500年先の未来で封印されている『神の鳥 ミューラ』の封印を解くのに必要な、『女力(ジョリョク)の鍵』を手に入れる為、私は緑豹国を後にし、一人現代に戻って来た・・・はずだったんだけど・・・。
私は、目の前に立つ『ある人』をまだ、ボケーっとしただらしない顔で見ていた。
何度も頭を上下に動かして、目の前の『ある人』を頭から足のつま先まで、しっかり、じっくり見た。
だけど、どれだけ見ても、やっぱり彼は、青鳥国(セイチョウコク)の青き王である雅(ミヤビ)さんだった。
「いい加減、そんなに見るの、やめてくれませんか?」
気配で私の行動がわかった雅さんは、いい加減ウンザリみたいで、彼にしては珍しく、少し声にイライラが混ざってた。
「ホントに、ホントに・・・雅さん?」
と再確認する私に、「はい。」と言った雅さんは、腰につけていた鞘(サヤ)を軽く持ち上げた。
「これを見たら、僕が本物だって信じてくれますか?」
その言葉に私は、雅さんの手元に目をやった。
だけど、それを見て信じるどころか、驚いちゃったよ。
「なっ!なんで、それを雅さんが、持ってるのよ!!」
って。だって、それは、第一の封印を解く為にさした剣でしょ?
なのに、それを、どうして雅さんが、持ってるわけ?
だいたい、なんで雅さんが、ここにいるのかも謎だよ。
たまらず、私は雅さんの腕をつかんだ。
「ねぇー、その剣といい、雅さんがここに私と一緒に来た事といい、一体あの時・・・。
私が、光に包まれた時、何が起こったの?」
真剣に聞く私の方を向いていた雅さんだったけど、急に私から顔をそらすと、今度は渚の家の屋敷がある方を向いた。
そっちの方角から何かを感じ取った雅さんは、「少し待って下さい。」というと、雅さんの腕をつかんでいる私の腕を手に取ると、下に下ろした。
「待てって・・・?」
するとまた、雅さんはさっきと同じ方角に顔を向けた。
「向こうの方から、気配を感じます。
誰かが、こちらに向かってきてます。
感じからすると敵ではない。
きっと、言われている渚さまではないかと・・・。」
確かに、前の時も私が戻ってきたら、渚が迎えに来てくれた。
という事は・・・。
「ねぇー。来てるのは、一人だけ?」
それには、「えっ?」と雅さんは、不思議そうに聞いてくる。
だって、今の言い方って・・・一人っぽくなかった?
渚が来てくれているなら、真音(マナト)さんも一緒に来てくれるはず。
もしかして、出発の時みたいに、家業の用事でいないのかな?
できるなら、真音(マナト)さんも一緒にいてほしいんだけど。
ただ、戻って来るだけでも、ドキドキなのに、雅さんまで一緒なんて!!
私と渚では、理解できそうにないんだもん!
ここは、現代版のヒビキさんに、何とかしてもらわないと!!
なんて、人を当てにしてる私に、悲しい知らせが!!
「そうですね・・・気配は、1人だけです。」
雅さんのその言葉に、私は顔を勢いよく上げる。
「どうか・・・しましたか?」
私の不安な顔は、雅さんにはわからない。
見えないんだから。
でも、見えない分、彼は神経が研ぎ澄まされている。
私の鼓動の速さや、空気の変化。
そんな誰もわからないような事で、わかってしまうのが雅さん。
だから、普通の人と接する時よりも気を配って、彼に余計な心配をかけないようにしなきゃいけない!ってわかってる。
わかっているんだけど・・・。
それをかき消せるほど、私は大人じゃない。
落ち着きがない私に雅さんは、何か言いたいのだろうけど、あえて何も言わない。
少しお互い沈黙になった。
その静かな空間に、割って入ってきたのが、ある足音!
雅さんが言った方角から、足音が聞こえて来た。
でも、それは、雅さんの言った通り、ひとつだけだった。
最初はわからなかったの。
だけど、それが近付くにつれて、私は気付き、「ハッ!」として下げていた顔を上げて、向かってくる人の方角を見た。
すぐそこまで来ていたから、私はその人を見ることが出来た。
その人を見た瞬間、私は両手で口を抑える。
そして、言った。
「嘘・・・なんで??」
って。だって、走ってきてたのは・・・。
「翠ちゃん!!」
その声に、私はもちろん即、口にした。
「なんで?どうして、真音(マナト)さんが?」
そう。私を迎えにきたのは、真音(マナト)さんだった。
確かに、真音(マナト)さんに逢いたかったのは事実。
真音(マナト)さんに、導いてほしかったのもホント!
でも、今は、真音(マナト)さんよりも、逢いたい人。
ううん。逢わなきゃいけない人がいる。
私は、安易に思っていた。
絶対に彼女に逢えるって!
だって、彼女は、絶対に『いる人』だと思っていたから。
でも、彼女がここに来なかった事を知った時、私はヒビキさんの言葉を思い出した。
ヒビキさんは、タイムリミットが5時間だと知ってこう言った。
『彼女がすぐにみつからないか、もしくは、その鍵が、翠ちゃんが持つ事ができないとか・・・。
何かしらのトラブルがあると、思っていてくれ。』
と・・・。
もしかして、これが、ヒビキさんの言っていたトラブル?
私は、緩んでいた気持ちに気合を入れた。
しっかりしなきゃ!
何があっても、渚の持っている女力(ジョリョク)の鍵を持って帰らなきゃいけないんだから!!
大きく息を吸った。
取り乱していた気持ちが、徐々に落ち着いてきた。
よしっ!
