みなさんこんにちは。日本では、B型肝炎やC型肝炎というウイルス肝炎が有名です。すなわち、慢性肝炎の多くがB型肝炎やC型肝炎なのです。しかし、慢性肝炎の原因はこれだけではありません。次にあげる慢性肝炎も存在しますので、少し説明を加えて、解説したいと思います。
1. 自己免疫性肝炎(Autoimmune hepatitis; AIH)
中年女性に多い病気です。生体は外界から侵入してくるウイルスや細菌などを自分でないもの(”非自己”)として免疫反応を起こして排除する働きを持っています。自己免疫病(一般に膠原病と呼ばれる)は自分のもの(”自己”)に対して免疫反応を起こしてしまう病気で、自己に対する内乱と説明できます。
自己免疫性肝炎は、肝細胞表面の構成部分の自己に対して免疫反応を起こす病気と推定されています。通常、発見されたときには慢性肝炎に至っていることが多く、急激に肝硬変になってしまうこともあります。血液中の抗核抗体陽性やIgG(免疫グロブリンの一種)高値で確定診断します。その他、血沈亢進やリウマチ因子陽性なども参考になります。また、他の自己免疫性疾患(関節リウマチや慢性甲状腺炎など)を合併することもあります。女性の肝障害でウイルス性であることが否定されたら、次にこの病気を考える必要があります。
治療としては、副腎皮質ホルモン剤(ステロイド剤)を使用します。基本的には一生服薬する必要があります。確かにステロイド剤はよく効きますが、この薬には胃潰瘍、糖尿病、骨粗鬆症などの副作用を起こすので、なるべく少量にする工夫が必要です。
2. 原発性胆汁性肝硬変(Primary biliary cirrhosis; PBC)
自己免疫性肝炎にならんで自己免疫性疾患を代表する肝疾患の一つで、肝臓の中にある胆汁を流す経路(胆管)が傷害され、最終的には肝硬変となり黄疸や痒みが出現します。中年以降の女性に多くみられます。血液検査では、GOTやGPTの上昇よりもALPやγ-GTPの上昇が特徴的です。抗ミトコンドリア抗体陽性やIgM高値で診断可能ですが、肝生検(肝組織の一部を針で採取)で病理診断(顕微鏡で調べること)することが大切です。
治療としては、ウルソデオキシコール酸が第一選択薬です。特に食道静脈瘤は注意すべき合併症の一つです。また、黄疸が高度になる(ビリルビン値10mg/dl以上)と、余命は半年とされています。従って、欧米では肝移植のよい適応とされ、日本でもすでに生体肝移植の適応とされています。
3. 原発性硬化性胆管炎(Primary sclerosing cholangitis; PSC)
胆汁の通り道である胆管が細くなってしまい、胆汁の流れが悪くなって、それが原因で肝機能が低下するという病気です。男性のほうが罹りやすく、20代および50代に比較的多くみられます。初期症状は、黄疸が出たり消えたりします。進行すると肝硬変になります。黄疸に加えて、疲れやすい、食欲がない、腹水がたまる、浮腫などの症状が出てきます。診断は通常、特殊なMRI(MRCP:胆管を映し出す特殊な検査)で行います。
原因不明であり、残念ながら根治的な治療法はありません。胆汁の流れをスムーズにする薬(ウルソデオキシコール酸)が有効であったという報告があります。欧米では肝臓移植が行われることがあります。胆管がんができることがあり(10?15%)、注意が必要です。潰瘍性大腸炎という病気(慢性の腸炎)を合併することもあります。
4. 非アルコール性脂肪性肝炎(Non-alcoholic steatohepatitis; NASH)
飲酒をしないあるいはたまに少量を飲むだけの人が、アルコール性肝障害と同じような肝臓の状態になる病気です。症状がほとんどないまま肝硬変へと進行していきますが、よくみられる脂肪肝との鑑別が容易でなく、見過ごされるケースも少なくありません。最近、新しい生活習慣病として注目されています。飲酒しない人でも、過食や運動不足などから中性脂肪が蓄積し、脂肪肝になっている人は少なくありません。
米国では、人口の2?3%がNASHとされ、50代前後の女性で、肥満や糖尿病、高脂血症などの人に多いとされています。しかし、日本人の頻度は1%程度と言われていますが、大規模調査が期待されます。
NASHは、脂肪肝に第二段階の刺激である活性酸素によるストレスなどが加わって起きるといわれていますが、詳しい原因は不明です。糖尿病に関係するインスリン抵抗性(糖代謝に関係するインスリンが効きにくくなる状態)が要因の一つともいわれています。確かに、肥満で細胞に脂肪が蓄積すると、その細胞が出す物質の作用でインスリン抵抗性が増しますが、この悪影響が肝臓に出たのが、すなわち「生活習慣病の肝臓版」がNASHではないか推定されています。
現在、NASHの確定診断には、肝生検(肝臓の組織の一部を針で採取)で病理診断(顕微鏡で調べること)しかありません。
治療法として、糖尿病治療薬などがよく使われ、インスリン抵抗性改善薬や一部のビタミン剤、ウルソデオキシコール酸などの肝臓病治療薬により、脂肪肝や肝機能が改善したとの報告がありますが、確立した治療はまだありません。
5.原因不明の慢性肝炎(Cryptogenic chronic liver disease)
上記1〜4の慢性肝炎でもなく、もちろん遺伝的な慢性肝炎(ウイルソン病など)でもないものが少なからず存在します。最初は原因があったかもしれませんが、見つかった時点では検索しても分からないものも含まれます。頻度は少ないですが、肝臓専門外来では、時々経験します。
略歴 齋藤孝仁(さいとうたかひと) 昭和44年8月24日 三重県生まれ
平成08年 3月 金沢大学医学部医学科卒業
平成08年 4月 金沢大学医学部第一内科入局
平成13年 3月 金沢大学大学院(医学研究科内科系専攻内科学)卒業
平成13年 4月 厚生労働省医薬品医療機器審査センター 臨床医学審査官(厚生労働技官)
国立病院東京医療センター総合診療科 非常勤医師(兼任)
平成15年 4月 昭和大学藤が丘病院消化器内科入局
平成15年 5月 昭和大学藤が丘病院消化器内科助手
資格/学会など
医学博士(甲)
死体解剖資格(病理解剖)
介護支援専門員(ケアマネージャー)
日本内科学会 認定医/専門医/指導医
日本肝臓学会 認定専門医
日本消化器病学会 認定専門医
日本消化器内視鏡学会 認定専門医
日本感染症学会 認定院内感染制御医(ICD)
日本医師会 認定産業医
日本医師会 認定健康スポーツ医
米国内科学会会員
研究領域
肝臓病学(肝臓病理、肝硬変、肝癌、自己免疫性肝疾患)
消化器病学(慢性胃炎)
臨床試験(治験などの医薬行政関連)
リスクマネージメント(医療安全管理)
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