2008/4/14


11    10章  BLUE KING〜青き王〜 
更新日時:
H19年6月30日(土)
私とサンガは、今『例の扉』の前に立っていた。
あれから、サンガは、私の部屋に荷物を取りに行ってくれた。
そして、私を連れて今ここに立っている。
 
「ここを出るには、どうしたらいいか、知ってるのか?」
 
そういうサンガに、私はうなずく。
 
「このまま、普通に出れば、扉を抜ける事が出来るって、藍瑠(アイル)さんは、言ってた。
でも・・・。」
 
止まる私に、「でも・・・何?」とサンガは、優しい口調で聞いてくる。
目をそらした私は、サンガを再び見る。
 
「向こう側からこっちに、入って来るには、蒼輝の力がないと、扉は開かない。
だから、今私たちがここを出れば、蒼輝が私たちを追って一度BLUE LANDから出ない限り、もう二度とここへは入れない。」
 
「翠は、どうなんだ?
それで・・・出るか?」
 
サンガの言葉を聞いて私は、ちょっと笑ってしまう。
「ん?」と不思議がるサンガだけど・・・私はこういうサンガがとても好きだ。
強引に私を、連れまわすんじゃなくて、いつも私の意見を聞いてくれる。
いつも、私にどうしたいか。を聞いてくれる。
そして、どんな事でも、私の思いを叶えてくれる。
私は、そんな優しいサンガが、とても好きだった。
こんな時でも、私の気持ちを一番に考えてくれるサンガに、私は心から感謝した。
 
「うん。覚悟はできてる。
ここを、出よう。」
 
私の言葉にサンガは、「ああ。」と答えると、私の腕をつかむ。
そして、私たちは、扉へと進み、そのまま前進した。
 
 
 
 
「わかってはいたけど、本当に、あの頑丈な扉を抜けるなんて・・・すっげぇー。」
 
とサンガは口にする。
私はというと、BLUE LANDから出て、地下水路に出たら、ホッとした。
その場で、しゃがみこんでしまう。
 
「翠っ!どうした!」
 
驚いたサンガは、私の正面に回りこむと、私を心配そうに見る。
彼の顔を見て私は、「平気・・・ごめんね。」と笑顔を作る。
蒼輝と藍瑠(アイル)さんの愛し合う姿を、これで見なくて済むと思ったら、気が緩んだ。
 
「しばらく・・・こうさせて。」
 
という私にサンガは、「わかった。」と笑顔で答えると、私を優しく包み込むように抱きしめた。
サンガの鼓動の音を聞いていると、余計に安心して、私は目をつぶり、頭の中にある忘れたい事実を、必死で消そうとしてた。
その時、急にサンガの体に力が入る。
 
「サン・・ガ?」
 
私は、驚いて目を開け、サンガを見上げる。
彼が見ていた先は、私じゃなくて、緑豹国へと続く道を見ていた。
彼の顔つきが、尋常でないだけに、私の中で不安がよぎる。
 
もしかして・・・。
 
「誰か・・・来てるの?」
 
耳を澄ましてみるけど、私には何も聞こえない。
蒼輝に緑の力を与えてしまって、今の私はただの混血人間。
耳はいいはずだから、聞こえるんだろうけど、もともとこの能力にもなれていないから、豹の血が少し薄れた私には、ちょっと・・・わからない。
恐くて、たまらずサンガの腕を強くつかんだ。
でも、しばらくしてサンガの顔が、緩む。
あからさまに、「ホッ。」としてる。
 
「気の・・・せいだったの?」
 
と聞くと、彼は私の方を見る。
 
「いやそうじゃなくて・・・。
来るやつは敵じゃなかった。」
 
「どういう・・・事?」
 
すると、「この辺の距離になれば、今の翠でも聞こえるんじゃないか?」と言われて、私は耳に集中する。
足音が聞こえる。
それも・・・4つの足?
って、事は、2人?
でも、この速さ・・・人間じゃないよね?
4本で、人間じゃないといえば・・・。
 
私の頭にある人物の顔が浮かんだ。
 
「これって・・・。」
 
という私にサンガは、とても優しく微笑むと、
 
「よかったな。翠の逢いたい人が、来てくれて。」
 
と言ってくれた。
とはいっても、まだその人の姿は見えない。
という事は、サンガはかなり先から、彼の存在をわかってた。って事だよね?
あれだけ、音を取ることに苦戦していたサンガが、どうして?
 
「ねぇー、サンガ?」
 
「ん?」と彼は返事をする。
 
「こんなに遠い音・・・どうして、察知できたの?
昨日まで、苦手だったじゃない?」
 
すると、サンガは、「蒼輝のおかげかな?」というと、
 
「アイツが、取り方を教えてくれただろ?
それが、身についたみたいで、もうだいたいの音は、感じ取れるよ。」
 
それを聞いて、素直に「さすがだな〜。」って思った。
ジギルたちと同じように、ハンターとしての訓練を受けていただけあって、コツをつかめば、吸収するのは早いんだ。
心から感心する私。
そんな私を、サンガは腕から離す。
 
「来た!」
 
サンガの声に、私は緑豹国へと続く道に、目をやった。
姿を確認したかと思ったら、あっという間に、私たちの目の前にいた彼。
 
「よっ!ご両人!」
 
開口一番に言ったセリフが、これだった。
私はたまらず、言った。
 
「どうして、怒らないの?」
 
って。
私は絶対に、ヒビキさんに叱られるかと思った。
蒼輝を説得するどころか、逃げるようにして、BLUE LANDを出てきた私なんだよ。
どうして、せめないの??
でも、いくら心でヒビキさんに訴えても、ヒビキさんは何も答えずに知らん顔で、人間の姿に戻る。
こんなに近くにいるのに、答えてもらえない寂しさに、私はたまらず涙がこぼれた。
ヒビキさんに・・・助けてもらいたかったのに、それも叶わない。
それもショックだった。
でもね、一番のショックは、こんなにも弱い自分。
ヒビキさんにも頼ってしまう私。
それに・・・ホラ。
こんな私の姿をみて、サンガがオタオタして、また私をなぐさめようとしてくれてる。
サンガにも頼ってる。
一人で何もできない弱い自分が、本当に嫌になる。
私の涙は止まらなかった。
 
「おい、ヒビキ!何とかしろよ!
お前になら、わかるだろ?」
 
サンガの言葉に、私は心で叫んだ。
そんなの・・・無理だよ。
今のヒビキさんには、私の心は読めないんだから。
 
「そんな事ないよ。」
 
その言葉に私は、下を向いていた顔を勢いよく上げる。
まるで、鳩が豆鉄砲をくらったような、マヌケな顔でヒビキさんを見ていた・・・んだと思う。
 
「驚きすぎだって。」
 
とヒビキさんは、笑いながらいうと、私の頭を優しくポンポンと叩く。
 
「俺も、信じられないけど・・・。
翠ちゃんの声は、聞こえてる。
確かに、離れている時は、全く聞こえなかったけど、これだけ側にいれば、わずかだけど、声は聞こえる。
たぶん、翠ちゃんの王としての4つ目の力の『念じる力』ってのが、そうとう強力なんだろうな。
豹の力を失っても、体に残ってるんだから。」
 
ヒビキさんは、そういうと、「充電させてあげる。」と言って、私を抱きしめた。
ヒビキさんが、そんな事する人だなんて、思ってなかったから、さらにビックリする私。
もちろん、驚いたのは、私だけじゃない!
 
