不幸にして慢性肝炎と診断されたとしても、そこに止まっていて肝硬変や肝癌まで進行しなければ、命に別状はないわけです。ですから慢性肝炎の治療方針としては、
@ ウイルスを排除するか、増殖を永続的に止めてしまう。
という根本的解決ができればそればベストですが、それでなくとも。
A 肝硬変や肝癌を阻止して慢性肝炎の状態を保つことができる。
これができればそれも立派な方針となります。昔、ウイルスがまだわからなかった時代はAが慢性肝炎の治療の目標だったのです。HCVの存在がわかり、インターフェロンが臨床導入された初期にその力でHCVが高率に排除できるとセンセーショナルな報道がなされて以来、@のみが治療の目標のようにいわれています。C型慢性肝炎にはインターフェロンが効きやすい(ここではウイルスが排除しやすいという意味)ものと効きにくいものがあることがわかってきました。そうなると、インターフェロンの投与前にどうせ効かないからと病院から門前払いされてしまう人もでてくることにもなります。その人がそのまま進行しなければそれでよいのですが、もし進行的であれば肝硬変、肝癌へということになってしまいます。そのような人の場合は、ウイルス排除ができなくてもそれ以上肝炎を進行なせないというAの方向に治療の方針を変更する必要がありますし、しかもそれを確実に行う必要があります。
目前の慢性肝炎がはたして近い将来肝硬変、肝癌に進展するかどうかを確かめておくということは慢性肝炎の診断のなかでもっとも重要なことであり、肝臓病医としてはその診断力の鼎の軽重を問われることになり、患者としては自らの生命を守る意味でもぜひ知っておかなければならないことです。身を守るためにも、他の知識はなくてもこの点だけは知っておかなければなりません。私はこの判定の方法には2つあると思っています。1つは肝生検による方法ともう1つは血液で調べる検査からです。
■肝生検による方法
まず肝生検による方法です。この方法で肝臓の細片をとって顕微鏡で肝臓がミクロ的にどうなっているのか調べます。これで調べることは肝臓に起こっている肝炎の勢いとどこまで壊れてしまったかという2点です。前者を活動性(activity)とよんでいますが、火事でいえば火勢で、これが強いほどどんどん壊れています。後者は進展度(staging)とでもいいましょうか、火事でいえばどこまで燃えたか、屋根は残っているか、壁はどうかとかそのようなことです。たとえ初期でも火勢が強いこともあるし、肝硬変に近くても火勢はおさまってきていることもあります。以前はこの両者を一括して表現していたのですが最近は分けるようになり、わかりやすくなりました。たとえば、新しい分類では activityはA:0?3、stageはF(fibrosis, 繊維化):0?3に分けます。F4は肝硬変です。Aの数字が高いほど火勢がひどく今後進展しますし、Fの数字が高いほどすでに進展してしまっていることを示しています。ですから両方の数字が高いほど肝硬変に進展する確率が高いわけで、確実に進展を食い止める治療をする必要があります。
肝生検は現状の把握の方法としてはもっとも確実で正確な方法といえますが、問題がないわけではありません。それは、昔はこの肝生検で得られた所見は変わらないと思われていたのですが、変わりうることがわかってきたからです。1回肝生検をしてA1と判定されても経過でA3に変化することもありえます。それではなぜ肝生検をするかといえば、GOT,GPTが低くてもけっこう活動性が高い人もいるし、その逆もあるので、やはり現状の把握のうえで肝生検は必要という点と、しばらくの間は組織像はそれほど変わらないであろうという見込みはあるからです。本当は何年おきかに肝生検を繰り返すことが望ましいのですが、やはり入院が必要であり、危険のまったくない検査というわけではないので、むやみに行うわけにもいきません。
もう1つの血液検査による方法は次週掲載します。
与芝 真 : 肝臓病の生活ガイド, 医歯薬出版, 東京, 1998 より改変
与芝の略歴はコラム1を御参照下さい。
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