2007/11/24


17          〃      最終章
奥に入っていくと、もう一つ部屋があった。
その扉を開けると、中に大きなベッドがあって、そこには彼が眠っていた。
私は、小走りで彼の元へ向かう。
側にあった椅子に腰掛けると、まず、彼の髪にふれた。
手が覚えてる彼の感触。
そのまま、彼の頬に触れた。
暖かさに、肌の感触。
それも、私の体が覚えているものと、一致した。
目の前にいる人が、まぎれもなく冬真(トウマ)さんだと確信した私は、「はぁー。」となぜか、大きく息を吐いた。
吐きながら、周りを見た私は、彼の左腕にくっついている物体が目に付いた。
つい興味があって、そのまま立ち上がると、彼の体にながれている点滴の種類をみる。
この名前は、栄養剤だ。
そして、この落ちるスピードと量なら、2時間はかかるな。
私が、そう思った時だった。
急に彼の頬に触れていた手が引っ張られた気がした。
 
「えっ?」
 
と言いながら、下を向いた私の瞳に映ったのは、眠っている彼の姿ではなかった。
さっきまで、眠っていたのに、今は瞳をあけて、私をみてる冬真(トウマ)さん。
そして、私の手を右手でつかんでた。
 
「何で麗美(レミ)がここに?
夢・・・か?」
 
そういいながら、冬真(トウマ)さんは私の腕を強く引き寄せて、私の体を自分の方に強引に倒した。
 
「う・・わっ。」
 
と叫びながら私の体は、彼の体の上に覆いかぶさるように倒れた。
彼の顔と私の顔との距離は、ほんの数センチしかない状態になった。
そんな私の頬に彼は、右手を添えてきた。
 
「ほん・・・もの?」
 
不安そうにそう口にした冬真(トウマ)さんが、かわいくて、つい私ったら・・・いじめちゃって。
 
「本物か、夢か・・・。
自分で確かめてみたら?」
 
なんて、挑戦的な言葉を言っちゃった私。
すると、冬真(トウマ)さんったら、「そうだな。」と余裕の笑みをしたかと思ったら、私の後頭部に手を添えると、強引に自分の唇に、私の唇を押し当てた。
始めは、強く力任せに重ねた感じのキスだった。
だけど、しばらくして、冬真(トウマ)さんの手が私の頭からズルズルと落ちて、やがて自然と私と彼との唇は離れた。
数センチの距離のまま、彼を見た私に、冬真(トウマ)さんは、いつもの意地悪な笑顔つきで私を見てた。
 
「その笑い・・・何?」
 
恐くなった私は、ビクビクしながら聞いたんだけど、
 
「体に教えてやるよ。」
 
と答えられて。
 
「どういう意味?って・・・ちょっと、待った!!
キャッ!!」
 
一瞬何が起こったかわからなかった。
私の悲鳴とあとは、ベッドの強くきしむ音。
それから、一番大きかったのは、鉄パイプが、フロアーに倒れる音。
さっきまで、私が冬真(トウマ)さんを見下ろしてたのに、今は私が冬真(トウマ)さんに見下ろされてる。
これ・・・どういう事?
 
「一体、何がどうなったの?
今の音、何・・・えっ?」
 
何気なく彼の腕を見た私は、ギョッとした。
だって、さっきまで点滴していた場所から、血がじんわりと出てるから。
っていうより、あれ?点滴は??
そう思ったら・・・すべてがわかったよ。
冬真(トウマ)さんは、私をベッドに仰向けに乗せ、自分は私の上に乗っかった状態になったのよね。
そうしたら、もちろん、左手に付けていた点滴は、ひっぱられて倒れた。
そして、針も腕から抜けちゃったって・・・そういう事だったんだ。
でも、そんな強引に針を抜いてよかったの?
私は、右手で彼の腕に触れた。
 
「針残ってない?
それに、点滴しなくていいの?」
 
だけど、「点滴なんていらねぇーよ。」と言った冬真(トウマ)さんは、私に顔を近づけてくると、頬や顎にたくさんキスをしてくる。
 
「俺がほしいのは、たった一つ。
わかる・・・よな?」
 
そんな甘い声と、甘い吐息で言われたら、意地悪モードも失せちゃったよ。
たまには、「わかんない。」とかいって、冬真(トウマ)さんの上を行きたいんだけど。
ダメだね。
冬真(トウマ)さんみたいに、私には余裕がないよ。
って事で、私はいつもの事ながら、素直に答えちゃってた。
私の体から離れた冬真(トウマ)さんの唇に、自分から軽いキスをする。
それが、まるで引き金になったかのように、離した瞬間に、冬真(トウマ)さんは私にいつものキスを送ってきた。
お互いの舌の温度を感じあい、お互いの唾液の温かさを味わう。
彼の髪に触れている指先の感覚が、徐々になくなっていくくらい、キスが気持ちいい。
いつの間にか、自分が気持ちよくなるやりかたで、自分からも彼にキスをせまってた。
胸からのどにかけて、熱いものが駆け巡って、それがまるで、彼と交わっている口から出て彼に注がれるような。
そんな感覚を何度も味わった。
もちろん、その逆も。
彼の中からもたくさんの思いをもらい、私は何度も彼のキスでいかされてた。
 
「麗美(レミ)・・・。」
 
唇を離した冬真(トウマ)さんはすぐにそういうと、なぜかその唇をまた、私の耳にくっつけてきた。
その辺付近に、何度も何度も軽いキスをするけど、私はちょっと、不思議だった。
だって、いつもの冬真(トウマ)さんなら、ここから、私をもっともっと気持ちよくしてくれるから。
たくさんの愛撫をしてくれて、たっぷり私を潤してくれる。
それから、やっと交じり合えるっていうのが、だいたいいつものパターンなんだけど。
だけど、今日は、耳??
って不思議に最初は思ったけど、でも、こうしてよく考えたら思い出した。
冬真(トウマ)さんは、過労で倒れたんだった!
もう、リタイア?
正直ガッカリだけど、でも、そうも言ってられない。
体が資本だもん。
って事で、私は彼のリタイア宣言を快く聞こうとしたの。
したのに、私は、改めて実感させられたのよ。
彼は、普通の男じゃないって・・・。
誰よりもエッチで、そして誰よりも私の体を知っている、梅澤冬真(トウマ)だって・・・。
リタイア宣言する人には、ありえない行動が私を襲ったのは、彼が声を発し始めてすぐだった。
 
「麗美(レミ)、お前さ・・・。」
 
「あっ・・・んっ・・・・。」
 
冬真(トウマ)さんの言葉と私の、声が重なった。
自分でもこんな恥ずかしい声、出すつもりなかったよ。
でも、自然と出ちゃったんだもん。
予想外の攻めに、体が勝手に素直な反応をしちゃって。
信じられないような声をあげちゃって、自分自身も、超ビックリ!!
って事で、慌てふためくけど、その声を出させた本人は、全然普通。
私の体の中に侵入させていた右手を、これまたいとも簡単にスッと体から抜いた。
また、私の体は、軽く揺れ、顔を少しゆがませる私。
戻って来た右手を、彼はいつものように、軽く舌で堪能する。
そして、今度はその舌で、私の唇をやらしく舐める。
 
「キスだけで、こんなになるなんてな・・・。」
 
と彼が言った時、私は我慢できなくなって、閉じていた口を少し開けた。
もちろん、私の態度に彼は軽く笑うと、そのまま私の唇の隙間に舌を入れてくる。
そして、そのまま。
まるで、こじあけるみたいに私の口に入ってくると、あっという間に、私の中を彼でいっぱいにした。
何度も私の腰や、体はビクビクと反応した。
それくらい、彼のキスは感じたの。
もっともっとほしいってくらいになった時、冬真(トウマ)さんから、唇を離してきたから、私はたまらず聞いちゃった。
 
「なんで?」
 
って。そういって、少し離れた冬真(トウマ)さんの顔を見て・・・ちょっと、ビックリしちゃった。
だって、こんなに気持ちよさそうで、乱れてて、かっこいい冬真(トウマ)さんは初めてみたから。
いつも、どこか余裕な冬真(トウマ)さんだけど、今の冬真(トウマ)さんは全く余裕なしと言った感じ。
私は、たまらず、彼の前髪にふれた。
 
「どうしたの?こんなに熱いし・・・。
やっぱり、体調悪いんじゃ・・・。」
 
彼の体が心配になった私はそう言ったんだけど、途中で冬真(トウマ)さんの言葉にかき消された。
だって、顔をまた私の肩に倒して、耳元で囁くんだもん。
それも、すごい内容を・・・。
 
「悪い・・・前戯(ゼンギ)・・・とばしていい?」
 
熱い息に乱れた呼吸。
そんなドキドキするような状態で、この言葉はないでしょ。
頭の中が、パーンって真っ白になっちゃったよ。
前戯なしって事は、愛撫がないって訳で・・・。
って事はよ・・・つまり・・・いきなりって事だよね。
正直・・・恐いかも。
でも、まー・・・いいっか。
と軽く思っちゃった私。
だってさ、ホントに彼辛そうなんだもん。
こんなに辛そうな冬真(トウマ)さん、初めてみたし。
前に、いきなり日本に帰って来た時なんかは、私にどんなにやらしい攻めをしても、ちーっともやる気なしみたいな感じで、ノホホーンとしてたのに。
今は、雲泥の差だよ。
人にキスだけで感じてるって言っておきながら、自分もじゃない!
って言いたいけど、言―わない!
だって、愛おしくてたまらないから。
こんなになってる冬真(トウマ)さんは、いつもと違って・・・すごくかわいいから。
私は、彼の髪に触れながら、彼の髪を優しくなでた。
 