気合いを入れなおした私は、息を切らしている真音(マナト)さんを見た。
「渚は、どこにいるんですか?」
すると、真音(マナト)さんは、「悪い。」と一言謝ると、まずは、近くにある大きな岩に座る。
「結果から先にいおう!
今、渚はここにはいない。」
「い・・・な・・・い?」
一体、どういう事?
あれだけ、何があっても平常心でいようと決めていたのに、真音(マナト)さんの最初の一言で私の心はノックアウトされてしまった。
ふらつく私の体を、雅さんが支えてくれる。
「大丈夫?」
と口にしながら彼は、私を近くの石に、座らせた。
そして、自分は、地面に腰を降ろした。
「君が、『青き王』だよね。」
「!!」
あまり感情を表に出さないタイプの雅さんだけど、さすがにこれには、驚いたみたい。
ピタ!っと動きを止めて、くいいるように真音(マナト)さんを見てたから。
けど、そうなっちゃう雅さんも、わからなくはない。
だって、どうして雅さんが『青き王』だ。って知ってるのよ!
てっきり、『誰?』って言われると思っていたのに、あてられたんだから!
そりゃ驚くよ!
っていうか・・・一体、どうなってるの??
「ねぇー、真音(マナト)さん!どうして、雅さんの事、知ってるの?」
雅さんが真音(マナト)さんに聞く前に、私が身を乗り出して聞いてしまった。
私の声に、「ん?」といいながら、真音(マナト)さんは私に目を向ける。
「これに書いてたから。」
というと、真音(マナト)さんは、手に持っていた書物の表紙を私に見せると、さらにパラパラとめくり、あるページを開いた。
「ここに、書いてる文字なんだけど・・・。」
真音(マナト)さんの言葉に、私と雅さんは、書物に注目する。
「『緑の光が戻る。求めるものは女力(ジョリョク)の鍵。
5の時が訪れ、緑の光は再び戻る。』」
私は声を出して読んだ。
「それって・・・緑豹国の書物に書かれていた事と、ほとんど一緒だ。
それに、ちゃんと、翠さんが、女力(ジョリョク)の鍵を求めて戻ってくると書かれている。
ヒビキさんが言った通りだ。」
雅さんのいう通り。
確かに、ヒビキさんが予想したとおり、こっちの世界にいる人にも、私たちが必要としている女力(ジョリョク)の鍵の事が、書かれてあった。
って事はよ!
渚も、わかってたって事だよね?
なのに、渚はいない。どうして?
少し、胸騒ぎがした私は、真音(マナト)さんにストレートに聞いた。
「渚がいないって、じゃあ今どこにいるんですか??」
だけど、真音(マナト)さんは、首を振る。
「えっ?」
と口にしたきり私は、何も言えなくなってしまった。
見えなくても、私の気持ちの動揺がわかった雅さんは、何も言わずにソッと、私の右手に優しくふれると、握ってくれた。
まるで、心配しなくていいから。と言われているようだった。
「その渚さんの事も知りたいのですが、その前に。
僕の存在は、一体どこに書いてあったのですか?」
雅さんの言葉に、真音(マナト)さんは、書物のページをめくった。
そして、「俺が読むよ。」と言うと、そのページを口にした。
「『緑の光が、無色の光となり戻る。
青き剣を持つべし青き王が、『黒き龍の闇』を斬る。』」
真音(マナト)さんの言葉を聞いていた雅さんの顔が、だんだんと曇る。
そして、もちろん、全てを聞き終わった瞬間に、彼は言った。
「『黒き龍の闇』って、なんですか?」
って。だけど、「さぁ?」と真音(マナト)さんは言って首をかしげる。
真音(マナト)さんにもわからないって・・・一体どうしたらいいの!って思った時だった。
「さて・・・。本題に入ろうか。」
真音(マナト)さんはそういうと、腰をあげ、私たちの元へと歩いてくる。
そして、自分も雅さんと同じように地面に座った。
「本題って?」
と雅さんが聞くと、「言葉の通りだ。」と切り返し真音(マナト)さんは答えると、その書物を私たちに見えるように地面に置いた。
「さっき俺が読んだ2つ目の文章なんだけど・・・。
あれは、急に出てきたものなんだ。」
「急に??」
私と雅さんとの言葉が重なる。
私たちの声に頷きながら、真音(マナト)さんは続ける。
「渚は、寺の用事で出かけててさ、俺が書物を注意してみていた。
それで、2時間前に最初の文字が出てきた。
渚に電話をして、状況を話したら、30分で戻ってくると言った。
でも、1時間たっても戻ってこなかった渚を心配して俺は、渚の携帯を鳴らした。
だけど、いくらならしても、呼び出しはなるけど、渚は出なかった。
そして、今から10分前に、この2ページ目の文字が出てきたんだ。」
そういったあと、真音(マナト)さんは、今度は雅さんを見た。
「俺が思うに、君がこっちの世界に来る事は、急に決まったんだ。
そして、それは、渚と連絡が取れなくなった事に関係している気がする。
まず、君がこっちへ来る事になったいきさつを、教えてくれないか?」
真音(マナト)さんの言葉に、雅さんはうなずくと、私の方に顔を向けた。
「あの時・・・。
翠さんの体が光出した時、何が起こったのか、全てをお話します。」
そう口にした雅さんは、あの時の話を始めた。
「おいっ、ヒビキ!!一体、どういう事だ!!」
俺は、ヒビキの元に、猛ダッシュすると、そのままヒビキの胸ぐらをつかんだ。
その一方で、トーワとサンガは、翠が消えて跡形がなくなった場所を、すみずみまで見る。
「やっぱ・・・二人ともいねぇーぞ!」
とサンガ。
そんなの、近くに行って注意深く見なくてもわかるよ!!
