リビングの大きな窓から、キラキラと注がれる朝日。
私は、レースカーテンも開けようと、キッチンからユックリと窓へとおもむく。
窓の真ん前まで来ると、カーテンを開ける前に、一服。
「よいしょ。」
と言いながら腰に両手を当てて、少し腰をさする。
ちょっとの距離でも、さすがにこの大きさになると・・・しんどい。
勢いよくレースカーテンを開けて、朝日をリビングにたぁーっぷりと迎えたら、私はまたユックリと移動して、今度はソファーへと腰をおろす。
「ちょっと、休憩しよっかー。」
なんていいながら、大きくなったお腹をさする私。
今日はゴミの日だったから、ゴミを出しに行って、やっと休めると思ったのにさ。
ソファーに座った途端、キッチンから、「ピー。」という大きな音。
その音と共に、部屋中にはとてもいい香りがした。
「おっ!時間ばっちりじゃない!!」
と言いつつ壁に目をやる私。
ここは、もちろん冬真(トウマ)さんのマンション。
冬真(トウマ)さんと想いをぶつけ合ったあの日から、私はここで冬真(トウマ)さんと住むようになった。
というか・・・私が押しかけた。
冬真(トウマ)さんは、「出産が終わるまでは、一緒に住むのはよそう。」と言ったの。
「なんで?」
って聞いたら、
「4日に1度は当直がある。
もし、俺が居ない間に何かあったらどうするんだ。
せめて、出産が終わるまでは、実家にいてくれ。」
と答えられて。
でも、交われない分、どうしても冬真(トウマ)さんといたかったの。
あまり逢えないし余計に、ほんのちょっとでも一緒にいる時は寄り添っていたい。って・・・。
どうしても譲らない私に、冬真(トウマ)さんが根負けした。
でも、1つだけ条件があってね。
「俺が当直の時は、由梨華(ユリカ)ちゃんかお母さんにここに、泊まってもらう事。
二人が泊まれないなら、俺のオフクロに来てもらうかだな。
それは、麗美(レミ)ちゃんが自分で、交渉してみてくれ。」
って。
由梨華(ユリカ)は、二つ返事でオッケーをくれた。
お母さんは、働いてるから出張と重なったら行けないし、何とも言えないと、不安な回答だったんだけど、なぜか冬真(トウマ)さんのお母さんがオッケーをくれたの。
「なんで、オフクロがオッケー出してんだよ。
普通嫌がるだろ?っていうか・・・嫌がってくれよ。」
って、冬真(トウマ)さんは電話口で、お母さんに説教してた。
自分のお母さんが「嫌よ。」と言うのを狙っていたみたいなんだけど、私が緊張しながらお願いの電話をしたら、
「いいわよぉー。その時は、冬真(トウマ)のアルバム持って行ってあげるわねぇー。」
とすっごいノリがよくて・・・。
さすが、雪先生が今でも溺愛してるだけあって、若いわ〜って思っちゃったんだよね。
ま、それはさておき・・・。
そういういきさつで、私を断る事に失敗した冬真(トウマ)さんは、仕方なく私を受け入れざるおえなくなっちゃったというわけ。
それで、冬真(トウマ)さんとの生活が始まったわけなんだけど。
最初の約束どおり、エッチは禁止なので、絶対にストレスになって胎児によくないよ。と私は毎日言い続け、何とか冬真(トウマ)さんの気を変えようと、これまた努力をしたんだけど、日に日に変わっていく私の体系を見た冬真(トウマ)さんは、
「どこがストレスだって?」
といじわるを言うの。
確かに・・・ストレスなんてないだろう。と言うような体系になっていったんだよね。
実は、冬真(トウマ)さんと一緒に暮らし始めて1週間が過ぎたあたりから、私の体重は急激に増え、さらには子供も大きくなっちゃって。
産婦人科の先生には、
「何かストレスがなくなったの?
心にゆとりができたのね。よかったわ〜。」
と言われた。
冬真(トウマ)さんと心が通じ合って、私の悩みもなくなって、気持ちも落ち着いたんだと思う。
だから、例えエッチ禁止でも、今は全然平気。
側に居れるだけで。
熱いキスをしてもらえるだけでいいんだ。
でも、冬真(トウマ)さんの方は・・・そうはいかないみたいで、最近ちょっと辛そう。
一緒にベッドに入る事を嫌がって、
「俺、ちょっと調べ物あるから、先に寝てて。」
とよく書斎に行っちゃう事がある。
本当は抱きしめて添い寝をしてもらいたい所だけど、いじめるのも悪いから、私も気付かないふりをして、先に寝てる。
でも、それも、あともうちょっとで、終わる。
だって、この子の予定日は3日後にまで迫ってきたの。
とはいえ・・・全然、陣痛の兆しはないんだけど・・・。
「早く、生まれて来い!!」
と言いながら、私はお腹をなでた。
「また、そんな事言ってんのかよ!」
寝室の扉が開いて、そんな声がした。
私は、その声の方に下げていた顔を向けた。
そこには、パジャマ姿に、大きなあくびをして、髪をワーっと乱している冬真(トウマ)さんの姿があった。
「おはよ。」
と笑顔で言った私に、「んー・・・おはよ。」と半分眠気まなこで言った冬真(トウマ)さんは、リビングに一歩入ってくるなり、クンクンと鼻を鳴らした。
「何?」
と聞くと・・・。
「すっげぇー、いい香りだな。
もしかして、コーヒー炊いたのか?」
「そう!よくわかったね。」
そう答えながら、私は「よいっしょ。」といいながら起き上がった。
「今日は、長丁場の手術があるんでしょ?
それも、執刀が冬真(トウマ)さんなんだもん。
頑張って、炊いたわよ!」
と笑いながら言う私に彼は、「サンキュ。」とすごくうれしそうに笑った。
だけど、すぐに私に向けて、手で待ったをする。
「ん?」と聞く私に、
「いいよ。自分で入れるから。
麗美(レミ)ちゃんは、座ってなって。」
と言ってくれる。
赤ちゃんが急に大きくなりすぎたせいで、体が重くて仕方ない私は、立っているのもしんどくてね。
それをよくわかっている彼は、私の体をいつも気にかけてくれる。
「平気よ。それより、シャワー浴びてきたら?
スッキリした方がいいでしょ?
