コラム

消化器内科の医師によるコラムです。
12    C型慢性肝炎の増悪期について(改訂版) 教授 与芝 真彰 2005年07月19日
C型慢性肝炎の増悪例を見分ける  
    
                                 教授 与芝 真彰 
 
1.我が国ではC型慢性肝炎は40%が肝硬変に、25%が肝癌に進展
 
 C型慢性肝炎の患者さんは最終的に肝硬変、肝癌に進展することで恐れられています。どの位の数の方がそこまで進展するかについては国によってその頻度は異なりますが、我が国では40%が肝硬変に25%が肝癌に進展するとされています。米国ではこの半分位で黒人の方が進展し易いとされています。
 
ところで、多くの患者さんを診察していると、C型慢性肝炎の進展は必ずしも一定でないことに気づきます。30代、40代と長期間の比較的肝機能の安定な期間が続いた後、一般的に免疫力の低下が想定しうる50歳代後半から60歳代になったころから急激な肝炎の進展をみることが多く、そうなると比較的短期間のうちに肝硬変、肝癌に進展する例が多くみられます。慢性肝炎と肝硬変を臨床データから見分ける研究が数多くなされていますが、必ずと言って良いほど年令が重要な因子となっていることもこの事実を裏付けているでしょう。
 
 B型慢性肝炎は免疫力の旺盛な青年期に悪化することが多く、C型慢性肝炎のような中年をすぎてからの悪化はB型慢性肝炎ではまれな現象です。自己免疫性肝炎や原発性肝硬変は中年女性が発症する事が多いのですが、これと似ています。この年令になると免疫の変調が起こるのでしょうか?
 
 この増悪期の後に肝硬変、肝癌というC型慢性肝炎の患者の最も恐れる事態がくるのですから、この増悪期を的確に察知し、それ以上肝炎の進展を阻止する必要があります。というよりむしろ、元来安定期であれば治療をしなくても肝炎は進行しないのですから、何もする必要がない訳です。この時期は治療よりも定期的に検査を行い、急激に肝炎が進展する増悪期を見逃さないようにすることが大切になります。
 
2.コリンエステラーゼ値と血小板数の低下に注意
 
 私の経験に照らして悪性期の特徴を挙げると、
 
 a).GOT、GPTが100(IU/l)以上に上昇して低下しなくなること
 b).肝臓の蛋白合成の指標であるコリンエステラーゼ(ChE)値が低下すること
 c).線維化と脾機能亢進を反映する血小板数の低下すること
 などです。(下図参照)
 
 コリンエステラーゼはアルブミンと同じ意義をもつのですが、最近測定法が改善され、アルブミンより細かい動きがとらえられるのでこのほうが鋭敏に推移します。もっとも、血小板数は抗血小板抗体をもつ人では肝炎の進展度と無関係に低下しますし、コリンエステラーゼは栄養の影響を受けるので両者がコンスタントに低下することを確認する必要があります。両者が低下することは、肝臓の実質部分が減少し、線維に置き換わることを意味するので、肝炎の進行をとらえる点で合目的的といえます。
 
 私はGOT、GPTが100(IU/l)以上に上昇して低下しない、いわゆる“高止まり”現象を起こした患者の方には2ヶ月の間隔で定期的に検査をしていただき、半年この2つの検査データ(コリンエステラーゼ、血小板数)の変化を注意深く観測します。そして、両者の値がともに前回の検査より明らかに低下してきたら、必ず肝生検をお勧めしています。
 
 私達の検討では、コリンエステラーゼがコンスタントに前値の80%以下に低下したらまず進行していると考えて良いという結果が得られています。その際肝生検をすればまず必ずA2F2以上の組織が得られます。
 
3.増悪期の治療は肝機能の安定と肝炎の阻止
 
 増悪期になると、ウルソや漢方薬は勿論強力ネオミノファーゲンシー(R)(SNMC)100mlですら進行を食い止められない症例が多いのです。さらにC型肝炎ウイルスがゲノタイプ1b というタイプで、このタイプのウイルスが血中に多量に存在する場合は、インターフェロン(IFN)も効果がないことが予測され、治療に難渋することになります。一般には、PEGインターフェロン(IFN)に経口抗ウイルス薬(リバビリン)の併用療法が行われています。当院では独自に免疫抑制薬(サイクロスポリン)の併用療法を行っています。サイクロスポリン併用ではウイルスの排除率は上昇しますし、それ以上にGOT、GPTの正常化率が著しく上昇します。つまり、たとえウイルスが排除に成功しなくても、GOT、GPTの正常化ないし低下がみられれば、それ以上の肝炎の進展を阻止することが期待できます。よって、増悪期の治療はインターフェロンを中心とした併用療法をおこない、肝機能の安定と肝炎を鎮静化する必要があるのです。
 
 いずれにせよ、インターフェロンをどう使うかは、主治医の知識と腕にかかっています。患者は主治医を信頼し、まかせるほかないのですが、主治医の説明をよく理解できるよう、患者自身もC型慢性肝炎に対する正しい知識をもつことが大切といえます。
 
略歴 与芝真彰の略歴はコラム1を御参照下さい。
 


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更新日:2007/11/11

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