俺は、ヒビキをつかんでいる手に力をこめた。
「なんで、雅を、翠と共に、あっちの世界に行かせた!
一緒に行かせるなら、どうして俺を行かせない!
お前は、そんなに俺と翠を、離したいのかよ!」
俺は、ヒビキを責めた。
なのにヒビキは、「フン。」と鼻で笑うと、近付いている俺の腹部に、重いケリを入れる。
もちろん、その風圧に俺は、自然とヒビキのむなぐらから手は離れ、少し後ろへと飛ばされた。
俺の体が、床に叩きつけられた。
大きな音が鳴る。
それには、藍瑠(アイル)さんが、驚く。
「ヒビキさま!そんな乱暴な事をされなくても・・・。」
といいながら、俺の体を心配して俺に近付いてこようとするが、それをサンガが彼女の腕をつかんで止める。
「サンガ・・・さん?」
と不思議そうに聞く彼女にサンガは、首を振った。
「今は、蒼輝に近づかない方がいい。
今のアイツは、冷静じゃないから。」
サンガの言葉に、今度は近付いてきたトーワも「そうだよぉー!」と話に割ってはいる。
「蒼輝とヒビキの喧嘩は、とぉーっても恐いのぉー。
近付いたら、噛まれちゃうよ!!」
「噛まれるんじゃなくて、火傷(ヤケド)する。って言うんだよ!!」
なんて、突っ込んでいるが・・・俺には、笑えない。
今は、目の前にいるこの、何を考えているかわけわかんねぇーヤローに、心底ムカついていた。
「ヒビキっ!答えろよ!」
俺は、ヒビキにそう叫ぶと、アイツの元へ行こうと立ち上がろうとした。
でも、体に力を入れようにも、アイツに蹴られた腹が痛くて、力が入らない。
もちろん、立ち上がる事もできなかった。
それでも、必死で足を手でつかんで、地面につけて、立とうとする俺。
そんな俺の元に、ヒビキから、近付いてきた。
「無理に立とうとするな!
今のお前は、こうでもしないと、俺の話をおとなしく聞けないだろ!」
そういったヒビキは、藍瑠(アイル)さんとトーワとサンガの3人にも、俺の近くにくるように呼びかけた。
みんなが俺の周りに集まった。
「雅がどうして、翠ちゃんと一緒に向こうへ行ったのか、全て話すよ。
だけど、その前に言っておくが・・・。」
そういうと、ヒビキは俺を見た。
「これは、俺が決めた事じゃない。
全ては、『あの書物』に導かれた事。
だから、俺を責めるのは筋違いだからな。」
それには、ちょっとバツが悪くなった俺。
少し、口をとがらせながら、「だったら、先にそういえよ!」って言ってみるが、「聞く気なんて、なかっただろ?」と呆れるヒビキ。
そんな俺たちに、じれったくなったサンガは、
「なー。それより、早く、教えてくれよ!
なんで、雅は向こうへ行ったんだ?」
その言葉を聞いたヒビキは、「そうだな。時間がないかもしれない。急いだ方がいいかもな。」というと、あの時、起こった全てを話した。
「翠ちゃんが少し輝き始めたあの時!
ランから知らせが来た。
それは、緑豹国の書物に、文字が現れたって事だった!」
「何て、出たのですか?」
藍瑠(アイル)さんの言葉に、ヒビキは答える。
「『長針が半周すれば、無色の光のみ元へと戻る。
緑の光は、その地にとどまる。』
まず、出たのは、この文字だったんだ。
意味は・・・わかるよな?」
ヒビキはそう言って俺を見た。
俺は、「ああ。」と口にしながら、自分の胸元で光っている翠の緑の玉を手に取った。
「お前が、俺に、これを翠から受け取るように言った理由はわかったよ。」
緑の玉をみつめてそういった俺は、今度は顔を上げて、ヒビキを見る。
「それで?問題の、雅が翠と向こうの世界に行った理由は?
それも、書物の導きだと言っていたよな?
書物は、何て言ってきたんだ?」
するとヒビキはいきなり、その文字を口にした。
「『黒き龍が、邪魔をする。
青き剣(ツルギ)を備えし者が、黒き闇を打ち砕く。』」
そう言ってヒビキは口を閉じた。
ヒビキの言葉を、ひたすらメモるサンガ。
意味がわからずに、ただポカーンと口を開けているトーワ。
ただごとでない内容に、驚きを隠せない藍瑠(アイル)さん。
そして・・・。
何を言っていいかわからない俺。
聞きたい事は、いっぱいあった。
黒き龍って、なんだ?
黒き闇って、なんだ?って。
でも、一番聞きたいことは、もちろん、これだった!
