急性肝炎を起こす原因はすべて劇症肝炎をおこします。ただし、肝炎反応を伴わない薬物中毒、虚血なども同じ症状を起こすので、わが国ではひっくるめて劇症肝炎とよんでしまいますが、後述する治療に差がでるので、本来は肝炎かどうかを分けなければなりません。
欧米では劇症肝炎はあくまでも急性肝疾患の範疇で考えていますが、わが国や東南アジアにはHBキャリアがしばしば劇症化します。HBキャリアの場合、すくなくとも肝炎を起こす要因は幼少時からもっていたわけですから、それが劇症肝炎を起こした場合、急性とはいいかねるため、わが国ではかならずしも急性肝炎にはこだわらなくてもよいことになっています。それでは明らかに慢性肝炎であった人の劇症化も劇症肝炎とよんでいいのかというと、それは明確にされていません。それをわが国では“acute on chronic”という病名にして劇症肝炎とは分ける考えもあります。しかし、国の劇症肝炎としての難病援助からはacute on chronicは対象外にされています。しかし、HBキャリアの場合はそれまで本当に肝炎がなかったのかどうか否定するのは無理ですから、拡大すればHBキャリアはすべて対象外にされてしまいます。本来、難病援助の精神からいえばできるだけ幅広く救済すべきなのに、日本の研究者のあいまいさが患者さんに迷惑をかけています。
■プロトロンビン時間が警報
肝細胞破壊が高度になると肝臓の機能の不全状態が出現します。急性肝炎の過程で肝機能の不全状態が出現した場合は劇症肝炎です。多くの症例ではいきなり肝不全症状が出現するわけでなく、まず黄疸などの急性肝炎の症状が出現してその後から肝不全症状がでてきます。黄疸だけで直接基幹大学病院に行く人もいますが、多くは近所の中小病院に行き、場合によってはその病院に入院となります。ここの病院での診断能力が予後を大きく左右するので、やはり病院は選ぶべきです。
患者さんの自覚症状としては、通常の急性肝炎であれば黄疸がでればむしろだるさも取れ、吐き気なども消失して楽になりますが、重症化する例では楽にならずかえって悪化します。吐き気も強まって嘔吐が始まったりします。黄疸発現後の嘔吐の持続はしばしば昏睡の前兆となる重大な症状です。また、他のデータが若干改善しても黄疸が強まる場合は本質的には悪化していることが多く、そう伝えられても安心してはいけません。
データとしてはGOT,GPTの高値はもちろん問題ですが、絶対値としては10,000U/l以上の場合が心配で、それ以下でしたら、かならずしも劇症化するとはかぎりません。まず気をつけるべきはプロトロンビン時間(PT)で、初期に70%以下に低下していればまず最初の注意報です。つぎに50%以下であれば第一次警戒警報、40%以下は完全な警報です。PT40%以下はわが国での劇症肝炎の診断の骨子の1つですが、PT<40%のみで昏睡がなければ劇症肝炎とは診断できません。この状態を急性肝炎重症型という場合もあります。しかし、PTはなかなか低下せず、その代わりにアルブミンやコリンエステラーゼの低下が目立つ例もあります。これらの例も警戒が必要です。
続きは次回の最終回にて。
与芝 真 : 肝臓病の生活ガイド, 医歯薬出版, 東京, 1998 より改変
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