冬真(トウマ)さんは、私の腕をつかんだまま、向かいの交差点を渡ると、そこにとめてある黒い見たこともない車の前に来ると、急に立ち止まった。
「どう・・・したの?」
さっぱり、意味がわからない私は、冬真(トウマ)さんに聞く。
すると、冬真(トウマ)さんが返事をする代わりに、車の後部座席のドアが自動で開けられた。
「いいから、さっさと乗れ!」
まるで押し込むように私を、車の中に入れた冬真(トウマ)さん。
そして、自分も入り込んでくると、すぐに、運転手に向かって、
「とりあえず、車が止められる人があまり通らない場所に移動しろ。」
と命令する。
「かしこまりました。」
と丁寧な言葉が返ってきたかと思ったら、車は発進しだした。
状況を見る限り、これは、冬真(トウマ)さん専用の車?
だけど、今まで、こんな人見たことないよ。
確かに冬真(トウマ)さんのおうちはお金持ちだけど、実家にはあの大きな屋敷なのに、お手伝いさんもいなければ、運転手もいない。
なのに、どうして、今アメリカにいる冬真(トウマ)さんに、専属の運転手がいるの?
何が何やらホント、サッパリの私は、たまらず、側に座っている冬真(トウマ)さんの腕をつかんで、彼の方に身を乗り出す。
「ねぇー、一体、これどういう事?」
なのに彼ったら、「何がっ!」と・・・すっごい恐い口調で返してくるのよ。
恐いのなんのって・・・。
たまらず、ビクっ!と首をすくめてしまう私。
こんなに怒った冬真(トウマ)さん今まで知らないから、ホントに恐くて、私は下を向いて涙までにじます始末。
それを見た冬真(トウマ)さんは、「はぁー・・・。」と何とも長く重いため息を吐くと、右手を私の頭の上にポンと置いた。
その手にも、驚いてしまって、体を震わす私に、「そう・・・びびるなよ。」とすごく悲しい声を出した冬真(トウマ)さんは、両手で私の体に触れてきた。
そーっととても優しく私を抱きしめた冬真(トウマ)さんは、私の顔を自分の顎辺りにコテンと押し当てる。
そして、私の体を支えていない左手で、私の髪を優しくゆっくりと何度もなでた。
「お前に逢うまで、俺がどんな気持ちだったかわかるか?」
突然そんな事言われて、普通驚くよね?
私ももちろん、「えっ?」と驚いちゃって、彼の体に伏せていた顔を少しだけ動かした。
だけど、彼の顔を見るまでは起こす事ができなくて、そのまま彼に髪をなでられた私。
彼はと言うと、その状態でまた、ボソっと言葉を発す。
「俺がいながら、他の男とデートしようとしやがって・・・。
麗美(レミ)にとって、俺って男がどういう存在か、お前ちっともわかってないみたいだから、わからせてやる。」
なんかそのセリフ・・・すごく恐いんだけど・・・。
恐くてまた体が硬直している私。
だけど、彼は、そんな私を自分の体から離すと、真っ直ぐに私を見つめた。
その瞳が、すごく・・・恐かった。
「わからせるって・・・何するつもり?」
たまらず聞いちゃった私。
そりゃ、聞きたくもなるよ。
今まで見たことがないくらい、強くて鋭い眼差しの彼。
彼の瞳をこうやってしっかり見ると、実感してしまう。
彼・・・物凄く怒ってるって!!
だから、余計彼が何をするのか、本当に恐かったの。
私の中でまた、不安が込み上げてきた。
それで、つい、言っちゃったの。
待ってるのも、彼に言われるのも耐えられなかったから・・・。
「私・・・捨てられちゃうの?」
声にならないようなかすれた声。
すごく聞き取りにくいような、そんな声だったけど、冬真(トウマ)さんには聞こえたみたい。
でも、「はぁ?」となぜか、おまぬけな返事が返って来た。
それで、私はたまらず、彼を涙目の瞳でみつめて、大声で言ったの。
「デートも断れないような弱い女、冬真(トウマ)さんいらないよね。
っていうか、これを理由にして、私と別れられて、内心ホッとしてんでしょ。
やっと離れられたって、本当は、清々して・・・。」
メソメソしちゃいけないって、わかってたけど。
いつかこういう日がくるって、覚悟はしてたけど・・・。
でも、やっぱり辛いよ。
冬真(トウマ)さんと、別れるなんて。
もう二度と逢えないなんて、そんなの嫌・・・。
だから、私は、理想の物分りのいい女になんて・・・なれなかった。
泣きながら、冬真(トウマ)さんの腕をつかんで、彼にすがる・・・そんな情けない女になってしまった。
「デートを断らなかった事は、謝るから。
冬真(トウマ)さんが、嫌がる事は、もうしないから。
だから、お願い。
私を捨てないで・・・お願い・・・。」
醜いと思われてもいい。
卑下(ヒゲ)されてもいい。
それでも、私は冬真(トウマ)さんを失いたくなかった。
だって、彼が私の前から消えるって思った時、私の体から生気が失われていくような感覚になったんだもん。
それで、思ったの。
冬真(トウマ)さんに捨てられちゃったら、私生きていけない。
彼がいないと、もう・・・生きていけないって。
だから、どんなに醜くても最低でも、嫌がられても、私は彼の側から離れたくないって思ったの。
彼の腕に抱きついて泣きじゃくる私をしばらく見ていた冬真(トウマ)さん。
少し時間が経った頃、何を言い出すかと思ったら、彼は私ではなくて、運転手に向かってこう言った。
「まだ、場所は、ねぇーのか?」
って。てっきり、私を最低だと罵倒して、別れを切り出されるかと思ったのに・・・なぜ、運転手??