「それって、翠の身に何かが起こるって事なのか?」
気持ちがあせり、俺は体を起こして起き上がろうとする。
だけど、まだ体はダメージを負っていて、ズキンと激痛が走り俺を苦しめただけだった。
「何度言わせるんだ。今は、無理をするなと言っているだろう!」
きつい口調でヒビキはいいながら、俺の額に触れると、それを後ろにトーンと押した。
体に力が入らない俺は、ヒビキにされるがまま、体を床に倒し、背中をつけて寝転んだ。
「しばらく、そうしてろ!」
ヒビキはそういうと、横になっている俺の顔の位置まで、周ってくると、そこに座る。
ちゃんと、俺が、ヒビキを見ながら話が聞けるようにしたヒビキは、「藍瑠(アイル)さん!」と声をかけると、彼女を見た。
急に呼ばれた彼女は、「えっ?」と驚いた顔でヒビキを見た。
「今言った、書物に書かれていた言葉を解読する前に、あなたに一つ確認しておきたい事があるのですが・・・。」
それには、もちろん、「なん・・・ですか?」と戸惑いながら、彼女は答えた。
「雅のあの青い剣には、『特別な力』があるのではないですか?」
「特別な・・・力?」
と声を出したのは、サンガ。
「おい!それ、どういう意味だよ!」
と話に割ってくるサンガに、「黙ってろ!」と俺は冷たく口にする。
「なんだよ!偉そうに!!」
と、つっかかってくるサンガだけど、コイツをトーワが止めてくれる。
サンガの腕をつかんで、「シー。」と顔を近づけて言うトーワに、さすがに根負け。
「わかったよ。」とサンガは口にすると、騒ぐのをやめた。
俺たちのそんなやりとりを見ていたヒビキは、
「ホント、低レベルなヤツラだな。」
と毒舌を吐くものの、顔はとても嬉しそうに笑ってた。
まるで、やんちゃな弟たちを暖かい目で見ている兄貴のようだった。
そんなヒビキの顔を見ていると、俺もとても穏やかな気持ちになった。
少し体が動くようになった俺は、上半身をユックリと起こすと、その場に座った。
「おいっ!無理をするなって!!」
俺の行動に驚いて慌てるヒビキに、「もう、大丈夫だ。」と言いながら、俺の腕に手を伸ばしてきたヒビキの腕を俺は、右手で拒否する。
「それより・・・。」
そして、藍瑠(アイル)さんを見た。
「ヒビキが言った質問の答えを、教えてもらえませんか?」
そう口にした俺に、藍瑠(アイル)さんは、「はい。」と答えながら深くうなずいた。
「緑豹国の人たちが、どうかはわかりませんが・・・。
私たち、青鳥国(セイチョウコク)では、不思議な力があるのです。」
「不思議な力?」
俺とヒビキの声が、ダブル。
「ええ。」と藍瑠(アイル)さんは答えると、おもむろに立った。
「私を・・・見てて下さいね。」
藍瑠(アイル)さんはそういうと、目をつぶり、気を集中させた。
次の瞬間、急に俺たちの目の前に強い突風が吹き荒れた。
目なんて開けていられなかった。
たまらず、俺たちは目をつぶる。
すると、さっきの突風が嘘だったかのように、わずか数秒で風は止まった。
俺たちは、すぐに目を開けた。
「えっ!!」
俺たち4人の声が、一緒になる。
次の言葉を言おうとしたその時、
「私は、ここにいます!」
背後で声がして、俺たちは一斉に振り返った。
さっきまで、目の前にいた藍瑠(アイル)さんがいた場所は、なんとさっき青き剣をさしていた中央。
そこから、彼女はユックリと俺たちの元へ向かって歩いてくる。
「嘘・・・だろ?」
そう言ったのはサンガだった。
でも、ここにいる誰もが、心の中でそう言ってた。
『嘘だろ?』って・・・。
「なんで・・・。」
俺がそう口にし、その続きをヒビキが口にする。
「なぜ、わずか数秒で、そんなに離れた場所にいるのですか?」
藍瑠(アイル)さんは、笑いながら、
「これが、私の『不思議な力』です。」
と口にし、俺たちの元へと歩いてくる。
「それって・・・。」
ヒビキの言葉に藍瑠(アイル)さんは、「そうです。」と笑顔でうなずくと、俺たちの目の前に来て足を止める。
そして、俺とヒビキを見つめてこう言った。
「瞬間移動です。」
「まさかっ!!」
まさかもなにも、今実際に見たところだっていうのに、俺はそれでも信じられなくて、そんなありきたりな言葉を口にしていた。
トーワはもちろん、座った状態で後ろに転がって、「信じられなぁ〜い!」を連発する。
サンガは・・・唖然。
コイツラの反応は、俺も納得。
だよなぁ〜。って同感してた。
でも、一人・・・。
もちろん、コイツはこんな時でも落ち着いてる。
「やっぱり・・・・。」
なんて言ってるしさ。
もっと、驚けよ!って突っ込みたいが、そんな事言ってる場合じゃないからな。
とは、言っても、たぶんここから先、話を聞いても、もっともっと驚かされたり、理解できなかったりする事は、この時点で予測がついた。
なら、俺は、早々に白旗を振ろうと決める。
「ヒビキ!」
俺の声に、「ん?」といいながら、ヒビキが俺を見る。
「話は・・・お前が進めてくれ。
俺じゃ、理解できそうにない。」
俺の言葉にヒビキは、「そうだな。」と簡単に同意する。
なんだよ!そんな事、ないだろ?とか、否定しろよ!
俺をたてろよ!!って思うけど・・・。
ヒビキに任せるのは、正しい選択だと思う俺は、言い返さなかった。
立っている藍瑠(アイル)さんに、座るよううながしたヒビキは、「それで?」と藍瑠(アイル)さんが、話しやすいように導く。
「その力は、他の青鳥国(セイチョウコク)の人間にもあるのですか?」
「これは、『今』は私だけです。」
もちろん、「『今』って?」とヒビキは追求する。
「この力は、青き王女にのみあるのです。
この力を持って、この世に生まれてきます。
そして、その王女とついに生まれてきた男には、代々受け継がれている『青き剣』が渡されます。
それを、持つことで、その男にも『不思議な力』が備わります。」
「って事は、雅があの剣を持てば、力が発揮出来るって事ですか?」
「ええ。」と答えた藍瑠(アイル)さんに、俺が横入りする。
「雅も瞬間移動ができるのか?」
でも、「いいえ。」と藍瑠(アイル)さんは首を振る。
「じゃ・・・どんな力が?」
ヒビキの声に、彼女はアイツを見る。
「『黒き龍(リュウ)の作り出す闇(ヤミ)』を斬(キ)る力です。」
「くろき・・・りゅう??」
またしても、俺たち4人の声が重なる。
だけど、すぐにヒビキは次の言葉を続ける。
「それ・・・書物にも出てましたよね?
