肝臓病教室

肝癌(後編)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2006年06月22日
(先週のつづきです。)
 また、すでに遺伝子が組み込まれてしまっているため、B型の場合は慢性肝炎の段階でもウイルスが排除されてしまっても発癌しますが、C型の場合はインターフェロンなどによってウイルスが排除されてしまうと発癌がみられなくなります。つまり、C型の場合はウイルスが存在することと発癌の間に密接な関係があります。だからC型の場合は、病気が進行しないうちにウイルスを追い出してしまうことが発癌防止の前提になります。また、ウイルスを追い出せない場合でも発癌の防止に有効な手立てがあることがわかってきました。それはいったん発癌した人での発癌防止の努力でわかったことですが、このためにはできるだけGOT,GPTを低下させるとよいとのことです。肝臓は再生のよい臓器です。肝臓が壊れれば再生します。これを細胞回転といいます。壊れる速度が速いほど再生速度も速くなります。癌化とは制御を失った異常な再生のようなものですから、細胞回転が速ければ癌化の確率も上がり、速度を下げれば癌化確率も下がるのではないかとも考えられます。これまでGOT,GPTを下げることは肝硬変の進行を止めるという観点で話を進めてきましたが、発癌の防止という点でも重要であることを強調しておきたいと思います。
 肝組織上もどのように発癌していくのかが徐々にわかってきました。通常の慢性肝炎では壊死していく部分と再生の部分が一緒にみられますが、再生像そのものは各細胞とも同一の顔をしています。それが徐々にバラバラになって再生像が乱れてきます。これを“不規則再生”といいます。そのなかに腫瘤状にatypical hyperplasia(非定型過形成)という病変がでてきますが、これが癌に至る前段階と考えられます。そして高分化型肝癌とそのなかに低分化肝癌がでてきます。これを多段階発癌といいます。高分化型肝癌までは比較的緩やかに進行しますが、低分化型になると急速に増大します。
 
早期発見が肝要
 肝癌の治療もこの10年できわめて進歩し、先進的な施設では5年生存率が50%を超えています。一般の癌は5年間生存するということはほぼ治癒となりますが、残念ながら肝癌は頻繁に再発を繰り返すのが特徴の癌ですから、5年後も生存率は低下し、10年生存はきわめて低率です。それでも、この10年の進歩は速さからみて今後生存率はさらに向上すると思います。しかし癌にならないにこしたことはないので、今後は積極的に発癌を防止することといったん発癌しても再発を防止することが目標となります。
 B型とC型肝炎の発癌防止策はまず肝硬変への進行を完全に抑制すること、また、肝生検を積極的に行って不規則性像を認めたらそれを消すことで、これにはGOT,GTPをなるべく下げ、できたら正常化させる治療が有効と考えられます。前者の対策もGOT,GPTの低下ですから、やはりGOT,GPTの正常化が慢性肝炎の治療の基本といえます。
 また、不幸にして発癌する場合でも早期に発見することが重要で、このためには発癌しやすいリスクをもった患者さんを設定して超音波検査を繰り返すことが大切です。
 
 与芝 真 : 肝臓病の生活ガイド, 医歯薬出版, 東京, 1998 より改変
 
 

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