2008/4/14


1     1章  REUNION〜再会〜
更新日時:
H17年11月2日(水)
風が過ぎ去るような音が聞こえていた私の耳から、その音は消えた。
その代わりに感じたのは、澄んだ空気の香り。
 
この、懐かしい香りは・・・。
 
私は、期待を胸に閉じていた瞳を、ゆっくりと開けた。
私の目に最初に飛び込んできたのは、見覚えのある食器棚に、見覚えのあるソファー。
そして・・・テーブルとイス。
私は、さらにあたりを見渡す。
再確認した私は、「ホッ」として、目の前のソファーに腰を降ろす。
さらに、両手を口元に当てて、つぶやく。
 
「真音(マナト)さんの・・・言った通りだった。」
 
って。
それは、今から1時間前に、話は戻る・・・。
 
 
私が元の世界に戻ってから、何も起らないまま1年が過ぎようとしていた。
高校2年生になった私は、あの時と同じように、明日から夏休みを迎える事になった。
そして、その1週間前から、ある夢をよく見るようになった。
その夢は、見たこともない世界だった。
町のいたる所に『水』が流れていて、まるでそこは『水の世界』と思えるくらい『水』が目に付いた。
そして、そこにはとても大きなお城があって、そこには綺麗なお姫様と、かっこいいお目付け役の人がいるの。
そこに、私と蒼輝とトーワくんと、あともう一人・・・。
顔はみえないんだけど、背の高い男の人がいて、4人でそのお姫様の前に立っている。
そこで、いつも目が覚めちゃうんだけど、その夢を1週間ずっと見続けていた。
2日連続で見た時に変に思った私は、親友の渚に打ち明けた。
すると、彼女は、
 
「きっと、それは、向こうに行く前触れだよ!」
 
と即答し、
 
「向こうに行く準備をしておかないと!」
 
なんて言っていた。
私は、半信半疑のまま、一応向こうの世界に行く心づもりはしていた。
だけど、彼女の言葉は現実となった。
4日前、例の書物に文字が現れたの。
 
『1周まわった時、再び扉は開かれる。』
 
その文章のまま、去年向こうへ行った同じ日と同じ時刻に、私は向こうにまた導かれるだろう。と真音(マナト)さんは言った。
だから、今私は、全ての準備をして、渚の部屋にいた。
彼女の部屋の壁時計に目をやる。
11時をさしていた。
落ち着かない私の横で、さらに落ち着かない渚は、携帯をにぎりしめながら、ある人の連絡をイライラしながら待っていた。
 
「ちょっと・・・渚、落ちついたら?」
 
見るに見かねてそういう私に、「そんな事言っても〜。」と愚痴る渚。
さらには、「もうっ!」と怒ってテーブルを叩く。
その音に驚いて、私は食べていたお菓子を落としてしまう。
テーブルの下にまで転がってしまったお菓子を、私は頭をつっこんで拾う。
その時、「フッ」と渚の右足首が目に止まった。
 
「ねぇー、渚。」
 
彼女を呼ぶ私に、「何よっ!」とやっぱり機嫌の悪い彼女。
私に対して怒ってるんじゃない事は、わかっていたので、私はあえて突っ込まずに、そのまま続ける。
 
「渚、まだ足首に『あれ』付けてるの?」
 
と言いながら、自分の足首を指さして、「ここん所に。」と言う。
それには、彼女は「あ〜、あれね。」と言いながら、右足をテーブルの下から出してくる。
普段は靴下を履いているので、気付かないんだけど、今みたいに素足の時はすぐに目に付く。
『あれ』とは、彼女の右足首についてるアンクレットの事。
その先には、小さな『鍵』が付いている。
渚が言うには、その鍵は何の鍵なのかはわからないみたい。
だけど、昔から渚の家で代々守られてきた大切な鍵。
さらには、それはそこの家の長女が生まれた時から、右足につけなければいけない。という決まりがあるらしい。
何でそんな事をしないといけないのかは、全くわからないみたいなんだけど、それがしきたりみたいで、渚もそれにしたがって、はめられてから一度もそれをはずした事がないのだという。
その時だった。
渚の握っていた携帯が、突然鳴り響いた。
渚は、瞬時に携帯に出る。
 
「真音(マナト)?今、どこにいるの?」
 
大声でいう渚。
真音(マナト)さんは、今日はお寺の行事で地方に行っていた。
予定では、夕方には戻って来れるはずだったのに、高速道路が大渋滞で、まだ帰ってこない。
真音(マナト)さんは、私が向こうの世界に行くために、いろんなアドバイスや忠告をしてくれるから、とても頼れる人なの。
そんな彼がいない状態で出発なんて・・・ちょっと、心細い。
もう時期、ここへ帰って来てくれるのだと、期待したんだけど、
 
「えぇ〜!まだ、そんな所にいるの!!」
 
と渚は絶叫する。
そして、携帯から口を離すと、私の方を見る渚。
 
「完璧、間に合わないよ。」
 
思わず、「うっそ〜。」と嘆く私。
その時、渚が「えっ?何?聞こえない!」と携帯を思いっきり耳にあてて、真音(マナト)さんの声を聞く。
そして、「わかった、ちょっと待って。」と言うと、携帯のボタンを押して、スピーカーにきりかえた。
 
「いいよ。これで、翠にも聞こえるから。」
 
と渚は携帯に向かって叫ぶ。
彼女の答えに、「翠ちゃん、聞こえる?」と真音(マナト)さんは私に話しかけてくる。
私は、「聞こえるよ!」と真音(マナト)さんに答えた。
 
「翠ちゃんに、どうしても、試してほしい事があるんだ。」
 
真音(マナト)さんの言葉に、私と渚が二人同時に、「試してほしい事?」と口にする。
 
「前にも話したけど、向こうの世界は『念じる世界』だ。
それで、翠ちゃんはこっちに戻ってきてしまったんだしね。
だから、今回はそれを利用してみたいんだ。」
 
真音(マナト)さんの言葉に、
 
「何をすればいいんですか?」
 
と彼に聞く。
 
「樹木に前と同じように吸い込まれたら、強くこう思って。
『緑豹国の私の部屋に辿り着きたい。』って。」
 
真音(マナト)さんはそういうと、さらに続ける。
 
「そればっかりを、思ってほしいんだ。
もし、その願いが通じたら、翠ちゃんは『そこ』に辿り着ける。
それができたなら、今度からそうやって安全な場所を、こっちが指定して向こうの世界に行く事ができる。
ハンターのいる森を避けることができるんだ。
だから、是非やってみて。」
 
真音(マナト)さんの言葉に私は、「わかりました。」とシッカリと返事をしながら頷いた。
 
「それから、もう1つ。」
 
真音(マナト)さんの言葉に「まだあるの?」と私のかわりに渚が突っ込む。
 
「翠ちゃんが見た夢なんだけど。」
 
真音(マナト)さんは、そういうとちょっと言葉につまる。
 
「ハッキリいいなさいよ!」
 
と突っ込む渚に、
 
「たぶん、あれは今回翠ちゃんが『行かないといけない世界』なんだと思うんだ。」
 
「どういう・・・意味ですか?」
 
と聞く私に、
 
「向こうの世界のどこかに、その『水の世界』はあるんだと思う。
そして、それは簡単には行けない場所で、そこに行くにはたくさんの試練や、越えないといけない物が出てくるんだと思う。」
 