一体、『黒き龍』って何なんですか?」
でも、藍瑠(アイル)さんは、「わかりません。」とハッキリと答えた。
「わからないって!
でも、それを斬る力があるんでしょ?
だけど、『黒き龍』がわからない?
一体、なんなんだぁー!!
わけわかんねぇー!!」
と髪をかき乱して取り乱すサンガに、「落ち着けよ!」とヒビキは口にすると、藍瑠(アイル)さんに、「もう少し、詳しく話してもらえませんか?」と頼んだ。
「青鳥国(セイチョウコク)には、鳥に変身出来る者と、ただの混血の者がいます。
昔は、鳥に変身出来る者がたくさんいましたが、ここ数年どんどん減り、今はこの国に変身できる者は誰一人いません。
ミューラの力を封印されている青き王・・・雅ですね。
彼以外は、誰も鳥にはなれません。
ただの混血人間だけが存在します。
そして、混血人間が普通の人間と違うのは、ただ1つ。
体が普通より身軽であるという事。
建物の5階程度の高さなら、平気で降りられます。
それくらいです。
あと、特別な力がある人物といえば、さっきもいいましたが、青き王女の瞬間移動。
そして、そのついである男の『黒き龍の闇を斬る力』です。
でも、この二つの本当の使い道はわかりません。
瞬間移動も、今まで、「あってよかった。」と思う事もないですし、雅の力も今まで使った事がありません。
『黒き龍』が何なのかもわかりませんし、そもそも雅が剣を使う事も、外部の人間が入れない青鳥国(セイチョウコク)では、必要ないのです。
何の為に、私と雅の力があるのか、本当にわからないのです。
申し訳ありません。」
そして、彼女は深々と頭を下げた。
そんな彼女を見ていた俺は、ヒビキを見た。
俺の視線を感じたヒビキも俺に目を向ける。
アイツの目も口も動かなかった。
でも、アイツの眼差しでわかった。
俺が、今思っている事に、ヒビキも気付いたって。
そして、俺が思った事は、間違っていなかったって!
そう感じた俺の勘は、間違ってなかった。
「藍瑠(アイル)さん!頭を上げて下さい。」
優しくヒビキはそういうと、彼女の腕をつかんで、顔を上げさせた。
「その二人の力の使い道がわからないのも、当たり前。
そして、それが今までいらなかったのも、当たり前。」
ヒビキはそういうと、藍瑠(アイル)さんに優しく微笑んだ。
「二人の力は、今から必要になるんですから!」
「今・・・から?」
キョトンとする藍瑠(アイル)さんにヒビキは、「ええ。」と答えると、「とりあえず・・・。」と口にしたヒビキ。
「雅の力と関係する、その『黒き龍』ってのは、今はわからないし、雅が向こうに行っているという事は、雅の力は『俺たちには必要ない』という事になる。」
「って事は、俺たちに必要な力ってのは・・・。」
サンガの言葉に、俺たちの目が一斉に藍瑠(アイル)さんに注がれる。
たくさんの視線を感じた彼女は、「えっ?」と驚きながら、
「わたし・・・ですか?」
とビビリながらの答え。
そりゃそうだよな!
まさか、自分の力が必要とされるなんてさ!
誰でも驚くって!
かなりへっぴり腰になっている彼女だけど、ヒビキはホローもなく、ドンドン『疑問』を解決しようと話を続ける。
「藍瑠(アイル)さん!その『瞬間移動』の力なんですけど、どこにでもいけるんですか?」
困惑している藍瑠(アイル)さんは、ヒビキの質問にもちろん答えられない。
驚きすぎて言葉が追いつかない。
けど、とりあえず身振りで答える。
「いけないって事ですか・・・。
じゃあ、どこにならいけるんですか?」
「それは・・・。」
やっと言葉が出た藍瑠(アイル)さんだけど、それ以降は気が動転していて続かない。
彼女の気を落ち着かせてやりたいけど、俺はまだこの場所から立つ事が出来ない。
となれば、アイツを動かすしかないだろう。
俺は、横にいるある男を見た。
「ん?」といいながら、アイツは俺は見る。
何も言わず、ただ顎を使って、「向こうへ行け!」と訴えてみた。
すると、「ああ。」とアイツは口にして、立ち上がる。
そして、藍瑠(アイル)さんの側に行くと、彼女の横に座り背中を優しくトントンとなでる。
「大丈夫ですよ。落ち着いて。
ヒビキがいうとおり、藍瑠(アイル)さんの力が本当に必要になったら、俺たちが全力で守りますし、力にもなります。
あなたは、一人じゃないですから。
雅の分も、俺たちがしっかりと守りますから・・・安心して下さい。」
サンガの言葉に彼女は、ホッとしたのか、サンガの腕に手を伸ばす。
そんな彼女をサンガは、優しく抱きしめる。
おいおい!やりすぎだろ!
って言いそうになったけど・・・まー、けどいいか。と思う俺。
コイツが、藍瑠(アイル)さんを好きになれば、翠を独り占めできるわけだから、ラッキーといえばラッキー!