「お前っ!何やってんだよ!!」
 
とサンガは怒り、ヒビキさんを足蹴りするけど、足の長いヒビキさんが、左足を後ろに思いっきり伸ばすとサンガに当たって、サンガはちょっと、後ろに飛ばされてるし・・・。
 
『翠ちゃん・・・聞こえる?』
 
心から、ヒビキさんの声が聞こえた。
ずっとずっとこの声を待ってたんだよ。
 
『ホントに・・・聞こえる。』
 
と嬉しさのあまり、また泣いちゃう私。
グチャグチャに崩れそうだった心が、ヒビキさんの声でどんどん修復されてくるようだった。
 
『翠ちゃんは、弱くないよ。
俺もサンガも蒼輝も、みんな翠ちゃんの存在に、助けられてる。
だから、翠ちゃんも俺たちに助けられて、当然なんだよ。
何も、気にする事ないから。』
 
ヒビキさんは、そういうと、私を自分の体から離す。
 
「俺が、ここに来た理由、わかる?」
 
そういわれると・・・なんだろう?
首を振る私に、飛ばされていたサンガが、戻ってきながら言う。
 
「そんなの、決まってるだろ!
翠を緑豹国に連れて帰る為に、迎えにきたんだろ?」
 
すっごい自信満々に言ってたけど、
 
「なわけ、ないだろ!」
 
と全否定!
サンガは、少しよろける。
 
「じゃー、なんだよ!」
 
と迫るサンガに、ヒビキさんは目もくれず、私を見る。
 
「俺をみろよー!」
 
と怒るサンガすらも、完全に無視して私に言った。
 
「BLUE LANDに入ろう。」
 
って。
 
「へっ?」
 
とバカ面で聞く私に、ヒビキさんは続ける。
 
「俺が来たのは、『本当の事』を聞くためだ。」
 
「本当の・・・事?」
 
もちろん、私とサンガの声が重なる。
 
どういう事?
本当の事って?
 
さらに、詳しく聞こうとした私だけど、ヒビキさんは急に扉の方に目を向ける。
その顔が・・・えっ?笑ってる?
 
「ヒビキさん・・・どうしたの?」
 
とたまらず聞いちゃうけど、今度はサンガにヒビキさんはいう。
 
「聞こえるか?」
 
って。
そう言われてサンガも、扉の前に近付いて・・・。
 
「これ!!」
 
と目を見開いてヒビキさんを見る。
 
「な・・・何?」
 
とヒビキさんに聞いてみるけど、ヒビキさんは相変わらず笑ったまま、
 
「始まったな。」
 
なんて言ってる。
 
えぇー!!もう!何なの?
 
と絶叫の私だけど、二人は・・・教えてくれない。
 
「ちょっとー!!」
 
とサンガの腕を、ぐいぐい引っ張って聞いてみるけど、サンガは何も言わない。
 
「ねぇー。」
 
とさらに言うと・・・。
 
「俺もわかんねぇーんだよ。
だけど、たぶん、これって・・・ヤツだよな?」
 
と言ってヒビキさんに聞く。
ヒビキさんは、笑いながら、「ヤツ以外いないだろ?」と言って、
 
「そろそろ、俺たちも始めるか!
取り返しが付かない事になると困るからな。」
 
と言い出した。
 
「始めるって・・・何を?」
 
と聞く私だったけど、ヒビキさんは、なぜか急にストレッチを始めた。
 
「ねぇー、何を始めるの?」
 
それには、普通に答えられてしまった。
 
「何?って・・・この扉を開けるんだよ。
開けなきゃ、中に入れないだろ?」
 
って。
ストレッチって事は・・・まさか、力ずくで強引に開けるつもり??
私は、たまらず、「待ったー!」と叫んで、ヒビキさんの腕をつかむ。
「ん?」とキョトンとした顔で聞かれたけど・・・。
なんで、そんな顔するのよ!
トーワくんを通して、この扉の事、知ってるでしょ!!
って無意識のうちに、強く思ってたみたい。
ヒビキさんは、「わかってるよ。」と笑いながらいうと、私を自分の体から離した。
 
「だから、『ある人』の力を、今から借りるんだ。」
 
「ある人の・・・力?」
 
まだ、意味がわからない私。
でも、サンガはわかったようで、「なるほどな。」とあいづちを打つ。
私は、サンガの方に振り返った。
 
「一体、何なの?」
 
と聞くと・・・。
 
「BLUE LANDに続く扉は、『緑の髪に、青い目を持つ者』しか開けれない。
でも、『蒼輝』と限定されていないのであれば、裏をかえせば、その条件を満たすものなら、『誰でも』それを、開けれるという事になる。
たとえ、『元々そういう人間じゃなかった』としてもな。」
 
「それ・・・どういう意味?」
 
さらに、意味がわからなくなった。
でも、彼の回答は合っているようで、ヒビキさんはサンガを見て、
 
「お前、意外と頭がいいな。
蒼輝の部下じゃなくて、俺の部下になれよ。」
 
なんて笑顔で言ってる。
そして、扉の真正面に立つと、目をつぶった。
しばらくして、ヒビキさんの体が、紫紺色に輝き始めた。
 
「な・・・に?」
 
と驚く私に、「これから、おもしろいものがみれるぞ!」とサンガは、とても楽しそうに笑った。
一体・・・何が起こるの?
その時だった。
 
「なっ!何あれっ!!」
 
私は、ヒビキさんを指さして・・・腰を抜かして地面に座り込んでしまった。
だって!!
ヒビキさんの長い紫紺色の髪が・・・。
なんと、どんどん緑色に変わってるんだもん。
あっと言う間に、蒼輝と同じ、鮮やかな緑色に変わった。
 
「どういう・・・事?」
 
とまるで、つぶやくように言った私。
すると、ヒビキさんは、つぶっていた目を開けて、こちらに振り向いた。
 
「うわぁ!!」
 
とさらに叫んで、私は・・・気絶するかと思ったよ。
だって、目まで、蒼輝と一緒で・・・真っ青。
 
「な・・・な・・・なんでぇー!!」
 
と大声で絶叫する私の横を、サンガは通り過ぎると、ヒビキさんの目の前に行った。
そして、彼の前で、ひざまづくと、
 
「はじめまして、蒼さま。」
 
と言った。
 
えっ?今・・・サンガは、何を言った?
ヒビキさんが・・・蒼さまぁ??
 