そして、さらに続ける。
 
「そこに着くまでに、きっと翠ちゃんは、また自分を責めてしまう事があるかもしれない。
だけど、絶対に自分の存在を否定しちゃだめだよ。
こっちに、戻ってきてしまうからね。
何が何でも、そこにいるんだ。
夢に見た『水の世界』に辿り着くまでは。
夢をみたのは、翠ちゃんにそこに辿り着かせる為に、本が見せてくれたんだと思う。
いいね。その『水の世界」に着くまでは、絶対に自分を否定しない事。わかった?」
 
真音(マナト)さんの言葉に私は、「わかりました。頑張ります。」と答えると、自分に改めて気合を入れる。
最後に、「気をつけて、いってらっしゃい。」と真音(マナト)さんは言うと、電話を切った。
気付けば、もうわずかな時間しかなくて、私たちはバタバタと部屋から飛び出し、例の樹木の元へと急いだ。
一年前と同じで、樹木は金色に輝いていた。
 
「翠!もう時期12時になる。
ちゃんと無事に帰ってきてね。」
 
渚はそういうと、私をギュッと抱きしめた。
その時、樹木が力強い輝きをみせた。
 
「じゃーね。」
 
私はそう言って渚から離れると、両手を樹木に合わせた。
あの時と同じ。
手を合わせたと同時に、私は「アッ」という間に、樹木の中に飲み込まれた。
 
辿り着いた先は、念じた通り『緑豹国の私の部屋』だった。
という事は、真音(マナト)さんの言った通り、念じればこっちの希望も聞いてもらえるって事?
ここに着いた事にも驚きだけど、こっちから指定してみよう!と考え付いた真音(マナト)さんに私は、驚いていた。
ホントにあの人の頭は・・・どうなっているんだろう?
私より、真音(マナト)さんが来た方が、緑豹国は安泰するんじゃないの?と真剣に思ってみたりする。
その時、部屋のドアがノックされた。
私は扉に目を移す。
いきなりの事で、何も言えない私だけど、外の人が、「入るよ。」と声をかけて扉を開ける。
開いた扉から見えた人は、紫紺色の髪をした人だった。
 
「ヒビキさん。」
 
目の前の人を見て私は、自然と笑顔になって彼の名前を呼ぶ。
私の声に、ヒビキさんの後ろにいた人が、ヒョコっと顔を出す。
 
「翠さんっ!」
 
彼女はそう叫ぶと、私の所へ走ってきて、私に抱きつく。
 
「ご無事で何よりでした。」
 
彼女のその言葉に、「ランさんも元気そうでよかった。」と笑顔で答えた。
そんな再会を楽しんでいる私たちに、ちょっと申し訳なさそうにヒビキさんは、話しかけてくる。
 
「来て早々、申し訳ないんだけど、翠ちゃんには色々聞きたいことがあるんだ。」
 
ヒビキさんの言葉に、ランさんは私から体を離す。
私も、ヒビキさんを見て「何ですか?」と早速聞いてみる。
だけど、ヒビキさんは「とりあえず。」と言いながら優しく笑うと、
 
「前回来た時に、翠ちゃんに紹介できなかった人がいるんだ。
その人にまず逢ってほしいんだ。
話は、それからって事で。
とりあえず、司令塔室で翠ちゃんが来るのを待ってるから、行こうか。」
 
ヒビキさんは、そういうと部屋の扉を開けて、私に外に出る事を促す。
私は、うなずくとヒビキさんの方に向かって歩いた。
 
司令塔室に向かいながら、私はずっと考えていた。
一体、誰に逢うのだろう?って。
前回来た時に紹介されてないって事は、逢ってないって事よね?
誰に、逢ってない?
チナリさん?って・・・彼女は亡くなってるから違うし。
あっ!蒼さま?
いくらなんでも、生きてないよね・・・。
って、誰?
すっごい、気になって、とうとう側にいるヒビキさんに聞いてしまう。
 
「今から逢う人って・・・どんな人なんですか?」
 
恐る恐る聞く私に、ヒビキさんは正面に向けていた顔を、私の方に向ける。
 
「この国で一番偉い方だよ。」
 
それって・・・タカさんより偉いって事?
じゃあ・・・すっごい頑固オヤジ。
いや、頑固ジジイ?
 
えぇ〜!!嫌だよぉ〜。
タカさんと初めて逢った時、私、グダグダ言われて叱られたんだよね。
また怒られるのかな〜。
 
心は、思いっきりブルーになっている私。
本心は、この場から逃げ出したい。
そんな人はいいから、私は蒼輝に逢いたい!
だけど、私の気持ちとは正反対で、前を歩いていたヒビキさんは足を止める。
はぁ〜。・・・着いちゃったよ。
 
トホホの私。
そんな私をほって、ヒビキさんは扉をコンコンとノックする。
 
「お連れいたしました。失礼します。」
 
ヒビキさんはそういうと、扉をユックリと開ける。
緑豹国では、ヒビキさんはかなり位(クライ)が高いはず。
なのに、こんな言葉づかいするなんて!
中にいる人が、ますます恐くなった私。
扉を開けられて、中に入るようにヒビキさんにうながされても私は、躊躇してしまう。
 
「どうぞ。あちらにいらっしゃる方のもとへ、行って下さい。」
 
ヒビキさんは、私にそういうと、「さぁ。」と私の背中を押す。
私は、重い足取りをユックリと前に動かす。
下を向いて歩いていた私は、少しずつ目の前に立っている人に目を移す。
その人は、私に背を向けて、パノラマ状態の大きな窓ガラスの前に立っていた。
そこから、緑豹国を見ていた。
その人が、着ている服は、背中に刺繍が施されていた。
最初は、窓から入る光に反射して、何かわからなかったけど、近付くに連れてそれが何かわかった。
青色と紫色が使われた、本当に綺麗な花。
見たこともないようなその鮮やかさと美しい花に、私は引き寄せられるように、その目の前の人に近付く。
背中の刺繍から、徐々に目線を上に上げていく。
そして、彼の髪に目がいった。
短くカットされた彼の髪色はなんと・・・黒。
黒って事は、豹にはなれない『ただの混血人間』って事だよね。
それにしても意外!
だって、この国で一番偉い人だというから、てっきり豹になれる人かと、思ったんだけどなぁ〜。
ちょっとがっかりの私。
だけど、その一方で、「でも、ただの混血の人が、偉い理由って・・・何なの?」と思ってしまう。
そして、注意深くその人を、観察していた時だった。
 
「あーっ!」
 
そう言って私は、目の前の人の黒髪の、毛先の数十センチ程に向かって指をさす。
だって、それは黒じゃなくて、なんと・・・緑だったのっ!
 
って事は、もしかして!
 
