2008/4/14


2     2章  INFORMATION〜情報〜
更新日時:
H19年5月4日(金)
緑豹国と『光のない国』との境である『狭間(ハザマ)』で、蒼輝は待っていた。
そこに着いても、やっぱり蒼輝はヒビキさんとは、一言も話さない所か、目も合わさなかった。
 
「じゃ、翠ちゃん。
ネックレスを、蒼輝に渡して。」
 
私は頷きながら、ネックレスをはずす。
そして、私の横にいるけど、顔をそっぽむけている蒼輝の首に、私のネックレスをかけた。
二つの玉が、ぶつかり合った音が、何度か聞こえた。
 
「じゃ、くれぐれも気を付けて。
わかってると思うけど、危険を感じたら、すぐに戻ってくるんだ。
翠ちゃんは、玉をつけて、すぐに俺に話しかける事!いいね。」
 
「はい。」と私は答えて、側にいる蒼輝の腕をつかむ。
まるで、蒼輝も返事してよ!と言わんばかりに。
私の気持ちが通じたのか、蒼輝は相変わらずそっぽは向いていたけど、
 
「わかった。」
 
とボソっと答えた。
その答えに、私はヒビキさんに目をやる。
ヒビキさんは、とても優しく笑うと、急に空を見上げた。
 
「よし、そろそろ時間だな。」
 
彼の言葉で、蒼輝は止めていた足を動かす。
急に動いたものだから、私は蒼輝にひっぱられるような状態で前に進む。
緑豹国の光を出る瞬間、蒼輝はホンの少しだけ、顔を右後ろに動かした。
 
「じゃーな。」
 
彼の言葉に、ヒビキさんは「おう。」と優しく答えた。
気付けば、そこはもう光がない世界。
薄暗くて、見ているだけで気持ちが沈んでしまうような・・・。
息がつまりそうな世界だった。
 
「何度来ても、この空気は・・・慣れないね。」
 
という私に蒼輝は、「そうだな。」と答えるだけ。
そして、何も言わずに、ただ歩く。
私の手を握ってくれるわけでもなく、ホントにただ前を向いて歩くだけだった。
私が、さっき蒼輝の左腕を右手でつかんでいるんだけど、それを振り払うわけでもなく、その手をずらして手を握ってくれるわけでもなくて・・・。
何も行動を起こさない。
さっき、キスまでしてくれた彼なのに・・・どうして?と思ってしまう私。
だけど、さっきのヒビキさんとの喧嘩で、機嫌が悪いだけなのかも?と、あまり気にも止めてなかった。
ろくに、彼と話もしないまま、かなりの時間が過ぎていった。
気付けば、いつの間にか前方に、WONDER LANDの入り口の光が見えていた。
 
「思ったより・・・早く着いたね。」
 
といいながら、私は「今、何時だろう?」と腕時計に目をやる。
だけど、私が時計を見て時間を認識する前に、蒼輝が空にある月を見て、
 
「4時半くらいかな?」
 
と答える。
私は、「えっ?」と彼を一瞬見るけど、気になって腕時計も見てしまう。
彼の言った通り、4時25分をさしていた。
 
「なんで・・・わかったの?」
 
と思いっきり驚いている私とは違って彼は、落ち着いたおももちで、右手を上にあげる。
そして、人差し指で月をさす。
 
「あれの位置で、だいたいの時間はわかる。」
 
私も、彼の指がさす方角に、自然と目がいく。
月か〜。と思った時、そういえば、出発前にヒビキさんも、空を見上げて「そろそろ、時間だ。」と言っていた事を思い出す。
 
「もしかして、出発前にヒビキさんが空を見上げてたのって・・・月を見て時刻を判断してたの?」
 
それには、「うん。」と蒼輝は答え、
 
「俺たちは、あまり道具には頼らない。
自然を見て、今居る場所も時間も判断するんだ。」
 
と言う。
それを、聞いて思ってしまった。
さすがに、豹の血が流れているだけあって、『野生』だな〜って。
でも、そう思って「あっ!私もかっ!」と気付く。
けど、そんな芸当は私にはできそうもないと思って・・・ちょっと、しょげてしまう。
すると、急に私を呼ぶ蒼輝の声が、耳に入り込んできた。
「なに?」と答える私に蒼輝は、歩いていた足を止める。
 
「どうしたの?」
 
とさらに問う私に彼は、「ここで、夜が明けるまで待とう。」と言うと座り込む。
そこは、大きな木が結構たくさんある所で、隠れるには絶好の場所。
しかも、すぐ目の前にはWONDER LANDの入り口がある。
こんなに近くにいたら、ジギルたちに探知機でバレそうだけど、今は蒼輝が玉を持っているので、平気。
 
「中に侵入するのは、ジギルたちが外に出た時にしよう。」
 
蒼輝はそういうと、「まだ4時間くらいあるな。」といって、さらに、
 
「俺・・・ちょっと、寝るわ。」
 
と目をつぶり出す。
 
「はぁ?」
 
と思いっきり間抜けな声で言ってしまうけど、それには全く触れずに彼は、さっさと眠ってしまった。
 
「ちょっと〜!!」
 
と言って腕を引っ張ってみるけど・・・全く起きない。
こんな状況で寝るのもすごいけど、こうやってジギルたちを気にしないで、居られるのも今だけなんだよ。
だったら、もっと色々話ししたり、さっきみたいに抱きしめてくれたり、してくれてもいいじゃない。
そう思った時、私の脳裏にある言葉が浮かんだ。
 
もしかして・・・私の事避けてる?
 
って。
そんなわけないよねぇ〜って普通だったら、思うけど・・・思えない。
よくよく考えると、ヒビキさんと喧嘩をしてからの蒼輝の態度は、おかしい。
少なくとも、さっき抱き合ってキスをしてくれた時の蒼輝とは違う。
私は、眠っている蒼輝の顔に、優しく触れた。
 
「なんで?」
 
そうつぶやいてみるけど、彼はもちろん答えない。
彼はヒビキさんみたいに、心での会話が出来るわけじゃない。
でも、私の心の中は、いつも蒼輝に見透かされている。
そんな気がしていた。
だって、何度も私の気持ちを、察してくれた行動が多かったから。
だから、きっと今の私の不安になっている気持ちだって彼にはわかっているだろうし、何よりさっき狭間を出た時、蒼輝に手をつないでほしかった。って私の気持ちに、絶対気付いているはずだよね。
だけど、蒼輝は気付いてないフリをしてる。
それが、私をたまらなく不安にさせた。
私は、眠っている蒼輝の首に両腕を絡ませて、彼に抱きつく。
 
「抱きしめてくれなくていいから。」
 
私は、眠っている彼に囁く。
きっと、彼が私に触れないのには、何か訳があるんだと思うから。
それが、もしかしたら、ヒビキさんとの喧嘩に関係があるのかもしれない。
だとしたら、こうやって彼に触れることは、彼を結果的に傷つけ、苦しめる事になるのかもしれない。
でもね・・・私も耐えられないの。
ジギルたちが、来ないとわかっていても、やっぱり命が危険なのには変わりはないこの世界。
そして、さらに全く光がささないこの慣れない世界に、誰のぬくもりも感じないで居る事は、寂しくて苦しくて耐えられないから。
だけど、それよりも何よりも一番、ここに居て恐い事。
それは・・・。
 
