■ 要注意はプロトロンビン時間以外にも8つの検査値
ただし、肝細胞の破壊の進行の穏やかなわが国でいう亜急性型劇症肝炎やそれ以上に遅い遅発性肝不全(LOHF)では、PTの低下や脳症発現が遅れることが多いのです。怖いのはその間黄疸以外めだった症状もなく、なかには元気にご飯を食べていたりして、患者も医師もその間に進行的に肝臓が壊れているのに気がつかないこともあります。また、医師のなかにはわが国の脳症U度(傾眠傾向)にこだわりすぎ、明らかに家族が患者の様子がおかしいと訴えているのに、だれでもおかしと感じるのがあたりまえとなるU度まで放置して、U度になってから大騒ぎしてうろたえるというばかばかしいことも起こっています。
いずれにせよ、注意深い観察眼をもった医師であれば劇症化しつつある急性肝炎と回復する急性肝炎を見分けられるはずですし、そのために診察や採血を繰り返しているのに少しもいかされていないのは残念です。PT以外でデータ上劇症化を疑う重要なものを列挙すると
@ ビリルビンの値の急激な上昇 (発症1週間で20mg/dl 以上)
A 直接ビリルビン/総ビリルビン(D/T)<0.7
B アルブミン値 3.5g/dl 以下
C コリンエステラーゼ値 正常値以下
D BUN値 5mg/dl 以下
E 白血球数 1万以上
F 血小板数 10万以下
G 超音波検査とCT上の肝萎縮、腹水 などです。
劇症肝炎のさいに肝萎縮が起こることは有名ですが、注意を要することは肝臓の萎縮は実際に肝臓が壊れてから相当時間がたって(1週間くらい)はっきりしてくるので、病初期に1回超音波検査やCTを行って肝萎縮がないからと安心はできません。かならず2回調べて大きさを比較する必要があります。
以上のことは、通常の急性肝炎のなかにまれにまぎれ込んでいる劇症化の危険をもつ急性肝炎の判別という、いわゆるプライマリケアの問題であり、こと人の生死にかかわる問題ですから医師会などで十分に教育すべきですし、プライマリケア学会や肝臓学会でも関心をもつ必要があるのにほとんど手が打たれていません。残念なことです。代わりに患者さんが劇症肝炎家族会を組織して注意を呼びかけています。
(以上、ご愛読ありがとうございました。)
与芝 真 : 肝臓病の生活ガイド, 医歯薬出版, 東京, 1998 より改変
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