■ 肝臓は沈黙の臓器
前回お話したような大きな予備力や再生力が肝臓病の症状に特徴を与えています。要するになかなか症状がでないのです。神経系など予備力のない、再生力のない臓器であれば初期から症状がでやすくて病気であることがすぐわかって手当を受けることができますが、肝臓の場合は予備力や再生力が大きいのでなかなか症状がでないのです。ですから肝臓は“沈黙の臓器”ともいわれています。とくに現在問題となっているC型慢性肝炎の人の大半が無症状ですし、初期の肝硬変の人もそうです。その代わり症状がでたときは手遅れとなる危険性が大きいのです。
現代のように定期健康診断が発達していなかったころは、約半数の人は肝硬変になってお腹に水がたまってからやっと肝臓が悪いことに気づいたなどという悲劇もあったのです。現代のサラリーマンなどは会社で毎年定期健康診断が受けられるので、早期発見が可能ですが、退職した人、自営業の人、家庭の主婦などではその機会が少ないので心配です。最近「節目検診」と言って40才時の住民検診にHCV 抗体検査が入るようになりました。その他でも健診の機会があればこまめに受けたほうがよいと思います。また、献血のときは日赤で主な肝機能やB型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルスのマーカーを検査し、異常があれば後で教えてくれます。また、日本赤十字社が信頼する医療機関も通知書のなかに記載されています。社会のためになると同時に自分のためにもなりますから進んで献血のよびかけに応じたいものです。
■ 体がだるくなったら肝機能検査
肝臓病には急性に起こるものと慢性に起こるものがあります。どちらかといえば急性の病気のほうが症状はでやすいのです。でも輸血後のC型急性肝炎は症状が乏しく、検査をしなければわからないことが多いのです。急性肝炎の場合とくにA型肝炎では高い熱がでて風邪と間違えられることがあります。初期には黄疸もなく肝臓病とは診断できないことが多いのです。しかし、急性肝炎であれば黄疸より先に尿の色が濃くなります。風邪と思ってもそれに気がついていれば、かならず医師に伝えてください。場合によっては患者さんから肝機能検査を希望したほうがよいと思います。
熱だけしか症状がなくてもすぐ“風邪”とかたづける医師も多いのですが、“風邪”とは、ノドの痛み、咳、痰などの上気道の炎症症状を中心とする症候群であり、医師は診察により、咽頭の発赤、扁桃腺の腫脹、頚部リンパ節腫脹、肺の雑音など、なんらかの所見を確認して(軽ければ所見がないこともありますが)診断するべきであり、熱だけで軽々しく風邪とかたづけるべきではありません。
肝臓病の一般的症状としては全身倦怠感や食欲不振などがあります。あまり肝臓病に特徴的な症状ではないのですが、やはりこれまでにないほど疲れやすくなったとか、朝起きるときに爽快感のない日が続くとか、脂っこいものが食べたくなくなった、お酒に酔いやすく二日酔いが長引くなどの症状があったら一度は肝機能の検査を受けましょう。それから急性肝炎や慢性肝炎の急性の増悪の場合、一般に予後のよい急性肝炎では黄疸がでると食欲不振や全身倦怠感は軽くなるのが普通ですが、なかにはさらにひどくなって嘔吐したり、腰が抜けるほどの倦怠感を訴える人もいます。これは劇症化の予兆になるので、主治医がそれを意識して治療しているかをかならず聞いたほうがよいと思います。命にかかわります。
与芝 真 : 肝臓病の生活ガイド, 医歯薬出版, 東京, 1998 より
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