肝臓病教室

良い医師を見つける・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2006年06月09日
口コミでさがす
 肝臓病、とくにウイルス性の肝疾患では主治医に命をあずけることになるので、よい医師を選ぶのには真剣な努力が必要だと前回述べました。肝硬変、肝癌になってしまってから後悔しても後の祭りという場合もあります。でも、よい医師を選ぶのは意外と難しいものです。最近、単行本や雑誌に病院のランキングや名医のガイドがでています。それも参考になりますが、何が根拠に選んだのかわかりません。ときどき、われわれ事情通の目からみると首をかしげるような選択がなされていることもあります。いちばんよいのは患者さんの口コミではないかと思います。信頼できる口コミは待っていても出会うことはできませんが、現在、全国の肝炎患者の会や各県に患者の会が組織化されているので、その県でもっとも信頼できる医師を何人か紹介していただくのがよいでしょう。
  
      日本肝臓病患者団体協議会
      〒161-0033 東京都新宿区下落合 3-6-21-201  
      電話 03-5982-2150 (平日のみ 10-16時)
      http://members.tripod.co.jp/sin594/
 
 
■ 最後は自分で選ぶ
 実際に選んだ医師が信頼できるかどうかの判断ですが、最終的には自分で判断しなければいけません。そのためには医師にかぎらず、他人を判断できる目をふだんから養っておかなければなりません。賢い患者とは普段から賢い人です。私の勧める判断の方法は、その医師が肝臓病全体に対してどれだけ確かな洞察力をもっているかを知ることです。この洞察力はたんなる知識の詰め込みではなく、どれだけの解析力をもって各症例をみているかその集積で決まります。正当な質問として正確な病名、現在の状態、今後の病気の進行(たとえば3年後、5年後の状態)、肝硬変、肝癌になる可能性とその確率、それを防ぐ有効な治療と成功確率ぐらいは質問してよいと思います。これらは優れた専門医なら、すくなくとも2回程度の診療でおよその見当がつくはずです。厳密には肝生検が必要ですが、そこまでしなくても血液検査と超音波検査、負荷テスト程度の外来検査でも当たらずといえども遠からずという程度の診断がつくはずです。
 大学病院だからとか教授だからと外面的にのみ判断するのも考えものです。B型慢性肝炎の患者さんが地方都市に転勤になるというので、その都市にある大学の肝臓専門の教授を紹介したところ、2回診察をして、ただ「あなたはそのうち癌になる」とだけいわれたと青くなって飛んで帰ってきたという話もあります。これでは困ります。家庭医に紹介してもらうのも一方ですが、その家庭医がどれだけ肝臓病を勉強していて最新の情報をしっているかよって違います。たんに近くの大学病院の先生と顔見知りという理由だけでの紹介では安易すぎると思います。ただし、これもわが国ではどんなに優秀なベテランの専門医でも今年卒業したての研修医でも市医療費は同一料金です。このため、多少とも有名な先生になると患者さんが集中します。診療費はだれがみても変わらないので、患者さんはよい医師にみてもらうのに交通費を上乗せします。わが国の交通網は整備されていますから遠方から新幹線や飛行機でもやってきます。このため私の知るかぎり、患者さんの診察を大事にするよい医師はほとんど膨大な患者さんの診療に精力を費やして皆疲れています。多くの大学病院の医師は診療のほかに多くの責務(教育、研究、学会、会議、論文や原稿の執筆、公的用務など)を背負っているので、相当体力のある人でも下手をするとつぶれてしまいます。わが国にはよい医師を大事にする風土がないのです。
 よい医師を選びなさいといいながら、同時によい医師は患者をたくさん抱えて疲れているというのは矛盾していますが、これがわが国の医療の抱えている矛盾そのものだと思います。今後、専門医と家庭医の間の連携を深めて、もっと能率的な医療体制がつくられる必要があると思います。
 
 与芝 真 : 肝臓病の生活ガイド, 医歯薬出版, 東京, 1998 より
 
 

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