グロブリン製剤とワクチンをうってもらいましょう。これで問題は解決します。
 成人の感染ではHBVも宿主側の免疫反応が強く刺激するらしく、A型肝炎ほどではないにしても発熱する例が多く、黄疸もしばしばみられます。その代わりA型肝炎と同様に成人の感染では急性肝炎として治癒します。ただし、透析患者や副腎皮質ホルモン剤服用者でウイルス保有者になることがありますが、それは例外的です。
 B型急性肝炎の診断はHBs抗原陽性かIgM型のHBc抗体(コア抗体)陽性で行います。通常のB型急性肝炎では発症時HBs抗原陽性ですが、劇症例では一般にウイルスの排除が速いので、HBs抗原が早期に消えてしまうことがあります。このようなときはIgM型のHBc抗体の陽性でB型と診断します。
 B型急性肝炎がA型急性肝炎と異なる特徴は劇症化確率の高いことで、正確な数字はいえませんが、おそらくB型急性肝炎の2%程度が劇症化します。だからA型急性肝炎より初期は警戒が必要であり、この場合は原則的に入院すべきです。もっとも98%は通常の急性肝炎として治癒するのですから、劇症化のおそれがなくなれば退院してよいと思います。
 
 
 
 
【 シリーズ ウイルス以外を原因とする肝臓病C  薬剤性肝炎 】
 以前、本文中に書いておきましたが、薬剤性肝障害には中毒性肝障害とよばれるものと薬剤性肝炎と呼ばれる2種類があります。前者は肝細胞に直接毒性をもつ特殊なパラセタモールと呼ばれる薬剤によるものが多く、わが国でみることはまれで、大半は後者の薬剤性肝炎です。薬剤性肝炎は個人個人の特異的薬剤アレルギーを背景として起こる一種のアレルギー反応です。ですから、どの薬で肝炎を起こすかは個人によって異なっており、予測がつきません。服用してみなければわからないので厄介です。また、アレルギー反応ですから少量の摂取でも起こります。一般には経口剤より注射剤のほうが症状は重篤のことが多いようです。
 薬剤としてはどのような薬剤も原因となりうるのですが、頻度的には抗生剤、抗癌剤、精神科用剤、解熱鎮痛剤などが多いことがわかっています。また、アルコール飲用者では通常人よりも薬剤性肝障害をおこしやすいこともいわれています。
 薬剤は濫用すべきではないのは当たり前ですが、場合により思わぬ肝障害を起こすことがあります。前述の薬物の服用後1ヶ月以内(多くは2週間以内)に尿の色が濃くなった場合は薬による肝障害を考えて検査をしましょう。また、以前に肝障害を起こした薬を服用するとかならずまた肝障害を起こしますし、二度目は重くなることもあるので、原因となった薬を憶えておいて医療機関の初診時にはかならず医師に知らせるようにすべきです。
 
 与芝 真 : 肝臓病の生活ガイド, 医歯薬出版, 東京, 1998 より改変
 
 
 
 与芝の略歴はコラム1を御参照下さい。

前ページ 目次へ 次ページ

ホーム 医局紹介 コラム ● 肝臓病教室 リンク集