サッパリ、冬真(トウマ)さんの行動が読めない私は、下げていた顔を上げて涙いっぱいの目で、冬真(トウマ)さんを見上げる。
だけど、冬真(トウマ)さんは、私の顔に右手をかぶせると、私の顔をグイと右側に向けさせた。
「こっち、見るな。」
なんで?どうして?冬真(トウマ)さんを見ることも許されないのぉー。
そんなに私・・・嫌われちゃったのぉー。
「冬真(トウマ)さん・・・・。」
って言いながら、さらに私の瞳からは大洪水というべきくらいの涙があふれてくる。
私の顔面を抑えている冬真(トウマ)さんの右手が、ベッチャリ濡れちゃうくらい、私の涙は溢れてた。
水滴の感覚を手で感じた冬真(トウマ)さんは、
「おい、まだか!!」
と今度は声を荒げて、運転手の方を見て叫んだ。
その時、車が急にキュッと停まった。
かと思ったら、ハザードの音が、聞こえて来た。
運転手は素早くシートベルトを解除すると、こちらには振り返らず、ミラー越しで冬真(トウマ)さんと会話をする。
「それでは、御用が済みましたら、お呼び下さいませ。」
彼はそういうと、冬真(トウマ)さんの返事も聞かずに、さっさと運転席のドアを開けると、車から降りていった。
しかも、ロックをかけて・・・。
「なんで?どうして、運転手が降りちゃうの?」
流れていた涙も止まっちゃうくらい驚いている私は、スタスタと車を離れていく運転手を、窓越しに目で追った。
だけど、すぐに私の顔は強い手によって、動かされた。
「俺以外の男を見るな。」
そんな声が聞こえたかと思ったら、すぐ目の前は冬真(トウマ)さんの顔。
すごく整った綺麗な顔だけど、今は・・・恐い。
だって、目だってつりあがってるし、ひたいになんか、怒りマークが見えるんだもん。
だから、たまらず言っちゃった。
「どうして、そんなに怒ってるのよぉー。」
って。すると、冬真(トウマ)さんはなぜか、答えながら、着ていたコートを乱暴に脱ぎだした。
「麗美(レミ)が俺を、信じねぇーからだろ?」
「それ、どういう意味・・・んっ・・・・。」
言ってる側から強引なキス。
再会を楽しむキスでも、愛を誓う優しいキスでもない。
まるで、いたぶりのキス。
息も出来ないくらい乱暴に、唇をかぶせてくる彼に私は、両手をつかって、彼の体をおしのけて離そうとした。
だけど、やがて、その両手は彼の左手1つでまとめておさえこまれちゃって、
「苦しい・・・いや・・・離して・・・。」
そんな言葉で、抵抗するしかなくなってしまった。
でも、そんな言葉なんて、彼にとってなんの抵抗にも値しない。
「それだけ、言葉が出せれるなら、もう少し酸素減らしても平気だろ。」
と意地悪なスマイル付きで言われて、私はさらに彼に襲われる。
そのまま、私は座席へと押し倒され、彼は、首につけていたネクタイを空いている手で乱暴に抜き取ると、それで私の両手首を縛る。
そして、窓際にある手すりにそれをくくりつけ、私は少し上半身を浮かされた状態になった。
「なっ・・・なに?」
驚きと戸惑いで、ビックリの瞳で見た私に、冬真(トウマ)さんは声を出して笑ってた。
呆れた眼差しで見ていた私の顔に、彼の右手がそっと触れた。
彼の考えがサッパリわからない私は、またしても、ビクと体をこわばらせた。
私の素直な反応に、冬真(トウマ)さんは、「お前って純粋だよな。」と言いながら笑うと、私の頬にたくさんのキスをしながら、言葉を私に送ってきた。
「お前、俺を疑っただろ?」
「そんな事・・・な・・・い・・・。」
やっとの思いでそう言った私。
だって、彼のキスは頬から順番に移動して、今は私の胸辺りを移動してるんだもん。
そして、彼の左手は私の右胸をつかんでいじってるし、右手はショーツの中に侵入して、暴れてるし。
完璧犯されている私だけど、やっぱり好きな人だからかな。
嫌がれないの。
気持ちがっていうより、体が。
こんな乱暴にされてるのに、体が正直に反応して、冬真(トウマ)さんの右手をすごく塗らしているのは、下から聞こえるいやらしい音で感じてた。
「嘘つけ。俺を信じきれなかったから、今回のデートの事も俺に言わずに、春(シュン)と未来さんに言ったんだろ!
それに、今だって、勝手に別れるような事言ってるしよ・・・。」
そう言ったあと、冬真(トウマ)さんの右手が乱暴に中につっこまれて、それは上へと浮上する。
私の腰がもちろん、上に少しあがり、私はつるされているネクタイと両足で自分の体を支える事になり、足をガクガクとさせる。
もちろん、彼の左手で迫られている胸も気持ちよくて、たまらず恥ずかしい声を出してしまう。
「俺を信じなかったバツだ。
麗美(レミ)に、おしおき・・・。」
冬真(トウマ)さんは、とても意地悪な笑いつきの声でそういうと、私の左耳に唇をくっつけてきた。
そして、私の耳を、少し熱くなった舌で、まるでしゃぶるように舐める。
「言っただろ?
お前は俺がお前にとってどういう存在か、全然わかってねぇーって。
だから、今からそれをわからせてやる。
二度と、俺を疑わないように、調教してやる・・・。」
舐めながら話すものだから、冬真(トウマ)さんの息が耳にかかって、気が変になりそうになる。
っていうより、もう変になっちゃった。
冬真(トウマ)さんの右手が入っている場所が、熱くドクンドクンと脈打つ感覚になる。
もう、彼の指だけじゃ、おさまらなくなってきた私の体。
私の呼吸が異常な程乱れてくる。
そして、腰から上が宙に浮いてるから、私は両足だけで体を支えていたんだけど、それももう限界で、私の立てていた足はズルズルと伸びていく。
すると、私と彼との距離が勝手に縮むわけで、これまた勝手に彼の指に向かって、私の体は進んだ。
とはいえ、彼の指はキッチリ入っているわけだから、それ以上は先に入らない。
入り口で、彼の手のひらで止まった感じ。
それが、また私に軽い痛みを走らせ、腰を上げて体で答えてしまう。
「かなり感じてきてるな・・・。」
一人涼しい顔でそんな事を言いながら笑っているのは、私をこんなにもいたぶっている張本人の冬真(トウマ)さん。
「ひどいよ・・・私だけ・・・。」
そう言って、冬真(トウマ)さんを言葉でなじるけど、「ふん。」と鼻であしらわれる。
そして、代わりに、冬真(トウマ)さんは、私の唇に、ネットリとした、いやらしいキスをしてくる。
「言ったろ?おしおきだって。
まだ、まだ足りねぇーけどな。」
と言った冬真(トウマ)さんは、もう一度、私に熱いキスをした後、今度は自分の右手を私の体から抜き取った。
詰まっていた感じだったのか、解放される。
と同時に、そこから、彼を感じていた証拠と言うべきものが、だらしなく流れる。
それを感じながら、我に返った私。
急に上半身をさらに起こしてキョロキョロする私に、「どうかしたのか?」と冬真(トウマ)さんの声。
「ヤバイよ。だってこのままじゃ・・・。」
って彼を見て・・・止まりました。
カチーンと、凍ったよ。
だって、彼ったら、あんななんでもない言葉を発したくせに、何をしてたと思う?
自分の指を、舐めてんのよ。
タップリ濡れた指先を、まるで一滴残さずというべきくらい丁寧に舌でさ・・・。
それも、なんともいやらしい舌つきで。
見ているだけでも、気が変になりそうな、その姿。
そんな事しながら、普通に、「どうかしたか?」はないでしょ。
ホント・・・信じられない!!
呆気に取られている私に、「おいっ!」とまだ舐めながら突っ込んでくるし。
「えっ?」と言いつつ・・・そうだそうだ!と我に返った私。
「私の下着とってよ!」
「はぁ?」
って・・・だから、その指を舐めるのは、やめなさい!!って言いたいけど、今はそれどころじゃない。
今、必死でぐっと止めてるからいいけど、早くしなきゃ大変な事になるんだから。
「ねぇー、いいから、早く!」
だけど、冬真(トウマ)さんは、「バカじゃねぇーの?」と言いながら、綺麗なった指先で私の顔に触れる。
さっきまで、彼の舌が堪能していた指。
長くて細くて、それでいて大きな手。
そんな事を考えていると、また気が変になりそうになって・・・。
もぉー、ダメッ!!
って事で、私は思わず叫んじゃった。
「いいから、早く敷いてよ!
タオルでも何でもいいから!