「いいよ・・・。」
 
私の言葉に冬真(トウマ)さんの頭はユックリと起き上がる。
そして、また私のすぐ目の前に浮上する。
私は、自分から彼にキスをしまくる。
このキスは照れ隠しのキスよ。
普通なら恥ずかしくて言えないから。
だから、キスをしながら言うね。
 
「でも・・・優しくしてね。」
 
だって、私、痛いの嫌なんだもん。
しっかり濡れてないと、冬真(トウマ)さんの激しさはちょっと、耐えれない・・・と思う。
って事で、まるで、初めての乙女みたいな事を言ちゃった私。
引かれるかも・・・って思ったんだけど、冬真(トウマ)さんは、「平気。」とキス返ししてくれた。
 
「今日の麗美(レミ)は、俺のキスでも充分濡れてるだろ?」
 
そう言われたら・・・さっき、冬真(トウマ)さんがそう言ってたっけ・・・。
って事は・・・。
 
「もしかして、それを確認するために、さっき指入れたの?」
 
それには、口元だけ笑わせて、彼は相変わらずキスを、顔や首にしまくってる。
それも、私の性感帯ばっかり。
ホント、すごいとしか・・・言えないよ。
これだけ、キス攻めされて、さらに感じる濃厚キスをされちゃったら、体の前戯も体の愛撫もいらない。
って事で、私の首にいた彼の顔を少し後ろに押す。
そのしぐさに、彼は私から唇を離す。
目が合った瞬間、お互いの目でわかった。
お互いが笑い、そして、お互いが歩みよって唇を重ねる。
また、さっきと同じ感覚が来て、私の体が潤いだした頃、私の足に彼の左手が触れ、次の瞬間、彼の体を受け入れてた。
彼のキスで何度もいかされていたせいと、今もしてる気持ちいいキスのせいで、私の体は引き締まってた。
それは、相当だったのか、強引に唇を離した冬真(トウマ)さんは、
 
「ちょ・・・麗美(レミ)、キツイ・・・・。」
 
と注意をされるけど、そんなの私が悪いんじゃないもん。
って事で、もちろん、抗議する。
 
「冬真(トウマ)さんが・・・悪いんだよ・・・。」
 
と彼のせい。
だけど、私は、すっごい気持ちいいから。
だから、キスも頂戴!!
って事で、「くっ・・・。」と苦しんでる彼の顔を強引にこっちに寄せると、私はまた彼にキスを迫る。
 
「お前な・・・。」
 
呪いの声で冬真(トウマ)さんは、言ってくるけど・・・。
知ーらない!!
私だって、冬真(トウマ)さんがほしいんだもん。
頂戴、頂戴!
って事で、どんどん迫っちゃう。
それに対して、冬真(トウマ)さんは、もう諦めたみたい。
 
「俺の体がお前をほしがり過ぎで、敏感になりすぎてる。
もう、諦めた・・・。」
 
そう言った途端、冬真(トウマ)さんの動きが急にいつもみたいになった。
息も出来なくなりそうなキス。
彼が、強く突き上げるごとに、内蔵が上に押し上げられるような感覚。
足の感覚が麻痺する状態。
それと、今はもう一つ。
激しく動く冬真(トウマ)さんの場所が、熱くてそして、痛くてたまらない。
 
「待って・・・激しくしないって言ったじゃない。
痛っ・・・痛い・・・。」
 
出す声の合間に必死で抗議するけど、冬真(トウマ)さんは返してくれない。
聞こえるのは、冬真(トウマ)さんのいつもよりも激しい吐息と声だった。
どんどん激しくなる冬真(トウマ)さんの動きに、「い・・・やぁ・・・・」といいながら、体を少しひねって、私は顔をベッドにこすりつけた。
痛いけど、気持ちいい。
でも・・・痛い。
そんな葛藤みたいな思いが、頭をグルグルしてた。
その時だった。
私が、体勢を少し変えたせいかもしれないけど、あたる場所が変わったせいか、痛みよりも快感が上回って、自然と自分が気持ちいいように、私は体を動かしてた。
腰を動かして、お互いの強さで、さらに快感度はお互いがアップした。
それから数秒後、私がいきそうになって、彼のいる場所がどんどん窮屈になっていった。
 
「い・・・く・・・。」
 
たまらずそう口にした時、
 
「俺も・・・。」
 
かすかにそんな声がした気がした。
だけど、聞き返す前に、私は頭が真っ白になって、いっちゃった。
息が上がって体中が熱くなっている私の顔に、これまた熱くなっている胸が触れた。
私の横に、横になった彼は、そのまま、私を自分の胸に抱き寄せた。
そして、そのまま、私にまたキスの嵐をしてくる。
普段、こんな事しないだけに、やっぱり、また不思議に思って聞いちゃう。
 
「どうしたの?」
 
って。だけど、答えてくれない彼。
質問して、そうだ!
思い出した!!
 
「ねぇー、さっき、何言ったの?
聞こえなかった。」
 
と言った私に、「ん?なんだっけ?」ととぼける冬真(トウマ)さん。
 
「やだぁー。ちゃんと、言ってよ。」
 
とすがってみるけど、「ヤダ。」と即答されて。
でも、気になるぅー。
 
「お願い。気になるよ。言ってよー。」
 
彼に抱きついて必死で、すがってみるけど、彼は笑ってるだけ。
それには、とうとう堪忍袋の緒が切れた。
という事で、爆発!!
 
「ケチケチケェーチー。」
 
そう言って、ベーとする私に、
 
「聞きたきゃ、セックスさせろ。
したら、言ってやるよ。」
 
「えっ?」
 
と声をあげつつ、ビビリ気味で彼を見た。
だって、声が・・・恐かったから。
怒ってるのかと、そぉーっと見たのに、彼ったら・・・いつになく優しい微笑をしてるじゃない。
安心した私は、彼を仰向けに押し倒して、彼の上に完全に乗っかった。
 
「もぉー!!脅かさないでよぉー!
怒ったかと思って、ビビったじゃない!!」
 
半べそかきながら、彼の胸をペチペチ叩いた私。
4発目を叩こうと、両手を振りかぶった時、彼につかまれた。
 
「そんなに暴れたら、教えてやんねぇーぞ。」
 
そう言って笑った彼。
いつも、余裕で私をうまく、コントロールしてる彼。
そして、今も私をうまく使ってる。
こういったら、私がどういうか・・・わかってるんだよね。
だから、違う風にしてやりたいんだけど。
やっぱり、いつもみたいにやっちゃう。
素直というか、頑固な私。
私は彼に両手をつかまれたまま、ユックリと体を前に倒した。
彼も、つかんでいた手を素早く離すと、私の体を両手で抱きしめて支えてくれる。
私の胸と彼の胸とがくっつく。
そして、私は、彼の左肩あたりに、頭を置いて左側を向いた。
 
「暴れるのやめたよ。
教えてよ。」
 
そういいながら、少し顔を上げて、彼の首にキスをする。
そのしぐさに、彼は、「こそばい。」と半分笑いながらいうと、私を横に寝かせ、私の顔が見えるような抱きしめ方をした。
 
「お前、『イク。』って言っただろ?
だから、『俺も。』って言ったの。
ただ、それだけだよ。
騒ぐほどの事でもなかっただろ?」
 
笑いながら彼はいうけど、何言ってるの?
騒ぐほどの事じゃない?
とんでもない。
大騒ぎだよ!!
だって、だってぇー!!
大興奮の私は、またしても、彼に覆いかぶさる。
 
「だから、乗るなよ。」
 
と呆れる冬真(トウマ)さんだけど、私はそれどころじゃない。
ズイと冬真(トウマ)さんの顔に自分の顔を近づけると、
 
「ホントなの?」
 
と追求。
 
「はぁ?何?」
 
すっごい迷惑そうに言われたけど、そんなのお構いなし。
私は、さらに迫る。
 
「今の!ホントに、冬真(トウマ)さん、いった??」
 
目を輝かせて言った私に、ちょっと照れ笑いをした冬真(トウマ)さんは、「ああ。」と答えると、
 
「近いよ・・・。」
 
と言いながら、私の顔を思いっきり押して、冬真(トウマ)さんから遠く離れたベッドへと押し当てた。
「ブッ。」と音を立てた私は、そのまま顔をベッドにうずめてた。
うずめながら、嬉しくてニッコリ笑ってたの。
なんで、そんなに喜んでるか。って?
冬真(トウマ)さんって、ホントにいかないのよ。
今までも、数えるほどしか見たことがない。
だから、なんか悪くてね。
私ばっかり満たされてる気がして、申し訳なくて。
でも、今日、いったんだよねぇー。
それも、一緒にだよぉー。
いやぁーん。素敵・・・最高!!
しかも、すっごい短いエッチでさ・・・。
すごすぎるぅー!!
残念なのは、自分がいっちゃったせいで、冬真(トウマ)さんの超色っぽい顔を見落とした事なんだけど・・・。
それは、これからの楽しみに取って置こう。
と思いつつ・・・損した。
くっそぉー!!とやっぱり、残念でしかたない私は、顔をうずめたまま悔しがってたの。
そんな事をしていると知らない冬真(トウマ)さんは、ちょっと私を心配する。
 