私がそう思った時、目の前の彼がユックリと振り返る。
彼の顔を見た時、私は一瞬心臓がつかまれたような衝撃を受けた。
何も言えないし、動けないし、まばたきだって出来なくて、ただ目の前の彼を凝視するだけ。
そんな私に、彼は何も言わずに近付いてくると、私の目の前でひざまづく。
そして、私の右手を取ると、右手の甲に軽くキスをした。
 
「ようこそ、いらっしゃいました。」
 
彼はそういうと、ひざまづいたまま私を見る。
 
「わたくしが、緑豹国の王、蒼輝です。
もう一人の緑豹国の王女、翠さまに逢えるのを、楽しみにしておりました。」
 
そして、蒼輝はとても優しく笑った。
一体、これは何なの?
ドッキリ??
訳が分からない私は、何もいえずに、ただたたずんでいた。
いつまでも反応を見せない私に、たまらずヒビキさんが笑い出す。
 
「何、笑ってんだよ!」
 
といいながら、蒼輝は私から手を離すと、その場で立ち上がる。
 
「蒼輝が、変な事するから、翠ちゃんが困惑してるだろ?
あ〜、おかしい。」
 
とゲラゲラ笑っているヒビキさん。
「お前が、王らしくしろって言ったんだろ?」とヒビキさんにグチグチ言いながら、蒼輝は目線を私に移す。
 
「王の姿を前回見せられなかったからさ。
今回は、ちゃんと翠を『王』として迎えたくてな。
感動した?」
 
蒼輝は、そういうと私の顔を覗いてくる。
私は、「ビックリしたよ。」というと、彼に笑いかける。
私の声と、私の笑いを見た彼は、一歩私の方に踏み込んでくる。
自然と、私は彼の胸の中にスッポリとはまってしまう。
彼は両腕で、私を抱きしめる。
 
「おかえり、翠。」
 
彼の言葉に、私は「ただいま」と答える。
この胸の中で私は消えてしまった。
そして、またこの胸に戻ってこれた。
1年も経ってしまったけど、無事に戻ってこれてうれしかった。
その時、私の頬に、彼のサラサラの髪が触れた。
私は、横目で彼の髪を見る。
近くで見ても、毛先数十センチ以外はやっぱり黒髪・・・。
それを改めて感じた時、私の心の中で、ずっと不思議に思っていた事が、再度めばえた。
 
「ねぇー、蒼輝。」
 
私の声に彼は、「なに?」と答えてくれる。
 
「私が前に蒼輝に逢った時は、生え際辺りが黒かったのに、今は逆転してるよね。
それって、黒い髪がこれだけ、伸びてきたって事だけど・・・。」
 
私は少し考える。
そして、出た結論は・・・。
 
「混血の人って、髪が伸びるの早いの?」
 
その質問に、もちろん蒼輝は、全く意味がわからなかったみたいで、「ん?」と聞き返してくる。
 
「だって、私の世界では1年でも、ここではう〜んと・・・73日でしょ。
って事は、2カ月ちょっとなんだから、普通なら、こんなに黒髪が伸びるわけないもん。」
 
それには、蒼輝はただ笑うだけ。
「なんなのよ〜!」と怒る私に、答えてくれたのはヒビキさん。
 
「こっちもちゃんと1年だったよ。」
 
それには、今度は私が「えっ?」とヒビキさんに聞き返してしまう。
 
「たぶん、翠ちゃんがこっちの世界と交じり合った時だけ、時間が変化するんだろうな。
だから、翠ちゃんが向こうの世界に帰ったら、こっちとは交わりがなかっただろ?
なんで、俺たちも翠ちゃんが戻ってから、1年ちゃんと過ごしたんだよ。」
 
ヒビキさんの言葉に、私は「そうなんだー。」と理解する。
その時、蒼輝が私の髪に優しく触れる。
ヒビキさんの方を見て、よそ見していた私は、蒼輝に目を移す。
彼は私に優しいまなざしを向ける。
 
「1年は・・・長いな。」
 
そして、彼はまた私をギュッと強く抱きしめた。
彼に抱きしめられながら、1つ気が付いた事があって、さらに聞いてしまう。
 
「蒼輝が身に付けてるこれって・・・例の王だけが着る『マント』?」
 
それには、「うん。」と即答の彼。
って事は、あの綺麗な刺繍の花は、ブルーキングと呼ばれる幻の花?
でも、あれどっかで見たことがあるような・・・。
考え込む私に、急にヒビキさんが、
 
「これだろ?」
 
と私に声をかける。
私は、蒼輝の胸の中から、またヒビキさんの方に目をやる。
すると、ヒビキさんは例の書物に、描かれている華の刺繍を、私の方に見せて、指で「コレコレ。」とさしていた。
 
そうだっ!デザインがちょっと違うけど、花自体は同じだっ!
って、事は、あの書物はやっぱり緑豹国に関係のある大切な物だったんだ。
私がそう納得した時、突然蒼輝の「あのさ〜。」という声が、耳に入ってきた。
その声は、思いっきり力が抜けているような声というか、あきれかえっている声というか・・・そんな情けない声だった。
私に言ったのかと思って、蒼輝を見るけど、蒼輝が見ていた先は、ヒビキさんだった。
 
「勝手に、翠の心を読むなよ!
それに、今再会を楽しんでんだからさ。
邪魔しないでくれ。」
 
だけど、そんな蒼輝の言葉は却下。
普通に、ヒビキさんは手に持っていた書物を開くと、イスに腰をかける。
 
「悪いけど、そういう事は後にしてくれ。
とにかく、今は時間がない。
翠ちゃんも、蒼輝も、そこに座ってくれ。」
 
淡々とした口調でいうヒビキさんに、呆気に取られているのは私。
だけど、ヒビキさんが急いでいる理由を知っているのか、蒼輝も簡単に納得すると、力を入れていた腕を放し、私を近くにあったイスに座らせ、自分も私の横に座った。
その時、扉が開き、タカさんとトーワくんが入ってきた。
 
「おっ!翠。無事に戻ってきたようじゃな。」
 
タカさんに、私は「はい。」と答える。
タカさんと違って、ハイテンションで元気いっぱいなのは、やっぱりトーワくん。
 
「わぁ〜い!翠ちゃんだぁ〜!!」
 
と私の元に猛ダッシュしてくる。
だけど、走り出してすぐに、タカさんに服をひっぱられて、その場で顔からベタンと地面に倒れこんでこけてしまう。
 
「いたぁ〜い!!」
 
と顔をナデナデしているトーワくんに、タカさんもヒビキさん同様「時間がないんじゃ。」と言う。
そして、泣き顔のトーワくんを強引に席に座らせると、タカさんもイスに座る。
目線は、ヒビキさんの方に向け、「始めようか。」と声をかける。
ヒビキさんは、うなずくとある箱を出してきた。
それは、オルゴールとかでよくあるような、木で出来た頑丈な宝石箱。
見た感じ鍵穴はついていない。
 
「これが・・・何か?」
 
とヒビキさんに聞く私に、答えたのは蒼輝。
 
「これ、開かないんだ。」
 
「あか・・・ない?」
 
驚いて聞き返してしまう私に、ヒビキさんはさらに詳しく語る。
 
「1ケ月くらい前に、地下室に行った時に、たまたま蒼さまの持ち物を見てね。
そしたら、なぜかこれに目が行ってしまって。
今までも、何度か目に入っていたはずなんだけど、全く気にも、とめなかったのに、今回目にとまった事が、気になってさ。
それで、開けようとしたんだけど、何しても開かないんだ。」
 