でも、そう思ったのは、一瞬だけだった。
だって、サンガが彼女を女として、抱きしめたんじゃないとわかっていたから。
アイツは、彼女の気持ちをわかったから、抱きしめたんだ。
彼女は今まで生きてきた20年間、ずっと雅と一緒にいたんだ。
いくら、この青鳥国(セイチョウコク)から出たことがないといっても、争いがなかったとは思えない。
彼女をねたむやつがいたり、いろいろ危険な目にもあったんじゃないかな。
そんな時、いつも彼女を守っていたのが雅だ。
その雅が今はいない。
呼べばすぐにいる場所ならまだしも、雅がいるのは異世界だ。
下手したら戻ってこれないかもしれない。
今の今まで、気丈に彼女は振舞っていたけど、きっと心細くて寂しくてたまらなかっただろう。
その上、今度は自分の力を使わないといけない。
しかも、まだ100%信じられない俺たちのために。
恐くて不安になるのもわかる。
そして、そんな彼女を支えてやりたいと、誰よりも強くサンガが思うのも納得だ。
だって、サンガは本当に優しいやつだから。
俺を愛していると知っていながら翠を支え続けてるサンガだからな。
アイツの優しさというか、お人よしさに、勝てるやつなんていねぇーよ。
そして、アイツの優しさに癒されないやつもいねぇー。
藍瑠(アイル)さんの元に、サンガを送って正解だったと知らされた。
「ごめんなさい。ご心配かけてしまって・・・。」
と申し訳なさそうにいいながら、サンガの胸から出ようとする藍瑠(アイル)さんに、サンガは優しく笑いかけた。
「いえ。」と答え、「さっきの・・・。」と口にすると、彼女に優しい口調で話す。
「ヒビキが言った質問に、答えられますか?」
サンガの言葉に、彼女はユックリとうなずくと、ヒビキを見る。
「自分が行った場所にしかいけません。」
「つまり、青鳥国(セイチョウコク)以外はいけないって事か・・・。」
と口にした俺に、
「じゃあ、藍瑠(アイル)さんの力はいらないんじゃないのか?」
と加えるサンガ。
その時、ヒビキがまた、俺たちに向かって手のひらを受けた。
『待て!』って事だよな。
それって・・・。
「ランからか?」
叫ぶ俺にヒビキはただ頷くだけ。
俺たちは、ヒビキとランの交信を妨げないように、息を飲みながら見守り待った。
雅さんはあの時の事を、ただひたすら語った。
そして、それを黙って聞いていた真音(マナト)さんは、
「以上が、全てです。」
と話し終えた雅さんに、まず、「なるほどねぇー。」と言いながらうなずいた。
それには、もちろん、「うそー!!」って叫んでしまう私。
私の驚きの声に、真音(マナト)さんは、「ん?」といいながら、私に目を向けた。
「何?なんか、俺、変な事言った?」
キョトンしていう真音(マナト)さんに、「だってー!」といってさらに続ける。
「今ので、何がわかったの??」
って。だって、ちっともなんだよ。
でも、そう思ったのは、私だけではなくて、語った雅さんも同じ気持ちだったみたい。
「今ので、本当にわかったのですか?」
と改めて聞いてるくらいなんだもん。
確かに、雅さんは、私が光だした時の事を、語ってくれた。
ヒビキさんが、叫んでた理由も、蒼輝が急に私の緑の玉をほしがった理由も、すべてランさんからの連絡を受けての事だったとわかった。
そして、第一の封印を解く為に使った青き剣を持った状態で、私と共に、こっちの世界に行くようにヒビキさんに言われた雅さんは、ただ意味もわからないまま、言われるがまま行動に移したのだという。
つまり、雅さんは、ヒビキさんに言われた通りにしただけで、実際ランさんがヒビキさんに、何て言ったのかはわからないのよ。
結局、雅さんが、どうしてこっちに来る事になったかも・・・わからない。
だから、『なるほど』と納得した真音(マナト)さんを、不思議に思うのもわからなくはない。
「あの・・・。」
今度は雅さんが、真音(マナト)さんに言いにくそうに声をかけた。
「何?いいにくそうに・・・。」
と笑いながら気軽に答える真音(マナト)さんに雅さんは、「聞いていいですか?」と核心をついた。
「いいよ。何?」
二つ返事で答えた真音(マナト)さんに、「では。」というと疑問を投げかけた。
「緑豹国にある書物には、何て書かれていたと思いますか?
結局、俺は、ヒビキさんに言われるがまま、剣を持って翠さんとここへ来てしまった。
何で来たのか。何をすべきなのか、俺にはわからないんです。」
すると、真音(マナト)さんは、「たぶんね・・・。」といいながら、目の前に置いていた書物を手に取ると、雅さんの前に改めて置き直した。
そして、ある文章を口にしながら、そこを指でなぞった。
「『青き剣を持つべし青き王が、『黒き龍の闇』を斬る。』」
そう口にすると、本から指を離して土に両手をつけると、リラックスした態度で座り、話し始めた。
「たぶん、緑豹国の書物にもこういう内容が出たはずだ。
『黒き龍』って言葉がね。」
そして、さらに真音(マナト)さんは、すごい事を言ったの。
「雅くんに聞くけど・・・。」
そういって真音(マナト)さんは、雅さんの腰につけている剣を指さした。
「その『青い剣』って、もしかして何か特別な力があるんじゃないの?」
「へっ?」と言ったのは、私。
雅さんは、何も答えないまま、ただ真音(マナト)さんを見ていた。
「何でわかったんだ?って顔してるな。」
なんて、笑いながら真音(マナト)さんはいうと、「じゃ、俺の推理を聞いてもらおうかな。」となぜか楽しそうに話出した。
「その剣には、書物にも出た通り『黒き龍の闇を斬る力』がある。
それは、その剣に。って事じゃなくて、青き王である君が持つ事で力が発揮する。
つまり、豹になった蒼輝くんが強化された体を手に入れる。
ヒビキさんが心で会話が出来る。
トーワくんが、高速スピードが出せる。
豹の血が、人間の血より濃い者が、生まれながらに持っている力。
彼らのそういう力と相当するのが、君にとって『これ』なんじゃないのか?