じゃないと、シート汚しちゃう!!」
恥ずかしいから目をつぶって、思いっきり恥も外聞もなく、そう叫んだ私。
その言葉に、やっと彼は理解してくれたみたい。
「そんな事、気にしてたのか。」
と言いながら、笑う彼。
「笑い事じゃないよ。
こんな高そうな車に、シミつけられないでしょ。」
と、つむっていた目を開けて言った私に、
「今更気にすんなよ。
さっき、さんざん流してただろ?」
って・・・鋭い指摘。
でも、私はわかってたもん。
それは、すべて、冬真(トウマ)さんの上着の上でだって事。
彼は今、上半身裸なの。
そして、彼の着ていたブラウスは、私のお尻の下辺りにあったのよ。
さっきまではね。
でも、今は、足を置く場所に落とされてる。
たぶん、さっきので私が、グショグショにしちゃったからだと思う。
だから、彼は下に落としたのかな?って。
冬真(トウマ)さんが気にして汚さなかったのに、私が汚すわけにはいかないでしょ。
とはいえ、情けないけど、我慢できなさそうだし。
って事で、彼に頼んだのに・・・。
「ねぇー、お願い。早く、取ってよ。」
そう言って、彼にお願いした私だけど、「くどい。」といつもの冷たい彼の反応。
そして、さらには、こんな彼の行動が私を襲ってきた。
「これは、俺専属の車だから、気にしなくていい。
麗美(レミ)が俺を求めた証拠だろ?
たくさん、汚せよ。」
なんて言いながら、彼は閉じている私の両足を両手で、強引に開けさせた。
「ちょ・・・待って・・・ダメだって・・・。」
我慢してるのに、そんな事されたら!
焦って、ジタバタする私の体が、数秒後、「あっ・・・。」と甘い声を出しながら止まった。
だって、さっき私の唇を塞いでた冬真(トウマ)さんの唇は、今は別の唇を塞いでたから。
私のもう一つの唇・・・。
ディープなキスをして、私が我慢していたものを、体内へと吸い取ってくれる。
だけど、それはなくなるどころか、増してくるの。
だって、彼が吸い込む音とか、時々触れる舌が、私の興奮をかきたてるから。
おさまっていた奥が、ドクンドクンとうずきだす。
彼の舌でも、彼の指でもない。
彼の体のものだけど、それじゃない、別の『体』。
それが、愛おしくなっている私の体。
私の体は叫んでた。
彼が・・・ほしいって・・・。
いつもなら、こんなにじらさないのに。
今は、全然、そういう気配はない。
私はこんなにも彼がほしくてたまらないというのに、冬真(トウマ)さんは、全くと言っていいほど、その気はなさそう。
なんで?どうして?
そう思った時、彼の言った言葉を思い出したの。
彼はこう言った。
これは、おしおきだと。
そして、こうも言った。
「俺がお前にとってどういう存在か、わからせてやる。」
それってつまり、私にとって冬真(トウマ)さんは、全てにおいてなくてはならない人って事?
こんなに体が感じて気持ちよくなるのも、冬真(トウマ)さんだから。
テクニックとかそういう問題だけじゃなくて、好きな人だから、こんなに感じてしまうんだもん。
冬真(トウマ)さんじゃなきゃ、私はこんなに乱れたりしないし、こんなに欲情しないもん。
そして、その私の性欲を唯一受け止められるのが、冬真(トウマ)さん。
彼の体だけが、私の欲求を受け止められて、私を気持ちよくしてくれる。
この世でたった一つの体。
私は、この体から、離れる事はできない。
彼を心から愛してしまったから。
彼以外の人の体ではもう・・・満足できないんだよね。
彼はそれを私に、身を持ってわからせようとしたの?
頭だけでなくて、体でわかれば、心も体も彼を求めてしまう。
もう二度と、彼への想いに揺れる事はない。
だって、彼がどう思おうが、私は彼から逃れられないから。
心も体も彼の体に縛られてる。
だったら、たとえ嫌われていても、愛をもらえなくなっても、私は彼から離れるわけにはいかないって事だもん。
私は、彼という鳥かごに捕まえられた、幸せな小鳥。
そう思ったら、私の中で、吹っ切れたの。
たまらず、「フッ。」と笑った私。
私の声に、彼の唇は反応して、私の下の唇から離し顔をあげる。
優しく微笑んだ私の笑いで、彼には理解できたみたい。
さっきとは違う、とてもやさしい笑顔で、彼も私に笑顔を向けた。
「やっと、わかったか?
麗美(レミ)にとっての俺の存在価値が・・・。」
そういいながら、彼は私のすぐ近くまでくると、私の頬にふれ、まずは私に熱い熱いキスをくれた。
唇を離した私はすぐに、彼にあまい声でささやく。
「冬真(トウマ)さんが私の全てを満たしてくれる。
心も体も。あなたがいるから、私は生きれるのよね。
だから、あなたは私の体の一部・・・。
決して、離れる事はできない。そういう事でしょ?」
「そうだ。例え、俺がお前を愛さなくなったとしても、お前は俺から離れる事はできない。
愛のない俺の体でもなきゃ、麗美(レミ)は生きれない・・・。」
冬真(トウマ)さんはそう言ったあと、今度は私のおでこに、とても軽いキスをして、私の目をジッとみつめた。
「お前は一生、俺にとらわれる。
そうなるような愛し方を俺はした。
お前を、絶対に手放さない為にな・・・。」
そしてまた、私の耳に息をふきかけながら、キスをする。
その唇はやがて、顎、首と移動して、私の胸で止まる。
「なんでそうしたかわかるか?」
「わかん・・・ない・・・。」
呼吸がまた乱れ始める。
体がまた、ほてりだす。
彼のキス一つで、私の体の中にある彼をスキって想いが、また息を吹き返した。
私がまた、感じ始めた事がわかった彼は、さらに私の性感帯を攻撃してくる。
左指で、私の首の裏をそっといじる。
私が一番感じる右胸を、口に含みながら、舌でなめまわす。
それだけで、私は声をあげて、頭のしんまで熱くなる。
「お願い・・・やめて・・・。」
こんなにいじられたら、もうどうにかなっちゃう。
っていうか、これだけで、いっちゃいそうになる。
だけど、冬真(トウマ)さんは無視して、さらに言葉を続けた。
「お前を失いたくなかったから・・・。」
その言葉に、私は、「えっ?」と言いながら、彼を見る。
乱れた呼吸で彼を見つめる私に、
「そろそろ、俺がほしくなってきたんじゃないのか?」
と軽く笑いながらいうと、また、私の中に右手を入れて、さらに私の呼吸を乱した。
「俺は、一生お前を愛し続ける。
だけど、恐かったんだ。
陸(リク)を愛した麗美(レミ)が、俺を愛してくれた。
嬉しかった。夢見たいでさ・・・。
でも、嬉しいと同じくらい、俺には不安があった。」
「ふ・・・あ・・・ん・・・・?」
「そう。本気で愛していた陸(リク)から、俺を愛したように、俺を愛している麗美(レミ)が、誰かを愛すかもって・・・。
可能性はなくはないだろ?
麗美(レミ)が、相手だと俺、サディスト的なセックスしちまうしな。」
そう言って苦笑いしてるのが、ちょっとかわいかった。
確かにね。
車の中で、こんな縛り付けて、犯そうとしてるんだもん。
普通の感覚じゃないのかもしれない。
でもね、こういう冬真(トウマ)さんを私は好きになった。
サディストが好きってわけじゃないのよ。
こういうストレートな冬真(トウマ)さんって意味ね。
遠まわしに思いを言うのじゃなくて、冬真(トウマ)さんはいつもストレートだから。
だから、今も、こうやって、いたぶるような感じで私に思い知らせてるのよね。
俺しかお前は愛せないんだって。
俺なしじゃ生きられないだろ?って。
そういう、飾らない彼が、私は本当に好きだった。
だけどさ・・・。
さっきの冬真(トウマ)さんの話聞いてて、「ん?」って思ったんだけど。
つまり、私が冬真(トウマ)さんに執着しちゃってるのは、冬真(トウマ)さんがそういう愛し方をしたからなんでしょ?