「いつまで、顔つぶしてんだ?
鼻、つぶれるぞ?
それとも、またすねてんのか?」
 
そう言いながら、背中から私を抱きしめてきた冬真(トウマ)さん。
顔を上げた私のすぐ横には、冬真(トウマ)さんの顔。
冬真(トウマ)さんを見たら、つい・・・また言っちゃった。
 
「ホントに、いったの?」
 
それには、「しつこいぞ。」と呆れられた私。
冬真(トウマ)さんも、私から腕を離すと、また仰向けになって横になる。
そんな彼の横に、私も近付いて、彼の肩に頭を置いた。
 
「怒んないでよ。ちょっと、意外だったから・・・。」
 
私の言葉に、「なんだよ。意外って。」とすぐに反応をしめしてくれた冬真(トウマ)さん。
おっ!喰いついて来たぞ!
怒っていたのに、機嫌がちょっと直りつつあるみたいで、内心ホッとした私。
さらに、彼にくっついて、私は言ったの。
 
「冬真(トウマ)さんにしては、早かったなぁーって。
ほら、いつも、なかなかじゃない。」
 
それには、「あー・・・。」と言った冬真(トウマ)さん。
その、『あー・・・。』は、とても気になる。
って事で、もちろん、くいさがっちゃう私。
 
「何よ!その『あー・・・。』って。」
 
必死で聞く私に、「わかった、わかった。」と降参した冬真(トウマ)さんは、私の髪をいつになく優しくなでてくれた。
 
「俺がいつもいかないのは、いかないようにコントロールしてるから。」
 
「コントロール?」
 
「そう。」と笑顔で言われたけど、さっぱり意図がわからないよ。
 
「何の為に?」
 
「そんなの決まってるだろ?
麗美(レミ)をいたぶるため!」
 
「はぁ?」
 
「麗美(レミ)が体力の限界ギリギリまで、俺に抱かれてる様を見たいとか。
麗美(レミ)が気絶するほど、激しく抱いてやりたいとか。
まー、その時の俺の気持ちというか、テンションがあって。
それに、あわせて、俺のイクタイミングも決まるんだ。
俺が先にいっちゃったら、終わっちゃうだろ?」
 
そりゃそうだけど・・・。
 
「そんなイクのを、コントロールなんて、出来るの?」
 
「俺はね。」
 
「なんで??」
 
「最初に留学した時に、カウンセリングを習ったんだ。
あの時に、精神統一とか、まー、普段いじれない人間の物っていうのかな?
気持ちとか、そのイク感情とか。
そういう目に見えないものの、コントロールを学んだ。
だから、俺は出来るんだ。」
 
「す・・・ごい。」
 
「けど、さっきは、それすらも、できないくらい、気持ちが暴走してた。」
 
「ぼう・・・そう?」
 
「そう。こんなの初めてだったかもしれない。」
 
冬真(トウマ)さんのその言葉で、さっき、冬真(トウマ)さんがいった言葉を思い出した。
冬真(トウマ)さんは、さっきこう言った。
『俺の体がお前をほしがり過ぎで、敏感になりすぎてる。もう、諦めた』
つまり、いつもみたいにいっちゃいそうなタイミングで、抑えていたのが、抑え切れなくなっちゃって、それで、もういいや!って、さじをなげちゃったって事?
だから、あの時・・・。
冬真(トウマ)さんは、窮屈感でいっちゃいそうなのを、耐えてそして、私にも締め付けるなと言ったんだ。
だけど、私は止まんなくて。
それでも、頑張れば冬真(トウマ)さんなら、いかないですんだかもしれないけど、諦めたんだよね。
我慢するのがしんどかったのかな?
なんて、色々考えちゃったけど、でも、1つだけわかるのは、混じりあえたこと。
愛する人との行為は、本当に気持ちいい。
私は、さらに彼に抱きついた。
抱きつきながら、改めて思った。
これから、2年。
今までみたいに、なかなか彼に触れられないんだって。
それが・・・何よりも耐え難い苦痛になるのは、痛いほどわかってる。
でも、耐えなきゃ・・・。
そう思ったせいかな。
私は知らないうちに、さらに彼の体にしがみついてた。
その姿に、もちろん、冬真(トウマ)さんはおかしいな?って思ったんだろうな。
 
「どうした?」
 
と顔をのぞかせながら、優しい声で聞いてくれる。
だけど、彼の顔をみたら、言えなくなっちゃうから。
私は、彼の顔から目をそらすと、彼の胸にしがみついた。
 
「麗美(レミ)?」
 
そう言って私の体を浮かせようとした冬真(トウマ)さんに、「このままがいい。」と言った私は、
 
「話があるの。」
 
と冬真(トウマ)さんの胸に顔をうずめたまま、言ったの。
 
「話?・・・何?」
 
私は意を決して言ったの。
 
「私ね、向こうで頑張ろうと思う。
2年間、日本で頑張って、そして、冬真(トウマ)さんが帰ってくるの待ってようと思う。」
 
少しの沈黙の後、冬真(トウマ)さんはこう言った。
 
「ここには、こないって事?」
 
うなずいた私に、「ま、仕方ないよな。」と言った冬真(トウマ)さん。
 
「仕方ないって?」
 
「だって、あの大学は陸(リク)の夢がつまってる場所だ。
ちゃんと、卒業したいと思うよな。
麗美(レミ)にとっても、陸(リク)は大事な人だから。
アイツの夢を叶えてやりたくて、俺を選べないのは、しかたないよ。」
 
「ホントにそう思ってるの?」
 
「えっ?」
 
「私が、陸(リク)を選んで、冬真(トウマ)さんを選べないって・・・。
本気で、そう思ってる?」
 
「お前・・・何、怒ってんだよ!」
 
「怒るよ!怒りたくもなるよ!
なんで?どうして、そんな事いうの?
私は、いつだって、冬真(トウマ)さんを選んできたじゃない。
それは、誰の為でもない。
私がそうしたかったから。
冬真(トウマ)さんと一緒にいたいから。
冬真(トウマ)さんと離れたくないから。
一緒に生きたいから。
だから、私は、いつもあなたを選んでた。
あなたしか・・・選ばない。
なのに・・・なんで、そんな事いうの?
それに、どうして、簡単に納得するの?
どうして、陸(リク)じゃなくて、俺を選べって言ってくれないのよ。」
 
「落ち着けよ、麗美(レミ)。」
 
「私だって、一緒にいたいよ。
一分一秒だって、冬真(トウマ)さんと離れてたくないよ。
私がどんな気持ちで、日本に残るって言ってるか、わかってよ。
私が、どれだけ冬真(トウマ)さんを好きか、わかってよ!!」
 
そう言って泣き出した私を、冬真(トウマ)さんは、素早く抱き寄せた。
 
「悪かった。ホントに・・・悪かった。」
 
冬真(トウマ)さんはそういったあと、耳元でなんども、「泣くなよ。麗美(レミ)。」「悪かった。」を繰り返してた。
私は、泣きながらそれを聞いていたのと、あとは、感じてた。
冬真(トウマ)さんの手が触れている髪から感じる、彼の震え。
取り乱した私に、あの冷静な彼が動揺したのか、すごく手が震えてた。
それを感じたら、ちょっと・・・許してあげる気になった私。
 
「本当は・・・離れたくない・・・。
こうして、いつでも触れ合える距離でいたいよ・・・。」
 
泣きながらそうつぶやいた私に、「うん。」と優しい声で答えながら、抱きしめている手に力をこめて、さらに強く抱きしめてくれる冬真(トウマ)さん。
私は、少し速い彼の鼓動をくっついている耳で聞いていた。
すると、不思議と気持ちは落ち着いてきて、涙もゆっくりだったけど、やんできた。
 
「一緒にいたいけど・・・今は、我慢しなきゃ。
冬真(トウマ)さんの邪魔はしたくないよ。」
 
私のその言葉に、冬真(トウマ)さんは言葉じゃなくて、まず「はぁー。」とタメ息を付いた。
そのタメ息が気になった私は、彼を見上げようと少し頭を動かしかけたけど、すぐに彼の右手が髪に触れて、私の顔は彼の胸へと舞い戻った。
彼の長くて綺麗な指先が、私の肩まである髪にからみ、髪の先から、彼の指の感触がわかった。
 
「俺の今の生活・・・聞いたんだな。」
 
それに対して、私は軽く首を縦に動かした。
体でその動きを感じた彼は、「やっぱりな。」というと、
 
「どうせ、言ったのは、アリシエだろ。
アイツ、ホント、おせっかいだから。」
 
とタメ息交じりにそう言った。
アリシエさんが、私に言ったって、よくわかったねぇーって感心していたんだけど、冬真(トウマ)さんのすごさは、これだけじゃなかった。
 
「麗美(レミ)がここに来たのも、偶然じゃないよな?
おおかた、聖(アキラ)のさしがねだろ?」
 
その言葉に、「えっ?」と驚きながら、冬真(トウマ)さんを見上げた私に、彼は余裕の笑いをするとさらに続けた。
 
「日本にいる人間で、俺の過酷さを知っているのは、聖(アキラ)だけだ。
その聖(アキラ)が、麗美(レミ)と天(タカシ)が、こっちに来る事を手放しで喜ぶとは思えない。
そして、アイツの性格上、自分で話して、麗美(レミ)を説得するよりも、麗美(レミ)に実際見させて決断させる方を選ぶだろうからな。
アイツは、『論より証拠』ってタイプだから。
それを聞いたおせっかい果帆が、黙っているわけがない。
どうせ、航空券もお前のここでの滞在場所もアイツが、手配したんだろう。
空港からアリシエまでの案内は・・・七葉(ナナハ)か?」
 