「蒼輝・・・私を嫌いにならないで。」
 
私は、自分の顔を彼の左顎あたりにくっつけて、彼のぬくもりを肌で感じながら、そうつぶやいた。
ヒビキさんやランさんや、緑豹国の人たちが、私の味方なのはわかってる。
だけど、心からホッとしたり、素直な気持ちでいられるのは、やっぱり蒼輝なの。
接していた時間は、ヒビキさんやランさんの方が長いはずなんだけど、蒼輝といると精神的に落ち着くの。
ここが私の居場所なんだ。って思えるの。
だから、私にとっての、唯一の心の、よりどころである蒼輝に嫌われたら、私はここでの居場所をなくしてしまって、ここにいられなくなるよ。
だから・・・私を嫌いにならないで。
まるで、すがる思いで、彼と触れている顔をさらにくっつける私。
彼のぬくもりと、彼の呼吸を感じていると、不安でボロボロだった私の心が、暖かくなってくるようだった。
私は、知らない間に眠っていた。
こんな時なのに、私は夢を見ていた。
それは、とても幸せな夢だった。
眠っている私を蒼輝が優しく抱きしめてくれて、頭を優しくなでてくれる。
そして、私の耳元で、こんな言葉を囁いてくれた。
「大好きだよ。」って。
 
「・・・い。・・・翠っ!」
 
私を呼ぶ蒼輝の声で、私は「パチッ。」と目を開ける。
目を覚ました私が居た場所は、蒼輝の腕の中でも、彼に寄り添っているわけでもなくて・・・彼の側にある木にもたれて寝かされていた。
しかも、いつの間にか、火の玉を少し暖かく灯(トモ)して、それを握らされていたし・・・。
なんか・・・寂しいよね。
あまりに、悲しくて・・・むなしくて、私は思わず、
 
「夢の蒼輝に、逢いたいよぉ〜。」
 
と嘆(ナゲ)いてしまう。
すっごい小さな囁きだったのに、蒼輝に「しっ!」とキツイ口調で言われてしまうし。
余計へこむ私の右腕を、蒼輝がつかみ、「こっちこい。」と顎で合図する。
私は、体勢を低くして、彼の側までいく。
そして、彼の見ている先に、私も視線を向ける。
 
トロイだ!
 
私は心の中でそう言った。
光から出てきたトロイは、3人くらいのハンターを引き連れて、北へ向かって歩いて行った。
だけど、気になる人の姿がなかったよね?
私は、側にいる蒼輝に、小声で聞いてみた。
 
「ジギルは?」
 
って。
 
「5分くらい前に出て行った。」
 
蒼輝がそう言った時だった。
ワンダーランドの入り口の光から、また人影が現れた。
 
「あっ!」
 
私は、自然とそう口にしてしまって、慌てて自分の口を抑えた。
現れた人影は、サンガ。
 
「おーい、サンガ!兄貴は先に行っちゃったから、急ぐよぉ〜!!」
 
とトロイは、今出てきたサンガに後ろを向いて叫ぶ。
 
「はーい!!」
 
と答えたサンガが、その場を走ろうと一歩踏み出した時、彼は自分の靴紐を踏んでしまって、バラバラと結び目が、ほどけてしまった。
 
「なんだよ、いったいっ!!」
 
とブツブツ言いながら、紐を結ぶサンガ。
そして、結び終えて、立ち上がろうとしたサンガが、偶然に私たちが隠れている木に目を向ける。
 
「えっ!!」
 
彼は、そう言ったきり、その場にたたずむ。
 
「サンガー!!」
 
トロイのその叫び声に、サンガは我に返って、トロイの方を見る。
 
「すいません。今日、体調が悪いんで、中の勤務に回してもらっていいですか?」
 
そういいながら、お腹を押さえてるサンガを見て、トロイも「仕方ないなぁ〜。」と言って、「兄貴に言っとくよ!」と言うと、足早に北へと消えて行った。
トロイの姿が完全に消えた事を確認したサンガは、私たちの元へと近付いてきた。
 
「よっ!」
 
とまずは、蒼輝に挨拶するサンガ。
右手をあげて、愛想がいいサンガと違って、ご機嫌ナナメな蒼輝は、仏頂面で「フン。」と鼻で返事したかと思えば、
 
「お前、腹が痛かったんじゃねぇーの?」
 
と言ってるし。
お腹が痛いのなんか、私たちの所に来てくれる為に、トロイについた嘘に、決まってるじゃない!
なのにこんな事言って・・・信じられないくらい戦闘モードなんですけどっ!
こんな蒼輝を、コントロールなんて・・・私には、できないよっ!!
早々に、白旗をあげる私。
だけど、このままホローもなかったら、せっかく来てくれたサンガも、トロイの所へ行ってしまうかもしれないじゃない。
仕方なく私は、ダメもとで、蒼輝をなだめる事を試みた。
 
「ちょっと、蒼輝ぃ〜。せっかくサンガが、来てくれたんだから、そんな言い方しないでよ!」
 
といいながら、彼の腕をつかんで、訴えてみるけど・・・ダメだ。
やっぱり、完全に無視されて、知らん顔だよ。
これから先が思いやられて、知らないうちにため息を付いていた私の姿を、サンガは笑いながら見ていた。
 
「何・・・笑ってるの?」
 
と不思議そうに聞く私に、笑いを抑えながら、サンガは「いいよ。」と口にする。
 
 
「コイツが、ムカつくヤローだってのは、前逢った時にイヤって程、理解したし、『コイツは、こんなもんだ!』って思ってるから、はなっから、期待してないから大丈夫だよ。」
 
サンガは、笑顔でそういうと、今度は私の目の前まできて、しゃがむ。
 
「1年ぶりだな。」
 
サンガはそういって、私の髪に触れると、私をとても優しく抱きしめた。
突然の事にビックリする私におかまいなしで、サンガは抱きしめている手に力を込める。
 
「この1年、ずっと翠の事ばっかり考えてたよ。」
 
サンガの言葉に私は・・・思わず、涙ぐんでしまう。
うれしいからじゃない。
素直に気持ちを伝えてくれて、私をこんなにも優しく抱きしめてくれているサンガ。
だけど、私は、こんな時でも、蒼輝の事しか考えてない。
こうやって、抱きしめてくれているのが、蒼輝だったら、どんなに嬉しかっただろう。とか、こんな状況を見たら、蒼輝がサンガに「離れろっ!」とか言って、怒ってくれるかな?とか・・・。
ホント、サイテーな事しか考えていない自分に気付いて、自分が嫌になる。
私は、「ごめんなさい。」といいながら、サンガの腕から脱出する。
 
「翠?」
 
と私を不思議そうに見るサンガの目が見られなくて、私は彼から目線をはずす。
そんな、私たちのやりとりを横で見ていた蒼輝が口を開いた。
開口一番、何を言うのかと思ったら・・・。
 
「お前の力を、貸してほしい。」
 
って・・・いきなり、本題に入ってるし。
戦闘モードなんだから、怒ってくれてもいいじゃない!
何よっ!・・・ホント、急に冷たくなっちゃって・・・。
心からしょんぼりする私の横で、予想外の蒼輝の態度にもう一人、納得がいかない人がいた。
 
「なんだよそれ〜。
この状況で、もっと言うべき事があるだろ?
翠から離れろ!とかさ。
怒りで醜くなったお前の顔が見たかったのに・・・場の空気を読めよ!
ホントお前って自己中と言うか・・・面白くねぇー奴だなぁ〜。」
 
と言って、おまけにため息までついちゃったサンガ。
だけど、サンガの言葉に対して、何も言い返してこない蒼輝に、サンガもチョット蒼輝の機嫌の悪さというか、違う雰囲気がわかったみたいで、中腰だったのをしりもちをついて、蒼輝の前に腰を降ろして座った。
 
「で?俺に何をしろって?」
 
サンガの言葉に、「力を貸してくれるの?」と私はサンガに身を乗り出して確認してしまう。
それには、サンガはとても優しく笑う。
 
「言っただろ?1度だけなら、翠に力を貸すって。
何でも言って!!」
 
サンガの言葉に、私は蒼輝を見た。
蒼輝は、私じゃなくて、サンガを黙ってみていた。
彼の瞳が嘘を付いていない事を確認したうえで、ポケットに手を突っ込むと、例の物を出してきた。
サンガの目の前で右手を広げで、中身を見せる。
 