その間に、ユックリ入れておくから。」
そういいながら、冬真(トウマ)さんの側まで歩んで、彼の腕にそっと触れた。
私の笑顔に、彼は私を優しく抱きしめてくれる。
「じゃ、お言葉に甘えようかな。」
そう言ったあと、私から体を離すと、
「けど、ユックリ動けよ。いいな。」
なんて念を押して、浴室へと消えていった。
目の前の冬真(トウマ)さんは、とてもおいしそうにコーヒーを飲んでた。
私は・・・ホットミルク。
コーヒーを飲みたいところだけど・・・今は赤ちゃんの為に我慢我慢。
でも、やっぱり飲みたくて・・・。
「ダメだ。何かで気を紛らわそう!」
と口にした私が持ち出してきたものは・・・。
「それが、気を紛らわすものか?」
読んでいた新聞をずらして、真向かいにいる私の行動を見た冬真(トウマ)さんは、呆れ顔でそう言った。
「食べる?」
と冬真(トウマ)さんに差し出したけど、
「朝からそんな甘いものは、喰えねぇー。」
と嫌がられた。
私が出してきたのは・・・おだんご。
それも、三色だんごと、みたらしだんごと、あんこがのっただんごなどが、セットになったパック。
最近、こういうものが食べたくてしかたないのよねぇー。
ホットミルクを片手に、それをバクバク食べてる私を、冬真(トウマ)さんは呆れながらも、とても優しい顔で笑って見てた。
「そういえばさー。」
と口にした私に、「ん?」と冬真(トウマ)さんは言いながらも、新聞から目を離さない。
まっ、それはいつもの事なんで、私はそのまま続けた。
「今日の、執刀・・・どうして、冬真(トウマ)さんなの?」
私も詳しくは知らないけど、今日手術する人って、すっごい有名な政治家らしいの。
冬真(トウマ)さんのおじいちゃま・・・つまり、雪先生のお父さんだけど。
その人の親友らしくて、かなり高齢らしいんだけど。
そういう大物の手術っていうのは、いつも雪先生がしてたのよ。
なんてったって、『神の左手』って言われてるくらいだからね。
なのに、今回は、なぜか執刀が冬真(トウマ)さんで、第一助手が海(カイ)さん。
で、雪先生は、オペ室には入らないって。
ねっ、すっごい不思議でしょ?
でも・・・それが、深刻な理由とは知らなかった私は、軽い気持ちで聞いちゃったのに・・・。
冬真(トウマ)さんは、深刻な理由を、「まっ、いっか。」と軽い言葉を吐くと言い出しちゃったの。
「麗美(レミ)ちゃんには、言っておこうかな。」
そんな言葉から始まった。
「えっ?」
と聞いた私に、冬真(トウマ)さんは読んでいた新聞をたたむと、イスに深く座って、コーヒーを飲みながらリラックスした。
「オヤジさ・・・左手に爆弾かかえてんだよ。」
「爆・・・弾??」
目を真ん丸にして復唱する私に、「そう。」と冬真(トウマ)さんは真剣な顔で答えた。
「オヤジもオフクロも詳しくは語らないから、いきさつはよく知らないんだけど。
昔、不慮の事故で、左手の神経を傷つけてしまったらしくて、手が動かなくなったんだ。」
「動かなく・・・。」
そう口にして、ゾゾーって寒気がした。
だって、左手って、雪先生の利き手じゃなかった?
利き手が動かないって・・・。
不安そうな瞳で見ていた私に冬真(トウマ)さんは、何も言わずに続けた。
「結局、俺らが通ってたスクールの腕のいい講師に治してもらって、腕は完治したんだけど。
さすがに、年をくってくると、ガタがくるらしくてね。
40歳過ぎてからは、10時間以上のオペは、手が耐えられなくなるみたいで、動かなくなるんだって。
それで、今回、俺が執刀に抜擢されたの。」
「そうだったんだー。」
と口にした私は、少し暗くなっちゃった。
だって、そんな大変な体だったなんて・・・思わなかったから。
雪先生はいつも自信に満ち溢れてて、頼れる素敵な男性だったから。
弱い所なんて、ない人だと思ってたから・・・。
「まー、けど、自業自得なんじゃんねぇーの?」
冬真(トウマ)さんの言葉に、「それ・・・どういう意味?」と聞く私。
すると、冬真(トウマ)さんは、苦笑いを浮かべた。
「俺が思うに、腕の怪我は絶対、女がらみだと思うなー。」
それには・・・ごめん、雪先生。
大爆笑しちゃったの。
だって・・・私もそう思っちゃったんだもん!!
「さーてと、そろそろ行くかな?」
そういって、立ち上がった冬真(トウマ)さんは、寝室に入っていくと、身支度をして、すぐにまた出てきた。
私も玄関に続く所まで、歩いて出た。
「雪先生がやらないって事は、10時間以上はかかるんだよね・・・。」
10時間も立ちっぱなし・・・。
冬真(トウマ)さんの体が心配になった私は、たまらず冬真(トウマ)さんの腕をつかんだ。
強く握った私の手を冬真(トウマ)さんは取り、私の手をからむように握ってくれた。
「早くて10時間。
長引けば・・・12時間以上はかかるな。」
「じゅうに??」
驚く私に冬真(トウマ)さんは、笑ってた。
「まっ、やってる方は必死だから、すぐだよ。」
そういうと、私をまた抱きしめた。
「逢うころには『明日』になってるかもしれないけど、いるのは病院だから。
危ない事はないから、心配しなくていい。」
冬真(トウマ)さんは、病院に居る時は、こう言って出かける。
そして、どこかへ出張の時とかは、「必ず戻ってくるから、俺を信じろ。」と言ってくれる。
私が、事故で愛する人を失う辛さを知ってるから。
冬真(トウマ)さんは、私が恐がらないように、いつも気を使ってくれてる。
でも、それが、本当に安心して、心地よかったりする。
「気をつけて、いってらっしゃい。」
冬真(トウマ)さんの言葉を聞いた私は、この言葉でいつも返す。
そして、さらにそれを聞いた冬真(トウマ)さんは、私にキスで返してくれる。
口を合わせた瞬間、冬真(トウマ)さんの愛が流れ込んでくるような感覚で、私を一気に熱くさせてくれる彼のキス。
でも、今日は熱くなるよりも、なんか・・・へん。
きっと、彼のキスはいつもと変わらないはずなのに・・・あまり感じない??