「えぇー!!」
 
と絶叫の私に、サンガは、「うるさいっ!」と叱る。
そんな私を、ヒビキさん・・・いや、蒼さまは優しい眼差しで見てる。
 
「サンガは理解しているな。
さすが、もとWONDER LANDのハンターだけの事はある。
順応(ジュンノウ)な頭も持っているようだ。
それは、さておき・・・翠!
翠に、話しておきたい事があるんだ。」
 
そう口を開いた蒼さまは・・・声がヒビキさんと違った。
夢で話した、蒼さまの声だった。
 
「私は今、WONDER LANDを治めている『ある男』に囚(トラ)われている。
私がなぜ、囚(トラ)われているのか。
なぜ、200年前の私が、今も生きながらえているのか。
それは、翠たちが、無事、赤龍国(セキリュウコク)・・・RED LANDについたのなら、そこの王である、翠怜(スイレン)が全てを教えてくれるはずだ。
だから、翠!
頑張って、神の鳥であるミューラを復活させて、天上界へ行くのだ。
翠怜(スイレン)が、翠に逢えるのを、心待ちにしている。
彼女の願いを・・・叶えてやってくれ。」
 
蒼さまは、そういうと、
 
「あまり、この体を乗っ取っていると、ヒビキが死んでしまう。
そろそろ、扉を開けて、体から出てやらないと。」
 
蒼さまはそういうとサンガを見た。
 
「私が、ヒビキの体から出たら、すぐに虹の雫を飲ませてやってくれ。
きっと、相当のダメージを受けてるはずだから・・・。
それと、BLUE LANDに入れば、ヒビキの力が必要になる。
だから、万全の状態にしてやりたいから、10滴与えてやってくれ。
いつも以上に、元気なヒビキにしてやらないと。
彼の力が、命運を分けるからね。
彼次第で、ミューラが復活するか、このまま全てが崩れてしまうか・・・。
全てが、決まるから・・・。」
 
蒼さまの言葉にサンガは、
 
「わかりました。」
 
と答えると、ポケットから虹の雫の玉を出し、スタンバイする。
そして、蒼さまは、両手を扉に当てると、ゆっくりと押した。
あの時と同じく、錆びた音をたてて、扉が開いた。
私もサンガも蒼さまについて、もう一度中に入った。
扉は重い音をたてて、閉まった。
 
「それじゃ、あとは頼んだよ。」
 
蒼さまはそういうと目をつぶる。
 
「あっ!」
 
思わずそう声を出してしまう私。
だって、ヒビキさんの髪から緑色はどんどんなくなり、あっと言う間に元の紫紺色に戻った。
髪が完全に戻った頃、ヒビキさんは目を開ける。
開けてすぐに、その場にひざまづく。
胸を押さえて、肩で息をしてた。
 
「ヒビキさん!」
 
私はヒビキさんの側にかけよる。
かけよって・・・言葉を失った。
真っ青な顔をして、唇は真っ白と言った方がいいくらい色がなかった。
額からは、信じられないくらいの汗をかいてる。
そんなヒビキさんをただ見ている私の背中を、「翠、どいて!」とサンガが押す。
そして、ヒビキさんの顔を強引に上に向かせると、
 
「飲み込め。」
 
と言いながら、蒼さまに言われた通り、10滴玉から出した。
ヒビキさんは言われるがまま、雫を飲み込んだ。
しばらく、座り込んでいたヒビキさんだったけど、雫が体にまわったのか、元気を取り戻した。
 
「心配かけたな。」
 
と言ってサンガをみるヒビキさんに、
 
「お前の事だ。
蒼さまが、自分に乗り移ると、自分の命が、危険になるとわかっていたんだろ?
わかっていながら、よくやるよ。
お前・・・すげぇな。」
 
と脱帽する。
 
「そんなに褒めんなよ。」
 
と答えたヒビキさんに、「蒼輝と・・・同じような答えを返してくるなよ。」と呆れる。
それには、「そうか?」と笑うヒビキさん。
でも、ここへ戻ってきたのには、重大な理由があるみたいで、ヒビキさんは腰を上げて立ち上がると、
 
「のんびりは、してられない。
早く、王座に行こう!」
 
と私たちに言うと、「場所を案内してくれ。」とサンガに頼む。
「ああ。」と答えたサンガは、先に走り出した。
城に行くまでに、街を通った。
だけど・・・何か様子がへん。
まだ、早い時間だというのに、みんな起きてる。
しかも、家の中にいるんじゃなくて、外に出て何やら騒いでる。
さらには、男の人たちが、手に武器を持って、城に向かっている。
 
一体・・・城で何が起こっているの?
 
不思議に思ったまま、私たちは城へと入り込んだ。
入って、私は、思わず叫んだ。
 
「なに・・・これっ!!」
 
王座に近付くに連れて、城が・・・グチャグチャ。
廊下を照らす為におかれていた、ろうそく立てが、全て床にちらばって割れていた。
それだけじゃない。
壁も一部破壊されていて、床に大きなコンクリートというか、石の塊が落ちていたり、ガラスが散りばめられていたりしてた。
 
「翠ちゃん、気をつけて。」
 
というヒビキさんに、私は「う・・・ん。」と戸惑いながら返事をする。
私がサンガと、BLUE LANDを出て、そんなに時間も経っていない。
なのに、あの時の城の面影が全くなくなっていた。
一体、なんで、こんな事になってるの?
 
そして、王座に続く扉の前に来た。
扉はもちろん、全開。
さらには、王座の部屋からは、奇妙な音が聞こえていた。
武器と武器とが重なる音。
それから、人の苦しむ声。
先にサンガが部屋に飛び込んだ。
「すげぇー。」と感心するサンガ。
そして、次に入ったヒビキさんは、「予想通りだな。」となぜか落ち着いている。
一体、みんなは、何を見たの?
私は、ドキドキしながら、部屋に入った。
 
「なっ!!」
 
みんなみたいに、落ち着いてなんていられなかった。
私がみた光景は・・・言葉なんて出ないくらい、驚く物だった。
目の前には、数え切れないくらいの兵士の数。
それも、全て、床に転がってる。
そして、聞こえていた音は、まだある人と戦っている兵士が、剣を交えている音。
30人くらいで、ある人を囲んでいるけど、次から次へと床に倒れていく。
そのある人とは・・・。
緑の髪を揺らしながら、青いマントを身にまとった・・・まるで、戦士。
軽い身のこなしで、兵士の剣を軽々とよけ、そして、彼らの胸に剣を当てる。
あっという間に、兵士は誰もいなくなった。
王座に座っている藍瑠(アイル)さんの元に、一歩一歩近付いた蒼輝の前に、もちろん青鳥国(セイチョウコク)の最後の戦士。
雅(ミヤビ)さんが、剣を持って現れた。
 
「蒼輝さま。一体、どういうおつもりですか?」
 
剣を蒼輝に向かって構える雅(ミヤビ)さんに、蒼輝は・・・笑ってた。
でも、目は真剣で、氷のような鋭いまなざし。
ただ、口元だけが緩んでた。
まるで、血に飢えた獣(ケモノ)のような顔つきをしている蒼輝。
あんな蒼輝の顔は・・・初めて見た。
 
「なんなの・・・あれ。」
 
恐くて身震いをしてしまう私に、ヒビキさんは、とても落ち着いた口調でいった。
 
「あれが、『本来』の蒼輝だ。」
 
って。
 
「えっ?」
 
と驚いてヒビキさんを見る私に、「本当は・・・。」と言うと私を見た。
 
「わざわざ、翠ちゃんをBLUE LANDへ、入れなくても、蒼輝の側にいるトーワの目を通して、玉でこの姿を見せてもよかったんだけど・・・。
翠ちゃんに、ナマで見てもらって、そして肌で感じてもらいたかったんだ。」
 
そして、とても優しく笑った。
 
「『本当の蒼輝』をね。」
 
そういうと、ヒビキさんは、今度は蒼輝に目を向ける。
 
「元々、蒼輝はあーいうヤツなんだよ。
やらなきゃいけない事に対しては、手段を選ばない。
冷徹で、感情を表さない。
それでいて、人の気持ちも考えない。
ただ、王として、やらなきゃいけないことだけをする。
まるで、機械みたいな・・・そんなヤツだったんだ。
でも、翠ちゃんと出会って、アイツは変わった。
『人間らしく』なった。」
 