「これ・・・何か、わかるか?」
 
蒼輝の言葉に、「データーチップだろ?」と即答の彼。
それには、蒼輝が「すげぇーな。」とつぶやく。
同じこの世にいる人間なのに、居場所が違うだけで、見たこともない人間と、当たり前のようにわかる人間がいる。
それを、目の当たりにしたら、やっぱり・・・ちょっとショックだよね。
蒼輝が、ショックを受けるのもわからなくはない。
それと、同時に、そんなに進歩している世界の住人であるジギルたちと、戦わなくてはいけない蒼輝たちって・・・それだけでも、すごいハンデがあるよね。
わかっていたかもしれないけど、こうやって身を持って知ると、やっぱり蒼輝みたいな強気な人でも、弱気になっちゃうよね。
私も、ちょっと・・・暗くなってしまう。
 
「それにしても、こんなのが、よく緑豹国にあったな。」
 
というサンガの言葉に、蒼輝が怒り出すんじゃないかと、一瞬ハラハラしたけど、「まーな。」と波風立たない回答をしてくれて、私はチョット、「ホッ」とした。
 
「これの中にある情報が知りたい。
わかるか?」
 
「う〜ん・・・。」とサンガはいうと、蒼輝の手のひらにあるデーターチップを手に取る。
そのメーカーとか、細かい情報をデーターチップをクルクル回しながら、じっくりと見ていく。
 
「これ・・・かなり古いな。」
 
サンガは、そういうと「ざっと200年は前の物だろう?」と告げる。
確かに・・・蒼さまが、残したものなら、それくらい年数が経ってても、おかしくないよね。
って、事は・・・。
 
と私が思った時、私の心の声が、言葉となる。
 
「やっぱり、無理か。」
 
って。
そういったのは、蒼輝。
だけど、蒼輝の言葉に、「普通ならな。」とサンガは答えると、私たちに勝ち誇ったような笑いをみせる。
 
「で・・・きるの?」
 
と途切れ途切れにいう私に、「もちろん!」とサンガは笑顔で答えると、座っていた腰をあげる。
 
「200年前のパソコンがあれば、すぐに見れるんだけど、そんなもの、あるわけないだろう?
なら、俺らが200年前のパソコンを作ればいいんだよ。」
 
そして、サンガは立ち上がると、また手に持っていたデーターチップを見る。
 
「このデーターチップに対応機種の番号が記されている。
その対応機種のパソコンのベースを今のパソコンに登録し、さらに200年前に、搭載されていた物・・・データーや機能などを推測して、今使っているパソコンの全てのデーターを、200年前のデーターに置き換えるんだ。
そしたら、見た目は今のパソコンだけど、中身の情報や機能はすべて、200年前のパソコンになるってわけ。
だから、もちろん、このデーターチップも見れる。」
 
と、サンガはすっごい説得力のある言葉を使って、熱弁してくれたんだけど・・・私と蒼輝は、口をあけてポカ〜ン。
全く、一言も・・・理解できなかったよ。
バカ面で固まっている私たちに、サンガは「まっ、お前たちに言ってもわかんないだろうな。」と言う。
 
「なら、言わないでよ!!」
 
と思わず、突っ込んでしまう私に、サンガはゲラゲラと笑う。
 
「だけど・・・それって、すぐできるのか?」
 
蒼輝の言葉に、笑っていたサンガは、笑いを抑えながら蒼輝に答える。
 
「そうだな〜。本当なら、1週間って言いたいけど、そんなノンビリしてられないんだろ?
1時間で何とかしてやるよ。」
 
「いちじかん??」
 
大声で言ってしまう私に、さらに蒼輝が付け足す。
 
「本当に大丈夫なのか?」
 
って。
そうよね。だって、話聞いてるだけでも、かなり大変そうだったのに、1週間を1時間だなんて・・・蒼輝がいうのもわからなくはない。
だけど、サンガは「うん。」と普通に答えると、
 
「このデーターチップは、制限があるタイプでさ。
音が全く入らないんだよ。
声や音楽といった物が入らないタイプだから、入ってるとしたら、文字かイラストか写真か・・・って所かな?
だから、その辺を見るために必要な機能だけを、再現させたパソコンのデーターを作るよ。
だから、1時間で充分!
まー、俺にまかせなって。」
 
とすっごい笑顔だし。
それには、蒼輝も「じゃ、頼む。」と素直にお願いした。
 
「ここに居て、もしジギルたちに見つかったら厄介だから、俺の家で隠れてろ。
さいわい、翠もハンター以外には、顔はバレてないし、蒼輝も人間の姿は、この間のハンターしか知らないからな。
1時間くらいなら大丈夫だろう。」
 
サンガの言葉に、蒼輝は立ち上がると、
 
「じゃ、WONDER LANDへと招待してもらおうか。」
 
と偉そうに言う。
それには、サンガも「お前の世界と違い過ぎて腰抜かすなよ。」と挑戦的な言葉を投げかける。
そして、光の方に行きかけた蒼輝に、「あっ!」と急にサンガが呼び止める。
 
「忘れてたっ!翠は、入れないや。」
 
それには、「なんで?」と聞いてしまう私。
 
「WONDER LANDに、豹の連中が侵入してこないように、探知機が設置してあるんだ。
蒼輝は、豹になれないからいいけど、翠は豹になれるもんな。
前、探知機に反応してたし。どうしようか。」
 
その言葉に私も、少し先を歩いていた蒼輝も息をのむ。
言葉につまる私たちに、「なに?」とサンガは、聞いてくる。
 
「なに?って・・・。」
 
私がそういって、次の言葉を言おうとした時、続きはもちろん当の本人が口にする。
 
「なんで、俺が豹になれないって知ってるんだ?」
 
そうだよね。
そんな事、なんで敵であるサンガが知ってるの?
不思議でたまらない私たちとは、違ってサンガときたら、
 
「そんな事かよ!何かと思っただろ?」
 
と何故か、「あー、びっくりした。」とか言ってるし。
それには、穏やかだった蒼輝が、「おいっ!」とサンガの腕をつかんで、乱暴な態度をとる。
そして、低く強い口調で、「答えろっ!」と言う。
それには、サンガも腕を振って、蒼輝の腕をはらいのけると、「バカじゃねぇーか?」と、こちらも喧嘩口調で言い返す。
 
「あの時・・・囲まれたお前が、豹に変身しなかった時点で、お前が豹になれない。って事は、立証されたんだよ。」
 
すでに、ジギルたちにバレていた。って事だけでも、ショックな事だったのに、さらに衝撃的な事までサンガは語った。
 
「間抜けなお前に、もう一つ教えてやるよ!
蒼輝が、豹に変身できなくなる事は、こっちの狙い通りだったんだよ。」
 
その言葉に、蒼輝の顔が、驚きと困惑が入り混じった顔に変貌する。
 
「どういう・・・事だ?」
 
それには、サンガも、「仕方ない。全部教えてやるよ!」と言って、蒼輝を真っ直ぐにみた。
 
「チナリって女豹が、兄であるお前をなんで、あんなにすごく慕っていたのかは謎だったけど、明らかに他の連中とは違う『別の目』で、お前を見ていた。ってのは、今までの彼女を観察していた俺たちには、彼女の態度でわかっていた。
だから、彼女を必要以上に追っかけまわして、次の『原石』を採りに行く日に、俺たちが本格的に狙う。って、におわせたんだ。
そして、その日を、同行者が黄色い豹じゃなくて、蒼輝・・・お前の日を選んだ。」
 
