肝臓病教室

肝臓病の患者さんのもつべき基本的な心がまえ(前編)・・2006年05月20日
生活習慣病は
      生活習慣の改善で治す。
 厚生省では従来から成人病と呼んでいた高血圧、糖尿病、高脂血症などの疾患を生活習慣病と呼び換えました。このことの意味は、これからの病気の発症や悪化には遺伝などいろいろな要因が影響していますが、同時にその病気にかかった患者さんの日ごろの生活習慣が大きい影響を与えているということです。
最近は1つ1つのリスクファクターより軽症でもそれらが複合して起こるメタボリック・シンドローム(腹囲男性85p以上、女性90p以上、血圧130/85以上、中性脂肪150mg/dl以上、HDLコレステロール40mg/dl未満、高血糖110mg/dl以上)が心血管イベントのリスクファクターとして注目されてきました。我が国では成人男性の2人に1人、女性の5人に1人がメタボリックシンドロームに罹っていると言われています。
 このような病気では患者さんの日ごろの生活習慣の改善が治療上もっとも重要な意味をもつことになります。肥満の解消、高血圧であれば食塩の制限、適度な運動、ストレスの予防、飲酒の節制など、糖尿病であれば栄養管理、運動、肥満の対策、さらにインスリンの自己注射と血糖の自己測定など、たしかに“自分が自分の医師になる”といえるほど、患者自身が治療の主役を果たすことになります。主治医は、血圧や血糖値、ときにはそれ以外の検査をして必要な情報を与えますが、治療はあくまでも自分が率先して行います。
 
こわい肝臓病は生活習慣病ではない?感染症
 一般向けの肝臓の本もしばしば生活習慣病のシリーズの1冊として刊行されています。そして、それらの本のなかには、肝臓病はちょうど他の生活習慣病と同じように安静、栄養、節酒など患者個人の予防が大きく左右されるようなことが書いてある本もあります。また、毎日の献立まで詳細に書いてあったり、盛付けの写真までついていて、肝臓病のガイドブックというより料理の教本のようなものもあります。先日、肝機能の異常を示す検査値のひとつであるGOT,GPTまで食事で正常化できるという本を見かけましたが、食事のみで肝機能が正常になるなら大半の肝臓病医はなにもやることがなくなるわけです。
 このようなタイプの一般向けの図書が多いのは、肝臓病があたかも生活習慣病であるかのような錯覚が一般にあるからではないでしょうか。たしかに肝臓病のなかでもアルコール性肝障害や肥満による脂肪肝は、それらの病気に羅患する人たちの生活態度が大いに問題となります。前者はお酒の飲み過ぎ、後者は過食と運動不足です。ただし、わが国では人数的にいえばこれらの肝臓病の患者数は多いのですが、まだ欧米のような重症例(NASH:non-alcoholic steatohepatitis 脂肪性肝炎-脂肪肝より出発して肝硬変、肝がんにまでなる)は少なく、深刻な問題となっていません。但し、食生活の欧米化、運動不足などにより今後は深刻化するかもしれません。なんといっても問題なのは、アジア諸国と共通してウイルス性の肝炎、しかも肝硬変、肝癌に進展する可能性をもった慢性肝炎です。そして、この病気は生活習慣病ではなく“感染症”の一員なのです。
 続きは次回(来週)の後編にて。
※GOT,GPT
 肝機能検査のなかで最もおなじみのものです。これらは、アミノ酸の代謝にからむ酵素なのですが、肝臓の細胞の細胞質にふんだんに含まれていて、肝細胞が壊れたり変性すると血液中に飛び出してきます。ですから、これらの値が高いというのは肝細胞に何らか変化が起こっていることが考えられます。GOTはLDHと同様に肝細胞以外の筋肉などにも含まれているので、必ずしも肝臓特異的ではありませんが、GPTは肝細胞以外の分布が少ないので、GPTの方が重視されます。
 
 与芝 真 : 肝臓病の生活ガイド, 医歯薬出版, 東京, 1998 より改変
 
 

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