ヒビキさんはそういうと、「でもね。」と続ける。
 
「それは、翠ちゃんがいるからなんだよ。
今、翠ちゃんを失ったアイツは、昔の『機械』に戻ってしまった。
翠ちゃんがここを去ったのは、緑豹国の為。
神の鳥、ミューラを復活させる為に去った。
なら、蒼輝が翠ちゃんの気持ちに答えるなら、やるべき事は、一つ。
『王』として生きる事。
だから、アイツは、元のアイツに戻った。
王として、やらなければいけない事。
ただそれだけをやるだけの、『機械』にね。」
 
「そん・・・な・・・・。」
 
と言った私の耳に、蒼輝の声が聞こえた。
 
「『どういうつもり?』って・・・。
そっちが、先にしかけてきたんだろ?
売られた喧嘩を、買ったまでだが。」
 
と笑いながらいう蒼輝に、
 
「どういう意味ですか?
おっしゃってる意味が、さっぱりわかりませんが。」
 
と雅(ミヤビ)さんは返してくる。
すると、蒼輝は何も言わずに、そのまま近付き、兵士から奪った剣を、雅(ミヤビ)さんに突きつけた。
 
「サンガは、俺にとっては有能な兵士と同時に、貴重な仲間なんだ。
そして、翠も、俺にとっては命よりも大切な人だ。
その二人を、お前たちは勝手に、返した。
俺から奪ったんだ。
なら、俺も、藍瑠(アイル)姫から、大事な物を奪ってやるよ。
それで、おわいこだ。」
 
だけど、蒼輝の言葉に、雅さんは、「何をバカな事を!」と笑い返してきた。
 
「バカな・・・事だと?」
 
蒼輝の笑いは消え、目つきもさらに鋭くなった。
でも、雅さんは、「そうです。」と肯定すると、さらに蒼輝を逆なでするような事を言った。
 
「2人が戻ったのは、私たちのせいではありません。
2人が決めた事。
それに、藍瑠(アイル)さまが、強引に翠さまと、蒼輝さまを引き裂いたわけではありません。
翠さまがご自分で決断された事。
信じないのであれば、翠さまに聞かれてはいかかですか?
豹の姿になって、2人を追えば、すぐにつかまると思いますが。」
 
だけど、蒼輝は、まるでうわごとのように言った。
 
「それが、できねぇーから・・・苦しんだよ。」
 
って。
 
「えっ?」
 
と聞き返してきた雅さんに、蒼輝は思いっきり強く剣を振り上げた。
それを、雅さんは、器用によけて、さらに蒼輝に攻撃を繰り出してくる。
 
「青鳥国(セイチョウコク)の王妃の側近だけの事はあるな。
他のやつらとは、雲泥の差だ。」
 
という蒼輝だけど、
 
「だが、目が見えないお前に、負けるほど俺は、弱くないんでね。
悪いが、お前には眠ってもらう。」
 
そう言ったかと思えば、蒼輝は信じられない速さで、動くと、雅さんのわずかな隙をついて、彼に攻撃を繰り出し、雅さんをその場に座り込ませた。
「くっ。」といいながら、腹部を抑えている雅さん。
彼の横をすり抜けようとする蒼輝を、何とか阻止しようと立ち上がろうとするけど、痛さのあまり、たまらずその場でよろけて倒れた。
 
「無理に立たない方がいい。死ぬぞ。」
 
蒼輝は冷たくそう言い放つと、持っていた剣を雅さんの横に向かって投げた。
何も持たないまま、蒼輝は一歩一歩藍瑠(アイル)さんの座っている王座の階段を登り始めた。
 
「私を、どうするおつもりですか?」
 
こんな時でも、気丈に振舞っている藍瑠(アイル)さんのすごさに、私は感心してしまった。
私だったら・・・絶対に、取り乱しているだろうから。
すると、藍瑠(アイル)さんの目の前まで来た蒼輝は、
 
「そんなの決まってるだろ?」
 
と言うと、藍瑠(アイル)さんの顔に触れた。
 
「俺がアンタを抱けば、封印は解ける。
だったら、俺のするべきことは決まってるだろ。」
 
蒼輝の青い目は、今は目にしたもの全てを凍りつかせてしまうくらいの、冷たさだった。
その冷たい眼差しで見られた藍瑠(アイル)さんは、「どうして。」と口にする。
 
「なに?」
 
とあくまで冷静に答える蒼輝に、藍瑠(アイル)さんは蒼輝に訴えた。
 
「さっきまでのあなたとはまるで別人。
優しくて、暖かな眼差しで私を見てくれたあなたは、どこへ行ったのですか?
私は、そんなあなただったから、抱かれてもいいと・・・そう思ったのです。
今のあなたとは・・・いくら封印の為とはいえ、私にはできません。」
 
その答えに蒼輝は、「そんな事、関係ない。」と笑いながら答えた。
「えっ?」と聞く藍瑠(アイル)さんに、蒼輝は藍瑠(アイル)さんにとても恐い笑いを送った。
 
「あなたの気持ちなんて、どうでもいい。
ただ、俺はあなたを抱いて、封印を解きたいだけ。
あなたの感情も、あなたの体にも、全く興味はない。
俺が興味があるのは、ミューラを復活させる事。
ただそれだけなんだよ。」
 
蒼輝の言葉に、蒼輝の顔・・・。
遠く離れた所で見ている私でも、あまりの恐さに身震いをした。
立っていられなくなるくらい、恐かった。
それを、間近で見ている藍瑠(アイル)さんは、そりゃ恐ろしかったと思うよ。
 
「あなた・・・一体、何を考えてるの?
どうして・・・こんなに、人格が変わってしまったの?」
 
と体を震わせながらいう藍瑠(アイル)さんに、蒼輝は彼女から手を離した。
 
「俺は・・・あんたを絶対に許さない。」
 
「なぜ・・・だ!」
 
そういったのは、雅さん。
蒼輝にやられた体を、必死で起こして、藍瑠(アイル)さんを守る為に、階段をよろけながら登ってくる。
 
「俺から、翠を奪った。
そんなアンタを、俺が許すと思うか?」
 
「だが、彼女は元々、この世界に居る人ではない。
いずれは、永遠(トワ)の別れが待っている。
それは、変えられない事実なんですよ。
それを、われわれのせいにされても・・・。」
 
と言った雅さんに、蒼輝は素早く移動して、彼の首に右腕をからませた。
 
「それ以上言ってみろ。
首の骨、へし折るぞ。」
 
耳元で囁いた蒼輝の言葉に、「待って下さい。」と藍瑠(アイル)さんは止める。
 
「確かに、翠さまを傷つけたのは、私です。
封印の事を話し、彼女に蒼輝さまをあきらめてくれるように言ったのも、私です。
翠さまには、ちゃんと謝りますから。
ですから、許して下さい。
それに、翠さまだって、今苦しんでおられます。
今すぐ、追ってあげては・・・。」
 