そういうと、今度はタカさんが私にいう。
 
「おまえさんなら、開けれるような気がするんじゃ。
やってみてくれんか?」
 
「あたし・・・が??」
 
あまりに唐突の事で、驚きが大きくて私はどうしていいかわからなくなる。
そんな私の手に、目の前の宝石箱を乗せる蒼輝。
戸惑いながら、彼を見る私に、彼は笑顔で「大丈夫。」と答えてくれる。
そうよね。開けれなくて当たり前なんだもん!
もし、開けれたらラッキーくらいな気持ちでいたらいいんだもんね。
私は、蒼輝から渡された、その宝石箱をシッカリ握ると、気持ちをその宝石箱に集中させた。
そして、目をつぶり心から『開いて!』と念じた。
私は、ユックリと目を開ける。
だけど、蓋を持っている右手を動かす事ができなくて、たまらずまた蒼輝に助けを求めてしまう。
そんな私に蒼輝は、何も言わずにただうなずく。
私も彼にうなずいて、また箱に視線を合わせると、ユックリと右手を上に上げた。
蓋と本体をつないでいる金具が、長い年月のせいか、鈍い音を立てる。
だけど、蓋は音をたてながらも完全に開いた。
 
「ひ・・・らいた。」
 
「ホッ」としたのと、驚きで思わずそう口にしてしまう。
みんなは、開いた宝石箱の中身に注目する。
だけど、ただ一人。
彼だけ・・・蒼輝だけは、私を気にかけてくれた。
私の頭を右手で優しくなでてくれる。
 
「よく、やったな。」
 
そんな彼の優しさがとてもうれしくて、私は自然と笑顔になる。
だけど、そんな穏やかな私たちとは違って、中身を見たみんなの顔は、見るからに穏やかではなかった。
 
「どうかしたんですか?」
 
といいながら、私も気になって、その宝石箱を覗き込む。
 
「これ・・・データーチップ?」
 
そう口にした私を、今度はいっせいにみんなが見る。
その眼差しに、私はビックリして「な、なに?」とオドオドしてしまう。
不安になったら、やっぱり蒼輝に頼ってしまう私。
思わず側にいる彼の腕をつかんで、「ねぇー、なんなの?」と聞いてみる。
だけど、口を開いたのは、ヒビキさん。
 
「翠ちゃん!・・・これ、知ってるの?」
 
「えっ?」といいながら、ヒビキさんを見るけど、その言葉もわけわかんなくて、さらに、「どういう事??」と蒼輝に聞いてしまう。
 
「俺たちは、初めて見るんだ。
これが、何なのかわかんねぇー。
翠は、わかるんだよな?」
 
私にわかるように話してくれた蒼輝の言葉に、私は「うん。」とうなずく。
 
「これは、どういう物なのか教えてくれないかい?」
 
私と蒼輝の会話を聞いていたヒビキさんは、私に突っ込んで質問してくる。
私は、パソコンで使うような、データーチップに似ている事を伝えた。
 
「それじゃあ、この中に何かの情報が入ってるって事?」
 
ヒビキさんの言葉に私は、「たぶん。」と答えた。
 
「ねぇーねぇー!でもさ〜あ、これをどうやって見るのぉ〜?」
 
トーワくんにしては珍しく、ここまでは理解できているようで、会話に入って来る。
でも、どうやって見るかは・・・。
だからさっきから言ってるじゃないっ!と心の中で怒るけど、それだけでは治まらなかった私は、ついつい言葉にしてしまう。
 
「だから、パソコンで見れるんだって!」
 
トーワくんに、キツイ口調で言葉を投げかけちゃうけど、それにはタカさんが即答する。
 
「そんなもの、ここにはないぞ。」
 
「えっ?」
 
私の動きは止まる。
でも、よく考えたら当たり前よね。
ここでの生活を見ていれば、パソコンなんてない事ぐらい、すぐにわかる。
それになにより、みんながパソコンを知っていたら、このデーターチップの事を知っていたはずだもんね。
だけど、じゃあ、これどうやって見るの?
私が心で強くそう思った時だった。
 
「翠ちゃんの世界にある、そのパソコンって機械でこれ、見れないかな?」
 
ヒビキさんの申し出に、私は「う〜ん。」と首をかしげながら、考え込んでしまう。
そんな私の様子を見ていた蒼輝は、「無理なのか?」と確認してくる。
 
「機械に詳しいわけじゃないから、ハッキリとは言えないけど、こんな小さいもの見たことないよ。
明らかに私たちの世界よりも、さらに進化してる。
きっと、私の時代よりも、さらに未来の世界で開発されたものだと思うから、私の世界でも見れないと思うよ。」
 
その答えにヒビキさんも、タカさんも「そっか。」と力なく答える。
その時、「あ〜!!」とトーワくんが急に叫びだす。
みんなが驚く中、トーワくんはさらに両手をあげて「はい、はい、は〜い!!」と叫んでるし。
 
「なんだよ。」
 
と面倒くさそうに答える蒼輝に、トーワくんはとぉ〜っても笑顔で、さらに胸張って答える。
 
「すごい事に気付いちゃったんだぁ〜。
あのね、ワンダーランドだったら、これ見れるんじゃないかなぁ〜?
だって、あそこは機械とか、い〜っぱいある!って、ヒビキ言ってたよねっ!
どうどう?すごいでしょっ!!」
 
それには、一同ポカ〜ン。
そして、さらにタカさんがトーワくんの頭を1発殴る。
 
「この、バカ者がっ!そんな事、できるわけないじゃろうが!!」
 
怒鳴られたトーワくんは、「そんなに怒らなくてもいいじゃないかぁ〜。」と涙声でスネちゃってるし。
だけど、トーワくんの言葉を聞いて、私と蒼輝はお互い顔を見合わす。
お互いの脳裏に浮かんだ人物。
その人の事を考えて、お互い目で訴え合っていた。
それを、見ていたヒビキさんは、
 
「二人とも・・・何か、心当たりがあるのか?」
 
と聞いてくる。
答えに戸惑う私に、蒼輝は「実は・・・。」と切り出すと、前森で逢ったワンダーランドのハンターであるサンガの話をした。
それを、黙って聞いていたみんな。
全部を聞き終えて、最初に口を開いたのはヒビキさん。
 
「どうして、そのサンガってやつと翠ちゃんが顔見知りだったかは、今はあえて聞かないよ。
ただ、翠ちゃん!」
 
ヒビキさんはそういって私の目を見る。
 
「彼は、協力してくれると思うかい?」
 
ヒビキさんの言葉に、私は「たぶん。」と答えた。
 
「一度なら、助けてあげるって言われたから。
彼は機械に詳しいから、何か困ったことがあれば、訪ねてくるといい。って言ってた。
彼なら、このデーターチップの中にある情報が、わかるはずです。」
 