私は、冬真(トウマ)さんから唇を離した。
「なんでかな・・・。」
と口にした私に冬真(トウマ)さんは、私の顔に優しく手で触れた。
「あまり、感じなかったか?」
私はゆっくりとうなずいた。
不安に思ったの。
これはいったいなんなの?って。
いつもと違う事が起るとすごく不安になる私は、急に泣き出しそうな顔になった。
実は私ね・・・今、出産が一番恐いの。
信じられないくらい痛くて苦しいと聞くと・・・恐いよぉー!!って。
最近、カウントダウンみたいで、本当に嫌で、たまーに泣いちゃったりしてるの。
その度に冬真(トウマ)さんになぐさめてもらって、元気をもらってる。
それでも、恐くてだだをこねてたら、
「わかった。出産の時、俺が立ち会ってやるから。」
と素敵な言葉をくれて、私は頑張る事にしたの。
したんだけど・・・やっぱり恐くて。
だから、ちょっとでも違う事が起ると、「えっ!出産間近なの?」とかなっちゃって暗くなっちゃうんだ。
今も、もしかして!!って思ってしまって涙ぐんじゃって。
すると、冬真(トウマ)さんは、「悪い。」と急に謝った。
私は・・・ビックリして冬真(トウマ)さんを涙目で見た。
冬真(トウマ)さんは・・・笑ってた。
「手術のことでいっぱいでさ。
ちょっと、手抜きしたから・・・やっぱ、いつものじゃないと感じなかったか。
悪い。」
冬真(トウマ)さんはそういうと、「麗美(レミ)ちゃんは、そういうの敏感だもんな。」と口元を近づけながらいうと、
「ごめんな。」
と言ってまた唇を合わせた。
今度は・・・。
指先の力も抜けちゃうくらい・・・気持ちよかった。
深くて気持ちのいいキスを堪能した私は、満足で自分から唇を離した。
「何?もういいの?」
と意地悪な笑いをする彼に、
「これ以上したら、迫りそうだもん。」
と笑い返す私。
それには、冬真(トウマ)さんも、声を出して笑ってた。
抱きしめていた手を私から離すと、玄関へと歩いていく。
私も後ろから付いて行った。
「そういえばさー。」
と靴を履きながら冬真(トウマ)さんは口を開く。
「今日、由梨華(ユリカ)ちゃんって、うちに遊びに来るの?」
だけど、私は「ううん。」と答えた。
「由梨華(ユリカ)は、今大学受験の追い込みで忙しいから。
今日も夜遅くまで、塾なの。
けど、なんで?今日は冬真(トウマ)さん帰ってくるから、誰も来なくてもいいでしょ?」
それには、「そうだな。」と笑ってごまかした冬真(トウマ)さん。
「ねぇー。どうしたの?急に。」
と気になったので突っ込んで聞いてみるけど、「何でもないよ。」と笑われるだけ。
「でも・・・。」
とさらにくいくつと・・・。
「いつも家でひとりはかわいそうかな?って思って、今日はくるの?って聞いただけだよ。
ホント・・・深い意味はないから、そんなに神経質になるな。」
冬真(トウマ)さんはそういうと、お腹に手をあてた。
「あと、3日、そこでおりこうにしてるんだぞ。」
そういうと、「じゃ、行ってくるわ。」と口にして、彼は玄関の扉を開けた。
冬真(トウマ)さんが家を出たのが、朝の8時。
そして今が・・・夕方4時。
詳しくは聞いてないけど、手術は10時からと言っていたような・・・。
って事は・・・今、まだ6時間って事か。
なんて、私は壁の時計を見ながら考えて、ため息を付いた。
そして、こう口にした。
「どうしよう・・・。」
って。
実は、さっきから、お腹がおかしい。
陣痛とは違うんだけど、はってるような締め付けるような・・・そんな痛みというか鈍痛が私を襲ってた。
不安で恐くて、お母さんに連絡しようにも、今日は間が悪い事に出張だし、由梨華(ユリカ)を呼ぼうにも、この時間はまだ学校で電源切ってるし・・・。
かといって、さすがに冬真(トウマ)さんのお母さんに連絡するには、気が引けるし。
恐いけど・・・しかたない。
もう少し様子を見てみるか。と思いながら、あまり神経質にならないように、テレビをつけて気を紛らわしてた。
でも・・・やっぱり・・・気のせいでもないみたい。
覚悟を決めた私は、寝室から携帯電話を持ってきた。
冬真(トウマ)さんがメモリーしてくれた、冬真(トウマ)さんの実家を検索する。
そして、意を決して、私は発信を押した。
だけど・・・。
「留守電か・・・。」
ため息を付きながら、私は携帯を耳から離すと、電源ボタンを押して、携帯を閉じた。
どうしていいかわからなくなった私は、涙目になりながら、「冬真(トウマ)さんのバカ。」となぜか、冬真(トウマ)さんにやつあたり。
その時だった。
「ピンポーン。」
とインターホンが鳴った。
一回目は出なかったの。
勧誘か何かかな?って思って。
でも、それは、2回、3回と鳴った。
それでも、出なかったら、急に「ガチャ。」と鍵が解除される音が。
ビックリした私は、息をひそめて玄関にくぎ付けだったの。
扉がユックリ開いて、そこから現れた人は・・・。
「桜さんっ!!」
恐くて、クッションを握り締めて、さらにそのクッションの影からのぞいていた私は、とても大きな声でそう叫んだ。
私の叫び声にビックリしたその人は、体を一回飛び上がらせる。
そして、私の声がした方を見て、私の姿に大笑い。
「あら。ビックリさせちゃって、ごめんねぇー。」
そう言って優しく笑うと、ドアを閉めて、あがってきた。
桜さんとは・・・冬真(トウマ)さんのお母さんの事。
お母さんって呼んでいたんだけど、「桜と呼んで!!」と言われて、さすがに呼び捨ては無理なんで、『桜さん』と呼ばせてもらってる。
でも、冬真(トウマ)さんの前では、『お母さん』と呼んでる。
だって、いい年して、『桜さん』と呼んでほしいというお母さんが許せないみたいで、『いい加減にしろよ!』とすごく機嫌が悪くなるから・・・。
いつまでも、若くて綺麗なお母さんが、どうも苦手らしい。
雪先生が言うには、10歳から19歳までをアメリカで過ごしたから、母親を女性として見てんじゃねぇーか?と言ってた。
それは・・・わかるかも。
特に、桜さんはもう42歳くらいだと思うんだけど・・・とてもかわいくて、そんな年には見えないから。
だけど・・・。
私は桜さんの行動に首をかしげた。
だって、今鍵を開けて中に入ってきたよね?
でも、確か・・・。
「ねぇー、桜さん!どうして、鍵を持ってるんですか?」
そうなの!ここの鍵は冬真(トウマ)さんと、私しか持っていないはず。
なんで??
首をかしげる私を笑いながら、桜さんは私の目の前にくると、ソファーに座った。
「それより・・・麗美(レミ)ちゃん、お腹はどう?」
「えっ?」
と驚く私に、桜さんは、さらに驚く言葉を口にした。
「もしかして、お腹張ったりとか、いつもと違う症状出てきてない?」
って。
そんなの・・・答えられるわけないじゃない!!
なんで、わかるの??って顔で口をポカーンと開けていた私を、さらに桜さんは笑ってた。
「あの・・・。」
と口にする私に、桜さんは、「実はね。」と言うと、手に持っていた鍵をテーブルに置いた。
「この鍵・・・見覚えない?」
私は、少し身を乗り出してみて・・・。
「これ・・・冬真(トウマ)さんの?」
なんでわかるかって?
だって、キーホルダーがそのまま付いてるから。
余計な鍵は抜いてあるけど、おそろいのブランドのキーホルダーはそのままにあるから。
だけど・・・へんだよ。
だって、この鍵・・・朝は冬真(トウマ)さんが持っていたはず。
どうしてかというと、昨日の夜は、冬真(トウマ)さんがこの鍵を使って部屋の中に入ってきたんだから!