で、そういう愛し方をしたのは、私が他の人を好きになるのが恐かったから?
って事はさ、結局、冬真(トウマ)さんも、私を疑ってたって事でしょ?
なのに、私だけおしおき??
そんなの・・・ずるい、ずるいぃー!!
なので、ここで、交渉開始!!
「ねぇー、冬真(トウマ)さんも私の愛を疑っていたわけでしょ?
じゃあ、私もしたい。」
いきなりそう言った私に、「何を?」とすました顔で聞いてきた冬真(トウマ)さんに、私はニッコリ顔で言ったの。
「冬真(トウマ)さんに、おしおき。」
すると、意外な答えが・・・。
「ああいいよ。」
って。てっきり、「ふざけんな。」って言われるかと思っていたから、嬉しくなった私は、冬真(トウマ)さんの方に少し身を乗り出した。
「ホントにホント?」
「ああ。」
と答えた冬真(トウマ)さんだったけど、そのあと、異常な程のニッコリスマイルをしたかと思えば、こんな事を言い出した。
「その代わり、俺のおしおきのあとでな。
力が残っていたら、今度は俺がおしおき、受けてやるよ。」
「それって・・・。」
ちょっと、あせる私に一瞬笑いかけた冬真(トウマ)さんだったけど、すぐにその笑いは終わる。
そして、今度は少し真剣な顔つきになったかと思ったら、私に自分の中で溢れている私への思いをぶつけてきた。
「俺が、どれだけお前に触れたかったかわかるか?
運転手のヤロー、とっとと停まればいいのに、チンタラしやがって。
俺はお前を抱きたいのに、必死で我慢したせいで、お前に誤解されて、余計ゴタゴタするは、お前は泣かせるは・・・。
たっく、アイツ、首にしたろっか!」
首って・・・。
今は簡単に路上駐車もできないんだから。
それに、こんな事しようとしてたんなら、なおさら、その辺じゃ無理でしょ。
歩行者があまり通らないところって、なかなか見つけるの大変だったと思うよ。
ちょっと、運転手さんの肩をもちつつ、私は、冬真(トウマ)さんに聞いたの。
「ねぇー、そういえば、あの運転手なんなの?」
やっぱり、気になるよね?
ということで、もっともっと、聞きたい事があったから、冬真(トウマ)さんに質問攻めしちゃったの。
「さっき、この車、冬真(トウマ)さんの車とか言ってたでしょ?
どういうこと?
冬真(トウマ)さんに、こんな車と運転手なんて居なかったじゃない。
それに、第一、冬真(トウマ)さん、なんで戻ってきたの?
まだ、戻ってくるまで、2ケ月あるじゃない。
それに、デートの当日で、タイミングよすぎだし。
あんな所に出くわしたのも、よく考えたらおかしいし。
それに、あと、喧嘩だよ!
なんで、あんなに強いの?」
すると、冬真(トウマ)さんは、「教えてやるよ。」と、色っぽい声でいったかと思ったら、すぐに、こんな意地悪な事をいう。
「その代わり、俺の声が聞こえるだけの余裕があればだけどな・・・。」
って・・・。
それってつまり・・・。
今からするって事?
それは、嬉しいけど、やだ。
だって、知りたいんだもん。
やりながらなんて、私が聞けるわけないでしょ?
冬真(トウマ)さんのエッチは、そんな浮気出来ちゃうほど余裕なんてないよ。
失神しないように頑張るだけで、大変なんだから。
だから、嫌だったの。
このままエッチしちゃったら、あやふやになるのは、目に見えてたから。
「ねぇー。お願い。待ってよ。
話してからにして。」
って真剣に言ったら、冬真(トウマ)さんはなんと私の腕を解放してくれた。
という事は、私の意見を受け入れてくれたって事?
うれしいけど、ちょっと意外かも。
冬真(トウマ)さんなら、おかまいなしにやっちゃうと思ったから。
でも、いいや。
ってあまり、気にしてなかったというか、疑わなかったのよね。
それが、浅はかだったよ。
安心したのも束の間。
私の両手からネクタイが取られるかと思ったのに、何と冬真(トウマ)さんは、私の体を乱暴に後ろ向きにクルッと回転させると、またネクタイを壁に引っ掛けしっかりと結ぶ。
しかも、今度は手と手すりとの隙間がないくらいキッチリ。
つまり、私は両膝をついて立ってる感じ?
そして、胸をはだけさせられた状態で、窓側を向いてる。
ここは、人通りがないからいいけど、こんなとこ人が通ったら、ビックリだよ。
だって、窓から胸をほりだした女性が、両手を縛られて、外に向いてるんだからね。
っていうか、これって、つまり・・・。
話す気・・・ないよね?
「冬真(トウマ)さん、待ってって・・・・。」
って言いながら、顔を後ろに向けて振り返ろうとしたけど、また下に舌を感じた私は、振り返るのをやめる。
「いや・・・やめて・・・・。」
冬真(トウマ)さんは、仰向けに寝そべって、私の両足の間から顔をのぞかせ、私の下をなめてた。
つまり、私がこのままで、下を向けば、そこには彼の顔があるってわけ。
しかも、さっきよりも・・・リアル。
何がって・・・彼が私を舐めている図よ。
だって、彼の舌がしっかり見えるし、さっきよりも彼の吐く熱い息が、敏感に感じれちゃう。
一体、彼はどれだけの技を持ってるのよ!
って思っちゃうくらい、私は彼のエロさに翻弄されてた。
もちろん、あっという間に、彼の狙い通り、私はまたうずきだす。
さっきまでとは、レベルが違う。
彼がほしくてほしくてたまらなくて、気が変になりそうになる。
「あっ・・・ダメ・・・。」
そんな声をあげながら、私の体はドンドン熱くなる。
体だって、激しく動かしてるわけじゃないのに、汗がにじむくらい熱くて、もう頭が変になりそう。
冬真(トウマ)さんには、わかっていたはず。
私が、冬真(トウマ)さんがほしくてたまらなくなってるって。
だけど、彼は相変わらず、涼しげな顔で、私をいじるだけ。
耐え切れなくなった私は、「ねぇ・・・お願い。」と囁くように言ってみたけど、冬真(トウマ)さんは聞こえないフリをする。
絶対に聞こえてるはずなのに・・・とぼけてた。
手が使えたら、彼の顔に触れてお願いするんだけど、今はつかえないし。
かといって、これ以上は実は声が出ないの。
もう、こうして耐えているのがやっとで、声すらもでないくらい感じまくってるから。
だから、仕方なく私は体を使う事にしたの。
しびれて感覚が失いかけてきた足を移動させる。
両方は無理だから、右足だけを少し後ろにずらした。
すると、彼の口から、私の体が少しずれる。
と同時に、「あっ・・・痛っ・・・。」と口にしちゃった私。
体勢を移動させたせいで、キツく縛っていたネクタイが、手に食い込んだ。
それを悟った冬真(トウマ)さんは、体を起こすと、私の後ろから両手を出し、私の手を見る。
「バカ!ムチャすんなよ。」
そういいながら、少し傷になって血がにじんでる所を舐める彼。
彼の舌。
彼の唾液が私の肌と触れる音。
それを聞いていたら、ダメ・・・。
もう、我慢できなくなっちゃった。
私は、自分の手に触れている彼の舌を強引に横から奪い取ると、彼に舌を絡ませるこれ以上はないくらいのディープなキスをした。
もちろん、彼もそれに答えてくれて、どんどん私の欲求は加速していった。
唇を離した私は、信じられないくらい呼吸が乱れていた。
というより、悶(モダ)えてた。と言った方があってるかも。
そんなちょっと危ない状態の私は、唇を離した瞬間、呼吸を乱しながら言ったの。
「もう・・・じらさないで・・・。」
だけど、冬真(トウマ)さんは、「忘れたの?これは、おしおきだって。」と言って意地悪な笑いをする。
「どうしたら・・・どうしたらいいの?」
なぜこんな事を聞くのかって?