ヒビキさんは、「なるほどね。」とひとり言のようにいうと、今度は私に向かって、開いた本を差し出した。
 
「この宝石箱を見つけた日に、出た文字なんだけどね。」
 
そして、右手のひとさし指でそのページをトントンとさす。
私は、そのページを読んだ。
 
「一つの力が、二つになった日の夜明け、緑の光が旅立ち、新たな光を得る。」
 
さらに、「意味は・・・何ですか?」とすぐにヒビキさんに聞いてしまう私。
それには、ヒビキさんは優しく笑うと、答えてくれた。
 
「つまり訳すと、『蒼輝の力が、翠ちゃんが来た事によって強力になる。
そして、その翠ちゃんが来た日の夜明けに、緑の王である二人・・・つまり蒼輝と翠ちゃんが旅立つ。
そして、そこで、次なる新しい何かをみつける。』そんな感じかな。」
 
それを聞いて私は気付いた。
 
「もしかして、さっきから『時間がない。』って言っていたのは、このことだったの?」
 
それには、ヒビキさんは「うん。」と即答する。
 
「どこに向かうかはわからなかったけど、夜明けまでそう時間もないしね。」
 
「そうじゃっ!時間がなかったんじゃ。
この話はこれで終わりにして、次は引力の話をする事にしようかのう。」
 
タカさんの言葉に、ヒビキさんは「そうですね。」と答えると、
 
「じゃあ、このデーターチップってやつは、2人でワンダーランドのサンガってやつを訪ねて解読してきてくれ。」
 
それには、私も蒼輝も頷いた。
それを見たヒビキさんは、箱からデーターチップを取ると、それを蒼輝に渡す。
 
「確かにお前に渡したからな。」
 
ヒビキさんから受け取った蒼輝は、「ああ。」と言うとポケットにしまった。
 
「じゃ、次は『引力の玉』の話しをするか。」
 
とヒビキさんは言うと、今度は、テーブルに置いていた縦長の箱を開けた。
そこには、綺麗な水晶みたいな物が先端に付いたネックレスが入っていた。
 
「これ・・・は?」
 
と聞く私に、「これとついになってるんだ。」と蒼輝がいう。
彼に視線を合わせると、丁度彼が、自分の首から提げている物を、服の中から引っ張り出した所だった。
彼が出してきた物を、じっと見る。
確かに彼が持っている物は、ここに置いてあるものと、そっくりだった。
違っていたのは、彼の持っている水晶みたいな物は、青色だった。
 
「この青が、例の蒼さまの瞳の石ですか?」
 
タカさんに聞いてみる。
「そうじゃ。」と答えるタカさん。
私は、自分の目の前にあるネックレスを指さす。
 
「これに、私の力を、どうやって入れたらいいんですか?」
 
だけど、私の質問に誰も答えてくれない。
私は、「何?」と言いながら、みんなを見まわすけど、みんな固まって私を見てるだけ。
 
「ち、ちょっと〜!なんなんですか〜。」
 
と怒る私に、蒼輝が「なんで?」と私に言う。
「ん?」と彼に聞き返す私に、蒼輝は驚いた眼差しのまま続ける。
 
「翠・・・お前、なんで自分の力を入れるって知ってるんだ?」
 
「それは・・・。」
 
と言いかけた私に、「そういえば。」とヒビキさんはかぶせてくる。
 
「さっき、蒼輝が翠ちゃんに『もう一人の緑豹国の王女』って言った時も、翠ちゃん驚いてなかったよね?
それに、ずっと気になってたんだけど・・・。」
 
そして、さらに続ける。
 
「どうして、翠ちゃんは今回、森じゃなくて自分の部屋に辿り着いたの?」
 
私は、全てを語った。
私の世界に、真音(マナト)さんと言う人がいて、その人が引力の玉の話もしてくれて、私が戻ってきてしまった理由も教えてくれた事。
さらに、今回部屋にたどり着いたのは、彼が言った通りにしたからという事と、最後に夢の話をした。
 
「『水の世界』ねぇ・・・。」
 
ヒビキさんはそういって、考え込む。
そして、タカさんを見るけど、タカさんも首を振る。
やっぱり、ここにはないんだ。
 
「今回の旅には、関係ないのかな?」
 
とつぶやく私に、「いや。関係はあるだろうな。」と答えたのは蒼輝。
 
「じゃなきゃ、そんな夢見るのもおかしいだろ?
それに、俺と翠とトーワともう一人。
顔が見えない奴がいた。っていうのも、気になる。
そいつは、いったい誰なんだ?
まっ、けど、その人物にしても、その『水の世界』だっけ?
それにしても、そのうちわかるだろうから、あんまり、気にすんな。」
 
蒼輝は、そういって、また優しく私の頭をなでてくれる。
 
「確かに・・・今の時点では『水の世界』の事は、さっぱりわからんな。
じゃから、今できる事をする事にしよう。」
 
タカさんは、そういうと「それにしても。」と付け加える。
 
「翠にしては、やけに何でも理解しとるみたいで、おかしいと思ったんじゃ。」
 
というタカさんに、「確かに。」と答えるヒビキさん。
 
「まさか、向こうに居る人が、それほど理解していたとは。
是非、彼に逢いたいものですね。」
 
と言って二人は笑ってる。
なんか、それって思いっきり私をバカにしてない?
腹が立ってきた私は、怒りながら2人に突っかかる。
 
「それで!これ、どうしたらいいんですか!」
 
乱暴にネックレスを手に取ると、鼻息を荒くして2人に突っかかる。
それには、何も答えずにさらに笑っている二人。
 
もぅ〜!!
 
と怒る私の手から、ネックレスを取ると蒼輝が私の首にかけてくれる。
 
「こうするだけで、吸い取ってくれるはずだから。」
 
蒼輝がそう口にした時だった。
透明だった私の水晶が、見る見るうちに緑色に変わって行った。
 
『翠ちゃん、俺の声が聞こえる?』
 
私の目は水晶から、目の前のヒビキさんに移る。
その様子に、ヒビキさんは、「聞こえてるね。」と声に出していう。
ヒビキさんが、なぜそんな事をしているのかが、わからなくて私はただうなずくだけ。
すると今度は、「水晶をはずしてくれる?」とヒビキさんは注文を出してくる。
私は、言われるがまま、蒼輝がかけてくれたネックレスを、首から取った。
そして、それをテーブルの上に置いた。
私の体から離しても、ネックレスについている水晶は、緑色をしていた。
ネックレスを置いて、ヒビキさんの指示を待っていたけど、ヒビキさんは何も言って来ない。
しびれを切らした私は、「これから、どうしたらいいんですか?」と彼に聞いてしまう。
ヒビキさんは、それには答えずに、
 