言葉が・・・出ません。
だって、何でそんなにパーフェクトに答えちゃってるの?
まるで、みていたみたいに・・・。
口をポカーンと開けながら、私は言っちゃったよ。
 
「見てたの?」
 
って。それには、「かもな・・・。」と言って笑う冬真(トウマ)さん。
いや・・・笑い事じゃないよ。
ホント・・・すご過ぎる。
だけど、不思議。
感心すればするほど、なぜか、愛おしさが込み上げてくるのよね。
体に触れているだけでも、彼を間近でみつめているだけでも足りなくなった私は、彼の頬に、自分の頬をくっつけて、彼の吐息を間近で聞く。
急に甘えた私に、彼も一瞬驚く。
 
「麗美(レミ)?」
 
疑問系で彼は私の名を呼ぶ。
だけど、私は何も言わないまま、彼にピッタリとよりそう。
しばらくそんな、ただくっついているだけの時間が流れた。
でも、すごく幸せだった。
まじり合っていなくても、ただ触れ合っているだけで、こんなに満たされるなんて。
今まで、気付かなかった事だったから。
これからは、簡単にこうやって、逢う事もできないと思うから。
その時々の2人の時間を、大切にしたいと思ったの。
 
「ずっと一緒には居られないけど、また逢いに来るから。
今度は、天(タカシ)も連れてくるね。」
 
だけど、冬真(トウマ)さんは、言葉で返す代わりに、急に私を自分の胸に向かって抱き寄せると、私を両腕でぎゅーっと抱きしめた。
その抱きしめ方が、いつもと違うから、私の中で不安がよぎった。
 
「どう・・・したの?」
 
その不安は私の声にも現れてた。
自分でもわかるくらい、震えて動揺してる声。
その声に冬真(トウマ)さんが気付かないわけがない。
だけど、冬真(トウマ)さんは、私を抱きしめている手を緩めなかった。
そして、そのまま。
私の背中あたりから、彼の声が聞こえた。
 
「もう、ここへは来るな。」
 
心臓が止まるかと思った。
今・・・何て言った?
来るなって・・・そう言った?
ううん。そんなはずないよ。
そんな事、冬真(トウマ)さんがいうはずない。
私の聞き間違いだ。
必死でそう自分に言い聞かせる。
だけど、なんでかな?
目じりがどんどん熱くなるの。
聞き間違いだって思いたいのに、そうじゃないと本当はわかってるから。
だから、涙が出るのよね。
嘘だと言ってほしい。
そんな思いが胸をいっぱいにする。
だけど、口にできない。
聞き間違いだよね?とも・・・言えない。
言葉を声にする力すらもないくらい、私はさっきの冬真(トウマ)さんの一言で、大打撃をくらってたの。
何も言えずにただ、冬真(トウマ)さんの体にしがみついている私の髪に、また冬真(トウマ)さんは触れると、優しい手つきで何度もなでてくれる。
そのしぐさが、まるで、お母さんが子供にする、よしよしに似てる気がして、私は抑えていた思いと涙が一気に溢れ出した。
 
「なんで・・・・。」
 
やっとの思いで言った言葉はそれだった。
なんで、そんな事いうの?
なんで、来ちゃいけないの?
本当はそう言いたかったのに・・・。
言えたのは、たったその言葉だけだった。
私の思いが伝わらない、なんでもない言葉。
だけど、冬真(トウマ)さんなら、わかってくれるって・・・心のどこかで思ってた。
そして、その思いに冬真(トウマ)さんは、ちゃんと答えてくれて・・・。
 
「麗美(レミ)がここへこないと決めたのは、俺が忙しいからってだけじゃないだろ?
俺たちにとって、残りの2年は、本当に大切な2年で、踏ん張りどころだ。
その時間を一緒に寄り添って過ごすより、今のままの場所で、頑張る事が、最善策と思ったんじゃないのか?
俺たちの夢を叶える為にそれがいいって。
俺にとっても、麗美(レミ)にとっても、今離れる方がいいって。
だから、来ないと決めた。違うか?」
 
私は彼の胸の中で、ただうなずいてた。
 
「身を切り裂かれるような思いでそう決断した麗美(レミ)の気持ちに俺も、答えたい。
だから、中途半端な事はしたくないと思ったんだ。
離れると決めたのなら、とことん離れよう。
そして、2年後、お互いの夢をつかんで再会しよう。」
 
冬真(トウマ)さんは、そう言ったあと、私を自分の胸から離すと、涙で濡れている私の頬に軽いキスをした。
 
「電話もメールも一切なし。
逢う事ももちろんなしで。
2年間、俺は麗美(レミ)を断つ。
そして、麗美(レミ)は俺を断つ。いいな。」
 
わかるよ。
冬真(トウマ)さんの言ってる意味はわかる。
それくらいしないと、フラフラしてたら、医者にも心臓外科医にもなれないって。
それくらい大変な道のりだって、わかるよ。
でも、だけど、それと同じくらいわかるの。
冬真(トウマ)さんと離れてなんて、生きていけないって・・・。
2年も音信不通なんて・・・考えただけでも、死んじゃいそうだよ。
 
「れ・・・み・・・。」
 
困ったような冬真(トウマ)さんの声。
そりゃそうでしょ。
だって、私、泣きじゃくりながら首をふりまくってるんだもん。
イヤイヤって、まるでガキみたいに首を横に振る私。
そんな私の両頬に、冬真(トウマ)さんの手が触れて、私の首の動きは強引に止められた。
 
「わかってくれよ、麗美(レミ)。」
 
って言われても、わかんないよ。
嫌なものは、嫌なの。
 
「平気なの?冬真(トウマ)さんは、2年も離れてて平気なの?
私は、イヤだよ。
絶対に・・・イヤだよ・・・。」
 
最後は声を出して泣いてた。
どれだけ呆れられてもいい。
無理なものは、無理なんだもん。
私は泣きながら、彼の胸へと倒れて、彼の胸を涙で塗らした。
そんな私を、彼は何も言わずに抱きしめてくれてた。
ひとしきり、私が泣いて、泣き声がやがて、しゃっくりに変わった頃、冬真(トウマ)さんの声が聞こえた。
 
「アリシエが言ってたんだけどさ・・・。」
 
冬真(トウマ)さんのその声に、私はシャックリをしながらだったけど、彼の声に耳を傾けたの。
 
「オヤジが、腕を治しにここへ来た時、女を待たせてるから2年以内に治せって言ったらしいんだ。
だけど、一月(ヒトツキ)経っても、半年経っても、女からの連絡もオヤジがしてる形跡もなくてさ。
もちろん、オヤジの手術にもこなかったし、オヤジがここにいた1年半の間、ただの一度もその人は現れなかったって。
それで、不思議に思ったアリシエは、日本に戻る時、オヤジに聞いたらしい。
女からの連絡はあったのか?って。
そしたら、オヤジは、何て答えたと思う?」
 
冬真(トウマ)さんの問いかけに、私は顔を上げて彼を見る。
私をすごく優しい瞳でみつめてた彼は、優しく微笑むと、私の前髪に優しくふれながら、髪をかきあげた。
 
「自分がこっちにきている間は、連絡は一切取らないことにしてるんだって言ったんだって。」
 
それって、今の冬真(トウマ)さんが言い出してる事と一緒?
という事は、そうしようとしてる理由は、雪先生と一緒って事?
なら、雪先生がどうしてしてたのか、聞けばわかる?
冬真(トウマ)さんの思いを聞くと、また感情的になって、彼を責めるのはわかっていたから。
だから、雪先生の思いを聞こうと思ったの。
そしたら、少しは冷静に聞けると思ったから。
 
「雪先生はどうして、そんな事したの?」
 
シャックリをしつつ、そう言った私に、冬真(トウマ)さんは、アリシエさんから聞いた答えを教えてくれた。
 
「理由は、相手を感じたら、逢いたくなってたまらなくなるからって。
人間の執着心ってのは、思っているよりも強いんだ。
そしてその強さは、人にもよるし、モノにもよる。
今まで手に入れたくて仕方なくて、でもなかなか手に入らなくて。
そうやって、やっとの思いで手に入れたモノに、異常なほどの執着心を持ってもおかしくないだろ?
オヤジにとって、オフクロはずっとずっと手に入れたかった憩いの場所だったんだ。
だから、離れる事なんて、考えられなかったと思う。
よくも1年半も離れてたと、今の俺なら感心しちゃうけどな。」
 
そう言った冬真(トウマ)さんは、私の唇に軽いキスをすると、私を見つめた。
 
「俺にとって、麗美(レミ)も、異常なほどの執着を持ってしまうくらいの大切な人なんだ。
だからこそ、オヤジと同じようにしないと、俺は2日もしないうちに、お前に逢いに日本に帰ってしまう。
自分自身を抑える為に、自分の気持ちをしばりつけてやらないと。
俺は、この2年頑張れないんだ。
勝手だとはわかってる。
俺が弱すぎるばっかりに、麗美(レミ)に辛い思いをさせるのもわかってる。
だけど・・・協力してくれないか?
陸(リク)との夢である心臓外科医に俺が無事なれるように・・・。
麗美(レミ)の力を貸してほしい。頼むよ・・・。」
 