「これ・・・どういう事ですか?」
と言いながら、お腹が苦しくて私はまたソファーに、ゆったりと座った。
「仕事行く前に、冬真(トウマ)が来たのよ。」
「えっ?」
とまた、驚く私に、桜さんは続けた。
「麗美(レミ)ちゃんの様子がおかしいから、夕方になったら、様子を見に行ってやってくれって。」
「でも・・・私、朝は何も変じゃなかったんですよ。
症状が出てきたのは、さっきからで・・・。」
という私に桜さんは、「プッ。」と笑う。
「さくら・・・さん?」
と聞くと・・・。
「実は、それ、私も雪も聞いたのよ。
『様子がおかしい』って、どうおかしいの?って。
そしたら、あの子・・・。」
そういって、さらに大笑い。
「えぇー!!なんなんですかー!!」
とさらにせまる私に、桜さんは「あのね。」というと涙目で答える。
「朝交わしたキスの感じ方が、うすかったって。」
「えっ?」
と驚く私にさらに続ける。
「いつもと同じようにしたけど、あまり感じてなくて、たぶんそれは、鈍痛が起ってるせいじゃないのかな?って。
麗美(レミ)ちゃんにとっては、そんなに痛みを感じる事じゃないから、何とも思わないけど、体は敏感で、キスを感じるよりもそっちの痛みを強く認識してしまった。
だから、キスに反応をみせなかったんだろうって。
それで、もしかしたら夕方には、症状がもっと強くなって麗美(レミ)ちゃん自身にも自覚症状がでてくるかもしれないから、見に行ってやってって。
麗美(レミ)ちゃん一人では耐えられないだろうし、電話するにも、『冬真(トウマ)さんの母親にはしにくい』って思うだろうから、よろしく頼むって言われちゃって。
それで、言われるがまま来てみたんだけど・・・。」
桜さんはそこまでいうと、席を立ち私の側まで来た。
そして、私の顔に優しく触れた。
「少し、汗もかいてるわね。
痛み・・・きつくなってきた?」
私は、「う・・・ん。」と曖昧の返事。
だって・・・よくわからない。
これがそうなのか。
それとも、いつもの一時的な痛みなのか・・・。
考え込む私の手を、桜さんはつかんでくれた。
「そんなに考え込まないで。
来る時は来るし、来なければ来ない。
ユックリ、待ちましょう。
今日は、冬真(トウマ)が帰ってくるまで、私はここにいるから、安心して。」
桜さんのありがたい言葉に、私は「ありがとうございます。」と深々と頭を下げてお礼を言った。
「麗美(レミ)ちゃん!落ち着いて!!大丈夫だから!!」
「はーい。大きく息を吸ってぇー。
聞こえてますかー!!頑張ってぇー!!」
そんな声が耳元でする。
でも・・・何一つ頭に入っていなかった。
私のすぐ側には、桜さんもいてくれて、手を握ってくれてる。
その反対側には、愛閖(アユリ)さんが看護士として付いてくれてる。
でも、私は恐くて、それどころじゃなかったの。
今、私は分娩室にいた。
あれから、数時間後陣痛が来て私は、あれよあれよという間に、ここにいた。
信じられないような痛みと、恐さが私を襲う。
桜さんがいてくれても。
愛閖(アユリ)さんがいてくれても。
そして、腕のいい助産婦さんがいてくれても・・・。
私の不安は消えなかった。
私を救ってくれるのは、この世でたった一人だったから。
「冬真(トウマ)さん・・・助けてぇー・・・。」
泣きながらそう叫ぶだけの私。
全然頑張らない私に、みんなは声を張り上げて、元気をつけてくれるけど・・・頑張れない。
私は、首を振りながら否定して・・・頑張らなかった。
だけど、みんなの必死の言葉と、お腹の痛みを考えると・・・頑張らなゃって思った私は、桜さんが、握っていない方の手を、伸ばした。
まるで、そこに冬真(トウマ)さんがいるように・・・私は自分を騙した。
それで、頑張ってみようと思ったの。
思ったんだけど・・・。
「麗美(レミ)さん!しっかり!!」
って言われた。
だって・・・やっぱり無理なんだもん。
冬真(トウマ)さん・・・来てよ!
お願い・・・早く来て!
恐いよ、一人じゃ耐えられないよ・・・。
完全に甘ったれの私。
泣いて、泣いて泣きじゃくる私に、さすがの助産婦さんも白旗。
「松尾さん。」
と愛閖(アユリ)さんを呼ぶと・・・。
「冬真(トウマ)先生は、まだ来れないの?」
と聞いてくれた。
でも、愛閖(アユリ)さんは、壁の時計を見て、「そうですねぇ・・・。」と言いにくそうに口にする。
「手術が始まって、10時間ですから・・・。
あと、3時間は出て来れないと思います。」
「3時間?!」
とビックリする助産婦さん。
私だって・・・それを聞いて、余計に涙が出たよ。
こんなに痛くて、恐いのをあと3時間も一人で耐えないといけないの??
「無理・・・。」
私の言葉に桜さんは、「何?」と聞いてくれる。
私は首を振りながら言ったの。
「待てない・・・頑張れない・・・。
3時間も、冬真(トウマ)さんいないのに頑張れないよ!!」
その時だった。
今まで何も感じなかった私の手に、重さを感じたのは・・・。
私は、その方向に顔を向けて・・・言葉を失った。
ただ・・・とめどなく涙が流れた。
「そんな長い時間・・・麗美(レミ)を一人にするわけないだろ?」
そして、彼は私の手を強く握ってくれた。
でも、私は、それだけじゃ足りなくて、桜さんが握ってくれていた手も離すと、そのまま彼の元へ抱きつくようにすがった。
その姿に、もちろん周りの人は驚く。
このスタイルで、動けるわけないもん。
それでも強引に左側に向こうとした私を、彼が止める。
「待てっ!麗美(レミ)は動くな!!」
そういって、浮いた私の背中をまたベッドに戻すと、彼が私の正面に上半身を向けた。
そして、そのまま私を抱きかかえるように、抱きしめてくれた。
彼の胸が私の頬にくっついた。
「遅いよぉ・・・。」
と彼の胸で責める私に、彼は、「そういうなよ。」と苦笑い。
「これでも、精一杯スピードアップして、早く終わらせたんだからさ。」
そして、私から体を離すと私を見つめた。
「オペ室から、ここまで猛ダッシュしてきたんだから、褒めてくれよ。」
と言うと、私にキスをくれた。
それは、不安と恐さでいっぱいだった私の気持ちを消してくれた、魔法のキスだった。
「これで、もう恐くはないだろ?」
冬真(トウマ)さんはそういうと、私の真横に体を移動させる。
そして、左手を握ってくれる。
「俺はここにいるから。
だから、麗美(レミ)は俺の夢を叶えてくれよ。」
そう言われて・・・思い出した。
私は、この子を無事に産んで、そして冬真(トウマ)さんに抱かせてあげなきゃいけないんだ。
それを思い出したら、こんな事してられない!って思えたの。
俄然やる気になった私は、冬真(トウマ)さんから今度は愛閖(アユリ)さんを見る。
私の瞳で察知した愛閖(アユリ)さんは、優しく微笑むと、
「頑張ろうねっ!」
と優しい言葉をくれたの。
それから数時間後・・・私の苦しむ声しか聞こえていなかった空間に、元気な泣き声が響いた。
その声に、私の体から一気に力が抜けた。
そしてそれは、私だけじゃなくて・・・。
「やっと・・・生まれたか・・・。」
