肝臓病教室

肝硬変(前編)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2006年06月22日
変わり果てた肝臓病の終末
 肝硬変の多くは肝疾患の終末像です。ウイルス肝炎だけでなく、アルコール性肝障害、自己免疫性肝炎、原発性胆汁性肝硬変、ウイルソン病、これらみな最後は肝硬変になる可能性があります。頻度的にはわが国ではC型:B型:アルコール性が5:3:2で、あとはきわめてまれといってよいでしょう。肝硬変という病気は通常門脈域というところから徐々に線維が伸びていって(線維化といいます)、その結果、肝臓の基本構造が変わってしまったものです。火事でいえば屋根が燃え落ちたようなものでしょうか。肝臓は再生のよい、つまり修理のきく臓器なので、あるレベルまでの破壊でしたら元に近いところまで治るのですが、肝硬変までいってしまうと、そこから再生してもけっして元には戻りません。なんとか肝硬変にまでならないように病気の進行を止めたいものです。この点では、やはり現在の状態が慢性肝炎なのか肝硬変かを鑑別する必要があります。また、肝硬変になると慢性肝炎にはない多くの合併症の心配がでてきます(発癌、食道胃静脈瘤、腹水など)。
 慢性肝炎と肝硬変を見分けるいちばん的確な方法は腹腔鏡といって、お腹のなかに内視鏡を入れて肝臓全体を観察することで、これにより肝臓表面が凸凹不整になった特有な肝硬変の特徴をとらえることができます。そして、肝生検により確認します。肝生検だけだと組織を採取した場所により所見が異なるので、かならず腹腔鏡で全体をみる必要があります。もっとも、最近は超音波検査などの画像診断が進歩したので、それで十分診断できるという専門医も多くなり、腹腔鏡のように手間がかかるわりに保険点数(健康保険上認められているコスト)の低い検査はあまり行われなくなっています。
 
続きは次回の後編にて。
 
 
 
 
【 シリーズ ウイルス以外を原因とする肝臓病D  原発性胆汁性肝硬変 】
 原発性胆汁性肝硬変 (primary biliary cirrhosis ; PBC)。長ったらしい病気なので、医者仲間では短くピー・ビー・シーとよんでいます。主として中年女性に現れる病気で、本質は小葉間胆管という細い胆管に炎症が起こり、胆汁の流れが悪くなる病気です。免疫学的な異常が背景にあるようですが、副腎皮質ステロイドの効きが悪いので、自己免疫性肝炎とは機序は異なると考えられています。胆汁の流れが悪くなると痒みがでてきますので、初発症状は痒みであることが多いのです。検査をすると血液中の胆汁酸、アルカリフォスファターゼ(ALP)、γGTPなどの高値で胆汁の流れが悪いことが示唆され、超音波を行って胆管の拡張がなく太い胆管の物理的閉塞がないと本疾患が疑われます。そして抗ミトコンドリア抗体(antimitochondrial antibody ; AMA)という特異的抗体が陽性であれば診断が確定します。この段階でウルソ酸という胆汁酸の製剤を飲めば病気はよくなります。初期には胆管だけの変化ですが、徐々に門脈域から線維が伸びて最終的には肝硬変に進展します。また、肝硬変でない時点でも、この病気では胆管に伴走する門脈が早期から閉塞され、門脈圧亢進→食道静脈瘤をきたすので、かならず内視鏡検査を受けなければいけません。この段階を過ぎると黄疸がでてきて病気とわかることがありますが、この段階ではすでに肝硬変まで病気が進んでおり、この段階からウルソを飲んでもあまり効きません。
 原因の不明な痒みが持続したら、早めに信頼のできる医療機関に受診しましょう。
 
 与芝 真 : 肝臓病の生活ガイド, 医歯薬出版, 東京, 1998 より改変
 
 与芝の略歴はコラム1を御参照下さい。
 
 

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