だって、冬真(トウマ)さんの目が言ってるんだもん。
何かをすれば、イカせてやるよ!って。
だから、自ら聞いちゃった。
彼の意地悪を聞く前に自らね。
それが、かなりあせってるというか、私の我慢の限界にきてるとわかったのかな?
ちょっと、嬉しそうな彼は、私の耳元に口を持ってくると、こう言った。
「俺にどうしてほしいか、言えよ。」
って。
「えっ?」
驚いて彼を見た私に、彼は、舌を出しながら熱いキスを顔のあちこちにしながら、こんな悪魔のささやきを言ったの。
「俺に・・・どうしてもらいたい?
何がほしい?」
そんなの・・・言えるわけないじゃない。
恥ずかしくて、私死んじゃうよ。
だけど、きっといわないと、冬真(トウマ)さんはしてくれないって、わかってた。
わかっているだけに、私は・・・覚悟を決めたの。
でも、大きな声ではいえない。
密室だけど、それでも、絶対に彼にしか聞こえない声でいいたかった。
だから、私は彼にお願いしたの。
「耳・・・貸して・・・。」
そういうのが、もうやっと。
気が遠くなりそうな私は、トロンとした瞳で彼を見る。
そんな私のひたいに彼は手で触れると、優しくおでこをなでた。
「かなり、辛そうだな。
そろそろいじめるのも、やめてやるか。」
そう言った彼は、「ほら。」と言ったかと思ったら、私の口元に耳を沿わせてくれた。
私は、目の前にある彼の耳に向かって言ったの。
恥ずかしくて、他の人には絶対に言えない一言を。
すっごく小さな声だったと思う。
でも、言った途端彼は、「プハ。」と噴出し笑いすると、私の顔を最高の笑顔で見た。
そして、私に軽いキスをしたあと、こう言ったの。
「麗美(レミ)から、こんな言葉が聞けるなんてな。
たまには、いじめてみるもんだな。」
それを聞いて、たまらず、嘆いちゃう私。
「ひどいよぉー・・・。」
って。そんな事を言っていると、彼の両手が私の腰に忍び寄ってくる。
直立だった私の体が少し前かがみになる。
後ろからは、まだ「ククク。」と笑っている彼の声が聞こえてた。
「もう・・・。」
と怒りながら、後ろを振り返ろうとしたその時。
私の体に熱い物が入り込んできた。
「んっ・・・・あっ・・・・。」
ずっとずっとほしかった物。
それが、私の体の中に入る。
まるで、生きてるみたいにどんどん進んでそして、そこで暴れる。
彼の左手が、生き物が入っている入り口付近をさらにいじり、私はドンドン気持ちよくなる。
彼の右手は、私の顔に触れ、苦しさと痛さと気持ちよさで上下に動く私の顔を固定させ、唇にキスの嵐を注ぐ。
彼が説明してくれるわけないってわかっていたけど、もしこれで言われても、やっぱり聞けないと思った。
彼と約1ケ月ぶりの交わり。
彼にもう、数え切れないくらい抱かれたのに、思っちゃう。
彼の体って、こんなんだったっけ?って。
こんなに力があったっけ?とか、こんなにしびれる感覚だったっけ?とか・・・。
冬真(トウマ)さんは、その時の感情で、セックスが大きく変わる人だと、彼を知って知ったんだけど、今の彼は、また知らない一面だった。
淫(ミダ)らに乱暴に私を犯す彼。
もっともっと、新しい彼を知りたかった。
知り尽くして、堪能したかったのに・・・。
その思いは、無残にも消えてしまった。
だって、彼、全然イカないんだもん。
いくら私が締め付けても、
「麗美(レミ)、もっとイケよ・・・。」
っていながら、全然余裕で。
いくらキツくしても、彼は気持ちいい程度で止まるみたいで、その先がなかなか来なくて。
なのに、彼の動きは激しくなる一方で。
「まだ・・・・?早く・・・・。」
と催促してみたけど、
「いいから、もっと乱れろよ。」
と余計にいたぶられて。
何十分してたかわからない。
私の中では、何時間も犯されてたっていうくらい、長くて・・・。
それから、しばらくして、私は意識が飛んだ。
彼のイク姿を見届ける前に・・・。
それは、残念だったけど、私は幸せだった。
彼の、この上ないくらいの嫉妬と、この上ないくらいの激しいセックスを体験できて、私は本当に幸せだった。
「ん・・・。」
そんな声を上げて、私は目を覚ます。
すごく幸せな夢を見ていたのか、心が穏やかで、潤ってる感じがする。
一体、自分は今まで何をしていたのか。
今、どこにいるのか。
とっさにわからない私は、目を開けたまま、しばらくボーっとしていた。
少しずつ頭が動き出して、ここはどこかが、まずわかった。
「ここ・・・家の寝室?」
私は、上半身を起こして、ベッドに座る。
そして、ユックリ頭を動かして、周りを見ても、うん。
ここは、いつも寝ている冬真(トウマ)さんとの寝室。
あれ?私、さっきまで、どこで何してたっけ??
そう思って、ずっと記憶をさかのぼっていくと・・・。
そうだっ!!冬真(トウマ)さんが現れてきて、私は車で彼と移動してて、そこでエッチをして・・・。
で、気付いたらここ?
だけど・・・。
周りをもう一回見渡してみても、誰もいない。
私が寝ているベッドを触ってみても、私がいるところ以外、しわ一つない。
ということは、ここに彼が寝た形跡はないという事。
って事は、私が体感した事は、夢だったの?
嘘っ!冬真(トウマ)さんは、ここにはいないの?
あんなにわかりあえたのに。
お互いの体が溶け合っちゃうくらい愛し合ったのに・・・。
全部、私が見た都合のいい夢だったの?
「嘘でしょ・・・。」
そんな言葉を力なく吐いた私は、自分の口を両手で抑える。
その時、フッと私の手首が、視界に入る。
私は、口に持っていっていた手を目の位置まで移動させて、自分の手首を見る。
見て・・・たまらず、笑っちゃった。
というより、安心した笑い。
「よかったぁー・・・夢じゃなかったぁー。」
自然と出た言葉だった。
だって、私の手首には、ちゃんと跡が残っていたから。
冬真(トウマ)さんと激しく愛し合ったという、何よりもの証拠が。
手首についている傷がこんなに愛おしいと思った事なんて、今までなかったかもしれない。
たまらず、私はその傷にキスをする。
その時、遠くで、扉がしまる音がした。
この音。もしかして??
