肝臓病教室

肝硬変(後編)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2006年06月22日
肝硬変の3つの異常
 肝硬変にみられる症状は前項(07.と08.肝臓病の症状)に記載してありますから目を通しておいてください。肝硬変のさいにみられる症状は3つの基本的な障害に由来します。血液検査で肝硬変の診断をする場合にもこの3つの異常に注目して診断します。その3つの異常とは、@肝臓の合成能の低下、A肝臓の解毒代謝能の低下、B肝を通る血液の障害です。@、Aは肝臓の実質細胞の量が減少するために起こる現象であり、Bは肝臓の線維化によって起こる現象です。@、Aは劇症肝炎と同じですが、劇症肝炎に比べるときわめて進行が遅いので、前面にでてくる症状はかなり違います。Bは劇症肝炎にはなく肝硬変独自のものですが、劇症肝炎の場合にも経過が長くなるとまれにみられることもあります。
 
 @に属する障害でいちばん臨床症状に関係するものとしては蛋白をつくる力が落ちることで、劇症肝炎ではプロトロンビン時間(PT)が低下しますが、肝硬変ではむしろまず血液中のアルブミン濃度が低下します。このため血漿浸透圧が低下します。血液中に水分を止めておく力が落ちて(保水力)、腹水や浮腫がでやすくなります。検査データ上はさらに先ほどのChE値やコレステロール、中性脂肪の値が低下してきます。
 
 Aに属する障害としては最終的には劇症肝炎と同様に昏睡なのですが、肝硬変ではそれまでに至る経過が長いので、他の合併症(肝癌、食道胃静脈瘤からの出血)で亡くなる人が多いのです。ただし、肺炎や胆嚢炎などの感染症や便秘、消化管出血を契機に急に一過性の昏睡に陥る人もいますし、肝機能はそれほど悪くないのに門脈血が肝臓を通らないでシャントして全身へ流れてしまい、門脈血中のアンモニアのために習慣的に昏睡を起こす人もいます。検査データとしては、ビリルビンの上昇、総胆汁酸の上昇、アンモニアの上昇などに注目します。
 
 Bに属するものとしては門脈の圧力の上昇のためやはり腹水がでやすくなること、肝臓を通らない門脈血がシャントするため食道胃静脈瘤が発達することなどがあります。検査としては、前述の血小板の低下のほか白血球、赤血球も減ってきます。また、ICG(インドサイアニングリーン)といって肝臓の線維化が進行したり血行が悪くなると排泄が悪くなって、血液中にたまってしまう物質を負荷する検査に異常値がでます。正常は15分後は5%くらいですが、肝硬変では30%以上になります。慢性肝炎ではこの間の値を示します。
 
 肝硬変の診断としては、血液検査で@ABがすべてそろっていることと画像診断、必要なら腹腔鏡などを参考にして行います。
 
 与芝 真 : 肝臓病の生活ガイド, 医歯薬出版, 東京, 1998 より改変
 
 与芝の略歴はコラム1を御参照下さい。
 
 
 
 

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