と冬真(トウマ)さんのため息交じりの声が聞こえた。
彼も、ホッとしたみたい。
だけど、すぐに私の顔に自分の顔をくっつけてくれて、耳元でささやいてくれた。
「よく頑張ったな。」
って。
でも、それは冬真(トウマ)さんがいてくれたからで、私一人じゃ情けないけど、絶対に無理だった。
というか、こんなに早くは生まれてなかったと思う。
そんな事はわかっていたけど、素直に言えないのが私。
お礼よりも、自分の気持ちを言っちゃったの。
「これで、冬真(トウマ)さんに抱いてもらえる。」
って。それには、桜さんが大笑い。
「おいっ!ウケすぎだって!!」
と桜さんにするどい突っ込みを入れた冬真(トウマ)さんが、素早く今度は私に突っ込みを入れる。
「麗美(レミ)は、そればっかりだな。」
そういって呆れた顔で私を見る冬真(トウマ)さんの顔が・・・実はこっけいで好きだったりするんだよね。
私は、おかしくて笑ってた。
「麗美(レミ)さん!!」
そんな声がして、私はその人の方に顔を向けた。
私たちの元に愛閖(アユリ)さんが近付いてきた。
手には、タオルに包まれたものを持っていた。
「3300gの男の子ですよ。」
そういって、私に顔を見せてくれた。
見た瞬間・・・私は冬真(トウマ)さんを見た。
私の顔に、「えっ?」と冬真(トウマ)さんは言うと、さらに、
「なんだよ。」
と少し怒ってる。
「怒んないでよ!」
と文句をいう私に、「だって、麗美(レミ)ちゃんが俺を見るから。」と冬真(トウマ)さんはやっぱりまだ怒り口調。
だから、私も・・・喧嘩口調になっちゃう。
「だったら、自分で見てみなよ!!」
って言いながら、冬真(トウマ)さんの腕を強引に愛閖(アユリ)さんの方に、ぐいと押した。
「いてーなぁー。」
と文句を言いながら冬真(トウマ)さんは、愛閖(アユリ)さんに抱かれている物体を見て・・・。
「・・・・。」
絶句。
「ねぇ?ビックリでしょ?」
と迫る私にも冬真(トウマ)さんは答えない。
それを見ていた桜さんは、
「もしかして、陸(リク)くんにそっくりなの?」
と笑いながらいうと、愛閖(アユリ)さんの元に近付きご対面。
そして・・・なぜか、大笑い。
「笑いごとじゃないだろ!」
と呆れる冬真(トウマ)さんに、今度は愛閖(アユリ)さんも大笑い。
「おいっ!」
と愛閖(アユリ)さんにも怒りの矛先を向ける冬真(トウマ)さんに、桜さんが言った。
「生まれた時の、冬真(トウマ)にそっくり!!」
って。
そうなのよ!この子・・・冬真(トウマ)さんにそっくり。
綺麗な顔立ちに、目を開けてなくてもわかるパッチリの目。
そして、信じられないくらいの真っすぐなストレートな髪。
鼻もすっごい高くて、口は上品な小さめで・・・。
陸(リク)とは・・・全然違う。
「なんで??」
とたまらず口にした私に、「知らねぇーよ。」と冷たい冬真(トウマ)さん。
「もしかして、冬真(トウマ)先生の子供じゃないの?」
と愛閖(アユリ)さんは言うけど、
「なわけないでしょ!!」
「なわけないだろ!!」
が一緒に重なる。
そう・・・『なわけない。』んだよ。
完全にこの子は、陸(リク)の子供。
なのに・・・なんで??
「もしかして・・・陸(リク)のしわざかもな。」
と笑う冬真(トウマ)さんに、「ん?」と聞く私。
すると、冬真(トウマ)さんは、愛閖(アユリ)さんから赤ちゃんを抱き取ると、その子をとても優しい眼差しで見た。
「父親が他にいるとコイツが思わないように、俺に似させてくれたのかも。」
というと、今度は笑いながら言った。
「余計な事を・・・。」
なんていいながらも、瞳は嬉しそうだった。
「ねぇー。」
私の声に冬真(トウマ)さんは、「ん?」と言いながら、私の方にユックリと顔を向けた。
「冬真(トウマ)さんの夢、叶えたよね?」
私の言葉に冬真(トウマ)さんは、「そうだな。」と言うといってくれた。
「ありがとう。」
って。そう言ってもらえたら・・・私は次の言葉が言いやすくなって、言っちゃったの。
「私の願いも叶えてくれる?」
ってね。
それには、「えっ?」と不思議な顔をした冬真(トウマ)さんだったけど、愛閖(アユリ)さんはわかったみたいで、笑ってる。
「なんで、愛閖(アユリ)さんが笑うんだよ。」
とおもしろくない冬真(トウマ)さんは、つっかかるけど、私は続けたの。
「その子の名前を、冬真(トウマ)さんにつけてほしいの。」
それには、冬真(トウマ)さんはビックリした顔で私を見てた。
だけど、ただ彼をみつめたまま、何も言わない私に冬真(トウマ)さんは、一瞬戸惑ったみたいだったけど、しばらくして、すごく優しくほほえんだ。
「わかった。じゃあさ・・・。」
と口にして、今度は赤ちゃんを見た。
そして、また私を見た。
「『たかし』っていうのは、どうだ?」
「たか・・・し??」
すると冬真(トウマ)さんは、「うん。」と言うと、小さな窓から見える暗い空に目を向けた。
「天国の『天(テン)』で『たかし』。
意味は、天国につながっていたいから。
向こうにいる陸(リク)とも、つながっていると感じてほしい。
そして、もし俺や麗美(レミ)ちゃんが、先に向こうに行ってしまっても、つながっているから寂しくないと感じてほしい。
どうかな?」
そう言って笑う冬真(トウマ)さんに、私も笑って答えた。
「すごく・・・いい名前だよ。」
いつの間にか涙が出てた。
天(タカシ)って名前がよすぎて泣いたんじゃないの。
冬真(トウマ)さんと、陸(リク)の絆の強さに・・・涙しちゃったの。
生まれた天(タカシ)が、ありもしない冬真(トウマ)さんに似ていた事が、本当に陸(リク)から冬真(トウマ)さんへの思いやりだとしたら。
そして、冬真(トウマ)さんが、天(タカシ)と名付けたのが、本当の父親である陸(リク)に、天(タカシ)を身近に感じさせてあげたい。という思いやりからだとしたら。
それを、感じて感動したの。
この二人の絆は・・・すごいなって。
そして、思ったんだー。
この二人を愛せてホントに、よかったなー。って・・・。
「でも・・・冬真(トウマ)さん・・・。いいの?」
私の言葉に、「何が?」と冬真(トウマ)さんの答え。
私は即答した。
「季節の名前を付けなくていいの?」
って。
実は、冬真(トウマ)さんの家系は、『季節』を連想させる名前になってるの。
冬真(トウマ)さんや、雪先生や海(カイ)先生の名前からもわかるように・・・。
ほら、前に私が冬真(トウマ)さんの子供だと、勘違いした男の子も、名前が夏杜(カズ)くんだったでしょ。
それに、ずーっと前に出会った海(カイ)先生の子供も、霙(ヨウ)くんに梅紅(メグ)ちゃんで、四季を感じさせる名前なんだよ。
だから、てっきり、この子も、そういう関係かな?って、ちょっと思ったりしてたから・・・。
だけど、冬真(トウマ)さんは、「別にいいだろ。」とあっけらかんとして答えた。
「でも・・・。」
と気にする私に、冬真(トウマ)さんはしかたなく、桜さんに目を移した。
「別に決まってるわけじゃないんだろ?
みんなが勝手につけてるだけだよな?