私は、たまらず、ベッドから降りる。
冬真(トウマ)さんが、バスローブを着させてくれていたから、私はそのままの姿で、部屋を出る。
そして、リビングに姿を現すと、ちょうどキッチンの冷蔵庫から、水を取って、足で冷蔵庫の扉を蹴っている冬真(トウマ)さんの姿と出くわした。
バスローブを腰でくくって、上の部分は脱いで腰辺りでたれてる。
上半身裸状態で、首にはタオルをかけ、片手で濡れた髪をふく。
そして、もう片方の手で、今抜き取ったウオーターを口に運んでる。
私の姿に気付いた冬真(トウマ)さんは、ペットボトルから口を離すと、私の方に目を向ける。
そして、優しく笑いかけると、
「起きたか?」
なんて言ってくる。
夢だと思っていたから、ここに彼がいるなんて夢見たいで。
私は、答えるよりも前に、彼に向かって走ってた。
彼は、素早くペットボトルをテーブルに置くと、私を受け入れる体制をとる。
そして、飛び込んできた私を、力強い腕でしっかりと抱きとめてくれた。
彼の顎あたりに、顔をすりよせてくっつく私に、
「麗美(レミ)?どうかしたのか?」
とちょっと心配そうに言ってくる彼。
だけど、私は何も言わずに、そのまま彼にくっついた。
しばらく抱きついていた私だけど、「ベッドいこっか。」という彼の言葉と同時に抱きかかえられ、私はまた寝室へと運ばれた。
私を寝かした彼は、てっきりそのまま私を襲うのかと思いきや、私の横にゴロンと横になる。
不意をつかれた私はたまらず聞いちゃった。
「なんで、襲わないの?」
って。それに対しての答えは、実に冬真(トウマ)さんらしい言葉だった。
「襲ってほしいのか?」
「うん。」
って言いかけて、慌てて口を両手で抑える私。
その姿に、彼は声を出して笑いながら、「挑発すんなよ。」と言って私の頭をポンポンと叩く。
今の言葉・・・ひっかかるよね?
「ねぇー、今のどういう意味?」
だって、別に挑発したつもりはないから。
すると、彼は、ちょっとだけ困った顔をする。
「さっきひどい抱き方したからさ。
お前の体の為に、今は我慢してんだよ。
だから、こうやって、横になっててほしいし、手を出さないようにしてんだからさ。
俺が我慢できなくなるようなセリフと、態度は今はすんなよ。」
そんな事、気にしてくれてたんだ。
確かに、さっきのは、ちょっとキツかったかな?
今もまだ、腰からしたが感覚が麻痺してるような感じだし、何より、足が筋肉痛みたいに痛いし。
それに、もちろんあそこもジンジン痛いというか、すごくへんな感じはしてる。
だから、私も抱かれたいけど、体の事を考えたら、今はやめておいた方がいいような気はする。
という事で、彼の提案に乗った私。
「わかった。でも・・・。」
ちょっと、最後は悲しい声出しちゃった。
だって、その先は言えないことに気付いて。
彼は、態度も慎(ツツシ)めといったよね。
という事は、このあとの言葉も言っちゃいけないと思って、やめたんだ。
だけど、私の悲しそうな声に、「でも、何?」と彼は聞いてくれるから、ダメもとで言ったの。
「抱きつくのはダメ?
冬真(トウマ)さんに触れちゃ・・・ダメ?」
すると、彼は、「しょうがねぇーな。」とため息交じりの笑いをすると、私を自分の方によせて、抱きしめてくれた。
嬉しくて、私は、彼の胸にピタと顔をくっつけた。
同じ速さで打つ彼の鼓動が、とても心地よかった。
「ねぇー、さっきの質問に答えてよ。」
「さっき?」
「色々聞いたでしょ?
車の事とか、喧嘩のこととか。」
「ああ。そうだったな。」
彼はそう言ったあと、私の髪にふれながら、口を開いた。
「あの車は、俺が秋さんの後継者になる事が正式に決まってから、付いたもんだ。
俺が心臓外科医になり、落ち着いたら、俺は秋さんの後を継ぐ。
そうと決まれば、扱いは色々と変わってきてな。
まずは、こっちにちゃんと戻ってくるまでは、自分で運転するなと言われたよ。」
「え?なんで?」
「体的にも疲れてるから、運転はまかせられない。ってな。
こっちにちゃんと戻ってきて、無理ない生活をするようになってからにしろ。って言われた。」
「ってことはさ・・・。
もう、随分前からあの運転手さんが冬真(トウマ)さんに付いてたって事?」
「ああ。」
「どうして、今まで言ってくれなかったの?
私、全然気付かなかった。
タクシーで移動してるのかと思ってたよ。」
「お前に、変な気を使わせたくなかったから。」
「変な気?」
「そう。俺が、そういう扱いを受けてると知ったらお前また、気にするだろ?
そんな人と私はつりあわない。とかってさ。
そういう悩みをお前にさせたくなかったから。
それに、こっちに戻ってきたら、なくなることだったし、まーいいかな?って思ってたんだけど、バレちまったら、仕方ない。
そういう事だから、あと2年半はあの人に俺の命任せるから、麗美(レミ)もそのつもりで。」
なるほど・・・。
そういう事だったのか。
それにしても、ホントに気付かなかったよ。
そう思って、フッと頭によぎった。
もしかして、喧嘩が強いのもそういう理由?
って事で、早速聞いて見た。
「ねぇー、喧嘩が強いのも、後継者になるから?」
だけど、「喧嘩と後継者は関係ねぇーだろ?」と笑われた。
「じゃー、どうして、あんなに強いの?
っていうか、昔から強かったの?
それとも、今回向こうで習ったの?」
「昔からだよ。」
彼はそういうと、向こうでの過酷な環境を語った。
「向こうは日本人ってだけで、金持ちって思うからね。
安全な場所はいいけど、一歩踏み違えるととんでもなく治安の悪い場所へと迷い込む。
人を助ける為にそういう場所に、行かないといけない時だってあるしね。
それで、俺が向こうに10歳で行った時、まずやらされたのが、護身術を身につけることだった。」
「護身術?」
「そう。ただの武道とかじゃなくて、あくまで身を守る為のものだ。
相手を傷つけるものじゃない。
だから、俺言っただろ?
俺に向かってくる者に容赦はしないって。
向かってきた者の攻撃をかわし、一撃で倒す。
それが俺の習った護身術。
だから、手加減なんてできないんだよ。
向かってきたら最後、誰であろうと、体を地につけさせてもらう。
アメリカに留学したら、誰でもまずそれをさせられる。
いわば、あのスクールの掟みたいなもんだな。
だから、オヤジたちはもちろん、春(シュン)も聖(アキラ)もタナバタたちも、身につけてる。」
「そうだったんだー。
なんか、知らない事づくしで、ビックリしちゃった。」
「俺もビックリしたよ。」
「ん?」
「お前が、大学の医大生に告られていたなんてさ。
しかも、あんなバカっぽいやつに。」
「それは・・・。」
と赤面したけど、ハタ!と思いました。
重大な事に気付いたの!
「そういえば、なんで冬真(トウマ)さん、その事知ってるの?
っていうか、どうして、今日本にいるのよ?