「それ・・・で?」
 
サンガの話を聞いて、あの時の事を思い出したのか、蒼輝は今度は怒りで満ち溢れたような顔つきに変わった。
とっさに、私は彼の腕をつかみ、彼がサンガに殴りかからないように気を付けた。
 
「案の定、あの女豹は、お前を置いて、一人で森に来た。
予定通り、俺たちは彼女を、瀕死の状態で、放置した。」
 
その言葉に、今度は私が口を開く。
 
「放置って・・・。まさか!」
 
驚く私にサンガは、「そう。そのまさかだよ。」と苦笑いを浮かべて答えると、また、私から蒼輝に目線を移動させる。
 
「彼女を狙ったのは、原石を採りにいける女豹の存在が尽きたら、緑豹国は崩壊する。っていう事実を、濃くするためでもあった。
だけど、一番の狙いは、蒼輝っ!お前だっ!」
 
そして、サンガは蒼輝を指さす。
そこまで、言われて蒼輝は、何もかも理解したのか、その場で力なく座り込んでしまった。
 
「お前の為に一人で森に行って、その結果、瀕死の状態になってしまった妹。
さらに、そいつが国にとって必要な最後の女豹ときたら、お前は間違いなく、『もう一つの命』を妹に与えるだろう。ってジギルが言い出したんだ。
俺たちにとって、一番のめざわりは、『蒼輝の強化された体』だったからな。
それを、失った蒼輝は、たいした事ないってさ。
確かに、ジギルの言った通りだったな。
お前は、ジギルにコテンパンにやられたんだろ?」
 
もう・・・サンガの言葉は、蒼輝には届いてなかった。
蒼輝が豹の姿を失う事が、狙いだったなんて・・・。
そのために、チナリさんが狙われたなんて・・・。
そんな、先の事まで考えてしまうジギルのすごさに、私は身震いしてしまった。
さらに、そんな彼と、どうやって戦えというの?と弱気になる自分がいた。
蒼輝の側で、座り込んだ私の前に、サンガはしゃがみこんできた。
 
「まー・・・そう、落ち込むなよ。」
 
サンガはそういうと、蒼輝の肩をポンと叩いた。
そのしぐさに、ゆっくりと視線をサンガに移す蒼輝。
 
「お前が、豹の姿を失うところまでは、ジギルの筋書き通りだけどさ、『予想外な事』もいっぱい出てきてんじゃん!」
 
サンガの言葉に、「予想外な事?」と蒼輝は言いながら、首をかしげる。
 
「そうっ!こんなあるはずもないデーターチップを持っていたお前ら。
さらに、敵である俺を救った翠。
で、もっと不思議なのが、チナリって女しかいなかったはずの女豹が、もう一人増えてるって事。」
 
そういって、最後は私に目を向け、サンガはウインクをしてるし。
そして、すぐにまた蒼輝に戻して、「なっ?」と笑う。
 
「ジギルが作った筋書きが、崩せそうでさ・・・なんか、ドキドキするんだよな〜。」
 
さらに、今度は最高にうれしそうな笑いを浮かべるサンガを見て、蒼輝は「なんだよそれ。」と言って、「プッ。」と笑う。
 
「お前、ジギルの部下だろ?
それなのに、すっげぇーうれしそうにいうなよ。」
 
呆れる蒼輝に、「俺、ジギル嫌いだから。」と平然と答えるサンガ。
それには、蒼輝は大笑い。
 
「やっぱ、お前、おもしろいわ。」
 
と笑いながらいう蒼輝に、サンガも一緒になって笑ってる。
だけど、笑いながら、自分が疑問に思った事を、思い出し私を見る。
 
「それで、翠はどうする?」
 
その言葉に、蒼輝が答える。
 
「翠は、女豹だけど今は、女豹じゃない。
理由は敵であるお前には言えないけど・・・。」
 
それには、サンガも深くは聞かず、「そっか。大丈夫なら、それでいいや。」と笑って答えると、今度は身に付けているカバンから、ナイフを取り出し、それを蒼輝に差し出す。
 
「お前のその緑の髪。
WONDER LANDに入れば、目立つ。切れ。」
 
「えっ!」
 
と驚く私とは、正反対で蒼輝は「ああ。」というとサンガから、ナイフを受け取る。
そして、平気な顔をして、自分の髪をつかむと、残っている緑の髪を切ろうとした。
私は、彼の手から、強引にナイフを奪い取る。
 
「お前っ!危ねぇーだろっ!」
 
と叫ぶ蒼輝だけど、そんなの知らない!
私は、ナイフを必死で握り締めて、蒼輝にお尻を向ける。
 
「翠。返せよ。」
 
私の前で、蒼輝の手がちらつく。
だけど、完全に無視して、私はただ首を振る。
それには、穏やかだった蒼輝も、怒りが爆発する。
 
「いい加減にしろよっ!早く、ワンダーランドに入らないといけねぇーんだぞ!
さっさと、よこせっ!」
 
そう頭ごなしに怒鳴られて、私は首をすくめてしまう。
涙だって出てきて・・・でも、絶対にナイフは渡せない。
私は、泣き声を出しながらも、首を振る。
 
「おいっ!」
 
蒼輝は、乱暴に私の腕をつかんで、自分の方に私を向ける。
こんなに、すっごく怒っている蒼輝の顔を見たのは初めてだった。
普通、こんな顔みたら、ナイフを渡しちゃうと思うんだけど・・・私は、最高に腹が立った。
 
「なんでよっ!」
 
言い返す私に蒼輝は、「何がっ!」と乱暴な口調で聞いてくる。
 
「緑の髪は、蒼輝の象徴じゃない!
もう、二度と生えてこないんだよ。
それなのに、なんで簡単に切るなんていうのよ。
そんな事・・・言わないでよ。」
 
そう言って私は、顔を両手でおさえて、その場に座り込んで泣きじゃくる。
だけど、蒼輝はそんな私を見ても、これだけ訴えても、意見をかえようとはしてくれなかった。
 
「いいから、かせよ!」
 
そういって、私の腕からナイフを強引に奪おうとした蒼輝。
その腕をつかんで、「やめろ。」と私を守ってくれたのは、彼に髪を切る事を勧めたサンガだった。
 
「お前が言ったんだろ?なんだよ。」
 
とつっかかる蒼輝に、サンガは「撤回するよ。」と言うと、今度はポケットから帽子を取り出した。
 
「これ、かぶれ。」
 
急な出来事に、「はぁ〜?」と言いながら困惑する蒼輝に、サンガは私の手からナイフを抜き取ると、自分のカバンの中に直した。
 
「うまく髪を中に入れたら、帽子でも隠せるだろう。」
 
そういって、さらに今度は、泣いている私の顔をのぞきこんで、私の涙を手で拭ってくれるサンガ。
 
「翠をこんなに、泣かせてまで、切る必要はない。」
 
そして、彼はまた私を優しく抱きしめてくれた。
「ごめんな。」と耳元で囁く。
私は、「ううん。」と言いながら首を振った。
その横で、帽子をかぶった蒼輝は、何事もなかったかのように、
 
「じゃ、行くか。」
 
と私たちに言うと、さっさとWONDER LANDの光に向かって一人で進んでいく。
私も、サンガから離れて、ユックリと立ち上がる。
その時、「な〜。」とサンガが私に話しかけてくる。
私は、お尻をはたきながら、「何?」と聞き返し、彼を見る。
 
「お前たち・・・喧嘩でもしたのか?」
 
サンガのその言葉に、私はドキっとしてしまう。
 
「な・・・んで?」
 
と聞く私に、サンガは「見てればわかるよ。」と言うと、私の腕を優しくポンと触れると、歩く事をうながす。
私たちはユックリと歩き出した。
 
「そんなに・・・私たち変?」
 
それには、サンガは「相当ね。」と答えてクスっと笑う。
 
「最初に変だと思ったのは、俺が翠に初めに抱きついただろう?
あんな事したら、前に逢った蒼輝なら、絶対に俺に、足蹴りをくらわしてたはずだからさ。
なのに、アイツは関心がないような、そぶりを見せてた。
それに、さっきも・・・。」
 