そういってくれたキスは、冬真(トウマ)さんの思いが流れ込んでくるようなキスだった。
冬真(トウマ)さんの思いはわかった。
そして、私も。
冬真(トウマ)さんにそう言われて、改めて考えて思った。
私もそうかもしれないって。
きっと、私も、自分で自分を抑える条件を出さないと、すぐにここへ来てしまうかもしれない。
学校も休んで・・・。
そんな事してたら、日本に残る事を決めた意味がないもんね。
残ると決めたのなら。
2年後、夢をつかむと決めたのなら、それくらいの覚悟は持たなきゃ。
寂しくて、不安でたまらないけど、桜さんも雪先生も頑張ったんだもん。
私も、頑張る。
そしたら、きっと、私と冬真(トウマ)さんにも、桜さんと雪先生みたいな永遠の愛が手に入るよね?
そう思ったら・・・さっきまでの悲しみが、すーっと消えていた。
 
「わかった。私も、冬真(トウマ)さん断ちするよ。」
 
そう言って、冬真(トウマ)さんにキス返しした私に彼は、一言、「サンキュ。」とだけ言った。
 
「でも、冬真(トウマ)さん、約束して。」
 
いきなりの私の約束発言に、「ん?」と聞いていた冬真(トウマ)さんに、私は急接近する。
 
「夢をつかんだら、そしたらもう離れなくていいよね?
こんなに離れるのは、一生のうちで、これが最後だよね?ねっ?」
 
必死でそう迫る私に、「ああ。」と笑顔で答えた冬真(トウマ)さんは、私をまた抱きしめてくれる。
 
「約束するよ。麗美(レミ)が、医者になった日。
俺は夢をつかんで、必ずお前を迎えに行くから。
そしたら、永遠を誓いあって、一生離さないから。
麗美(レミ)がイヤだと言っても、俺の側から離さない。
俺から離れられるのは、この2年が最初で最後かもな。」
 
そう言って笑った冬真(トウマ)さんの笑顔が、いつもの悪魔化しちゃってるから、私もついつい乗っちゃう。
 
「じゃあ、この2年、楽しまなきゃ。」
 
それには、「ああ。お互い、身軽な2年を楽しもう。」と言っちゃってて。
さっきまでの涙涙のお話はどこへ消えたのやら・・・。
だけど、これでいいと思ったの。
下を見れば、離れて悲しいって涙が出る。
でも、上を向いて先を見れば、離れる時間も楽しもうと笑顔に変わる。
私たちは、悲しみも笑顔に変えてここまで一緒に生きてきた。
だから、今もそうしよう。
悲しんでなんていられない。
私たちには、まだまだ奇跡を起こさなきゃいけない事があるんだから。
もっともっと、先の未来をお互い一緒に歩いて、奇跡をおこさなきゃ。
まだ、野望は尽きないのよ!!
 
「よぉーっし!2年、頑張るぞー。」
 
と急にやる気を見せた私に、
 
「その前に、2年分充電しようぜ。」
 
と冬真(トウマ)さん。
 
「どういう意味?」
 
と聞きながら彼を見たら、もう答えがわかったよ。
だって、悪魔から、エロ悪魔に変身してんだもん。
 
「ホント・・・エッチなんだから。」
 
と呆れながら言ってる側から、私の唇を奪う彼。
そして、私を抱きしめたまま、ゴロンと寝返りを打って、私の背中をベッドにくっつけた。
 
「俺がエッチなのは、当たり前。
オヤジのDNAが入ってんだからさ。」
 
と自慢されても・・・ねー。
少し苦笑いの私にキスをたくさんしながら、冬真(トウマ)さんは、こんな質問をしてきた。
 
「お前さ・・・いつ帰るの?」
 
突然そんな事聞かれても・・・。
いつだっけ?
 
「えっと・・・。」
 
と考えた私は、しばらくして七葉(ナナハ)ちゃんが言っていた時間を思い出した。
 
「確か明日の最終の便だったと思うけど・・・。」
 
それを聞いた冬真(トウマ)さんは、私から唇を離すと、腕につけている腕時計を見た。
 
「って事は、30時間はあるか・・・。」
 
と言ったかと思ったら、急にブツブツ言い出した。
そして、それが終わったかと思ったら、私の顔を見るなり、妖しい笑いを浮かべた。
それを見た瞬間、ピーンと来たよ。
絶対に、ろくでもない事考えついてるよって。
なので、もちろん、こう聞いた。
 
「どんなエロプランを、思いついたの?」
 
絶対に、エッチに関してだと思った私は、先にそう言ったの。
そしたら、「よくわかったな。」とうれしそうに笑われた。
こっちは、そんな余裕ないよ。
何を言い出すのか、ハラハラドキドキなんだけど・・・。
だって、冬真(トウマ)さんは、言ったら聞かないから。
だから、私は祈ってたの。
どうか、人間離れした事を言い出しませんように・・・って。
だけど、そんな即興の祈りなんて、泡となって消えてしまった。
 
「2年分のエッチをするとなると、730回のエッチで。
それを、30時間内にするとなると、1回が2分ちょいの計算になる。
って事なんで、かなりハードだけど・・・まっ、頑張って!」
 
「はぁ???」
 
絶叫も通り越して、呆れ声の私。
今・・・何を言った?
すっごい事を、ぺらぺらと言ってなかった?
2年分?730回?1回が2分?
遊園地の乗り物じゃないんだから、2分って・・・。
もう・・・信じられない。
 
「何考えてるのよ!
そんなの無理に決まってるでしょ!」
 
って言ってる側から、ゴングはなってるし。
彼は、まるで時間がもったいないと言わんばかりに、私に攻めをしてくる。
それも、ホントに2分以内に私も自分もいこうとしてる行動。
そして、これまた、ホントに・・・いっちゃいそうなんだけど・・・。
 
「本気で、やるき・・・なの?」
 
「もちろん。俺の性格知ってるだろ?
やると言ったら、やるよ。
1日1回の計算ってのが、しゃくだけど・・・。
それは、しかたねぇーよな。」
 
って余裕の笑みをしながら言わないで。
でも、その笑いのせいかな。
私も正気が失ってきた。
麻痺した脳は、私にこんな言葉を言わせてた。
 
「言ったからには、ちゃんとしてよ。
1回でもごかましたら・・・許さないから。」
 
本気で言ってるの?ともう一人の私が言ってた。
でも、今は、溺れたいと思ったの。
冬真(トウマ)さんの愛にも、冬真(トウマ)さんの体にも。
そして、私が思う、冬真(トウマ)さんの想いにも。
 
「ごまかさないように、お前がカウントとれよ。」
 
そう言って、笑った冬真(トウマ)さんの笑顔。
私はきっと、2年間、忘れないだろうなって思った。
逢いたくなったら。
抱いてほしくなったら。
きっとこの笑顔を思い出すんだろうなって・・・。
そう思ったの。
 
 
 
 
 
冬真(トウマ)さん断ちしてから、長いようで短いようで・・・。
気が付けば雪がちらつく2月の始めの今日。
私の運命の日が訪れた。
少し気が重い私は、暗い面持ちで、坂をあがる。
 
「麗美(レミ)っ!おっはよぉー!!」
 
後ろから背中をポンと叩かれたかと思ったら、そんな明るい声が聞こえた。
振り向くと、そこにはゼミのメンバーがせいぞろい。
 
「みんな、元気だねぇー。」
 
と苦笑いの私に、
 
「もう、結果出てるんだから、今更しょげてもしかたないでしょ。」
 
と正当な答えが返ってきた。
確かに、もう、国家試験は受けて、今から結果を見に行こうとしてるわけだから、今更ジタバタしても仕方ないのはわかってるよ。
だけど、ジタバタもしたくなるって。
だって、これで、落ちててみなさいよ。
冬真(トウマ)さんに逢わす顔がないよ。
っていうか逢えない・・・よね?
だって、冬真(トウマ)さんは、私が医者になったら、戻って来ると言ったんだもん。
裏を返せば、私が医者になるまで帰ってこないって・・・事?
じゃ、落ちてたら、また1年冬真(トウマ)さんに逢えないのぉー!!
そんなの、やだよぉー!!
あと、もうちょっとだって、自分に言い聞かせてここまできたのに・・・。
そんな・・・残酷だよぉー・・・。
 
「はぁ・・・・。」
 
思いっきり重いタメ息を付いた私に、
 
「暗いなぁー。」
 
という仲間の声が。
だって、みんなみたいに気楽じゃないんだもん!
天(タカシ)だって、最近、
 
「パパは?なんで、アメリカにいるの?
ママと喧嘩したの?」
 
と言ってきて。
始めは説明してたんだけど、あまりにしつこいから、最近は、
 
「うるさい。ママだって逢いたいんだから、パパ、パパって言わないでよ!」
 
と喧嘩する始末。
 
「7歳児相手に、何やってんの?」
 
と由梨華(ユリカ)には、呆れられるし、未来さんには、
 
「麗美(レミ)ちゃん、恐ぁーい!!」
 
といじられるし。
おまけに、春(シュン)さんには、
 
「そんなにイライラしてて、よく勉強できるよな。」
 
と褒めてんだか、けなしてんだかわかんないコメント言われるし。
で、私と冬真(トウマ)さんを、こういう状況に追い込んだ張本人の聖(アキラ)くんはというと・・・。
 
「ストレートで合格してよ。
でもって、早く、兄貴を呼び戻してよ。
医者の手が足りなくて、大変なんだよ。」
 
と遠巻きにプレッシャーをかけるしさ。
梅澤家には、優しさがないのか!!とこれまたキレちゃって。
そういう煮えたぎってる私を鎮めてくれるのは、私の気持ちが唯一わかる女神さまで。
 