だけど、蒼輝は、「もう・・・遅いんだよ。」と答える。
 
「先ほども、そのような事をおっしゃっていましたが・・・。
一体どういう意味なのですか?」
 
と雅さんは、蒼輝の腕の中でそういう。
蒼輝は、雅さんから腕を離した。
少し気管(キカン)を締められていた、雅さんは、離された瞬間、少し咳き込んだ。
 
「翠は、もうこの世界には、いない。」
 
それには、藍瑠(アイル)さんが驚く。
 
「どういう・・・意味ですか!!」
 
蒼輝は藍瑠(アイル)さんにまた近付いた。
 
「アイツは、きっと苦渋の選択をした。
そして、もう自分はこの世界には必要ないと思っただろう。
アイツが、そう思えば、時がこなくても、アイツは元の世界に戻っちまうんだよ。
俺は、傷ついたまま、またアイツを返してしまった。
もう・・・俺は、アイツを抱きしめてやる事もできない。」
 
蒼輝の言葉に、藍瑠(アイル)さんは、「申し訳ありません。」と謝った。
 
「そんな事になるとは、私は知らなかったもので・・・。
一体、どうしたら!」
 
と力を落とす藍瑠(アイル)さんに、蒼輝は藍瑠(アイル)さんの腕をつかんだ。
 
「だから、さっきから言ってるだろ?
アンタは、俺に抱かれたらいいだよ。
翠の最後の望みは、ミューラを復活させてくれって願いだった。
だったら、俺はそれを叶えるまでだ。
アンタを抱いて、俺は何が何でもミューラを復活させてやる。」
 
蒼輝はそういうと、藍瑠(アイル)さんの服に手をかける。
 
「何をっ!!」
 
と抵抗する藍瑠(アイル)さんに蒼輝は、「アンタも覚悟を決めろよ。」と言って、冷たい笑いをした。
 
「どこで、抱かれても一緒だろ?
だったら、面倒くせぇー。
ここで、さっさと済ませてやるから。」
 
と蒼輝はいうと、藍瑠(アイル)さんのスカートの中にまで手をつっこむ。
暴れて抵抗する藍瑠(アイル)さんには、おかまえなしに、蒼輝は乱暴に藍瑠(アイル)さんを抱こうとした。
 
「おい、ヒビキ!
止めなくていいのかよ!!
アイツ、翠が元の世界に戻ったと思って、やけになってるぞ!」
 
そういったサンガにヒビキさんは、「そうだな。」と冷静に答えると、私を見た。
 
「どうする?
このまま、ほっておいたら、蒼輝は藍瑠(アイル)さんを抱くだろう。
そしたら、封印は解けてミューラは復活する。
でも、藍瑠(アイル)さんと蒼輝の心はズタズタだ。
そして、翠ちゃん!君の心もね。」
 
確かにそうだ。
こんなのいいはずがない。
でも、今、これを止めてどうなるの?
止めた所で・・・ミューラは復活できない。
だけど・・・。
 
私はヒビキさんを見た。
 
「私は一度は、蒼輝を封印の為に手放した。
でも、ずっと後悔してたの。
だから、もう一度選択ができるなら・・・。
蒼輝を渡したくないです。
彼を、この手に取り戻したい。」
 
そう答えた私にヒビキさんは、「俺が待ってた答えだ。」と言って私の頭を優しくなでてくれる。
 
「俺を、信じてくれる?
封印は、必ず解いてあげるから。」
 
ヒビキさんの言葉に私は、「うん。」としっかりうなずいて返事をした。
「よし。」と答えたヒビキさんは、
 
「じゃあ、翠ちゃんは、蒼輝を『人間』に戻してくれ。」
 
と笑いながらいうと、今度は王座を見た。
 
「蒼輝っ!!」
 
いるはずもないヒビキさんの声を聞いて、蒼輝の体がピタッと止まった。
 
「ひ・・・び・・・き?」
 
蒼輝はそういうと、藍瑠(アイル)さんから手を離して、後ろを振り返る。
だけど、蒼輝はヒビキさんよりも、その横にいる私の姿をすぐにみつけた。
 
「す・・・い?」
 
蒼輝は、まるでうわ言のようにそういうと、私の元へと真っ直ぐに走ってくる。
それを見たヒビキさんは、私の背中をトンと押す。
驚いてヒビキさんを見る私に、何も言わないでヒビキさんは、優しく微笑んでくれた。
その笑顔をみて、私も笑って答えると、蒼輝の元へと走った。
 
「翠っ!」
 
蒼輝は私をまるで、抱き取るようにして、自分の腕の中に私をおさめた。
強く強く抱きしめる蒼輝に、「痛いよ・・・。」といっちゃうけど、「うるせぇー。」と蒼輝はいいながら、私をギューっと抱きしめた。
蒼輝の心臓が、すごく早く動いてるのがわかった。
 
「蒼輝・・・すっごいドキドキしてる。」
 
と言う私に、「当たり前だろ。」と蒼輝はいうと、自分の体から私を少し離して、私の顔を見つめる。
彼の顔を見て、私は心からホッとした。
だって、さっきまでの冷徹な蒼輝じゃないんだもん。
私をいつも優しく抱きしめてくれた、蒼輝に戻ってたから。
 
「よかったぁー。」
 
と安心する私に、「全然、よくねぇーよ。」と、蒼輝はすねる。
「ん?」と目で聞いてみると・・・。
 
「翠がこの世界から、居なくなったって思ってたら、居るなんてさ・・・。
嫌がらせもいいところだよ。」
 
それには、「そんなつもりじゃなかったのよ。」と私は必死で弁解する。
でも、蒼輝は、「うるせぇー。」というと、私の鼻をキュとはさんで、私を一瞬黙らせた。
 
「翠が・・・本物だって、俺に教えてくれよ。
じゃなきゃ俺・・・夢見てる気がして・・・心が不安で苦しんだよ。」
 
そういった蒼輝の声を聞いたら、私は胸が痛くなった。
さっきと全然違う弱々しい瞳。
私は、「うん。」と答えながら、蒼輝の顔に手を伸ばす。
私も彼のぬくもりを感じて、安心した。
でも、彼もまた私の手のぬくもりを肌で感じて、心から安心したのか、目をつぶった。
そんな彼に、私は背伸びをして、唇に触れた。
さっき、蒼輝に教えてもらっとけばよかったんだけど、教えてくれなかったら・・・。
ただ、彼の唇に触れて、体温を感じる。
それだけの、キスだったけど・・・私は心が満たされた。
しばらくして、蒼輝から唇を離した私を、蒼輝はゆっくりと瞳を開けて私を見る。
まるで・・・すがるような瞳。
 
「どう・・・したの?」
 
と聞く私に蒼輝は、私の髪に手を伸ばす。
 
「もっと・・・翠を感じさせて。」
 
蒼輝はそういうと、今度は自分から私にキスをしてきた。
さっき蒼輝がしたような・・・からむキス。
みんなが見てるって事も・・・どうでもよくなるくらい、私も蒼輝を今感じたかったから。
私も蒼輝の思いを、受け取った。
 
「ホント・・・よく、やるよな。」
 
とサンガは呆れ、
 
「まー、これで、一件落着なんだから、いいじゃないか。」
 
と笑顔のヒビキさん。
 
「そういえば・・・トーワは?」
 
と言いながら、キョロキョロしたら・・・トーワくんは、はるか向こうで縄で、縛られてた。
 
「なんだ・・・あれ?」
 
と目を疑うサンガに、
 
「どうせ、爆睡してて、蒼輝が暴れ出したから、兵士につかまったんじゃないのか?
まー、トーワなら、ありえるよ。」
 
ヒビキさんは、笑いながらいうと、さらに、サンガに依頼する。
 
「悪いが、サンガ!縄ほどいてやって。」
 
って。
それには、「ヒビキはどうすんだよ!」とサンガ。
サンガの質問に、「俺?」と言ったヒビキさんは、「もちろん、封印を解くさ!」と言って、まずは、私たちのところへと来た。
 