「さっき?」
 
と聞き返す私に、サンガは「そう、さっき。」と強調する。
 
「あれだけ泣いて嫌がる翠を見ても、まだ切ろうとしてた蒼輝が信じられなかったな。
1年前にあった蒼輝なら、翠がナイフを取った時点で、すぐに出来ないって言ってたはずだ。
まるで、翠に嫌われようとしてるみたいに、俺には映ったけど。」
 
サンガは、そういうと私をまた優しい眼差しでみつめる。
 
「蒼輝は、あんなんで、心細いかもしれないけど、いざとなったら、俺が翠を守ってやるからさ。
心配するなっ!」
 
そして、サンガは私の頭を優しくなでてくれる。
敵なのに、すっごい優しいサンガ。
蒼輝も、これくらい私に優しくしてくれたら、いいのにな〜って心から思う私。
そして、また考えてしまった。
蒼輝は、本当に私の事が嫌いになっちゃったのかも〜って・・・。
 
 
WONDER LANDに、うまく侵入した私たちは、誰にもバレる事無く、サンガの家に辿り着いた。
WONDER LANDは、私のもといた『現在』の世界と、すごく似ていた。
だから、私は戸惑う所か、元の世界に戻ってきたような錯覚に陥っていた。
 
「その辺に、適当に座ってて。」
 
サンガは、部屋にある大きなソファーを指さして私たちに、座る事を勧めると、自分はさっさとパソコンに向かい、黙々とキーボードを打ち出した。
私は、サンガに言われるがまま、ソファーに腰を降ろして、ちょっと気持ちを落ち着かせる。
だけど、蒼輝は、窓際に立ち、WONDER LANDの街並みを、ジッと見て観察していた。
長い間、街を見ていた蒼輝が、私の隣に座る。
 
「どうか・・・した?」
 
と彼を心配する私に蒼輝は、「まいったな〜。」とつぶやくと、ソファーに背中をつけて、ユッタリと座る。
 
「WONDER LANDが、こんなに発展した国だったとはな。
想像はしてたけど、それ以上だ。」
 
蒼輝はそういって、さらに「でも・・・。」と続ける。
 
「もっと、驚いたのは、翠の反応にかな?」
 
その言葉に、「えっ?私?」と驚き声で聞いてしまう私。
「そう。」と蒼輝は言うと、
 
「WONDER LANDに入っても、翠は驚くどころか・・・安心した顔してたろ?
って事は、この世界が、翠のもといた世界に近いって事だろう?
緑豹国は、500年前の日本よりも、衰えてるって事で・・・やっぱ、ショックかな。」
 
蒼輝はそういうと、苦笑いをする。
そんな事言われても・・・何も言い返せない私。
何て言っていいかわからなくて、黙ってしまう私に、蒼輝は、
 
「まっ、落ち込んでいてもしかたないしな。
せっかくだから、知識を詰め込んで帰るか。」
 
と明るい口調でそういうと、急に立ち上がる。
 
「この辺の本、見るぞ!」
 
と本棚の本を見ながらいう蒼輝に、サンガは「ああ。」と適当に答える。
それから、蒼輝は何冊も本を読んだ。
サンガは、ブツブツいいながら、とにかく全く休む事無く、パソコンと格闘していた。
私は・・・何もする気が起きなくて、ソファーに座って、横にあるクッションに顔をうずめながら、ウトウトとしていた。
 
「よしっ!出来たぞ!!」
 
サンガの言葉に、本を読んでいた蒼輝は、素早くその本を閉じると、テーブルに置いてサンガの元へと急ぐ。
私は、ウトウトしていたので、少し遅れて、サンガの元へと辿り着く。
私たちが、サンガの左右を囲み、パソコンが見える位置につくと、
 
「じゃ、入れるぞ。」
 
とサンガは言い、データーチップをパソコンの読み取り口に差し込んだ。
何回か、サンガがキーボードを叩いたり、マウスを動かしたりして、準備をする。
 
「いいか?開くぞ。」
 
彼の言葉に、蒼輝は「ああ。」と答え、私はただうなずくだけ。
そして、マウスに置かれているサンガの右手の人差し指が、二回動いた。
すると、画面に出てきたのは・・・。
 
「写真??」
 
私は、画面に映ったものをみて、そう口にしてしまう。
写真って事は・・・サンガの読み通りだったって事?
すごーい!と感心する一方で、私は画面に映し出された4枚の写真が気になった。
内容ではなくて・・・小ささに。
その写真は、圧縮されている上に、縮小されていて、このままでは全くわからないくらい小さく画像もつぶれていた。
 
「1枚1枚を、大きく出来るか?」
 
蒼輝の注文に、サンガは「もちろん!」というと、
 
「まず、1枚目から拡大するぞ。」
 
といって、1枚目の写真を拡大する。
画像もさっきと比べ物にならないくらい、鮮明になり、さらに見やすいように大きくなった写真が、画面に写し出された。
 
「どこだ・・・これ?」
 
と口にして首をかしげる蒼輝。
 
「俺にもわかんねぇー。」
 
とサンガも首をかしげる。
だけど、私は、それを指さして絶叫する。
 
「あぁ〜!!!」
 
って。
私の驚きぶりに、「大丈夫か。」と心配そうに振り返ってくれるサンガ。
そりゃ、サンガも驚くよ。
だって、私、大声で叫んでさらに、腰を抜かしてその場に、座り込んじゃったんだもん!
 
「翠・・・ここ、知ってるのか?」
 
とさらに、聞いてくるサンガに、私は「水・・・水・・・。」と口にした。
それを、聞いた蒼輝がピンとくる。
 
「まさか、翠が言っていた『夢で見た水の世界』か?」
 
蒼輝の言葉に私は、ただ首を縦に何回も振った。
そうなのよっ!
1枚目の写真は、なんと私が夢に見た水の世界の写真だった。
街を取った写真だったんだけどね、あたり一面に水が写ってる。
噴水で豪快に水が上がっていて、さらに川や池がたくさんあって。
写真の端には、大きな滝があったり・・・。
とにかく水一色の写真で、私が夢に見た映像と全く一緒だった。
 
「な〜、次は、なんか建物っぽいぞ。」
 
とサンガは、小さい写真を近付いてみながら、蒼輝にそういうと、「これも、見るか。」と聞いてくる。
「ああ、頼む。」という蒼輝の言葉に、サンガは2枚目の写真を開く。
 
「今度は・・・お城?」
 
サンガの言葉に、蒼輝は私の方に今度は勢いよく振り返る。
 
「この城って・・・。」
 
蒼輝はそこまで言って止まる。
私は、その先に彼が言うべき事を理解したうえで、うなずいた。
 
「いったい、なんなんだよ!」
 
と呆れるのは、サンガ。
そうりゃ、そうだよね。
私と蒼輝だけで理解しあっていたら、腹が立つよね。
さらに、わけがわからないサンガは、「おいっ!」と蒼輝の腕をたたき、「説明しろよっ!」と聞いてくる。
 
「1枚目の写真も、この城の写真も、翠が夢で見た景色と一緒なんだよ。
この城の前で、俺と翠ともう一人、俺の仲間と・・・あと誰かわかんねぇー奴と、4人で立ってる夢を翠が見たんだ。
その城が、実在するかも怪しかったんだけどな。」
 