天(タカシ)でいいだろ?」
と強気に押し通す冬真(トウマ)さん。
それとは、違って心配そうに桜さんを見つめる私。
そんな私に、桜さんはプッと笑った。
「そんな事、気にしなくていいのよ。
父親である冬真(トウマ)と、母親である麗美(レミ)ちゃんが、二人で思う名前を付けるといいわ。」
その言葉に、「だろ?」と冬真(トウマ)さんは笑うと、今度は私を見た。
「ということで・・・天(タカシ)で決定な!」
そして、今度は、腕の中にいる天(タカシ)を見る。
「これから、よろしくな・・・天(タカシ)くん!」
そう言ってキスをした。
それを見た私は、たまらず両手を冬真(トウマ)さんに差し出す。
「私も、私もー!!」
とダダをこねる私に、「わかったわかった。」と面倒くさそうに答えた冬真(トウマ)さんは私の元に近付いてくると、「ほら。」といって天(タカシ)を差し出した。
それには、私も愛閖(アユリ)さんも桜さんも、「えっ?」と声を出す。
「えっ?って・・・なんだよ。」
と差し出した手を、ピタっと止める冬真(トウマ)さんに、まず口を開いたのは愛閖(アユリ)さん。
「なぜ・・・天(タカシ)くんを差し出すの?」
そして、次は桜さん。
「冬真(トウマ)・・・勘違いしてない?」
みんなの反応に、「はぁ?」と冬真(トウマ)さん。
なんで?
どうして、わからないのよ!!
愛閖(アユリ)さんと、桜さんはわかってるっていうのにぃー!!
と心の中で怒りながら、私は・・・口に出してた。
「なんで、天(タカシ)にだけ、キスするのよぉー!!」
その言葉に、「はぁ?」と口にした冬真(トウマ)さんは、しばらくして・・・気付いたみたい。
完全に呆れた顔に、変貌する。
「あのなぁー・・・。
普通は、生まれた子供を抱きたい!って思うだろ!
それが、なんで、子供よりも俺のキスをほしがるわけ?
天(タカシ)に嫉妬して、どーすんだよ。」
さらには、ハァーと深いため息。
そんなに、ため息付かなくてもいいじゃない!!
「もう、いいわよ!!」
と完全にすねた私。
そりゃ、私だって、天(タカシ)をこの手に抱きたいって思うよ。
よく生まれてきたね。って言ってあげたい。
でも、それよりも、まず、冬真(トウマ)さんを感じたかったの。
冬真(トウマ)さんのキスをほしいって思って、何が悪いのよ!!
顔を冬真(トウマ)さんからそむけて、すねる私に、冬真(トウマ)さんも降参したみたい。
「愛閖(アユリ)さん。天(タカシ)返すわ。」
というと、愛閖(アユリ)さんに天(タカシ)を渡した。
そして、私の顔に触れると、私の顔を強引に自分の方に向けた。
私は、無理やり冬真(トウマ)さんを、見るハメになった。
「何よっ!!」
とすねる私に、冬真(トウマ)さんは、少し苦笑いをする。
「ホント、麗美(レミ)は・・・俺の気持ち全然わかってねぇーよな。」
そういいながら、私の髪に優しく触れる。
「な・・・に?」
と不安になった私は、おどおどしながら彼に聞く。
すると、今度は、とても優しい瞳で私をみてくれた。
「俺が、今どれだけ麗美(レミ)に触れたいか。
どれだけ、麗美(レミ)を感じたいって思ってるか・・・わかってねぇーだろ。」
冬真(トウマ)さんは、そういうと、私に軽いキスをして、また私を見つめた。
「冬真(トウマ)・・・さん?」
と彼に聞く私を、冬真(トウマ)さんの熱い瞳がくぎづけにした。
「必死で耐えてたのに・・・麗美(レミ)のせいだからな。
俺の愛をちゃんと受け取れよ。」
そのセリフのあと、冬真(トウマ)さんは私の唇をふさいだ。
何・・・これ・・・・。
これが、私の心の言葉。
だって、こんなに激しいキス、知らないもん。
今まで、冬真(トウマ)さんには、色んなキスをもらった。
すぐにいっちゃうような感じるキスとか、心が温まるようなキスとか。
あとは、安心するキスとか・・・。
でも、このキスは、なんだろう?
そういうのでは、ない。
安らぎとか安心とかじゃなくて、あえていうなら『重い』キスっていうのかな。
冬真(トウマ)さんの私への愛を、たっぷり感じれる重くてキツイキス。
止めどなく注がれる愛を受け取る。
でも、彼からの想いを自分の体の中で消化させる行為が追いつかないというか、耐えられなくなるっていうのかな。
体の全部が熱くなって、次に体の芯が麻痺して、感覚を失う。
そして、注がれていた愛が、今度は愛を抜き取られる感じに変わるの。
募りに募った彼への想いを、抜かれているような・・・。
それが、気持ちよくて、信じられない快感へと変わる。
ここが、分娩室と忘れてしまうくらい、私は感覚が麻痺してた。
そして、感じてたの。
天(タカシ)が生まれた現実。
冬真(トウマ)さんが、こんなに愛してくれているんだと感じれた現実。
それを身を持って感じて、私は本当に幸せだと。
生きててよかったと・・・そう思えたの。
綺麗なバラを左右にさした。
そして、ろうそくに火をともした。
バラの香りがするお線香に火をつけ、それを真ん中に置いた。
私は、両手を合わせて拝む。
終わったら、立ち上がり、後ろを振り返る。
「天(タカシ)は、受け取らなくていい?」
と言うと、「ああ。大丈夫。」と彼は答えて私とすれ違う。
そして、天(タカシ)を抱っこしたまま、しゃがむと自分もお線香に火をつけ、そして拝んだ。
そのあと、瞳を開けてすぐにひざに乗せている天(タカシ)の両手をくっつけた。
「こうやって、拝むんだよ。」
と冬真(トウマ)さんは言いながら、天(タカシ)に強引に礼をさせた。
まだ、1歳5ケ月なんだもん。
意味なんてわかってない。
でも、とてもおりこうさんに冬真(トウマ)さんがいう通り、いう事をきいた天(タカシ)。
「私とだったら、いう事きかないのに・・・。
冬真(トウマ)さんのいう事なら、素直よね。」
と言いながら、天(タカシ)の頭を優しくなでる私。
「威厳があるのかな?」
と笑う冬真(トウマ)さんは、今度は目の前の『彼』を見た。
「陸(リク)。見えるか?
お前の子供の天(タカシ)だ。
もう、1歳と5ケ月になった。
お前のねらいどおり、日に日に俺に似てくるよ。
恐いぐらいにな・・・。」
そして、今度は天(タカシ)を見て・・・。
「マジで、俺に似てるよな。」
と改めて言ってるし。
たまらず大笑いした私に、「あっ、そうだ!麗美(レミ)ちゃん!」と冬真(トウマ)さんはいうと、立ち上がり私の方に来た。
「『あれ』。陸(リク)に見せてやった?」
「あっ、そうそう。忘れてた!!」
そうだよ。『あれ』をみせるために、わざわざ今日は来たんだから!