なんで??」
「お前、ホントにわかんねぇーのかよ。」
「うん。」
「その鈍感さで、お前きっと、あの北条ってやつが、アタックしてきてたのを、今まで気付かなかったんだろ?
ちょっと、アイツに同情するな・・・俺。」
「へっ?」
とマヌケな声を上げる私のオデコに彼はふれると、優しくキスをしてくれる。
触れないって言ったくせに、自分からして大丈夫なのかな?と、ちょっと心配しちゃった私。
「春(シュン)から何日か前に、連絡があったんだ。」
「何て?」
「何て?って、決まってるだろ?
お前が告られて、困ってるって。
それと後・・・。」
「後?」
「『何か、思い悩んでるみたいだった。
お前に対して、何かひっかかる思いがあるみたいだぞ。
いい機会だから、戻ってきて、ちゃんとわだかまりを解消したらどうだ?』
ってな。
ホント、アイツは、見た目と違って、世話好きだからな。
それで、急遽、戻ってきたってわけ。」
「私のために・・・戻ってきてくれたの?」
「まーな。麗美(レミ)を好きになる、バカな男を見てみたくなってさ。」
「それ、どういう意味よ!」
「言葉のマンマだよ。」
なんか、私がろくでもない女って言われてるみたいで、ちょっとおもしろくない。
まー、けど、心配して帰ってきてくれて、撃退してくれたから、よしとしちゃおう。
今の私は、超ご機嫌だから。
ニコニコしながら、冬真(トウマ)さんに抱きつく私に、
「けなされたのに、笑ってどうすんだよ。」
と呆れられた。
でもいいの。
そんなこと、どうでもいいくらい私、幸せだから。
こうして、冬真(トウマ)さんがいてくれることが、本当に嬉しかったから。
ギューっとくっついている私の髪を優しくなでていた冬真(トウマ)さんは、急に、「なー。」というと、側にあったテーブルから、あるものを手を伸ばして取り、私の目の前に差し出した。
それは、ブルーの何もかかれていない封筒だった。
私は、彼から体を離すと、それを左手で受け取る。
「何・・・これ?」
首をかしげながら、光にすかしてみるけど、見えない。
私のそのしぐさに、
「そんな事しないで、開けてみろよ。」
と笑いながら言ってる彼。
「う・・・ん。」
気のない返事をしながら、その封筒を開ける。
中には何か太い冊子が入ってる?
それを、指先でつまんで、ユックリと引きずり出す。
その冊子を自分の方に向けて表紙を見て、思わず、「えっ!」と驚きの声をあげちゃった。
そして、そのあと、冬真(トウマ)さんをビックリの目で見る。
「こ・・・れ・・・・。」
そう言った私に、冬真(トウマ)さんは、ニッコリ笑うと、
「そう。俺の通ってるスクールのパンフレットだ。」
といいながら、私の手からパンフレットをひったくる。
そして、タグがつけてあるページを開けると、私に向かってそれをみせた。
「ここに書いてあるけど、麗美(レミ)にはこのスクールに入る為に、4科目の試験を受けてもらう。
4回生までの知識が問われる。
試験を受けるのは、来年の3月だ。
それに受かれば、麗美(レミ)は向こうで、5回生からの勉強が受けられる。
俺たちみたいに、特別指導じゃなくて、今までどおりの普通の授業が受けれるから、安心しろ。
試験までの3ケ月、大学の勉強をこなしながら、試験勉強は辛いかもしれないけど、頑張れるよな?
俺も、出来る限り協力するから。」
って言われるけど、
「ちょ、ちょっと待ってよ!」
と叫んで止める私。
今の、どういう事?
いきなり渡された封筒から出てきたのは、冬真(トウマ)さんの通ってるアメリカの医者育成所とも言うべき場所のスクールのパンフレットでしょ?
それで、なんだっけ?
そうそう!編入がどうのこうの言ってたよね?
一体、誰がどこに編入??
ダメだ・・・頭がついていかない!!
完全にパニックになった私は、目が泳ぐ泳ぐ。
そして、アタフタして落ち着きがない。
私の様子に、完全に困惑していると感じた彼は、
「落ち着けって。」
と笑いながらいうと、パンフレットをひとまずベッドの脇に置く。
そして、私の顔に自分の顔を近づけてきて、お互いの瞳がすごく近い場所で、交じり合った。
「麗美(レミ)。天(タカシ)と一緒に、アメリカに来てくれ。」
「えっ・・・・。」
チョット待ってよ。
今の・・・聞き間違い?
たまらず、私は彼の腕をつかんでしまう。
「今、なんて言ったの?」
再確認する私に彼は、「だから・・・。」というと、私に軽いキスをして、優しく微笑む。
「向こうで一緒に、残りの2年を過ごしてほしい。
向こうで一緒に、医者になろう?」
「本気・・・なの?」
戸惑いながらそういう私に、
「ああ、本気。」
と普通に返してきた彼。
だけど、私は普通じゃいられなかった。
色んな思いがあって、私は下を向いて黙って考え込んでしまった。
そんな私の頬に、暖かい物が触れる。
その暖かさに、私は自然と伏せていた顔を上げる。
「今、何を思ってる?」
「それは・・・。」
「言えよ。何?」
そう言われても言いにくい。
なんか、彼を責めるみたいで。
だけど、「ほら。」とせかされるから、私は仕方なく口にしたの。
「どうして、急にそんな事言い出したの?」
「ん?」
きょとんとして聞いてきた彼に、私はさらに付け加えた。
「だって、今まで、私がいくら連れて行って。って言っても、ダメだって言ってたじゃない。
なのに、どうして今、そんな事いうの?
なんで?どうして急に気が変わったの?」
不思議でならなかったのに、冬真(トウマ)さんったら、ため息を付くのよ。
「とうま・・・さん?」
今度は私が彼に聞く。
だって、今、ため息つくようなこと、私言ってないでしょ?