蒼輝の言葉に、サンガは「ふ〜ん。」というと、
 
「写真があるって事は、実際に存在するって事が、立証されたって事かー。」
 
と答えると、「あと、2枚の写真も見てみようぜ。」と提案する。
そして、3枚目の写真を拡大する。
それは、地図だった。
上の方にある大陸が、青いペンでなぞられている。
それを、蒼輝とサンガがジッとみる。
 
「この・・・『BLUE LAND』ってなんだ?」
 
蒼輝の言葉に、サンガもそれを見るものの、「さあ?」と答える。
その青いペンでなぞってある大陸に、青い文字で『BLUE LAND』と書かれている。
そのすぐ下には、緑のペンで『GREEN LAND』と書かれているし、そのさらに右下には『WONDER LAND』と書かれている。
 
「つまり、緑豹国のさらに北に、その『BLUE LAND』ってのが、あるって事じゃないの?」
 
と指摘した私の言葉に、蒼輝は「ありえない。」と首を振る。
「なんで?」とさらに聞く私に、蒼輝はちょっと面倒くさそうに話し始めた。
 
「今の日本は、海に囲まれた国で、いえば海の真ん中にポツンと1つの大陸がある状態なんだ。
そして、その大陸の中で2分して、WONDER LANDとGREEN LAND(緑豹国)がある。
つまり、この世界以外に、日本の大陸はないんだよ。
まっ、かなり遠くには、他の国があるとは聞いたことあるけど、そいつらと交流があるのは、WONDER LANDの連中だけで、俺たちは逢った事も見たこともないけどな。」
 
「っていう事は・・・この『BLUE LAND』っていう国は、『日本』じゃないって事?」
 
と首をかしげて言う私の横で、さっきまでずっと黙り込んで、何かを考えていたサンガが、急に「あぁー!!」と叫んでイスから立ち上がる。
 
「な・・・なに??」
 
と目を真ん丸くして驚く私と違って、蒼輝は落ち着いたおももちで、「でっかい声出すなよ!」とサンガの頭を軽くはたく。
いつものサンガなら、蒼輝にやり返したりしそうだけど、今のサンガはそれ所では、ないみたい。
 
「これ・・・だったんだ〜。」
 
とうわ言のようにいうと、今度は力なくイスに腰を降ろす。
 
「お前・・・何か、知ってんだろ!」
 
蒼輝の言葉に、サンガは答えない。
さらに、蒼輝はサンガに迫る。
 
「この『BLUE LAND』がある場所、知ってるのか?」
 
それでも、答えずただ黙っていたサンガだったけど、しばらくすると、ゆっくりと顔をあげて、蒼輝を真っ直ぐに見る。
サンガの目を見て、蒼輝も何かを感じたのか、
 
「場所はわかんなくても、何かを知ってるって顔してんな。」
 
と言って「ニヤ。」と笑う。
蒼輝の鋭さに、「お前には、まいった。」とサンガは苦笑いを浮かべてそういうと、
 
「ここまで、お前らと関わったよしみだ。
教えてやるよ。」
 
と言い、イスを回転させて、私の方にも顔を向ける。
 
「実は最近、ジギルがやたらと、北を調べているんだ。」
 
「北って・・・緑豹国のある方角って事?」
 
私の言葉に、サンガは「うん。」とうなずき、さらに話を続ける。
 
「しかも、調べ方がすごいんだよ。
ヘリを使って、空から見たり、船を使って緑豹国の周りをくまなく調べたり、さらには潜水艦まで使って、海の底を調べたりね。
一体、何を探しているのか、俺たちには教えてくれなかったんだけどさ。
探していた場所からすると、きっとこの『BLUE LAND』を探していたんだと思う。」
 
サンガの話を黙って聞いていた蒼輝は、彼の話が終わると、「それで?」と、さらにサンガに答えを求める。
 
「なんだよ、それで?って!」
 
サンガはちょっと怒りながら、「偉そうにっ!話はそれで、終わりだよ!」とブツブツ言い返す。
なんか・・・雲行きが怪しくなってきた。
私は、ドキドキしながら二人の会話を見守っていた。
 
「終わりじゃねぇーだろ!
そんだけ調べた結果、どうだったか言えよ!」
 
強い口調でそのくせ、偉そうにいう蒼輝の言葉に、
 
「お前なぁ〜、その偉そうな態度どうにかしろよ!」
 
と呆れた口調でそういい捨てると、サンガは立ち上がり、蒼輝のむなぐらをつかむ。
だけど、つかまれた蒼輝は、やりあうつもりはないようで、
 
「答えろよっ!」
 
とそれだけを求める。
一人で怒っている自分が、バカバカしくなったサンガは、つかんでいた蒼輝のむなぐらを離すと、またイスに腰を降ろした。
そして、両手を広げて、
 
「な〜んも、みつからなかったよ。」
 
とジェスチャーする。
 
「地上にもなくて、海にもなくて、海底にもないとすると・・・。
一体、どこにあるんだ?」
 
蒼輝は、そう言いながら、パソコンに目を向け、映し出されていた大陸の写真を、ジッと見ていた。
私はというと・・・。
蒼輝が言った今の言葉が、ヒントになって、一つ思い浮かんだ事があって、それを言ってみる。
 
「空じゃないの?」
 
って。
 
「ソラって・・・この、空?」
 
とサンガは、窓の向こうに見える空を指差す。
「そう、あれ。」と言って、私はうなずくと自分の意見を言ってみた。
 
「緑豹国の周辺や、海の底にもないとしたら、緑豹国の上の空じゃないの?」
 
それには、蒼輝がまたもや、「それも、ないな。」と答える。
あまりにキッパリ言われて、ちょっと腹が立った私は、「なんでよぉ〜。」とブーたれる。
だけど、そんな私にはおかまいなしで、蒼輝は普通に回答してくる。
 
「俺たちが住んでいる城の真後ろに、天までそびえるくらいに、デッカイ岩山があるだろ?
あれは、本当に高くまであるんだよ。
それを越えた上空に国があるなんて・・・考えられないな。」
 
蒼輝の言葉に、サンガも「俺もそう思う。」と同意する。
 
「ジギルが、ヘリで空を飛んだ時も、上空には何もなかったと言っていた。
きっと、空にもないと思うよ。」
 
「じゃ、一体どこにあるのよっ!」
 
と怒る私に、「だから、わかんないって!」とサンガはいうと、さらに私に、「落ち着いて。」と付け足す。
そんな興奮状態の私に、蒼輝の落ち着いた声が耳に届く。
 
「一つだけわかるのは、1枚目の街並みの写真と2枚目の城の写真は、この地図に印がついてある、『BLUE LAND』で撮ったものって事だろうな。
じゃなきゃ、わざわざ3枚目の写真に、地図を載せないだろう。」
 
それには、私もサンガも納得で、二人して「なるほどな〜。」と言っちゃう。
それで、私は「ハッ。」とする。
 
「この写真が、『BLUE LAND』で撮られたんだったら、私が夢に見た世界もこれなんだし・・・。
じゃあ、『BLUE LAND』って、『水が関係している世界』って事?」
 
私の言葉に蒼輝は、「それがな〜。」と言って、首を横に倒す。
 
「違う・・・のか?」
 
と突っ込むサンガに、
 
「何か気になるんだよ。
1枚目の写真にしても、翠の夢の記憶にしても、やたらと『水』が強調されてる。
だけど、海底にあるわけでもなければ、海の上に浮いてあるわけでもない。
だったら、何でこんなに、『水』があるんだ?
それに、だいたい、水を主とした国なんだったら、『BLUE LAND』っておかしいだろう?」
 
それには、サンガも「確かに。」とうなずき、
 
「水はWATERだよな。」
 
と付け加える。
確かに・・・そう言われたらおかしい・・・かな?
 
あ〜!!それにしても、わけ、わかんないっ!!
 