「もう、気が済んだだろ?
今から、封印を解く。
お前たちも、こっちに来い。」
 
ヒビキさんは、すれ違いざまにそういうと、止まる事無く、藍瑠(アイル)さんと雅さんがいる王座へと真っ直ぐに歩いていった。
 
「封印を解くって・・・やっぱり、蒼輝と藍瑠(アイル)さんを?」
 
と蒼輝に抱きしめられながら言う私に蒼輝は、「さぁーな?」と首をかしげる。
 
「けど、ヒビキが来いと言ってるから・・・行ってみるか。」
 
蒼輝の言葉に私は頷いた。
 
 
 
 
ヒビキさんは、王座の階段の前で止まると、「蒼輝っ!」と呼んだ。
 
「虹の雫の玉を、貸してくれ。」
 
その言葉に、蒼輝は、「ほらっ!」と言ってヒビキさんに向かって投げた。
ヒビキさんは、正面を向いたまま、蒼輝が後ろから投げた玉をつかんだ。
 
なんで?なんでつかめるのよ!
 
って思うけど・・・蒼輝もヒビキさんも、当たり前のようにしてた。
そして、ヒビキさんは、雅さんに6滴の雫を飲ませ、彼を回復させた。
用が済めば、すぐに、また蒼輝に玉を投げ返した。
 
「あなたに、雫を飲ませたのには、わけがある。」
 
ヒビキさんは、そういうと、こんな事を言い出した。
 
「そろそろ、『本当の事』を言っていただけますか?」
 
それには、もちろん、ここにいたみんなが声を合わせて言った。
 
「本当の・・・事?」
 
って。
だけど、それの答えは藍瑠(アイル)さんが口にした。
 
「本当の事って・・・どういう意味ですか?
緑の王と、青き王女とが、結ばれたら封印が解ける。
これに、嘘はありません!」
 
と立ち上がり、必死でいう藍瑠(アイル)さんに、ヒビキさんは、藍瑠(アイル)さんに目を向ける。
 
「あなたに、言っているのではありません。」
 
すると、意外な人が口を開いた。
 
「一体、どういう事なんだ、ヒビキ!
ちゃんと、わかるように説明してくれ。」
 
そういった蒼輝に、ヒビキさんは、「そうだな。」と言うと、藍瑠(アイル)さんを真っ直ぐに見た。
 
「あなたは、嘘はついていない。
でも、あなたが、知っている方法では、封印は解けない。」
 
ヒビキさんはそういうと、「そうだよな?雅!」と言って、雅さんを見る。
そして、雅さんの元へと向かい、こう言った。
 
「雅とは、偽りの名前だろ?
本当は、何というんだ?
青鳥国(セイチョウコク)の青き王!」
 
それには、もちろん、「えぇー!!」と絶叫!
でも、一番驚いたのは、藍瑠(アイル)さん。
 
「一体、どういう事!
あなた・・・何を言ってるの?
青鳥国(セイチョウコク)の王は、私よ!
代々、この国は、女が王として治めているのよ!
雅が王だなんて・・・。」
 
取り乱す藍瑠(アイル)さんに、雅さんも、「そうですよ。」と口を開く。
 
「何を言い出すかと思えば、くだらない。
私は、藍瑠(アイル)さまを守る為にいる、ただの兵士に過ぎない。
ここの王は、藍瑠(アイル)さまだけです。」
 
だけど、ヒビキさんも負けない。
 
「悪いが、もうこんな茶番劇に付き合っている時間は、俺たちにはないんだ。
なにぶん、翠ちゃんがこの世界にいれる時間が、限られているものでね。」
 
ヒビキさんはそういうと、雅さんの腰についている、剣をすばやく抜き取ると、ものすごい速さで、雅さんに切りつけた。
何度も何度も。
でも、雅さんは、ヒビキさんとすごく近い距離でいるのに、全てをかわした。
まるで、その身のこなしは・・・鳥みたいだった。
少し離れた所で、着地した雅さんは、全く息が切れていない。
剣を振り回したヒビキさんは、少し肩で息をしてた。
 
「一体、何のつもりですか!」
 
という雅さんに、「これが、君が王である証拠だ。」と言って笑うと、雅さんに剣を投げ返した。
雅さんは、それを受け取ると、鞘(サヤ)に戻した。
 
「これだけしかない、俺との間合いで、全てをかわすなんて、普通ではありえない。
豹の血が濃いくて、戦闘タイプである、蒼輝でもたぶん無理だろう。
こんな事が、できるのは、鳥の血が変身が出来るくらい濃く流れている人物。
つまり・・・王だけだ。違うか?」
 
それでも、雅さんは、「俺は、王じゃない。」と否定する。
 
「わかった。それじゃあ、もう少し言おうか。」
 
とヒビキさんは言うと、その場に座り込んだ。
それをみて、私も蒼輝もその場に座った。
 
「翠ちゃんは知らないだろうけど、蒼輝に藍瑠(アイル)さんが話していた事だけど・・・。」
 
と言うと、ヒビキさんは、藍瑠(アイル)さんを見た。
 
「あなたと、雅は、双子でもないのに、同じ日の同じ時間に生まれたって言ってましたよね?」
 
藍瑠(アイル)さんは、「ええ。」と答えながら、王座に座った。
 
「それが・・・何か?」
 
という藍瑠(アイル)さんに、
 
「それは、もしかして、代々続いている事ではないですか?」
 
ヒビキさんの言葉に、藍瑠(アイル)さんは「そうです。」と答えると、もう一つの接点を言った。
 
「生まれた女は、黒い目に青い髪をして生まれてくる。
そして、生まれた男は、その女。
つまり、王妃の側近として、彼女を守る。
と決まっています。
お互いの命は、2つで1つ。
どちらかが、息耐えれば、両方死んでしまいます。」
 
それを聞いたヒビキさんは、「やっぱりな。」と言うと、今度は雅さんを見た。
 
「つまり、真実はこうだ。
守られていたのは、女の方じゃない。
男の方だったんだ。」
 
「それ・・・どういう意味ですか?」
 
と聞いたのは、藍瑠(アイル)さん。
それに引き換え、下を向いたまま反応を見せない雅さんに、ヒビキさんはまた藍瑠(アイル)さんに目を向けた。
 
「ミューラを復活させる事をどうしても阻止したかった、蒼さまと、ここの初代王・・・朱雷(シュライ)さまは、ミューラの力を封印させるだけじゃなくて、もう1つのトラップを張った。」
 
「トラップ?」
 
と言う私にヒビキさんは、「そう。」と答えると続けた。
 
「替え玉だ。」
 
「かえだまぁー??」
 
また、みんなの声が重なった。
それに、気にする風もなくヒビキさんは、真実を語っていく。
 
「誰にでも、わかるように王を表に出すよりも、影に隠していた方が、安全なのは当たり前。
そして、本当の王を守る為に、同時に女が生まれるように、蒼さまが念じて制約を作った。
生まれた女を、青い王に思わし、本当のミューラの封印を解く力を持つ男の方を、守ったんだ。
彼を、女の側近としたのは、何かあれば、すぐに身代わりである女を守れるように。
たとえ、変身が出来なくても、あれだけ強ければ、たいていの敵はやっつけられるからね。
自分が本当の王であると、知っているのはたぶん本人だけのはずだ。
外部に絶対に漏れてはいけない事実だからね。
つまり、現在の王である雅。
お前だけが、自分がミューラを復活させる力を持つ、真の王だと知っているんだ。
だから、お前が認めない限り、この嘘は、ずっと突き通せる。
でも、俺たちは、それじゃ困るんだよ。
ミューラを、本当に復活させたいんだ。
認めて・・・くれないか?」
 