月命日でもないのに。
私は、カバンから封筒を出した。
そして、その中に入っている一枚の紙を取り出すと、また陸(リク)の前に座って彼に向けて広げた。
「どう陸(リク)!すごいでしょ!!」
と自慢する私。
「きっと、陸(リク)も驚いてるぞ。」
って言いながら冬真(トウマ)さんも、私の横にしゃがんだ。
だけど、私は、ちょっと意地悪な口調でこう言った。
「絶対に陸(リク)、こう言ってるよ。
『冬真(トウマ)の力がなきゃ、お前に入れるわけねぇーだろ。』って。」
それには、冬真(トウマ)さんも、「そうかな?」と言いながら笑ってた。
「私だって、そうだと思ってるよ。」
そう口にして、冬真(トウマ)さんを見た。
「ん?」と聞く冬真(トウマ)さんの肩に、私は自分の顔をくっつけた。
「これは、冬真(トウマ)さんがくれた奇跡だよ。」
私はそう言ったあと、顔を冬真(トウマ)さんの肩から離すと、彼を見た。
「1年休学して、天(タカシ)を出産した後、翌年の4月から復学しても、1年勉強してなかったから、頭がついていかなくて。
それでも、大学が受かったのは、冬真(トウマ)さんのおかげだよ。
天(タカシ)の面倒を本当によくみてくれたし、勉強だって必死になって教えてくれた。
冬真(トウマ)さんがいなかったら、私は『ここ』を受けようと思わなかったし、受かってもないよ。
こんな大学・・・。」
すると、冬真(トウマ)さんは、「そんな事ないよ。」と優しく笑った。
「麗美(レミ)ちゃんが、『医者になりたい』って思ったから。
だから、大学にも受かったし、頑張れたんだよ。
俺は、天(タカシ)の父親として、それなりの事をしただけ。
そして、麗美(レミ)ちゃんを愛する男として、麗美(レミ)ちゃんの夢の手助けをした。
ただ、それだけだよ・・・。」
冬真(トウマ)さんはそういうと、
「なっ!陸(リク)!」
と彼に同意を求めると、腰を上げて立ち上がる。
そして、そのまま少し後ろにさがって、ぐずりだした天(タカシ)をあやしてた。
私は、陸(リク)に視線を戻した。
「陸(リク)・・・。
私は、あなたの夢を追いかける事はできない。
あなたや、冬真(トウマ)さんみたいに頭もよくなければ、手先も器用じゃない。
でも、冬真(トウマ)さんが、陸(リク)と私に奇跡の時間を与えてくれたように、私も誰かと誰かの奇跡の時間を与える人間になりたいの。
だから、私は、医者になる道を選んだ。
あなたがいけなかった大学に、私が通って、私は医者になります。
だから・・・私が無事医師免許を取れるように・・・必死で祈ってて。」
そういって、「お願い!!」と両手を合わせる私に、冬真(トウマ)さんは大笑い。
「笑いごとじゃないよ!!」
と振り返って突っ込むと、
「今から、神頼みしてどうすんだよ!
まだ、国家試験も受けてねぇーのに。
祈るのは、6年後にしろよ。」
っていうけど、私は、首をふる。
「今から、6年間祈り続けなきゃ、効果ないって!!」
と言いながら必死で拝む私に、冬真(トウマ)さんは私の頭を優しくなでた。
「心配すんな。
俺が、協力するから。
麗美(レミ)ちゃんの側にいて、俺が支える。
6年後の今頃、陸(リク)にいい報告を俺がさせてやるから。
何も心配しなくていい。」
冬真(トウマ)さんはそういうと、腕の中にいる天(タカシ)を見て、「なぁー。」と言ってニッコリ。
天(タカシ)は、もちろん意味がわからなくて、「にゃぁー。」と冬真(トウマ)さんの真似をして笑ってた。
私は、手に持っていた大学の合格通知を四つ折にすると、カバンにしまった。
そして、冬真(トウマ)さんの正面に立ち上がった。
「ねぇー・・・冬真(トウマ)さん。」
そう口にした私に、「何?」と笑いながら振り返った冬真(トウマ)さんだけど、私の真剣な顔に、冬真(トウマ)さんも戸惑いそして、笑いを止めた。
「なんだよ。そんな真剣な顔をして。」
と口にする冬真(トウマ)さんに私は、ずっとずっと思っていたことを口にしたの。
「私の事はもういいから。
だから、冬真(トウマ)さんは、自分の夢を追いかけて。」
私の言葉に、冬真(トウマ)さんの顔が一気に曇った。
「何・・・言ってんの?」
少し声が低い。
ちょっと冬真(トウマ)さんが怒ってるって・・・わかってた。
でも、私は、そのまま彼に自分の思いを言った。
「この大学に受かったのは、冬真(トウマ)さんからの愛の奇跡だと思ってる。
だから、私はこの奇跡を。
冬真(トウマ)さんがくれた奇跡を、今度は自分の力で、『本物』にしたいの。
自分の力で、夢をつかみたい。
そうしなきゃいけない気がするから・・・。
だから、ここからは、自分の力で頑張るよ。
6年間、必死で、死に物狂いで頑張る。
だから、冬真(トウマ)さんは、陸(リク)との夢を追いかけてほしいの。」
「陸(リク)との・・・夢?」
「そう。アメリカに行って、心臓外科医としての腕を身につけてきて。
そして、陸(リク)と大介くんとの約束を、果たしてあげてほしい。」
私は、そう言ったあと、冬真(トウマ)さんに近付いて、彼の腕をつかんだ。
「冬真(トウマ)さんが戻って来るまで・・・。
私が、天(タカシ)をちゃんと育てるから。
あなたとの子供を、立派に育てるから・・・。
だから、冬真(トウマ)さんも、夢をつかんできて。」
決心したはずなのに。
泣かないって決めたのに・・・。
なのに、私は泣いてた。
こうしなきゃいけないって、ずっとずっと自分に言い聞かせてきたのに、やっぱり心は叫んでる。
冬真(トウマ)さんと離れて、生きていけないって。
行かないで!!って。
でも、それは・・・望んじゃいけない事だから。
冬真(トウマ)さんには、やるべき事がまだあるから。
私が送り出さなきゃ、冬真(トウマ)さんはアメリカにいけないもん。
私は、必死で涙を堪えてた。
冬真(トウマ)さんの腕をつかんでいる私の手が、震えてた。
その腕を、冬真(トウマ)さんはつかむと、強引に自分の方に引き寄せた。
私の体が彼の胸へと、前進した。
私を自分の胸におさめると、彼は手を離し、私の背中に腕をまわすと、強く片腕で抱きしめた。
「ありがとな。」
私が苦しんでいるのも、冬真(トウマ)さんはわかってる。
本当は離れたくないって思ってるって事も。
だから・・・こんな言葉を言ったんだと思う。
だって、こんな言葉を言われたら・・・私は自分の気持ちが抑えきれなくなるから。
案の定、私は、たまらず、必死で耐えていた心の思いを口にしちゃったの。
「本当は、いやなの。
離れたく・・・ないよ。
ずっとずっと一緒にいてほしい。」
そう叫びながら私は、冬真(トウマ)さんに抱きついた。
必死で、しがみついてた。
いっぱいいっぱいになった思い。
熱くなった気持ち。