今でも、頭が大パニックを起こしている私なのに、さらなる事実が私を襲う。
それは・・・。
 
「じゃ、最後の写真を拡大するぞ。」
 
サンガがそう言って最後の写真を大きくする。
 
「えっ!」
 
それが、写真を見た時の、3人のリアクション。
あまりの驚きに、完全に硬直してしまった私と違って、サンガは写真を指さしながら、すっとんきょうな声を出して叫ぶ。
 
「なんで、翠が映ってんの!!」
 
って。
その写真には・・・私が映っていた。
と最初はそう思った。
それくらい、写真に映っていた人は、私にソックリだった。
私たち3人は、さらに身を乗り出して、その写真をみる。
 
「このバックに映ってるのは、緑豹国の城だな。」
 
蒼輝の言葉に、私は写真の中の城を見る。
確かに、翡翠色の石で出来ているお城。
これは、緑豹国の城に間違いなさそうだった。
その、中央に映っている緑の髪に、青い目をしている背の高い人。
その人を見た時、私は洞窟で、夢に出てきたある人を思い出して確信した。
 
「これっ!蒼さまだよ。」
 
それには、サンガが「えっ?マジで?」と、くいついてくる。
 
「俺・・・コイツ、どっかで見たぞ!」
 
それには、蒼輝も私も「へっ?」と間抜けな返事。
だって、蒼さまって、緑豹国初代の王なんだから、それこそ200年以上前に生きてた人だよ。
今、生きてるわけないじゃない!
それに、WONDER LANDに、緑豹国の初代王の写真があるわけなし・・・。
見たことあるわけないじゃない!
内心は、思いっきり否定したかったけど、協力してくれているサンガに強く言うのも気が引けた私は、優しく否定してみる。
 
「この人は、緑豹国の初代の王さまだよ。
このデーターチップを置いていってくれた人だから・・・今は生きてないよ。」
 
私は、そうやってサンガに、優しく説明したのに・・・。
それを、踏みにじるのはやっぱりこの人!
 
「お前、バカか?見た事あるわけねぇーだろ!」
 
それには、サンガも「なんだとぉ〜!!」とまたしても立ち上がる。
 
「もうっ!蒼輝もイチイチ、サンガを怒らすような言い方しないでよ!
サンガも、ねっ!許してあげて。」
 
私が必死にお願いしたので、サンガも「まっ、翠がそういうなら。」と怒りを鎮めてくれた。
はぁ〜。とため息をついてホッとしている私と写真の女性を、見比べているサンガ。
 
「って事は、この写真のソックリな人は・・・翠じゃないって事だよな?」
 
そうなんだよねぇ〜。
その蒼さまの横に寄り添うように、映っている人ってのが、私にホントうりふたつなんだよ。
髪型や、笑い方・・・全く一緒。
・・・ん?
一緒?・・・似てる??
 
そう思った時、洞窟で見た夢に出てきた蒼さまが、私の頬に触れて、「彼女によく似てる。」って言った言葉を思い出した。
彼女って、やっぱり写真の人の事を言っているんだよね。
私と彼女って・・・どういう関係なんだろう?
他人で、こんなに似るものなんだろうか?
それに、夢と思っていた蒼さまとの会話。
すごく現実と重なってるよね。
まさか、夢じゃなかったとか?
そう思って、すぐに「それはないか。」と即否定する。
だって、さっきサンガに散々言ったけど、蒼さまは、200年前の人だもん!
この世にいるわけないじゃない。
だけど・・・ホント謎だらけだ。
ブツブツいいながら、もう一度私は、その写真の彼女を見る。
さっきは、私に似ている事に、気を取られて気付かなかったけど、よくみると、その人が抱えているある物体に目が留まった。
 
「この人が抱えているのって・・・赤ちゃん?」
 
私がそう言った時、急に蒼輝が「おいっ!」と声をあげる。
そして、さらにサンガの腕をバシバシ叩く。
 
「ここ!この子供の顔とその横に書いている走り書きを、もっと大きくできるか!」
 
「ああ。」とサンガは答えると、言われるがままその場所をさらに大きく拡大する。
 
「これって!!」
 
サンガは、そう言って私の方に振り返る。
彼が、驚くのも無理はない。
だって、私にソックリな人が抱いていた赤ちゃんは、青い目で緑の髪の女の子。
そして、サンガが驚いた、その横に走り書きされていた文章ってのが・・・。
 
「青鳥国(セイチョウコク)の王、訪問。
娘、翠(スイ)の誕生を祝う。」
 
蒼輝は、声を出してそう読む。
 
「『娘、翠』って・・・この写真の赤ちゃんが・・・翠?」
 
サンガはそういいながら、写真の赤ちゃんを指さし、そして私を指さし、首を行ったり来たりと動かす。
 
「だけど、これ200年程前の写真なんだよな。
って事は、この赤ちゃんが翠なわけないし、この赤ちゃんと偶然に同じ名前だっただけかな。」
 
そう言って「うん、そうに違いない。」と頷いているサンガは、まるで自分にそう言い聞かせているようだった。
だけど、私はそうは簡単に思えなかった。
だって、サンガは私が過去から来た人間だとは知らないから、不思議じゃないかもしれないけど、私の体に『豹の血』が混ざっている事、そのものが、ありえない話なんだもん!
だけど、もし。
この赤ちゃんが、私だったら・・・。
蒼さまの血を分けた子だったから、混血だということが、納得がいく。
そう思った時、私はまたあの時の夢を思い出した。
蒼さまは、私に優しく触れて、こう言った。
「君は、僕の・・・。」って。
その後に続く言葉をずっと、考えていた。
もしかしてその後に続く言葉って・・・。
 
「娘?」
 
そう口にしてみるけど、この赤ちゃんが、その時代からさらに300年くらい過去にある私の『現在』の時代に・・・来れるわけないよね。
いったいこれは・・・なんなの??
頭が沸騰寸前の私は、たまらず蒼輝に助けを求めてしまう。
 
「そうき・・・。」
 
だけど、蒼輝も首をかしげて、「さ〜な。」というと、
 
「余計、こんがらがってきたな。」
 
とため息をつきながら笑う。
すると、急にサンガが叫びだす。
 
「ホント!わけ、わかんねぇ〜!!
いったい、なんなんだー!!」
 
って。そのバカ面に、蒼輝は「プッ。」と噴出し笑いをすると、
 
「けどさー、1つだけ、ハッキリした事があるぜ!」
 
と言って、私たちを順番に見る。
 
「ハッキリ・・・した事?」
 
そう蒼輝に聞く私。
そして、さっきまで、髪をわ〜って、かき乱していたサンガも、蒼輝の言葉に動きを止めて、今は彼に見入っていた。
 
「さっき、言ってた『BLUE LAND』ってのが、『水を主とする国じゃない』って事が、これでハッキリした。」
 
それには、私もサンガも「えっ?」といいながら、口をポカーンと開けてしまう。
 
「だってさ。」
 
蒼輝は、そういって写真にもう一人写っている人を指さす。
 
「この、青い髪に見てるだけで心が温まるようなオレンジ色の瞳。
コイツがたぶん、『青鳥国の王』だろ?」
 
それには、私もサンガも納得。
だって、この写真にはその3人と赤ちゃんしか載ってないんだもん。
それに、まえに歴代の王ってのを、ヒビキさんに見せてもらったけど、こんな青い髪にオレンジの瞳の人なんて見たことなかったし。
 
「けど、コイツがいるからって・・・なんで、『BLUE LAND』が水の世界じゃないって、言い切れるんだよ。」
 
サンガの言葉に蒼輝は、ソファーまで歩くと、そこにどっかりと腰を降ろして、足を組む。
 
「その男のいる国。
青鳥国の別名が『BLUE LAND』。
そして、その国は、俺たち緑豹国と一緒で、その名の通り、『人間と鳥の混血』人間が住んでいる国で、それを治めているのが、『青い髪』の混血人間。」
 