「冬真(トウマ)が居ない間に、浮気しちゃえっ!
それを、私がこっそり、冬真(トウマ)に伝えるわ。
そしたら、冬真(トウマ)も意地張ってないで、さっさと資格とって帰ってくるんじゃないかしら?
っていうより、早く帰ってくるかもよ?
雪だって、1年半で帰ってきちゃったんだから。」
 
と私の気持ちを癒してくれた桜さん。
彼女だけが、私の心の支えだった。
だけど、桜さんの読みはあたらず、冬真(トウマ)さんは2年経つ今でも、帰ってくる様子がないどころか、音沙汰も・・・ない。
これで、私が受かってなかったら、ホントに戻ってこないよね。
シャレになってないよぉー。
結果見る前から、不合格の事ばかり考えて気がめいってる私に、みんなは呆れる。
 
「ほら、麗美(レミ)!着いたよ。
いっせぇーのぉーで。でみんなで一緒に見ようよ!」
 
その提案に、「うん。そうしよう。」とみんなは同意。
 
「わかった。」
 
と私も渋々答えて、「せーの。」の掛け声で私は目の前の掲示板を見た。
私の番号は、2860。
その辺付近を見る。
 
「2847・・・51・・・60・・・71・・・。」
 
そう口にして、私は目を少し前に戻す。
そして、もう一度、受験番号とを比べる。
 
「2・・8・・・6・・・0・・・。」
 
と口にして、
 
「あった・・・。」
 
ポロっとそんな言葉が出た。
私の言葉に、側に居た北条くんが気付いてくれた。
そして、私の受験番号と掲示板を見比べて、
 
「麗美(レミ)ちゃんもあった!やったなぁー。」
 
と言ってくれて。
その声に、「私もあったよ。」「俺も。」とみんなは交互に声を出す。
奇跡というべきか、6人全員が、国家試験に見事合格し、全員が念願の医者になれた。
 
「よぉーし!今から、祝い酒よ!
みんなで、ぱぁーっと飲みにいこうよ!」
 
とノリノリの声に、「よし。行こう!」とみんなはそれに乗っかる。
 
「麗美(レミ)も、行くでしょ?」
 
と言われるけど、受かった事、冬真(トウマ)さんに伝えたい。
私は話せないけど、桜さんに頼んで伝えてもらいたいから。
だから、今すぐ、桜さんの元に行きたかったの。
 
「ごめん、私は、家に帰るわ。」
 
と謝るけど、
 
「えぇー!いいじゃない!今日くらい。
どうせ、冬真(トウマ)先生だって、アメリカで連絡取れないんでしょ?
ねっ、今日くらいいいじゃない。」
 
と迫られて。
 
「そうだよ。今日くらい、みんなで祝おうぜ。」
 
と他のメンバーにも言われて・・・断れなかった。
 
「じゃ・・・少しだけ参加する。」
 
「よぉーし。行こう!!」
 
そう言って、みんなは坂をおりていく。
私はしぶしぶ、後ろからみんなの後についていった。
私の少し前を歩いていた北条くんが急に、後ろを振り返った。
私と目があって、私は少し驚きながら、「どうしたの?」と彼に聞いた。
 
「アイツ・・・ホントに連絡してこないの?」
 
私と冬真(トウマ)さんとの事情を知っている北条くんは、いつも私と冬真(トウマ)さんとの事を心配してくれて。
だから、余計、私は北条くんの前では、冬真(トウマ)さんに逢えなくても平気な素振りをしてた。
逢いたくてしかたない姿なんて、見せたくなかったから。
私は、かっこつけだから。
冬真(トウマ)さんが、心を許した人にしか、自分を見せないのと一緒で、私も冬真(トウマ)さんへの想いを見せるのは、冬真(トウマ)さんだけと決めてる。
他の人には、絶対に見せない。
本当は弱くて、すぐに泣いちゃう姿とか。
冬真(トウマ)さんを異常なほど、ほしがっちゃう私とか。
そういう姿は、冬真(トウマ)さんにしか見せないの。
心から愛した人にしか・・・見せない。
だから、私は、ここでも、北条くんに強がってしまった。
 
「うん。そういう約束だったから。
でも、平気よ。
お互い、2年それなりに楽しもうって言って別れたから。
私も、それなりに楽しかったし。
離れていい事もたくさんあったよ。」
 
そんなもの、あるわけがない。
離れて得たものなんて、冬真(トウマ)さんをどれだけ愛してたか。
それを、イヤって程想い知らされただけだった。
もし今ここで、冬真(トウマ)さんに逢っちゃったら私・・・きっと、自ら襲いかかっちゃうかもしれない。
それくらい、私の心も体も冬真(トウマ)さんに飢えていた。
カラカラに・・・乾ききっていたの。
 
「麗美(レミ)ちゃんの携帯?」
 
遠くで、音楽が流れた。
そういえば、私、電車に乗ってきてたのに、バイブにしてなかった。
よかったー。電車で鳴らなくて。
なんて、思いながら、携帯をカバンから抜き取る。
液晶を見て・・・不審に思う。
だって、見たことない番号なんだもん。
見るからに、携帯番号っぽいけど。
でも、知らない番号に出るのは恐いよね。
という事で、私は無視したの。
だけど、それから、何度も何度も携帯は鳴った。
 
「知らない番号なの?」
 
少し先を歩いていたみんなも、あまりに携帯がなるもので、思わずそう聞いてきた。
 
「う・・・ん。知らないんだけど。」
 
と言いつつ、ちょっと気になった。
こんなに鳴るって、何かな?って。
いたずらではない?。
それで、7回目のコールで、勇気を出して出てみたの。
 
「もし・・・もし・・・。」
 
そう言った私に、相手の答えた言葉は・・・。
 
「合格おめでとう。麗美(レミ)。」
 
血が逆流するかと思った。
歩いていた足を、ピタと止めて、私はその場所でただ、呆然と立ち尽くした。
もちろん、側に居た北条くんも前を歩いていたみんなも、足を止めて私を見てた。
 
「ちょっと、麗美(レミ)・・・どうしたの?」
 
一人の子が、私の元に走ってくる。
そりゃ、驚くでしょ。
だって、私・・・泣いてるんだもん。
勝手に瞳から涙が、溢れてた。
 
「なんで・・・どうして、合格したの知ってるの?」
 
涙声でそう言った私に、「言っただろ?」と明るい声で言った冬真(トウマ)さんは、少し笑いながらこう言った。
 
「麗美(レミ)が医者になった時、迎えに行くって。
目の前の交差点見てみろよ。」
 
その言葉に、私は、止めていた足を一気に走らせると、長い坂を駆け下りた。
そして、目の前に飛び込んできた大きな交差点を見る。
キョロキョロと見るけど、冬真(トウマ)さんの姿はない。
 
「どこ・・・どこにいるの?」
 
頭を動かしながらそう言った時、「ここだよ。」って声が聞こえたかと思ったら、斜め前に止まっている黒い車の後部座席のウインドーが下がった。
真っ黒の窓が下がって、中の人物が姿を現した。
その姿を見た瞬間、私は走り出してた。
ちょうど、信号が青に変わり、たくさんの人が行きかう。
その中を、私はかきわけ、必死で走った。
 
「ちょっと、麗美(レミ)!飲み会は?」
 
と言った彼女に、
 
「無理だよ。麗美(レミ)ちゃんはずっと、アイツを待ってた。
俺たちなんて、眼中にないさ。」
 
「北条くんは、それでいいの?
本当は、麗美(レミ)の事、まだ好きなんでしょ?」
 
「アイツにはかなわないよ。
愛する人を2年も手放すなんて。
俺には、出来ない。
それが出来るアイツも、そして、麗美(レミ)ちゃんもホントにすごい。
2人の愛し方には、ついていけないよ。」
 
そんな会話をしてるなんて、もちろん私は知らなかった。
みんなの事なんて、スッカリ飛んじゃってたから。
今は、彼しか目に入らなかったから。
ずっとずっと逢いたかった、私の王子様の姿しか・・・目に入らなかったから。
 
 
 
車の前に着くと、そこには、運転手が立っていて、ドアを開けてくれた。
 
「どうぞ。」
 
その言葉に、私は息を切らせながら車の中をのぞくと、足を組んで涼しげに座っている彼がいた。
 
「よっ!」
 
と手を上げて笑いながら、余裕の笑顔を見せ、携帯をしまう彼。
冷静な彼とは、違って私は信じられないくらい感情的になってた。
彼の胸に飛び込むように車に乗り込むと、運転手は扉を閉めて、素早く、運転席へと戻って来た。
 
「お前・・・いきなりダイブはないだろ。」
 
と呆れながら咳き込む冬真(トウマ)さんだけど、私はそれどころじゃなかった。
だって、逢いたくて逢いたくてたまらなかったから。
私は、押し倒してる冬真(トウマ)さんの顔に触れる。
彼の暖かい温度を手で感じてると、胸が熱くなるのを感じた。
 
「本物?それとも、夢?」
 
涙ながらにそうつぶやいた私に、冬真(トウマ)さんは口元を緩ませる。
 
「自分で確かめたら?
夢か、それとも、本物か・・・。」
 
その言葉、前にもあったよね。
今回は私が、あなたを見分ける番ってわけ?
見分けるっていうより・・・あなたを味わいたい。
私の記憶にあるあなたと、重ねたい。
そんな思いを胸に私は、冬真(トウマ)さんに近付くと、彼の唇に触れた。
軽くそっと。
だけど、触れた瞬間、私の思いは噴出してきて、そんなフレンチなキスなんて、数秒で消えうせた。
乱れ激しく唇を混じり合わせる私に、付き合ってくれていた冬真(トウマ)さんもいい加減ストップをかける。
 