「聞こえない?」
 
と言ってくる。
「へっ?」とバカっぽく聞いてしまった私に、さらに蒼輝が聞いてくる。
 
「ヒビキの心の声が聞こえないか?」
 
「えっ?ヒビキさん話しかけてきてたの?」
 
と驚く私。確かに聞こえなかったけど、集中してなかったしな〜。と心で思う私。
私の様子を見て、蒼輝は何かを感じたのか、
 
「今度は、集中してろよ。」
 
と言うと、ヒビキさんに視線を送る。
ヒビキさんは、頷くとまた辺りはシーンとなる。
だけど、幾ら集中しても何も聞こえなかった。
 
「ダメ・・・聞こえない。」
 
と力なく答えて、肩を落とす私の首に、蒼輝がまたネックレスをかけてくれる。
その瞬間、ヒビキさんが私を呼ぶ声が聞こえた。
 
「聞こえたっ!」
 
私は、そう叫んでヒビキさんを見る。
でも、これって・・・どういう事?
私は、また蒼輝を見てしまう。
 
「これ、どういう事?」
 
「予想通りってとこだな。」
 
と言って、蒼輝は笑うと、
 
「ヒビキに話してもらった方がわかりやすいだろ。
俺、説明するの下手だから。」
 
っていうものだから、またしても解説はヒビキさんに託す事に。
 
「その水晶・・・玉だけど。
それが、翠ちゃんの『豹に変身出来る力』を吸い取ってるんだ。
つまり、今まで目に見えなかった『豹に変身出来る力』が、その玉だと思ってくれたらいい。
それで、俺の『心で人と話せる力』ってのは、『豹に変身出来る力』を持ったものでないと出来ない。
だから、ネックレスをはずした翠ちゃんは体から、玉が離れてるから、『ただの混血人間』つまりランや、今の蒼輝と一緒になるんだ。
だから、俺と心での会話ができなくなる。
と、いうことは。
裏を返せば、今回ワンダーランドに進入するんだから、このネックレスを置いていけば、翠ちゃんはハンターが持っていた探知機に反応しないから、蒼輝と翠ちゃんがつかまる確率も低くなるし、動きやすくなる。」
 
「な〜るほど!便利だね。」
 
と手をポンと打つ私と違って、ヒビキさんは「だけど。」と続ける。
 
「この玉は持っていってもらう。
なぜなら、もしかしたら、もう一つわかるかもしれないから。」
 
「えっ?」と首をかしげる私。
それには、タカさんが答えてくれる。
 
「その緑のネックレスは、蒼輝がつけて持っていくとよいじゃろう。
そして、必要な時は、翠の首につけるのじゃ。」
 
タカさんの言葉に、すぐに反応したのは、蒼輝。
 
「『必要な時』って、いつだよ!」
 
って。
だけど、それに対して、またすぐに答えが返ってくる。
 
「そんなの、決まってるだろう!
ハンターに襲われた時だよ。」
 
ヒビキさんの言葉に、「あっ、そっか。」とあっけらかんと答える蒼輝。
そんな二人をほって、タカさんは、私に話しかけてくる。
 
「蒼輝にも、引力の玉の話をした時に話したのじゃがな。
実は、その両方の玉を引き合わせる『キッカケ』というものが、わからんのじゃ。」
 
それって・・・蒼輝を『豹』にまだ戻す事が出来ないって事よね?
私は、思わずタカさんの方に、身を乗り出して聞いてしまう。
 
「なんで、わからないの!」
 
って。
だけど、タカさんは「わからんもんはわからんのじゃ。」と開き直ってるし。
 
「だから、今回、もしかしたら何かがわかるかもしれんじゃろ?
なので、引力の玉は持っていくのじゃ。
蒼輝が、豹に戻れるキッカケがわかればいいのじゃがな。」
 
タカさんがそういったとき、柱時計が数回なった。
みんなの目が一気に柱時計に移る。
 
「出発まで、あと2時間だな。」
 
ヒビキさんの言葉に、ランさんが立ち上がる。
 
「それでは、今から翠さんの支度をしますので、お部屋へ戻ってもよろしいですか?」
 
「ああ。頼むよ。」
 
とヒビキさんはランさんにいうと、今度は私を見る。
 
「ネックレスは、出発直前に、蒼輝に渡したんでいいから、今は、そのまま首にさげといてね。
支度ができたら、またここに来てくれ。」
 
ヒビキさんの言葉に、イスから立ち上がった私は、「さっ、いきましょうか。」とランさんに進められるがまま、出口に向かう。
だけど、一歩進みかけて、私は振り返る。
イスに座ったまま、蒼輝は私を見ていた。
あと、2時間したら、蒼輝と一緒にいられるけど、厳しい世界にほおり出される。
お互いの話を悠長にしてる時間だってなくなる。
ちょっとでも、いいの。
10分でも20分でもいいから・・・蒼輝と、話がしたかったな。
私は、そう思って、でも無理なんだと諦めて、蒼輝から目を離し歩き出そうとした時だった。
 
「ヒビキ!10分だけでいいんだ。
翠と2人にさせてくれないか。」
 
蒼輝の言葉に私は、勢いよく彼の方を見る。
そして、私はヒビキさんの言葉が気になって、今度はヒビキさんを見る。
 
無理・・・だよね。
 
そう強く思った時だった。
 
「翠ちゃんのそんなガッカリする声聞いたら、ダメだなんていえるわけないだろう?」
 
「えっ?」と口にして、ヒビキさんは心が読めるんだと改めて思い出した私。
焦る私に、ヒビキさんは優しい眼差しで私に笑いかけていた。
 
「確かに、俺もさっき『後にしてくれ。』って言ったしな。
わかった、でも10分だけだぞ。
10分経ったら俺は、ここに戻ってくるからな。」
 
ヒビキさんは、そういうと席を立つ。
それをみて、タカさんもランさんも部屋から出て行ってくれた。
だけど、ただ一人部屋から出るのを嫌がる人物がいた。
最後まで駄々をこねていた彼は、ヒビキさんに首根っこをつかまれて、強制退場をさせられた。
 
「翠ちゅぁ〜ん!!」
 
と叫んでいたけど・・・ごめんね、トーワくん。
今は、蒼輝を選ばせて!
心の中で謝る私。
蒼輝に背を向けて、みんなが出て行くのを見送っていた私は、みんなが出て行って扉が閉まると、蒼輝の方に振り返った。
少し離れたところに座っているとばかり思っていたのに、振り向いたらすぐに彼は立っていた。
 
「どう・・・したの?」
 
突然すぎて驚く私に、蒼輝は、
 
「時間がもったい無い。」
 
というと、私の体に両腕を伸ばしてきて、私を優しく抱きしめてくれる。
私はうれしくて、彼の背中に腕を回して、私も彼をしっかりと、抱きしめた。
 
「ねぇー、蒼輝?」
 
私の呼びかけに彼は「ん?」と返事をする。
 
「王座に、戻って平気なの?」
 
そう。私はずっとこの事が心配だった。
彼の中で、王座に戻る事は、一番抵抗があったはずだから。
だけど、こうやって戻ってるのは、もしかして私のためで、無理してるんじゃないかと、ずっと心配だった。
それには、蒼輝も素直に答えてくれる。
 
「今でも、わからないんだ。
俺、どうしたらいいのか。
何も出来ない俺が、王座に戻っていいのか?って思ったりするしな。
だけど、翠が目の前で消えて、消えた理由もジジイに聞かされて、二度とこんな思いはしたくないって思ったし、翠にもあんな思い・・・自分を否定したくなるような辛い思いをさせたくない!って思ったんだ。」
 