鳥の血が、人間の血より濃い者であり、青き王である君にしかない力。
だから、君は、剣ごとここへ来た。
つまり、裏を返せば、君がいた未来ではなく、ここ。
過去で、君の力は、必要となるんだ。
考えたくはないが、たぶん・・・。」
そう口にした真音(マナト)さんは、急に口を閉じた。
真音(マナト)さんの沈黙が私には恐くて、「何?」と真音(マナト)さんにくいついてしまう。
だけど、答えたのは雅さんだった。
「俺の力は、渚さんを救う為に使うって・・・事ですよね?」
「それ・・・どういう事?」
雅さんの顔を見て、すぐにそのまま真音(マナト)さんに目を向けた。
真音(マナト)さんの顔がさっきとは違って、曇ってる。
って事は・・・。
「ねぇー、真音(マナト)さん!ちゃんと説明して!
真音(マナト)さんには、だいたいの事は見当ついてるんでしょ?」
私がそう叫んだ時だった。
急に、目の前の本が、パラパラと勝手にめくられた。
風なんてない。
一体、何?
「ちょっと!何で本が勝手に・・・?」
そういいながら、私がめくれる本に触れようと手を伸ばした。
「待って!!」
側にいた雅さんが、私の手をつかんだ。
「な・・・なに?」
キョトンとする私とは違って、雅さんの行動の『意味』に気付いた真音(マナト)さんは、真剣な顔で彼を見る。
「何か、感じたのか?」
真音(マナト)さんの言葉に、雅さんはうなずきながら、
「その本の周りに、邪悪な空気が飛び交っている。
今は、触れないほうがいい。」
その時だった。
急に、めくられていた本が動きを止めた。
そして、な・・・なんと!!
「なっ!なにこれぇー!!」
私は絶叫。
「何か、現れたのですか?」
と真音(マナト)さんに聞く雅さん。
焦る私たちと違って、真音(マナト)さんは、「ああ。」と落ち着いた声で答えると、「なぁー。」と冷静に雅さんに聞く。
「邪気はなくなったか?」
って。
「もう、消えました。」という雅さんの答えを聞いたうえで、真音(マナト)さんは、その書物に触れ手に取った。
「一体、何と書かれているんですか?」
雅さんの言葉に真音(マナト)さんは、大きく息を吸い込み気持ちを落ち着かせた。
「『我は黒き龍。
求めし、女力(ジョリョク)の鍵を持つ者は、我が手の内にて捕らえたし。
かけた呪いは、無色の光が戻る時、解かれる。
それ以前に呪いを解けば、死を意味する。』」
「それって・・・。」
でも、それ以上は言えなかった。
だって、呪いって・・・。
恐くてたまらず、震えてしまった。
そんな私の肩をポンと叩きながら、雅さんは真音(マナト)さんと話を始める。
「つまり、黒き龍に、渚さんが捕まったという事ですよね?」
雅さんの言葉に真音(マナト)さんはため息まじりに、「そうみたいだな。」と答えると、「お前さー。」と雅さんにまたもや、質問開始!!
「まず、この黒き龍ってヤツの事、本当にわからないわけ?」
「はい・・・聞いたことがない。
黒き龍の闇を斬る力があるといわれていたけど、黒き龍とは、一体何者なのかもわからないんです。」
その答えに「そっか。」というと、「たぶんだけど・・・。」と真音(マナト)さんは口にしながら本を見る。
「ここに書かれている文字・・・。
雅には見えないからいうと・・・黒い炎なんだよ。」
「黒い・・・炎??」
そうなんだよね。
雅さんは見えないからわかんないだろうけど・・・。
さっき、私が叫んだ時、本が真っ黒い炎で燃えてたの。
だから、あの時、雅さんが止めてくれてなかったら、私の手は大火傷(オオヤケド)をしていたかもしれないの。
でも、なんで、黒い炎なの?
黒き龍だから??