ヒビキさんの言葉に、雅さんは答えない。
 
「雅。」
 
下を向いていた雅さんは、その声に機敏に反応して顔を上げた。
藍瑠(アイル)さんを、みつめる。
 
「私も、真実が聞きたいわ。
話してもらえないかしら?」
 
そういって優しく微笑んだ藍瑠(アイル)さんの顔を見て、雅さんは「わかりました。」と軽く頭を下げた。
そして、ヒビキさんを見た。
 
「話す前に、一つ聞いていいですか?」
 
それには、「何?」と答えるヒビキさん。
 
「俺が、青鳥国(セイチョウコク)の王だと、思った理由は、それだけですか?」
 
すると、ヒビキさんは、「いや。」と首を振る。
 
「えっ?まだ、何かあるの?」
 
たまらず、身を乗り出して聞いてしまう私。
だってさ、私も蒼輝もサンガも、ここにいたのに、全然雅さんが王だなんて、気付かなかったんだよ。
それなのに、ここまで暴露できて、さらにまだあったなんて・・・。
そりゃ、驚くよね。
興奮気味の私にヒビキさんは、振り返って少し笑うと、また雅さんを見る。
 
「名前だよ。」
 
それには、雅さんが、
 
「名前って・・・。
俺の『雅』って名前が、何か?」
 
と聞いてくる。
 
「いや。そうじゃなくて。」
 
と笑いながらヒビキさんは言うと、すごい事を言った。
 
「緑豹国の王は、蒼(アオイ)さまに、蒼輝(ソウキ)。
この2人に共通しているのは、緑の髪はさておき、『青い目』を持っている事。
それと、もう1つは、名前に『あお』と言う字が使われている。
緑の王が治めるから『緑豹国』と言われているのに、なぜ名前に『あお』が使われているのか。
これまでの歴代の王は、もちろん緑の髪は持っていたけど、青い目までは持って生まれてこなかったんだ。
生まれてきたのは、蒼さまと、蒼輝だけ。
だからだと思うけど、2人以外の緑豹国の歴代の王は、名前に『みどり』がつくんだ。
つまり、目に色を持った王だけが、名前に『その目の色』がつくという事になる。
なぜ、そういいきれるかというと、蒼さまが、緑豹国を治めていた時代に、青鳥国(セイチョウコク)を治めていた先代王の『朱雷(シュライ)』さまも、青鳥国(セイチョウコク)だから、「あお」の名前が使われるべきなのに、瞳の色の『あか』が使われている。
そして、さっき聞いた蒼さまの言葉。」
 
ヒビキさんは、そういうと、私を見た。
 
「蒼さまの言葉は、俺にも聞こえてた。
蒼さまは、言ったよな?
今、赤龍国(セキリュウコク)を治めている王の名前が、翠怜(スイレン)だって。
つまり、彼女は、緑の目を持つんだ。
だから、あかの王なのに、『みどり』が使われている。
それで、確信したんだ。
ミューラを封印した時、赤龍国(セキリュウコク)を治めていた王の事はわからないけど、緑豹国と青鳥国を納めていた王は、瞳に色があった王だった。
その裏を返せば、きっと封印を解くのにも、瞳に色を持つ王が必要となるはず。
そして、現に、緑豹国の王の蒼輝と、今を治めている赤龍国(セキリュウコク)の王の翠怜(スイレン)さんは、瞳に色を持つ王だとわかってる。
という事は、今の青鳥国(セイチョウコク)の王も、瞳に色があるはずだ。
そして、その者の名前は、瞳の『あか』が使われているはず。
だから、名前に『あお』が使われている『藍瑠(アイル)』さんは、真実の王じゃないってことだ。
俺の推理・・・どうだ?」
 
それには、「よく、気付きましたね。」と感心する雅さん。
でも、ヒビキさんのすごさは、それだけではなかった。
 
「もっというなら、俺は初めから君を疑っていた。
なぜなら、その隠している髪と、閉じている瞳。
それが、怪しかったからね。」
 
「怪しいって・・・。」
 
と聞いてくる雅さんに、ヒビキさんはスラスラと答える。
 
「たぶん、その目は生まれつき見えない。っていうは本当だろう。
きっと、目の色まではあの塔には封印できなかったんだ。
だから、目を開けさす事を禁じた。
あの塔の封印を解けば、君の目も見えるようになるだろう。
それから、頭の傷だけど、あれは嘘だろ?
髪の色を見られては困るからそう言っただけ。
夢で翠ちゃんが出逢った君は、ターバンなんて、巻いてなかったんだからね。」
 
パーフェクトの答えに、雅さんは、「参りました。」と言うと、ターバンに手をかける。
そして、それを一気にとった。
中から出てきたのは、青い髪。
でも、藍瑠(アイル)さんと比べると、全然薄い色。
こんなので、いいの?
と思ったのは、私だけじゃなかった。
 
「こんなに・・・薄い色なのか?」
 
とサンガが、ヒビキさんに聞いた。
驚く私たちと違って、ヒビキさんは、「大丈夫だよ。」と普通に答えた。
 
「今、彼の力の半分は、あの塔に取られてる。
つまり、変身ができなくなった蒼輝と状況は似てる。
だから、ミューラの力が彼に戻れば、藍瑠(アイル)さんよりも、もっと鮮やかな青に変わるはずだ。違うかな?」
 
と雅さんにきく。
 
「彼の言う通りです。」
 
と雅さんは答えると、持っていた本を出した。
 
「ここに、書いてあるんです。
藍瑠(アイル)さまが、本当の王ではない事を見抜き、全てを見抜く者が出てきた時、本当にミューラを復活させる事が出来るって。
それが、あんたたちなんですね。
ここに、ミューラの封印を解く『本当の方法』が載っています。
この本に従えばいいのですが、ただ・・・。」
 
というと、雅さんは、口を閉じた。
 
「なんなんだよ!」
 
とイライラする蒼輝に、「落ち着け。」とヒビキさんは叱ると、その本を手に取りながら、「その前に。」と雅さんに話かける。
 
「君の本当の名前を教えてくれ。
『あか』の字が、使われているんだろ?」
 
ヒビキさんの言葉に、雅さんは、「もちろんです。」と笑顔で答えると、本当の名前を口にした。
 
「べにに、みやびと書いて、紅雅(コウガ)と呼びます。
これが、俺の本当の名前。
でも、18年も雅(ミヤビ)と呼ばれていたので、今まで通り雅(ミヤビ)と呼んで下さい。」
 