「麗美(レミ)・・・ちょい・・・待て・・・。」
 
わかってる。
これ以上、体も心も熱く燃え上がるキスをしちゃったら、歯止めが利かなくなるって。
ここは、走ってる車の中だもん。
ダメだってわかってる。
だけど、もう、止まらないんだもん。
運転手さんなんて、どうだっていいくらい、私はもう・・・我慢できなかった。
止める冬真(トウマ)さんの声も聞かず、私は冬真(トウマ)さんの上着もはだけさせて、彼の胸にまで愛撫を始めちゃった。
そうなっちゃえば、冬真(トウマ)さんも諦めたみたいで。
 
「ホント・・・しょうがねぇーな。」
 
と少し呆れた声をあげつつも、すごくうれしそうに聞こえたりした。
 
「右京、悪いけど少しボリューム上げてくれ。
あと、曲を妨げる雑音が入るけど、気にせず、走行してくれ。」
 
冬真(トウマ)さんのその言葉に私はもちろん、唇を離すと冬真(トウマ)さんをみつめる。
冬真(トウマ)さんは運転席に向かってそう言ったあと、私を見る。
 
「かしこまりました。」
 
と答えた運転手は、かなりBGMのボリュームをあげた。
そして、耳には、携帯にくっついてる、イヤホンマイクをつけ、こちらの音をあまり聞こえないようにした。
 
「これで、お前の期待に答えられそうだな。」
 
と言った冬真(トウマ)さんの声に、「えっ?」と言いながら、私は運転手から、冬真(トウマ)さんに目を移した。
 
「うわっ!」
 
と思ったら、急に私と彼との体勢が逆転。
気付けば、私の上に彼が覆いかぶさってた。
 
「麗美(レミ)・・・逢いたかった。」
 
さっきまでの冷静な声じゃない。
気持ちが高ぶってる時の、甘くて優しい声。
そんな声聞いちゃったら、私もその甘さに酔ってしまうよ。
って事で、彼に催促しちゃった。
 
「冬真(トウマ)さんを思い出させて。
冬真(トウマ)さんの全てを・・・。」
 
そう言って彼の方に手を差し伸べた私の手を彼は取ると、舌で私の指を堪能する。
 
「思い出させてやるよ。
俺の・・・体を・・・。」
 
そんなゾクゾクするような言葉をくれた冬真(トウマ)さんは、体だけじゃなくて、彼が私をどれだけ愛しているかも思い出させてくれた。
 
 
 
「麗美(レミ)、お前・・・なんで、泣いてんだよ。」
 
私を抱きしめたまま、座っている冬真(トウマ)さんは、そういいながら呆れた声をあげた。
冬真(トウマ)さんと再会した私は、早速冬真(トウマ)さんを味わい、最高にイカされた。
気持ちよくて、居心地がよくて、本当に幸せで。
だけど、幸せすぎて、気持ちよすぎて、私は嬉しくて泣いちゃって。
それで、冬真(トウマ)さんは優しく抱きしめてくれたんだけど、涙は止まらないの。
彼の胸にくっつきながらも、まだシクシクと泣いている私に、
 
「ホント、お前って、よく泣くよな。」
 
とタメ息までつかれて。
 
「いいの!これは、幸せの・・・涙なんだから。」
 
と泣きながら抗議するけど、
 
「なんだよ。幸せの涙って。
力説されても、泣きながらだと、説得力ねぇーよ。」
 
と、これまた冬真(トウマ)さんらしい毒舌で、私は反論できずに、「うっ。」とうなるだけ。
そんな私をみて、クスと笑った冬真(トウマ)さんは、急に側にあるカバンから封筒を出した。
 
「麗美(レミ)にこれやるよ。」
 
そう言って、ぺらぺらの封筒を私の手に握らせた冬真(トウマ)さん。
 
「何?これ・・・。」
 
と言いつつ受け取った私に、「見てみれば?」と意地悪な笑いをする冬真(トウマ)さん。
私は、彼の背中に回していた、もう一つの手も封筒に添えると、両手で中身を確認する。
中には一枚の紙が入ってた。
それを、引き出した私は、封筒を座席におくと、綺麗に折られている紙をユックリと解いた。
そして、それを開けた私は、一番上を見て、大声を上げる。
 
「婚姻届ぇー!!」
 
思わずグシャっとしかけて、危ない危ないと、力を抜いた私。
一人アタフタしている私を、涼しい顔で眺めている冬真(トウマ)さんは、おかしそうに笑ってた。
 
「笑い事じゃないよ。
どうして、こんな大事なもの、やる。とかいうのよ。」
 
と彼を責めるけど、
 
「俺の所は書いてあるから、あとは麗美(レミ)が書きたいと思ったら書いたらいい。
そしたら、一緒に出しに行こう。」
 
とまー、ノンキな答え。
書きたくなったら書けって・・・。
それって、あまり嬉しくないかも。
 
「冬真(トウマ)さんは、どっちでもいいって事?
私が書きたくならなかったら、一生書かないままでも平気ってこと?」
 
それにたいして、冬真(トウマ)さんなら、
 
「まー、それもしかたないだろうな。」
 
とかいうかと思ったんだけど、
 
「なわけないだろ?
俺が無理してかっこつけてるって、わかれよ。
麗美(レミ)にすぐに書いてもらいたいに決まってるだろ?バカ。」
 
ってすっごく意外な答えをさらに、優しいキス付きでもらっちゃったら、腰砕けになっちゃうよ。
 
「こんなの反則だよ。」
 
と文句言っちゃうけど、
 
「恋愛に反則はつきものだ。」
 
と開き直られちゃって。
 
「ホント・・・勝手なんだから。」
 
呆れ笑いをする私に、急に冬真(トウマ)さんは真剣な顔になる。
 
「式は、お互いの医者としての生活が落ち着いてからでもいいと思ってる。
でも、籍だけは、なるべく早く入れたい。
本当は、大介の手術を終えてから、陸(リク)に託されたものを全て終えてからの方が筋が通っているのかもしれない。
でも、麗美(レミ)と一時も離れたくないんだ。
それも、同棲とか恋人とか、そういう形じゃなくて、夫婦として一緒にいたい。
人生を生涯ともに出来る間柄として、麗美(レミ)の側にいたいと思ってる。
俺の思いに、答えてもらえるかな?」
 
そんな話し方、いつもしないのに。
いつもなら、従えって感じで、いいきるのに。
どうして、今は、頼み事口調なのよ。
でも、そこが、また、冬真(トウマ)さんのいいところだと思っちゃうのよね。
ちゃんと、私の意見も聞こうとしてくれてる姿勢が、いじらしいというか、かっこいいというか。
どうせ、聞く気はないだろうけど・・・。
私は、その紙を大切におると、封筒に戻した。
 
「麗美(レミ)?」
 
不安そうな声を上げた冬真(トウマ)さんに、私はさらに抱きついた。
 
「この紙は、マンションに帰ってから書くよ。
一生に一度の事だもん。
綺麗な字で書きたいじゃない。」
 
「なんだよ・・・それ。」
 
その声は、さっきとは違う安心したような気の抜けた声だった。
いつになく、コロコロ変わる冬真(トウマ)さんの様子が、ちょっとおかしかったりした。
 
「冬真(トウマ)さん。」
 
私の呼びかけに、「ん?」と言いながら私を見た彼に、私は言ったの。
 
「これからは、一生私と天(タカシ)がつきまとうからね。
覚悟してよ。」
 
ホント私ってかわいくないと思う。
もっと、「幸せにしてねぇー。」とか「うれしぃー。」とかあるだろうに。
なんで、こんな言葉しかいえないかなー。
と自己嫌悪なんだけど、私の言葉に冬真(トウマ)さんはなぜか満足そう。
 
「ああ。俺の子供として。
俺の妻として。
俺の側にずっといろよ。永遠に・・・。」
 
そして、また、私の気持ちを惑わせるキスをくれる。
陸(リク)を愛して、そして彼を失って。
それから、私は冬真(トウマ)さんを愛して、その彼と結婚だなんて・・・。
ホント夢を見てるみたい。
だけど、これは、夢じゃない。
夢じゃないけどこれは・・・奇跡だよ。
私と冬真(トウマ)さんが、お互いを想い合ってそして出来た奇跡。
これから、その奇跡で、私たちは一緒に歩いていくんだね。
まだ、手にしたばかりの夢を、本物にしていきながら。
 
「ねぇー、2人で、もっともっと奇跡作っていこうね。」
 
私の言葉に、「そうだな。」と笑った冬真(トウマ)さんの笑顔が、一瞬陸(リク)とダブって見えた。
思わず、冬真(トウマ)さんに見とれてしまう私に、
 
「ん?どうした?」
 
と不思議そうな顔をした冬真(トウマ)さん。
今の・・・なんだったの?
ホントに、陸(リク)の笑顔を思い出すくらい似てた。
だけど、思ったんだー。
もしかしたら、陸(リク)が、祝福してくれたのかな?って。
陸(リク)は、私と天(タカシ)が、幸せになる事を、何よりも願ってくれていた。
その私たちが、冬真(トウマ)さんと一緒になる事を、喜ばないわけないもんね。
それに、全てにおいて、パーフェクトな冬真(トウマ)さんに、ダメだしはできないもん。
って、そういえば、思い出した!
パーフェクトと言えば・・・気になる『あれ』は・・・どうなった??
 