蒼輝は、そういうと抱きしめていた腕を、少し緩めて、私の顔が見れるようにする。
お互いがみつめあう。
 
「今の俺に何が出来るかわからない。
でも、翠を俺なりに守る事。
そして、翠を泣かせないようにする事。
とりあえず、そこから始めようと思ってな。
ジジイが、翠が俺を豹に戻す為に引力の玉を作りたくて、虹のかけらを自分の力で採って来たって聞いてさ。
それで、今俺が出来る事で、翠が喜ぶ事といえば、王座につく事かな?って思ってな。」
 
と言うと、「こんな事言ってると、なんか俺のする事、なす事って、全部翠基準だな。」と照れ笑い。
それには、私は嬉しくなって、彼に抱きついてしまう。
 
「うれしいよ・・・すごく、うれしい。」
 
私の言葉に、蒼輝は「フッ。」と声を出す。
きっと笑ったんだろうけど、彼に抱きついているので、見えなかった。
彼の笑顔が見れなかった自分に、「しまった!」と嘆く私。
その時、扉が開いた。
蒼輝は、私の背中越しに、ヒビキさんを見る。
 
「さすがに、10分は早いな。」
 
それには、ヒビキさんも「まーな。」と苦笑い。
そして、蒼輝は、私を自分の体から離した。
 
「1年分、いっぱい話したいけど、約束は約束だしな。」
 
そういうと、蒼輝は私の左頬に軽くキスをした。
それには、私もビックリしたけど、もっとビックリしたのは、なぜかヒビキさん。
 
「蒼輝っ!」
 
と叫んでたし。
蒼輝も私も思わずキョトン。
なんで、そんなに驚くの?と思ってしまったけど、すぐにヒビキさんはいつもの落ち着いたヒビキさんに戻る。
 
「ランが、部屋で支度してるから、翠ちゃんは部屋に戻って。」
 
私は、「はーい。」と答えると、
 
「じゃ、蒼輝、あとでね。」
 
と彼に手を振る。
だけど、蒼輝は「部屋まで送っていくよ。」と歩きかけた。
でも、彼の行動はヒビキさんに、止められた。
 
「蒼輝は、残れ。
お前に、大事な話がある。」
 
あまりに真剣な眼差しに、蒼輝もこれから旅立つ話についてかと思ったのか、素直に「わかった。」と答えると、「じゃー、翠あとでな。」と、私を部屋の出口まで見送ると、扉を閉めた。
 
自分の部屋に戻った私を、ランさんが迎えてくれた。
森の寒さでも耐えられるような服装を用意してくれていたので、またそれを着る。
そして、完全に武装した私にランさんは、「これ。」と言って小さな袋を渡す。
 
「前回の旅で、翠さんが持って行っていた同じ大きさの『火の玉』と『水の玉』です。
両方新しいものですから、たっぷり使えますから安心して下さい。」
 
彼女の手から袋に入った水の玉と、袋には入れずに、彼女の手の中で、転がっている火の玉を、それぞれ受け取ると、私はズボンのポケットにしまった。
今回は、何かを採ってくるわけではないから、リュックは持っていかず手ぶらにする事になった。
いざと言う時に、逃げやすいようにね。
準備が整った私は、ランさんと一緒に司令塔室に向かって歩いた。
 
「何か、翠さん、うれしそうですね。」
 
ランさんの言葉に、「えっ?」と、言って彼女を見る。
実は、さっきから蒼輝にキスされたホッペを触って、ニヤニヤしていた私。
だけど、そんな事、正直にランさんに報告するのも、抵抗があって言い出せなくて、それっきり黙ってしまう私。
そんな私の様子をみながらランさんは、クスっと笑う。
 
「蒼輝さまといい事がありましたか?」
 
そう言われて、やっぱりダメだっ!って思った。
ランさんもヒビキさんとの事を、私に正直に話してくれた。
そして、私と蒼輝との事も、すごく応援してくれていた。
やっぱり、言うべきだよね。
私は、心を入れ替えて、ランさんに言おうと思った。
 
「実は、さっきね・・・。」
 
そう口にした時だった。
あと、少しで司令塔室って所まで来ていた私たちの耳に、何かが派手に割れる音が聞こえた。
その大きな音に、歩いていた私もランさんも思わず足を止めてしまう。
そして、お互い顔を見合う。
 
「今の・・・何?」
 
とランさんに聞く私に、ランさんも驚いていた。
 
「司令塔室からでしたよね?」
 
彼女の言葉に、私たち二人は胸騒ぎがして、どちらからともなく走り出す。
そして、重い司令塔室の扉を二人で開けた。
私たちの目に飛び込んできたのは、さっき見た景色とは一変していた。
テーブルに置かれていたはずの、カップが床一面に散りばめられていた。
そして、明からに蒼輝に殴られ尻もちをついているヒビキさん。
さらに、そんなヒビキさんにまだ、殴りかかろうとしている蒼輝。
 
「ち、ちょっと!蒼輝、何してるのよっ!」
 
私は、叫びながら、蒼輝を後ろから抱きしめる。
だけど、「離せっ!」と彼は強引にヒビキさんを殴ろうと突き進もうとする。
 
「待って!一体、何があったの?」
 
必死でそう彼に呼びかける私の声に、蒼輝は深いため息を吐くと、殴ろうとしていたコブシを下におろした。
一方、殴られたヒビキさんを心配して、ランさんはヒビキさんの元へと急ぐ。
 
「大丈夫ですか?」
 
といって、持っていたハンカチで、ヒビキさんの口元から出ている血を拭おうとする。
だけど、「大丈夫。」とヒビキさんはそれを拒否した。
特に、痛いとかもいわなければ、くっそーとか言って殴り返そうともしない。
ヒビキさんは、いつもと変わらず、クールで落ちついた様子で、平気な顔をして、殴られて血が出ている所を、服の袖で拭った。
そして、ヒビキさんは、立ち上がり蒼輝の目の前まで進んでくる。
 
「殴りたければ、殴ればいいよ。」
 
ヒビキさんの言葉に、「なんだとっ!」とまた蒼輝の怒りのボルテージが上がる。
 
「もうっ!ヒビキさ〜ん。」
 
と泣き声でいう私の声なんて、二人には届いていなかった。
また、殴りそうな勢いの蒼輝を私は必死で抑えていた。
もう、ダメ。抑えきれないよ。
と私が弱音を吐いた時だった。
 
「俺は、間違ってないからな。」
 
そう言ったのはヒビキさん。
その言葉に、私は「何が?」って顔で彼を見る。
だけど、蒼輝は「まだ、言うか!」って顔で・・・さらに怒りは上がっていく。
蒼輝が怒っているのをわかっているはずなのに、ヒビキさんは止めない。
 
「お前だって本当はわかってるはずだ。
だから、俺に言われて殴ったんだろ?」
 
そして、蒼輝の左肩をポンと叩く。
 
「大人になれ。」
 
その言葉に、蒼輝は「ふざけんなっ!」と叫ぶと、ヒビキさんの右手を払いのけた。
 
「俺は、お前のいう通りには絶対にしない!
お前の指図は、絶対に受けないからな。」
 
蒼輝はそういうと、体を強引に動かして、私の腕を払いのける。
そして、部屋から出て行こうとする。
 
「ちょっと!蒼輝、どこ行くのよ!」
 
あせって彼に叫んでしまう。
だって、今からワンダーランドに行くんだよ!
さっきの喧嘩、意味わかんないけど・・・。
もしかして、行かないって事?
不安に思う私に、ヒビキさんはさらに続ける。
 