その言葉に、「わかった。」とヒビキさんは笑顔で答えた。
 
「それはそうと・・・。
その本には、何て書いてんだよ!」
 
と、せまってくる蒼輝に、「そう、せかすな!」とヒビキさんは文句を言いながら、私たちが持っている物と、同じ書物を広げた。
でも・・・。
 
「そんな事、どこにも書いてないぞ。」
 
とヒビキさんは言う。
私も蒼輝もサンガも、ヒビキさんの元へと行き、みんなで覗き込む。
確かに・・・。
何も書かれてないっていうか・・・真っ白。
 
「一体、どういう事だ?
こいつ、嘘をついていたのか?」
 
とサンガはにらむけど、「雅?」と優しくヒビキさんは聞く。
 
「そのページには、ちゃんと文字が書かれています。
でも、それは、私にしか見えません。
閉ざされた瞳の私にしか、見えないのです・・・。
信じて、もらえないとは思いますが・・・。」
 
そう言った時だった。
急に蒼輝の体が、緑色に光出した。
 
「ちょと・・・何?」
 
と驚く私だけど、それはほんの一瞬の出来事だった。
眩しい光があたりを包んだかと思えば、一瞬にしてその光(ヒカリ)はやんだ。
心配して蒼輝を見るけど、蒼輝はピンピンしてる。
1つの事をのぞいては・・・。
 
「お前っ!黒髪に戻ってるぞ!!」
 
と指をさすサンガ。
それには、「えっ?」と叫んで蒼輝は慌てて首につけている玉を見る。
そこには、青い力が戻っていた。
私もつられて自分の玉を見た。
私の玉にも、緑の力が戻っていた。
 
「一体、何で、今頃。」
 
という蒼輝に、「たぶん、理由はこうだ。」とヒビキさんはいう。
 
「1つは、雅が、本当の事を話し、俺たちがいがみ合う事もなくなった。
力を合わせて、前へ進む為、翠ちゃんの身の安全は確保されたから、蒼輝は元に戻った。
それと、もう1つは、翠ちゃんの力を使わないといけなくなったから、力が戻った。」
 
「私の・・・力ですか?」
 
すると、ヒビキさんは、私の方に本を開けたまま持ってきた。
 
「このページで合ってるよな?」
 
と雅さんに確認をするヒビキさん。
雅さんは、うなずく。
 
「このページに書かれている文章を、翠ちゃんの念じる力で、浮き上がらせてほしい。」
 
それには、「えぇー!!」と叫ぶ。
 
「そんな事、できるのかよ!」
 
と蒼輝もビックリ。
でも、ヒビキさんは、「たぶんな。」というと雅さんを見た。
 
「俺たちが読めない文章を雅が見れる。
それを、読み上げてもらってもいいんだが・・・それじゃ、先へは進めない。
そうだよな?」
 
それには、「どういう事?」とみんなが聞く。
それには、雅さんが答える。
 
「俺が、見える文章の最後は、途中で切れてるんです。
たぶん、その先は、封印を説くべき者たちにしか、見えないようになっているんだと思います。
つまり、君たちなら、その文字を読む事ができるかと思ったのですが・・・。
俺が読める文章すらも、見えないのであれば、その先も見えるわけがないですよね・・・。
見えない文字を、もしあなたたちが、見る事が出来たなら、間違いなくミューラの封印を解く方法がわかるはずなのですが・・・。」
 
それを聞いた蒼輝は、私を見る。
 
「翠・・・頼む。」
 
私は、「うん。」と大きくうなずくと、その本に両手を合わせた。
そして、心から願った。
 
『ここに書かれている文字を、私たちに読ませて。
ミューラを、復活させる方法を教えて。』
 
すると・・・・。
 
「あちぃー!!」
 
私は目を開けて、両手を本から離した。
だって、いっきなり本が熱くなるんだもん!
 
「何?何が起こったの?」
 
という私に、蒼輝もヒビキさんもサンガも、そして雅さんも、本にくぎづけ。
 
「何?」
 
と言いながら、私も本を見ると・・・。
 
「何・・・これっ!!」
 
本には確かに文字が浮かんでた。
でも、その文字からは、青い光が発せられていた。
 
「サンガ・・・この文字を紙にメモってくれ。
もしかしたら、これは、一時的にしか文字が浮かばないかもしれない。」
 
それには、「わかった。」と答えたサンガは、ハンターの七つ道具を取り出すと、紙にその文字をつづった。
藍瑠(アイル)さんも、王座からこちらへと歩んできた。
 
「一体、何が書かれてあるのですか?」
 
すると、ヒビキさんは読み上げた。
 
「女力(ジョリョク)の鍵(カギ)は、封印されし塔(トウ)を、深き眠りより目覚めさせる。」
 
それには、「鍵・・・ですか。」と口にする藍瑠(アイル)さん。
その様子からみて、藍瑠(アイル)さんはその鍵を知らない様子。
 
「雅もわからないか?」
 
ヒビキさんの言葉に、雅さんも、「思い当たりません。」と首を振る。
 
「どうする、ヒビキ。」
 
と蒼輝はヒビキさんに聞くけど・・・。
 
「とりあえず、一度塔に上がってみよう。
どんな大きさの鍵か見てみないと。
そしたら、何かを思い出すかもしれない。」
 
ヒビキさんはそういうと、藍瑠(アイル)さんを見る。
 
「あの塔には、どうやって登るか知ってますか?」
 
でも、藍瑠(アイル)さんは、首を振る。
その答えに、私たちは力のない、ため息を吐くけど、ヒビキさんは、「なら、心配ないな。」という。
 
「どういう事?」
 
とたまらず聞いた私にヒビキさんは、「ん?」というと、答えてくれた。
 
「指定がないという事は、俺たちでも登れるってことだ。」
 
そういうと、また藍瑠(アイル)さんをみた。
 
「藍瑠(アイル)さんの力もいるかもしれない。
過酷ですが、豹の背中に乗って、あの塔まで、一緒に行ってもらえますか?」
 
藍瑠(アイル)さんは、「もちろんです。」と笑顔で答えた。
 
「藍瑠(アイル)さんは、俺の背中に乗って下さい。
それから、雅。」
 
というと、ヒビキさんは雅さんを見た。
 
「お前は、運動神経にもたけてる。
この中で、一番スピードがでるトーワの背中にも、平気で乗れるのはお前だけだ。
トーワの背中に乗ってくれるか?」
 
雅さんも、「はい。」と笑顔で答えた。
そして、最後は私たちを見るヒビキさん。
 
「蒼輝はまた、玉を使って、変身しろ。
そして、背中には、翠ちゃんとサンガが乗る。
今の蒼輝の体に翠ちゃん一人は乗せられないから。」
 
それには、蒼輝も、「そうだな。」と答えた。
 
それって・・・。
 
と驚いた顔で見る私に蒼輝は、「ん?」というと、「俺が気付かないとでも思ったのかよ。」と笑いながら言った。
 
「俺の筋肉が落ちたせいで、翠の体と合わなくなった。
この間背中に乗せたとき、すっごい辛そうだったもんな。」
 
そう言った蒼輝は、笑っていたけど、何か悲しい気持ちが私の心に流れこんできた。
私は、たまらず蒼輝の腕をつかんだ。
 
「ごめんね。」
 
と囁く私に、「お前が謝ることはない。」と笑って蒼輝は答えてくれた。
 
「よしっ!時間がない。
今すぐ、塔に向かおう。」
 
そう言って、立ち上がったヒビキさんを見て、みんなも立ち上がる。
私も蒼輝も玉を握り、力を蒼輝に注いだ。
それぞれ、変身した豹の背中に乗り、私たちは、ミューラが封印されている塔へと向かった。
 
 
    ☆☆☆10章 END☆☆☆
 



前のページ 目次 次のページ


HOME