それには、私もサンガも言葉を失う。
あまりの驚きに、長い間黙っている私とは違って、サンガはすぐに蒼輝の言葉を理解し、「けどさぁ〜。」と口を開く。
 
「確かに、緑豹国を『GREEN LAND』って呼ぶから、それと照らし合わせると、青鳥国を『BLUE LAND』って呼ぶんだ。って言われた方が、水の世界=『BLUE LAND』っていうよりは、シックリくるけどさ。
だったら、なんで、水がそんなにあるんだよ。
鳥との混血人間の国だったら、水は関係ないだろ?」
 
サンガの鋭い指摘に、蒼輝は指をならして、「それなんだよな〜。」とサンガの意見に同意する。
 
「その水ってのが、どうしても気になるんだ。
なんで、そんなに水が満ち溢れている国なのか。
それがさ、『BLUE LAND』の場所を知らせる重要な手がかりになるような気がするんだけどな〜。」
 
蒼輝は、そういうと、「あ〜、わかんねぇーな。」と頭を抱える。
その時、外が騒がしくなった。
 
「な・・・に?」
 
とサンガに聞く私に、急にサンガは立ち上がると、写真を印刷してくれていたものを、素早く手に取ると、データーチップもパソコンから抜き取る。
 
「ジギルたちが、昼飯をくいに戻ってきたんだ。
やつらが、WONDER LANDにいるうちに、ここを脱出して森を突き抜けてGREEN LANDに帰るんだ。」
 
サンガはそういうと、蒼輝に写真とデーターチップを渡した。
 
「俺たちが入ってきた南出入り口は、ジギルたちと逢ってしまう確率が高くなる。
だから、北出入り口から出よう。
そっちの方が、GREEN LANDにも近いからな。
案内するよ。」
 
そういって、サンガは先に、部屋を出て行った。
 
「ホント、世話好きなやつだなー。」
 
と呆れた声でいう蒼輝。
だけど、そんなやさしいサンガを、蒼輝はちょっとスキになってきているのかもしれない。
彼のすごくうれしそうな顔を見ていると、そう思ってしまった。
 
サンガの家を出た私たちは、サンガの後について、北出入り口に向かって歩いた。
街の人たちは、サンガたちの帰りをねぎらうため、南へと向かう。
その人波をぬって、私たちは逆走した。
15分くらい歩いたら、目的地に着いた。
 
「出るぞっ!」
 
サンガの言葉に、私たちはうなずき、彼についてWONDER LANDを出た。
さっきまで、明るくて光に満ち溢れていた町並みは、一気に姿を消し、今は天と地ほど違う、寂しくて儚(ハカナ)い世界に居た。
 
「栄えてた日本と、滅んだ日本って感じだな。」
 
蒼輝の言葉に、私も素直に「ホント・・・そうだよ。」と言ってしまう。
それには、サンガも「確かにな。」と同意してくれる。
もう、サンガとの別れの時だと私たちは分かっていた。
だけど、3人で過ごしたのは、わずかな時間だったけど、本当に楽しかった。
蒼輝とサンガの喧嘩には、ドキドキさせられたけど、一緒にいろんな事を考えて話して、サンガが仲間だったらいいのに。って私は本気で思った。
ううん。きっと、蒼輝も、そう思ったと思う。
だけど、それは出来ない事だもんね。
私は、気持ちを抑えながらサンガを見て、「本当にありがとう。」とお礼を言った。
私の言葉に、サンガはとても優しい笑顔で笑うと、「これで、恩は返せたな。」と言って私の頭を優しくなでてくれる。
その時だった。
 
「サンガっ!ここに居たのかっ!」
 
その鋭い声と、低く重い声が、穏やかな空気を一気に冷たく凍らせた。
私は、心臓がドキーンとして、恐くて声がした方を見ることができなかった。
でも、見なくてもわかる。
この声は・・・まさかっ!
そう思った時、側にいた蒼輝が、彼と同じく相手を凍(イ)てつかせるような声で、彼の名前を呼んだ。
 
「ジギル・・・。」
 
って。
やっぱり・・・ジギルだ。
私は、恐る恐る振り返る。
10メートル先くらいに、ジギルとトロイが居た。
他のハンターは、いなかったけど、すでにトロイが銃をかまえて、蒼輝を狙っていた。
 
「それで、サンガっ!
こいつらといて、何か、情報を得られたか?」
 
ジギルの言葉に、サンガは「はい。」と答えると、ポケットから私たちが持ってきた物より、もっと小さいデーターチップを取り出した。
 
「ジギルさんが、探していた大陸について、たくさんの情報が得られました。
ここに、データーは入ってます。」
 
サンガは、そう言ってジギルに向かって、ニッコリ笑う。
 
「う・・・そ。」
 
私は、必死の思いでそう口にする。
だって、これって・・・裏切られたって事?
私たちに協力する振りして、あざむいてたって事?
信じられない思いと、敵である彼を心から信じてしまった自分の浅はかさで、私の心は悔しさと悲しさでいっぱいになる。
ただ、「うそ・・・うそよ。」と首を振って何度もつぶやく私。
それを、見ていたサンガが、「翠。」と私の名を呼んで私の腕をつかもうとする。
私は思いっきりあとずさりして、彼から遠ざかる。
悔しさで溢れてくる涙でいっぱいの瞳で、私はサンガをみつめ、「なんで?」と問いかけた。
答えない彼に、今度は大きな声で訴えてた。
 
「なんでよっ!」
 
って。
こんな裏切り方って・・・ないよね。
ここに、おびき出したのも、ジギルたちと、はちあわせにするために、導いたんでしょ。
そして、勝手にデーターチップの情報を、コピーしてるし。
思えば思うほど悔しくて悲しくてたまらなくなる私は、ドンドン涙がこぼれてきた。
その時、私を後ろから優しく抱きしめてくれたのは、蒼輝だった。
 
「コイツは、『敵』。
こういう裏切り方されるのは、覚悟してたよ。
まっ、お前らしいずる賢いやり方だったけどな。」
 
蒼輝の言葉に、サンガは「ふん。」と鼻で笑う。
 
「だから、翠。こんな奴の為に、泣かなくていい。
それより・・・ここから、帰ることだけを考えろ。」
 
蒼輝はそういうと、私に緑のネックレスをかけてくれた。
 
「おいっ!サンガ!そのデーターを、こっちに持って来い!」
 
私たちの事をジッと見ていたサンガは、ジギルのその声に反応して、ジギルに目線を動かす。
 
「はい、わかりました。」
 
そう答えたあと、サンガはチラッと蒼輝を見た。
その目は、さっきまで私たちと一緒に過ごした時のサンガの瞳だった。
今のは・・・どういう事?
私は、振り返って蒼輝の顔を見るなり、いきなり、
 
「ねっ!蒼輝、今の・・・。」
 
と聞いてみるけど、途中で口を手で抑えられて最後まで言えなくなってしまう。
黙った私の耳元で、蒼輝は、「サンガを信じろ。」と言った。
 
「どういう・・・事?」
 
と口を抑えられながら蒼輝に聞く私。
 
「俺が、合図したら、一気に北に向かって走るぞ。いいな。」
 
蒼輝の言葉に耳を疑う私。
だって・・・私たちを裏切ったサンガを信じるって?
しかも、サンガは私たちに、何も話さなかったんだよ。
なのに一体・・・何をするの?
それに、蒼輝だって、認めてたじゃない。
サンガが裏切ったって。
それを、信じろって・・・。
何が何だか、サッパリわかんない。
だけど、今は、蒼輝の言葉を信じるしかない。
私は、蒼輝の合図を、息をひそめて待っていた。
 
        ☆☆☆2章 END☆☆☆
 
 
 
 



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