何が何だかわからなくて、彼に訴える眼差しで聞いた私。
すると、彼は、「お前って、ホント俺の気持ちわかってねぇーよな。」と面倒くさそうに力なくボソと言った。
「どういう・・・意味?」
さらに聞いた私に、彼は横に向けていた体をあおむけに体勢をかえると、天井をみあげる。
視線をずらされた私は、自分の体を動かして、彼の顔を覗き見する。
また、彼と瞳が重なった。
私の目を見た彼は、私の髪を乱暴になでると、私の顔を自分の胸に乗せ、自分の顔を見せないようにした。
「急じゃねぇーよ。前から思ってた。
お前を連れて行きたいって。」
「前から?」
そう言った私に、今度は彼が問題を出してくる。
「俺が、アメリカに行って、1ヶ月足らずで帰って来て、それから約1年ずっとそんな生活をしてたのは、本当に日本にいる患者の為だと思ってたのか?」
「えっ?」
私はそう言ったあと、「違うの?」と彼に聞く。
すると、彼は、急に私の方に顔を向けた。
「患者は、ここに戻って来る口実に過ぎない。
戻って来てた本当の理由は、お前に逢いたかったから。
向こうに行って、たった2日で、俺はお前に逢いたくてたまらなくなった。
でも、必死で耐えたんだ。
だけど、1週間ももたなかった。
体と心がお前を求めるんだ。
気が変になりそうだったよ。
いっそうの事、俺の頭からお前の記憶がなくなればいいのにとさえ思った。
それくらい、お前に逢えない事が、俺にとって、この上ない耐え難い苦痛だったんだ。」
冬真(トウマ)さんは、そういうと体を私の方に向けると、私をまた強く抱きしめた。
「あの大学を卒業するって事には、いろんな意味が込められてる。
だから、麗美(レミ)を連れて行くわけにはいかない。って思って、ずっとずっと我慢してた。
俺が、1ケ月に1度日本に戻ってきたらいい事だからと、自分に言い聞かせて。
でも、年を重ねてくるごとに、俺も向こうでの勉強に必死で、なかなかこっちに戻って来る時間もなくてさ。
正直、もう限界なんだ。
毎日が地獄っていってもおかしくないくらい。
まるで、生き地獄でさ。
そんな時だったんだ。今回の北条の事が起こったのは。
正直悔しかったよ。
俺が知らない時間の麗美(レミ)を知ってるアイツが妬(ネタ)ましくて、強く嫉妬した。
陸(リク)には悪いけど、これ以上麗美(レミ)と離れていたくないんだ。
麗美(レミ)がどうしても、あの大学を卒業したいというなら、仕方ない。
だけど、出来ることなら、俺についてきてほしい。
一時も離れたくないんだ。
お前の全ては、俺がこの目で見ていたい。
ダメ・・・かな?」
確かに冬真(トウマ)さんの言う通り、私があの大学を卒業する事は、大きな意味を持つ。
陸(リク)が果たせなかった事を果たす重要な役割が。
私は、それをするために、あんなレベルの高い大学を受けたんだから。
ここからも、遠いのに、通ってるんだから。
それを思えば、冬真(トウマ)さんの申し出は、涙を飲んで、断るのが普通よね?
だけど、陸(リク)ごめん。
私には、それはできない。
だって、私自身も、彼と一緒にいたいから。
いつも、抱き合える距離に居たい。
いつでも、交じり合える近さに居たい。
そう思ってるから・・・。
許してね、陸(リク)。
私は、また、あなたではなく、冬真(トウマ)さんを選ぶよ。
誰よりも大切で、愛しくてたまらない、冬真(トウマ)さんを・・・。
「冬真(トウマ)さん。」
私はそういいながら、彼の腕から抜け出ると、今度は私から、彼に抱きついた。
そして、彼に軽いキスをプレゼントする。
「れ・・・み?」
私の行動に驚きを見せる冬真(トウマ)さん。
私はおかまいなしに、ダメだといわれていたのに、彼についついディープなキスをしちゃって。
でも、彼は私に返して来る事はなかった。
ただ、私の行動に身をゆだねていた。
私は、熱いキスを送ったあと、彼から唇を離した。
そして、彼がこう言ってくれた時、すでに私の中で決まっていた言葉を口にしたの。
「私も冬真(トウマ)さんと、もう離れたくないよ。
だから、行く。連れて行って。」
私の答えに冬真(トウマ)さんは、「そっか・・・。」ととても嬉しそうに言うと、私をベッドに仰向けに寝かすと、私の上に覆いかぶさる。
「あと3ケ月は、我慢か・・・。
それも、辛いな。」
なんて贅沢を言い出す彼。
「たった、3ケ月じゃない。」
と言って、彼のホッペをつねっていじめるけど、
「俺にとっては、長い3ケ月だよ・・・。」
と言われちゃった。
私にとっても長い3ケ月よ。って本当は言いたかった。
だけど、飲み込んだの。
だって、なんか彼だけがそう言ってたら、彼の方が、私を好きっていう度合いが強く感じない?
きっと、私の方が上なんだろうけど、今だけはね・・・。
そう思うでしょ?
そう思いたいから、だから、今はいーわない。
私も同じ気持ちだなんて、口がさけても言わないわよ。
って事で、あくまで、冷静を装う私。
そんな私の左手を、急に冬真(トウマ)さんはつかむと、私たちの目の前に持ち上げてきた。
いきなりなにするの?と思った私は、その思いのまま彼に聞いてた。
「何?」
って。すると、彼は、「お前、気付かねぇーの?」と言われてさ。
「何が?」
と言いつつ、上げられた自分の左手を見ると・・・。
「あれ?何・・・これ??」
知らない間に、薬指に指輪がついてた。
ちょっと、高そうな指輪。
私こんなのつけてなかったよね?って事は・・・。
私は、ゆっくりと彼に目を向けた。
彼のこの余裕の笑いを見てたら、確信したよ。
「これ、冬真(トウマ)さんが?」
すると、彼は、私の左手を自分の口元に近づけてくると、薬指に軽くキスをした。
「言葉はまだ言えない。
俺が、陸(リク)との夢を叶えて、心臓外科医になって、それでもって、麗美(レミ)が医者になる。
それまでは、言わないって、俺は4年前アメリカに発つ時に、陸(リク)と約束した。
だから、今は、言いたくても言えないんだ。
その代わりに、これを麗美(レミ)にやるよ。
この指の予約って感じだな。
そこを飾るのは、俺だから。
あと2年は、その指輪をつけて、我慢しててくれ。」
つまり、それって、結婚しようって言ってくれてるんだよね?
それにこの指輪って、婚約指輪でしょ?
何が、言葉は言えないよ。
しっかり、言ってんじゃない。
冬真(トウマ)さんにしては、ありえない、回りくどい言い回しだけど。
うん、ちゃんと伝わったよ。
冬真(トウマ)さんの愛も、冬真(トウマ)さんの本気も。
そして、私との未来をどう考えていてくれているかも・・・。
全部、ぜぇーんぶ、伝わったから。
私は、彼からもらった指輪を改めてみつめる。
それが、すごく愛おしくて、思わず私もキスをする。
そのしぐさに、冬真(トウマ)さんは、「何やってんだよ。」って言いながら笑うと、私の顎に右手で触れてきた。
「キスする場所、間違ってないか?」
ホント、挑戦的なんだから。
だけど、この俺様スタイルが・・・ゾクゾクするのよ。
彼の強さがすごく現れていて、私を虜にさせる。
まるで、毒みたい。
私の感覚を麻痺させる毒。
そして、また彼を愛してしまう毒。
その毒の回りは早い。
あっという間に、私の体は、毒で充満し、そして、もっと毒をせがむ。
一番、効力のキツイ毒を。
私の身も心もつかんで離さない、冬真(トウマ)という最上級の毒を。
彼は、惜しみなく、私の体にあふれんばかりに、注ぎこむ。
激しく強く。
この世にたった一つしかない、私を壊すくらい強い毒を、何度も何度も・・・。
「体・・・いたわってくれるんじゃ・・・なかったの?
さっきより・・・はげしい・・・よ・・・。」
部屋中に響きわたるくらいの叫び声をあげながら、私は彼に抗議する。
だけど、やっぱり彼は、最高の毒を持つ梅澤冬真(トウマ)。
もちろん、返って来たのは、彼らしい言葉。
「俺・・・そんな事・・・言ったか?」
言ったじゃない!って言い返したかったけど・・・。
もういいよ。そんな余裕ないから。
彼の毒を受け止めるだけで、精一杯。
というか、それに満たされたかったの。
何も考えずに、彼の愛だけを、体で堪能したかった。
体で彼からの愛を受け取りながら、私は幸せをかみしめてた。
彼との3ケ月後の未来を夢見て。
わずか、2ケ月後に、人生最大の選択を強いられるとも知らずに。
私は、この愛に溺れていたの。
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