でも、自分の顔におしつけていた冬真(トウマ)さんの胸から聞こえた鼓動を聞いていると、なぜか私の気持ちも少しずつ落ち着いてくるようだった。
「お願い・・・約束して。」
私はそう口にして顔を上げた。
「何を?」と冬真(トウマ)さんは優しい口調でいいながら、私を見た。
「絶対に、私の元に帰ってくるって。
何があっても、戻ってくるって。
約束・・・してくれる?」
離れるのが恐いのは、陸(リク)みたいに失うのが恐いから。
逢いたい時に簡単に逢えないのは、一番不安になる。
私を置いて消えたりしないよね?って・・・不安になるから。
私の言葉に、冬真(トウマ)さんは、「そうだな。」と言うと、私の顔に自分の顔をくっつけてきた。
「寿命は変えられないのかもしれない。
でも、俺は最後までジタバタしてやる。
麗美(レミ)が、この世を去ってから、俺は死ぬ。
たとえ俺が、意識がなくて植物状態でただ呼吸をしているだけの状態になったとしても、俺はこの世に生きてやる。
麗美(レミ)を見送るまではな・・・。」
冬真(トウマ)さんは、そう言って笑うと、私から顔を離した。
「俺は、陸(リク)のように、物分りのいいやつじゃない。
絶対に、麗美(レミ)も、天(タカシ)も誰にも渡さないから。
二人は、生涯、俺の物だよ。」
そう言って冬真(トウマ)さんは、私とそして天(タカシ)にキスをした。
「麗美(レミ)ちゃんが医者になる時、俺も戻ってくるよ。
そしたら・・・。」
「そしたら・・・何?」
その先が気になって、私はドキドキしながら言ったの。
でも、冬真(トウマ)さんは、少しの沈黙のあと、「やっぱ、やめとくわ。」というと、口を閉じた。
「何?気になる。」
とせまるけど、冬真(トウマ)さんは笑うだけ。
「何?何なの??」
と少し怒りながらいう私に、冬真(トウマ)さんはまた私を強く抱きしめた。
「6年後に続きはいってやる。
それを楽しみに、6年間必死で勉強しろ。
絶対に・・・なんとしても、6年で卒業しろよ!!」
冬真(トウマ)さんは、そう言ったあと、私から力を抜くと、私の顔を見つめた。
「天(タカシ)のこと・・・頼んだぞ。」
冬真(トウマ)さんの言葉に、私は素直に、「うん。」と答えてうなずいた。
そして、今度は自分の腕を彼の首にからませて抱きついた。
「おい!天(タカシ)がいるんだぞ!!」
っていうけど、おかまいなして、私は冬真(トウマ)さんに抱きついた。
それには、さらに冬真(トウマ)さんは呆れた口調で、『ある人物』にこんな事を言った。
「おい、陸(リク)。
俺、一人じゃ、天(タカシ)と麗美(レミ)ちゃん、みれねぇーぞ。
お前も、来て助けろよ!!」
って愚痴ってたけど、「来れるわけないじゃない。」と私は答えて、さらに冬真(トウマ)さんにくっついた。
「陸(リク)、俺がいない間。
この甘ったれの母親と、やんちゃなガキの面倒頼んだぞ!!」
冬真(トウマ)さんは、そう言ったあと、私を自分から強引に離した。
そして、だっこしていた天(タカシ)をおろすと、地面に立たせた。
だけど、天(タカシ)は、冬真(トウマ)さんにもっと抱っこしてもらいたかったみたいで、甘えた声を出しながら、冬真(トウマ)さんの足にしがみついた。
「どう・・・したの?」
と首をかしげる私に、冬真(トウマ)さんは「ちょっと、天(タカシ)には我慢してもらおう。」と言って笑うと、私を自分の方に引き寄せると、強く抱きしめた。
突然の事に、私は驚きで目を真ん丸にする。
だけど、冬真(トウマ)さんは腕を緩める所か、そのままで私の耳元でささやいた。
「一度・・・陸(リク)の前で、ちゃんと言っておきたかったんだ。」
冬真(トウマ)さんはそういうと、さらにこう言った。
「麗美(レミ)・・・愛してるよ。」
嬉しかった。
本当に・・・うれしかったの。
だから、私も・・・いえたの。
「私も、冬真(トウマ)さんを愛してる。」
って。
陸(リク)の前だけど・・・ううん。
陸(リク)の前だから・・・言えた。
ねぇー、陸(リク)・・見えてる?
あなたが背中を押してくれたから、選択を間違えずに、幸せになれる愛を選べたの。
そして、あなたがくれた言葉・・・『幸せになれ』。
私は、とても幸せよ。
あなたがくれた奇跡のおかげで、私はたくさんの奇跡を手に入れた。
だから、陸(リク)・・・。
私はこれから、冬真(トウマ)さんを愛する事で。
そして、天(タカシ)を愛する事で、奇跡を起こしてみせるね。
3人で、愛から生まれる奇跡を・・・。
「麗美(レミ)。」
冬真(トウマ)さんの声に、私は冬真(トウマ)さんを見た。
彼は、今までにないくらい、とても優しい眼差しで私を見てた。
そして言ってくれたの。
「麗美(レミ)と天(タカシ)を愛する事で、俺は二人にたくさんの奇跡を起こして見せるから。
愛から生まれる奇跡をな。」
まるで、心の中を見透かされたのかと思った。
私が思っていた事と、同じ事を冬真(トウマ)さんが言ったから。
でも、驚きよりも、嬉しくて。
だから、私もその言葉に答えちゃったの。
「私も、見せてあげる。」
って。
それには、「ん?」といいながら、冬真(トウマ)さんは私から腕を離すと、足にしがみついている天(タカシ)を抱きかかえる。
そんな彼に、また私は抱きつくと、天(タカシ)にキスをした。
「天(タカシ)にも。そして・・・。」
そう口にして、今度は冬真(トウマ)さんに軽く口づけをした。
「冬真(トウマ)さんにも、私の愛から生まれる奇跡を、たくさん見せてあげるから。」
そして、私は自ら、冬真(トウマ)さんに深いキスをする。
でも、すぐに主導権は、冬真(トウマ)さんにかわった。
まるで、それは・・・誓いのキスだった。
お互いを愛し合うこと。
愛から生まれる奇跡を生むこと。
そして何より、6年後、お互いが夢をつかんで再会できる日を・・・。
それこそが、最初に見せるお互いの愛からなる『愛の奇跡』だと・・・。
そのキスで、誓い合った。
そんな私と冬真(トウマ)さんのホッペタに、天(タカシ)がチュ、チュとキスをくれた。
ビックリした私も冬真(トウマ)さんも、もちろん唇を離して、天(タカシ)を見る。
私たちを見てニッコリ笑っている天(タカシ)を見て、冬真(トウマ)さんはこう言った。
「天(タカシ)から、愛の奇跡か?」
って。
それには、もちろん・・・。
「きっと・・・そうだよ。」
と答えて二人で顔を見合わせて大笑い。
そして・・・。
「ありがとう。」
と私と冬真(トウマ)さんは声を合わせていうと、愛の奇跡をくれた二人の・・・。
いや、『三人』の宝物の王子に、ご褒美のキスをプレゼントした。
☆☆☆最終章 END ☆☆☆
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