「城の入り口で待ってろ。
お前は俺が乗せて、森まで行ってやる。
翠ちゃんはトーワが乗せて森まで行くから。」
 
その言葉に、背を向けて歩いていた蒼輝が、
 
「冗談じゃないっ!」
 
と叫びながら、勢いよく振り返る。
 
「お前の世話になんてなりたくもねぇー。
俺は、トーワに連れて行ってもらう。
お前が翠を乗せればいいだろ。」
 
そういって、また背を向けてドアに向かって歩いていく。
 
「一体、何があったんですか?」
 
あまりに険悪な雰囲気の二人の空気に、さすがにランさんも、気になってヒビキさんに聞く。
その時、扉が開いた。
今のこの雰囲気に場違いな程、ニコニコ顔のトーワくん。
そして、彼は遠い場所から私に、とびっきりの笑顔を送ってくる。
 
「翠ちゅぁ〜ん!
僕が、森まで送っていってあげるからねぇ〜。」
 
そして、スキップをして私の所まで来ようとしたトーワくん。
もちろん、蒼輝に首根っこをまたしてもつかまれて、その場でジタバタ。
 
「何、するんだよぉ〜。」
 
と半べそのトーワくんに、信じられない一言が!
 
「お前は、俺を乗せるの!
ほらっ!いくぞ!!」
 
それには、体全体で拒否しまくるトーワくん。
 
「やだっ、やだっ、やぁ〜だぁ〜!!
僕、そぉ〜きなんて、乗せなぁ〜い!!
翠ちゅぁ〜んがいいのぉ〜!
離してよぉ〜!!」
 
なんて、叫んでいるけど、完全に無視して蒼輝は、トーワくんを片手で捕まえたまま、部屋を出て行こうとする。
 
「蒼輝っ!」
 
彼を呼ぶ私の声で、彼は一旦足を止める。
そして、私に背を向けたまま、
 
「緑豹国と『光のない国』との狭間(ハザマ)の森で、先に行って待ってる。
ヒビキに、振り落とされないように来いよ。」
 
というと、一度も振り返る事無く、この部屋を出て行った。
ヒビキさんとの喧嘩は、気になるけど、さっき私に話した口調は、いつもの優しい蒼輝の口調に戻っていたので、少しホッとした。
 
「じゃ、俺たちも行こうか。」
 
ヒビキさんはそういうと、私の横を通り過ぎて、部屋を出て行く。
そんなヒビキさんを見ていて、私はランさんに目を移す。
 
「あの二人・・・変だったよね。」
 
そう口にする私に、ランさんは、
 
「元々、そんなに仲がいい方ではないんですが、殴り合っての喧嘩って、小さい頃しかなくて・・・。
あんな二人を見たのは、初めてです。」
 
そして、私の背中を優しくポンと叩く。
 
「なに?」
 
と聞く私に、ランさんは「頑張って下さいね。」と言う。
 
「どういう・・・意味?」
 
何か・・・恐いんですけど。
でも、その予感は当たってしまう。
 
「さっき、翠さんには、いつもの穏やかな蒼輝さまでしたが、元々他の人には冷たい態度を取る方なんですね。
そして、さらにさっきのヒビキさまとの争いで、心はかなり大荒れだと思います。
蒼輝さまの性格からすると、今日一日は、戦闘モードに入ってますね。」
 
って・・・。
それって、つまり・・・。
 
「喧嘩早いって事?」
 
私の言葉に、ランさんは「フフフ。」と笑ってるし。
 
ちょっと、待ってよぉ〜。
ハンターに逢ったら、隠れたり逃げたりしなきゃなんないのに、今の蒼輝だったら、自ら喧嘩売りに行くんじゃないの?
っていうか・・・。
 
私は、ある事を思い出して真っ青になる。
 
「翠さん・・・どうか、されましたか?」
 
そんなランさんの言葉なんて、耳には入らない。
私は、急いで、先に歩いていったヒビキさんを追う。
扉を開けて、廊下に飛び出した私の目に、かなり先にある階段をおりようとしている、ヒビキさんが見えた。
 
「待って、ヒビキさ〜ん!」
 
猛ダッシュでヒビキさんの元へ急ぐ私の姿に、ヒビキさんは振り返って待っていてくれる。
 
「どうしたの?」
 
と彼が言うと同時に私も言葉を投げる。
 
「お願いっ!今すぐ、蒼輝に謝って!!」
 
両手を合わせて拝みたおす。
だって、このまま蒼輝とサンガを逢わせてみたら、どうなるか!
前回の二人のやり取りを思い出しただけでも、想像は付く。
サンガは、たぶん蒼輝が嫌いだと思う。
私からみたら、二人は似てる雰囲気があるんだけど、サンガは・・・絶対に蒼輝が嫌いなはず。
コテンパンにやられたのもあるだろうけど、蒼輝の性格自体もたぶん、嫌いなんじゃないかな?って思う。
傲慢な所とか、強気な所とか。
前だってそういう蒼輝の性格を、目の当たりにして、イライラしてたもんね。
そんな二人を引き合わせるだけでも、ドキドキなのに、喧嘩早くなっている蒼輝を逢わせてごらんよ!
サンガの何気ない一言でも、大喧嘩になっちゃって、解読どころの話じゃなくなっちゃうよ!
理由はわからないけど、ここは、ヒビキさんに折れてもらうしかない!
どうせ、心の声、聞こえてるんでしょ?
お願い、ヒビキさん!
そういう事だから、折れて!!
 
「ふ〜ん。サンガってやつも、蒼輝と気が合わないんだ。」
 
ヒビキさんの言葉に私は、彼を見る。
とぉ〜っても、意地悪な顔で笑っているヒビキさん。
いつもの優しいヒビキさんじゃないっ!!
彼の顔を見た瞬間思った。
 
こりゃ・・・ダメだって。
 
そう思ったのは、大正解!
 
「悪いけど、俺は、謝るつもりないから。」
 
ヒビキさんは、そういって右手をピラピラと振ると、階段をおりていく。
 
「もうっ!みんな自分勝手なんだからっ!」
 
と地面をバンと踏みつけて怒る私に、ヒビキさんは「アハハ。」と声を出して笑ってる。
 
「翠ちゃんが、うまく蒼輝をコントロールしてくれよ!
俺は、水晶で見てるから。
あっ、けど、翠ちゃんがネックレス持てないんだから、水晶は見れないか。
残念だな〜。サンガと蒼輝の争い、見てみたかったんだけどな〜。」
 
なんて言ってさらに、笑ってるし。
笑い事じゃ、ないって!
あ〜あ・・・気が重い。
『光のない国』に行くだけでも、ジギルたちと逢いそうで、気が重いのに、何でさらに増えるかなぁ〜。
何かが起こりそうな新たな旅。
気が重い私には、おかまいなしに、時はドンドン流れていき、今私は豹であるヒビキさんの背中の上にいた。
戦闘モードの蒼輝がいる『狭間(ハザマ)』に向かって、着実に進んでいた。
 
 
       ☆☆☆1章 END☆☆☆
 



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