肝臓病教室

急性肝炎の特徴 その他の急性肝炎・・・・・・・・・・・・・・・・ 2006年06月16日
急性D型肝炎
 急性D型肝炎はわが国ではきわめてまれなので、簡単に説明します。D型肝炎ウイルス(HDV)はビロイドといって完全なウイルスとは考えられない欠陥RNAウイルスで、その増殖にはHBVウイルスの存在が不可欠です。そして、外被にはHBs抗原をかぶっているので、“ヤドカリ”のような存在です。特徴はHBVと重感染してB型急性肝炎の経過を悪化させることです。診断はHDV RNAやIgM型HD抗体で行います。このウイルスが初めて見つかった国がイタリアであることがわかるように地中海沿岸、中近東、東南アジア、アメリカ大陸と広く分布するので、外国では劇症肝炎の原因として恐れられています。HBVと行動をともにするので、HBVが排除される状況下ではこのウイルスも排除されます。
 
急性E型肝炎
 急性E型肝炎はわが国ではきわめてまれとされていましたが、最近我が国原産のE型肝炎の存在が知られるようになりました。E型肝炎ウイルス(HEV)の感染によって起こる病気です。これはカリシウイルス属に属するRNAウイルスです。インド、ミャンマー、バングラデシュなどの東南アジア諸国で風土病のように流行しています。感染ルートや臨床症状はA型肝炎と類似するといわれていますが、どういうわけか妊娠に感染すると10%ほど劇症化することで恐れられています。診断は抗HE抗体によって行います。
 
急性G型肝炎
 急性G型肝炎はHGVまたはGBV-C(同じウイルスを2つの会社が別々に発見したので、異なる名前が命名されました)の感染を原因とする病気です。HGV/GBV-CはHCVと同じくフラビウイルス属に属するRNAウイルスです。HCVと同様HGV保有者の血液を介して感染します。現在のところPCR法によりHGVまたはGBV-CのRNAを検出するしか検出法がないので、正確なHGVまたはGBV-C保有者はわかりませんが、HCV保有者と同等くらいと考えられています。また血中のウイルス量もHCV保有者並みと思われるので、やはり直接血液の接触を介して感染するものと考えられます。
 HCVと同様慢性化傾向が強いのですが、HCVより若干排除されやすいといわれます。輸血後肝炎は症状がきわめて軽いためアメリカではこのウイルスは肝炎ウイルスではないと極論する学者もいますが、私たちの研究グループはこのウイルスが劇症肝炎をおこしうることを報告しており、いまだ議論が決着していません。
 
EBウイルス
 EBウイルス肝炎はEbstein-Barr(EB)ウイルスの感染を契機とする肝炎です。このウイルスは肝臓ではなく、まずBリンパ球とよばれるリンパ球に感染します。この結果、Tリンパ球が異常増殖をしてリンパ節や肝、脾、腎に浸潤して各臓器に障害を起こします。初期症状は発熱、のどの痛み、頸部リンパ節の腫脹など風邪そのものですが、頸部リンパ節がるいるいと腫れるので、熟達した医師であればただの風邪ではないと疑います。次いで尿の濃染など肝臓の障害を思わせる症状が出現します。肝機能検査ではGOT,GPTのほかにLDHなどの酵素値が異常に高いので、すぐにピンときます。また、白血球の像を調べる異型リンパ球といって形が変わったリンパ球がみられるので、これも診断の助けとなります。また、このため別名“伝染性単核球症”とよばれます。確定診断にはEBウイルスに対するIgM型の抗体の検出で行います。通常は長くても2週間の経過で自然治癒します。小児ではしばしば劇症肝炎の原因となるので注意が必要です。
 
その他
 ヘルペス肝炎やコクサッキー肝炎は免疫力の低下した人や、小児、老人にしかみられません。私も先日左胸部にひどい帯状疱疹を羅患した人に、一過性の肝機能異常をみたことがありますが、後にも先にもヘルペス肝炎と思われる例はこの1例のみでした。EBやヘルペスやコクサッキーウイルスなどは肝細胞にウイルスが親和性をもっているわけではないので、どうしてこのさい肝細胞が壊れるのかそのメカニズムはよくわかっていません。
 
 与芝 真 : 肝臓病の生活ガイド, 医歯薬出版, 東京, 1998 より改変
 
 与芝の略歴はコラム1を御参照下さい。
 

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