肝臓病教室

医師による診察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2006年06月12日
 最近は健康診断で肝機能異常が見いだされて来院されることが多く、病歴も簡単で、所見に乏しい人が多いので、つい検査に頼りがちで病歴聴取と診察がおろそかにされる傾向があります。とくに最近は昔の教授回診が“大名行列”といって敬遠されており、また複数の患者さんのいる大部屋ではベッドサイドで討論するとプライバシーの問題にもなるので、回診の前に別室でカンファレンスをやって形だけ教授や医長が回診する病院が増えています。そのためか、若い医師たちの診察能力は落ちているように見受けられます。やはり医師である以上、鋭い診察眼は重要で、名刀のようにつねに研き澄ましている必要があります。
 
名医は触診がうまい
 医師の診察とは患者さんの自覚的訴えをいかに他覚的な客観的事実にかえていくかにあります。このために人間のもっている五感(視、聴、嗅、触、味)を総動員して、場合によっては六感も使って患者さんをみなければなりません。私はよく若い医師に患者さんを「なめるようにみろ」といっています。とくに消化器系の医師は触診技術が重要で、これが下手では話になりません。私自身は多くの肝臓に触れていますから、だいたい触診で肝臓の状態はほぼつかんでいます。どの程度ていねいに触診するかで、その医師の診断能力がわかってしまいます。診察では肝臓のほかに脾臓を触診するほか、種々の肝臓病に伴う症状の有無をチェックします。また、急性肝炎の疑いの人では伝染性単核球症といって頚部リンパ節を腫らす病気もあるので、この点もチェックの要点となります。
 
 
 
 
【 シリーズ ウイルス以外を原因とする肝臓病@  脂肪肝 】
 外の臓器から運び込まれてくる脂肪分や肝臓でつくられる脂肪分が増加し、肝臓での脂肪の代謝や肝臓からの脂肪の放出が減少すると、肝臓の脂肪蓄積量が増加します。それが高度になった状態を脂肪肝と呼びます。原因はいろいろありますが、普段よくみるものとしては栄養過多によるものとアルコールによるものが大半です。
 飽食の時代を反映して過栄養性脂肪肝は増えています。若い人にもたくさんいます。脂肪肝はインスリン抵抗性を背景にして発症する非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)のような重症例を除けば、可逆的な病気なので、あまり深刻な病気ではないのですが、身体が重く疲れやすかったりして爽快感が損われます。また、脂肪肝の人は血中のコレステロールや中性脂肪の値が高く、動脈硬化が促進されることも心配です。
 アルコール性脂肪肝はアルコールの肝障害作用により起こりますが、わが国では飲酒とともに大食する人が多いので、大半の人が過栄養性の要素をもっています。中年のサラリーマンの半数は脂肪肝といわれています。
 診断ではコリンエステラーゼ値やγGPT値が上昇するほかに、超音波で肝臓が高輝度になるのが特徴です。
 治療薬はいりません。暴飲暴食を慎み、適度に運動する必要があります。
 
 与芝 真 : 肝臓病の生活ガイド, 医歯薬出版, 東京, 1998 より
 
 

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