「この黒い炎には、きっと何か意味があるはずなんだ。
というより、たぶん、この黒い炎が、犯人を割り出してくれるはずなんだ。
だけど、それはたぶん、俺たちにはわからない。」
「じゃあ、誰にならわかるの?」
そう答えた私に真音(マナト)さんは、「初代王だよ。」とさらっと答えた。
「なんで初代王って言い切れるのですか?」
雅さんの質問に、「それはね。」と真音(マナト)さんは回答をする。
「ミューラの封印を解いてほしいと思っているのは、初代王なんだよ。
そして、封印を説いてほしくないと思っているのは、今邪魔をしてきている黒き龍。
つまり、緑豹国と青鳥国(セイチョウコク)と、赤龍国(セキリュウコク)。
それぞれの初代王が日本を治めていた時からの、因縁が今も引きずられているんだ。
だから、その時代に生きていた初代王に聞けば、『黒き龍』の事もわかるはず。
だけど、緑豹国の初代王である蒼さまは、生きてはいるが、WONDER LANDに囚われているため、話は出来ない。
となれば、赤龍国(セキリュウコク)を治めている翠怜(スイレン)さんに聞くしかないだろう。」
「だけど、彼女は今の赤龍国(セキリュウコク)の王ですよ。
初代王ではないのに、わかるんですかね?」
雅さんのするどい指摘にも全く動じないで、真音(マナト)さんは続けた。
「きっと・・・彼女が、赤龍国(セキリュウコク)の初代王だよ。
そして、翠ちゃんの母親だ。」
「は・・・い?」
口を開けて、ポカーンとしていた私は、それ以上言葉が続かなかった。
変わりに、真音(マナト)さんとの会話をしてくれたのは、もちろんこの人。
「どうして、そういいきれるのですか?」
雅さんの質問に、真音(マナト)さんはこう答えた。
「翠ちゃんの名前だよ。」
って。
「私の・・・名前?」
首をかしげながら言う私に、真音(マナト)さんは、「うん。」と言ってうなずいた。
「翠ちゃんはいえば、青い目を持つ緑豹国の緑の王女だ。
つまり、翠ちゃんの名前をつけるなら、蒼輝くんと同じく『あお』が使われるべき。
なのに、翠ちゃんは、『みどり』が使われている。
それは、母親である彼女の最後のわがままだったんだろうな。」
「わが・・・・まま??」
「そう。理由はわからないが、子供を過去に送り込まないといけなくなった。
いえば、二度と逢えなくなるんだ。
せめて、自分の名前を入れてやりたい。と思うのもわからなくはない。だろ?」
そういわれたら、そうかも。
私も、変だなー。って思ってたの。
それに、よく、最近助けてくれていた女性がいたもんね。
でも、そう思って、「ん?」と思う私は動きを止める。
だって、今の・・・変じゃない?
「どうして??」
不思議な眼差しで真音(マナト)さんを見ながら私は、うわ言のようにそう言った。
「何が?」
私の態度と言葉の意味がわからない真音(マナト)さんは、今度は彼がキョトンとして私に聞いてくる。
「なんで、真音(マナト)さんが、そんなに詳しく知ってるの?
今回の冒険でわかったことも、わかってない?
まるで、一緒に冒険していたみたいに・・・。」
すると、真音(マナト)さんは、「ある意味そうかもな!」というと、笑い出す。
「俺も信じられないんだけど、翠ちゃんが行ってから、毎夜夢を見てたんだ。
翠ちゃんが向こうで過ごしていた光景を、まるでビデオを見るかのようにずーっと眠っている間見てた。
どうしてだろう?って思ってたけど、今から思えば、渚を救う為に、全てを理解しておかないといけなかったから、本が見せてくれていたのかもしれないな。
おかげで、こういう事態になっても、すぐに理解ができたからね。」
真音(マナト)さんはそういうと、「それで、雅くんに聞きたいんだけど・・・・。」というと、
「WONDER LANDのあるべき場所ってわかるか?」
と言ってきた。
「それは、向こうの世界ではなくて?」
「ああ。ここでは、どの辺の位置になる?
わからないか?」
「そうですね。まるっきり景色が違いますから。
でも、感覚ではわかるかもしれません。
それでもいいですか?」
「ああ。案内してくれ。」
「ちょっと待ってよ!!」
この場を去ろうと、腰を上げた2人に、急いでストップをかける私。
「何?」
と真音(マナト)さんが、私に聞いてくる。
「何じゃなくて・・・。
黒き龍の事を、聞かなくていいの?
翠怜(スイレン)さんに聞けばわかるんでしょ?」
だけど、真音(マナト)さんは、「無理無理。」と言いながら右手を振った。
「翠怜(スイレン)さんは、向こうの世界に居る人だよ。
どうやって聞くんだよ!」
「でも・・・。」
それを聞かないと、渚を捕まえているやつの事がわからないじゃない。って言いたいけど、口が動く前に胸がいっぱいになって、思わず涙ぐんだ。
私の気持ちがわかった真音(マナト)さんは、私の頭をポンポンと優しくなでた。
「心配しなくていい。
黒き龍の事は、向こうに居るやつらが、やってくれるさ。」
「向こうにいるやつら??」
「そう。蒼輝くんやヒビキさんたちがね。
俺たちは、とにかく渚の場所を突き止めよう。
そして、早く呪いを解かなきゃ!」
「でも、無色の光が戻る時、呪いは解けるって。」
その答えに真音(マナト)さんは、少し笑いながら、「それじゃあ困るだろ?」という。
「無色の光が戻る時。ってのは、つまり、翠ちゃんが緑豹国のある世界に雅くんと戻る時って事だ。
それじゃあ、女力(ジョリョク)の鍵が手に入らないまま、翠ちゃんは向こうに戻されてしまう。」
「あっ!!」
「まー、それが、黒き龍の狙いなんだろうけどな。」
真音(マナト)さんのその言葉のあと、ずーっと黙っていた雅さんが、口を開いた。
「だけど、どうするんですか?」
って。
いきなり言われて驚いた真音(マナト)さんは、「何が??」と言いながら雅さんを見た。
「だって、無理に呪いを解けば、彼女の死を意味すると書いてあるんですよね?」
「ああ。」と口にしたあと、真音(マナト)さんは、「だけど・・・。」と言って、少し雅さんに向かって笑いかけた。
「なん・・・ですか?」
と戸惑う雅さんに、真音(マナト)さんは、その笑顔の真実を語った。
「たぶん、呪いを解く方法は絶対にあるはずだ。
そして、必要となる力は、きっと雅くんの青き王の力だ。
だからこそ、雅くんがこっちの世界に来たんだろうからね。」
「そう・・・ですかね?」
「とにかく、今は、一分一秒を無駄には出来ない。
雅くん、急いでその場所に、案内してくれ!」
真音(マナト)さんの言葉に、私も立ち上がった。
そして、雅さんが導く方角に、私たちはひたすら付いて行った。
☆☆☆ 12章 END ☆☆☆
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