消化器内科という専門の立場上、“がん”という病気と接する機会がかなりあります。研修医になって、一年に20人から30人近くの人を看取った経験があります。私の上司(指導医)はものすごく人間的な人で、いわゆる尊厳死的なものを自然におこなっていました。御家族にも御本人にも慕われるすばらしい医療をみせてくれました。そのころは、癌を告知するしないは半々で、告知しないでそのまま、、、の人も多くいらっしゃいました。はじめは、弱い研修医という立場上、がんを疑う患者さんに強くせまられ、たじろがないよう必死でしたが、いざ末期的な状態になると知ってか知らずか、患者さんは病名のことに触れなくなります。この人たぶん知ってるなあと思いながら、お互い触れないようにしているなんてことがざらにありました。
最近では事情が全く異なります。今やがん告知なんてナンセンス。マスコミや書物のおかげで、薬や治療がばればれで、治療の面から病名がばれます。患者さんに「この医者は一生懸命隠しているので、気づいていないふりをしてあげよう。」などと医者が気遣いされてしまうくらいです。(ホントですよ) その証拠に以前とくらべてがん告知が話題にならなくなりましたよね。誰だってかかりたくない病気だし、宣告されたくないですけど、告知するしないは微妙なウソは通じることもありますが、かえってばれたときに医者・患者間の信頼が損なわれることにもつながりかねません。私は、たとえば胃癌などを発見した際には、言葉を選びますが正直におはなししています。特に男性の方はある程度正直に言わないと、仕事を優先してしまい治療が遅れる事があります。
今や問題は告知の方法と告知してからのつきあい方です。「がんです。放っておけばあと何年、手術すれば○△%の成功率です。どうしますか?」ではなくて、もっとその患者さんの人間性、生活背景を考慮した”配慮ある告知”が必要なのではないでしょうか。うちは町医者という都合上、病気をみつけても手術などの治療は大きな病院へ行っていただいています。何が正解なんてわかりませんが、その中で”配慮ある告知”を実践しています。「行った先で何か疑問点があればいつでもいらして下さい。」といって送りだしています。そうすると実際に手術の前後を問わず当院に相談に来られます。私も自分の家族と思って相談にのります(もちろんお金なんてとりません)。時には病院へ出向いていって、主治医に患者さんや御家族の考えなどで言えなかったことなどを代わりに伝えて、町医者としての自分にできることを精一杯しています。「いつでもそばには私がいるから。」と思ってもらい、そうすることによって、患者さんや御家族を孤独にしないこと、これがいい告知であると考えています。
人対人、人間対人間、何をしてあげたらいいのかは、自分だったら何をして欲しいかを考えればおのずと答えは見えてきます。医者がその感性をみがくこと、患者さんに敬意をもって接すること、それを忘れなければ配慮ある告知はできると信じています。
(大塚内科医院ホームページのコラムより)
略歴 大塚 龍彦 昭和39年12月25日 神奈川県生まれ
平成02年 3月 聖マリアンナ医科大学卒業
平成04年 5月 川崎市立川崎病院研修終了
平成04年 6月 昭和大学藤が丘病院消化器内科員外助手
平成07年 4月 大塚内科医院 院長
平成07年 1月 昭和大学藤が丘病院消化器内科特別研究生
平成11年 1月 昭和大学藤が丘病院消化器内科普通研究生
所属学会
日本内科学会
日本消化器病学会
日本消化器内視鏡学会
<昭和大学藤が丘病院消化器内科ホームページ担当者より>
今回は消化器内科OBの大塚先生にコラムの転載をお願いしました。
大塚内科医院ホームページは更新が頻繁におこなわれています。
とくに表紙の写真はこだわりを感じます。(湘南鎌倉周辺の写真を随時更新)
小生はコラムを毎回楽しみにしています。
是非、一度ご覧ください。(リンク集)
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