「ねぇー、冬真(トウマ)さん。
冬真(トウマ)さんは、無事クリアーしたの?」
 
突然の私の言葉に、「ん?」と聞き返してきた冬真(トウマ)さんだけど、ちょっとじれったくなった私は、鋭いツッコミを入れて、さらに迫った。
 
「ん?じゃなくて!!
後継者としての勉強と、あと心臓外科医の資格。
ちゃんと、取れた?」
 
真剣に聞いたのに、
 
「麗美(レミ)が国家試験受かって、俺が資格取れないわけないだろ?」
 
となぜか、ムカつく回答をされてしまった。
抑えて抑えてって思ったけど・・・・抑えられるか!!
 
「ひっどぉーい!!何よ、その言い方!!」
 
と言って手を振り上げるけど、
 
「同じ傷なら、ひっぱたかれるよりも、爪あとの方がいいかな?」
 
とこれまた、頭をつかわなきゃいけない回答が、返ってきたぞ!
って事で、私は腕をつかまれたまま、「えっと・・・。」と考え出しちゃって。
その姿に、冬真(トウマ)さんは、「ホント、お前って、いじりがいがあるよな・・・。」とつぶやいて。
もちろん、私には聞こえなくて、
 
「えっ?何?」
 
と聞き返して冬真(トウマ)さんを見たんだけど、「いや。なんでもない。」と笑ってごまかされた。
 
「えぇー!何よ!!」
 
と彼に抱きつきながら聞くと、「それより、さっきの言葉は、わかったのか?」と言われちゃって。
 
「あ・・・そうだった。」
 
爪あとがいいってやつだよね?
なんだ?うーん・・・。
ホント、私ってバカだよね。
冬真(トウマ)さんの意地悪って気付きもしないで、必死で考えてたんだから。
あーでもない、こーでもないと考えていた私に、冬真(トウマ)さんの判決が下った。
 
「タイムオーバー。」
 
その声に、「えぇー!!待ってよ!たんまー!!」と絶叫するけど、
 
「うっせぇーよ。にぶい自分を呪え!」
 
と冷たく言われて・・・。
 
「えっ!ちょ・・・待って・・・。
ストップ・・・ストォーップ!!」
 
大声で叫んで、さらにしがみついてる冬真(トウマ)さんの背中をバシバシ叩く私に、私の腰を浮かしてた冬真(トウマ)さんの動きも止まる。
 
「なんだよ。うっせぇーな・・・。」
 
とすっごい迷惑顔というか、邪魔するなよ!って顔・・・なんなの?
信じられない!
自分が何しようとしてるか、わかってるの?
って事で、反論開始っ!
 
「うっせーなじゃないよ。
ヤダよ私・・・っていうか、出来ない。」
 
そう言いながら、冬真(トウマ)さんにしがみつくけど、
 
「大丈夫だって。
俺がやってやるから。
お前は、力抜いてたらいいから。」
 
っていうけど、無理なもんは無理!
って事で・・・ついつい、私恐すぎて泣いちゃった。
その姿に、冬真(トウマ)さんは、「はぁー。」とタメ息をつくし。
それには、思わず泣きながら、抗議。
 
「だって・・・しかたないでしょ。
初めてなんだもん。
恐いんだもん。
痛いの嫌だもぉーん!!」
 
そしてまた、冬真(トウマ)さんにしがみつく私。
何をそんなに嫌がってるかって?
それは、座位。
冬真(トウマ)さんは、それをしようとしたの。
私、これ、やった事ないのよ。
恐くてさ・・・イヤなの。
冬真(トウマ)さんは、「平気だって。」といつも笑っていうけど、私はかたくなに、「イヤだ。」を連発して、今までそれは、排除してたんだけど。
結婚が決まった直後にこれはないでしょ。
将来を誓い合っても、恐いもんは恐いのよ!
それも、ここ、車だよ。
自分の意志とは違って、振動に左右されそうでしょ。
初めての行為なのに、『予想外』が襲ってくるなんて、絶対にイヤなんだもん。
って事で、冬真(トウマ)さんに抱きつきながら、首をブンブン振って抵抗する私の頭に、冬真(トウマ)さんの手が触れた。
 
「わかった。もうしねぇーから。
泣くなよ。」
 
そう言った冬真(トウマ)さんは、私を空いているもう一方の腕で強く抱いた。
 
「・・・怒った?」
 
恐くなってそう聞いた私に、
 
「そうだな。麗美(レミ)のガキ加減に、呆れてるよ。」
 
って言われちゃって。
もちろん、「うそぉー!!」と伏せていた顔を上げて、あせりまくって、冬真(トウマ)さんを見上げたんだけど・・・。
 
「あ・・・れ?」
 
と言って首をかしげた私。
怒ってるはずなのに。
呆れてるはずなのに・・・。
なのに、冬真(トウマ)さんは・・・笑顔??
 
「な・・・んで?」
 
そういいながら、優しい笑顔を向けている彼の顔に触れた私。
そんな私の手のひらに、冬真(トウマ)さんは顔を動かすと、キスをした。
 
「怒るわけないだろ?
俺は、麗美(レミ)のそういう所も好きなんだよ。
お前の、冒険心がない・・・そういう所がな。」
 
冬真(トウマ)さんはそういうと、私を両腕で包み込むように抱きしめてくれた。
 
「麗美(レミ)は、臆病で恐がりで、痛いの苦手ってすぐ泣くだろ?
天(タカシ)の出産の時も、大変だったもんな・・・。」
 
思い出し笑いをしながらそう言った冬真(トウマ)さんは、私に優しく笑いかけてくれる。
 
「反対に俺はさ、そういう所は、表には出さないヤツだから。
恐かったり泣き出したかったり逃げたかったりしてても、強がってさ。
だから、麗美(レミ)のその姿は、ホント、かわいくてしかたない。
素直でいいなーって。
俺のもってないものを持っている麗美(レミ)に、俺は惚れたんだ。
俺も、麗美(レミ)みたいに、素直な人間でありたい。って思うけど、俺みたいな見栄っ張りが、簡単にできるものじゃないけどな。」
 
そう言った冬真(トウマ)さんは、私の頬に自分の頬をくっつけて、私と接近した。
 
「麗美(レミ)の恐怖心を、1つずつ俺が取り除いてやるから。
俺に溺れただけ、麗美(レミ)の恐いものがなくなっていくんだ。
ちょっと・・・楽しみじゃない?」
 
その笑顔が、ちょっと・・・怪しい。
って事で、早速聞いてみた。
 
「もしかして、それって・・・エッチについてだけじゃないの?」
 
すると、「当たり前だろ!」と自信満々で言われてしまった。
 
「やっぱりね・・・。」
 
と呆れたような情けない笑いをしつつも、今度は私から、冬真(トウマ)さんの頬にくっつく。
言っても無駄だと思うけど、一応念をおしておくか!って事でこんな事を一応言ってみた。
 
「あまり、スパルタはやめてよ。
ユックリ、優しく教えて・・・ね。」
 
そして、最後はよろしくのキス。
もちろん、ホッペにチュのキスは、すぐに彼に唇を奪われて、熱く激しいキスへと変わる。
さっきの冬真(トウマ)さんの言葉を聞いて私・・・すっごく幸せになったの。
だって、冬真(トウマ)さん言ってくれたでしょ?
自分にない私の姿が、好きだって。
冬真(トウマ)さんがそう感じてくれていたらいいのにって思った事が、現実になったんだもん。
嬉しくて仕方ない。
私たちは、お互いないものに惹かれたんだ。
そして、これからも、お互いをうらやましがりながら、お互いのない所をお互いで補いながら生きていくんだね。
 
「2人で起こす最初の奇跡は、大介くんの手術の成功?」
 
そう言って笑った私に、「いや。」と言って首を振った彼は何て言ったでしょう?
そう。彼を知ってる人なら、察しがつくよね。
私は・・・うっかりしてたの。
彼がそういうキャラだと・・・忘れてた。
 
「2人で起こす最初の奇跡は、もちろん、座位の成功だな。」
 
「はぁ?」
 
もちろん、バカ面にポカーンと口を開けた私。
 
「何、考えてんのよ・・・バカ・・・。」
 
呆れるを通り越して・・・頭が痛いよ。
頭痛がしてきた私は、頭を軽く抑えながらそういう。
その姿に、クククと楽しそうに笑った彼は、私にキスの嵐をしながら言葉を投げてきた。
 
「麗美(レミ)のその反応が、たまんねぇー。」
 
私のアタフタぶりを見たいが為に、そんな意地悪を言ってるの?
ホント・・・超ドSなんだから!
呆れながらタメ息をついた私に、「あっ。そうだ。」と冬真(トウマ)さんは何かを思い出したのか、急にキスを止めて私を見る。
もちろん、
 
「何?また、エッチな事、思いついたの?」
 
と先手で言ってやったのに、
 
「バカ。違うよ。」
 
と言われてさらに、「麗美(レミ)は、ホントにスケベだなー。」と言われた。
なによ!失礼しちゃうわねぇー。
自分のエロさを棚に上げて、何をいうかなぁー。っていうか・・・よくよく考えたら悔しい。
日ごろエッチな冬真(トウマ)さんの上をいって、悔しがらせてやろうと頑張ったのに、見事に不発で、しかもエロイといわれてさ・・・。
ガッカリの私は、「で・・・なに?」と簡潔に、力なく答えた。
 
「アリシエが言ってたよ。
結婚式は是非呼んでくれって。」
 
それには、たれていた顔も勢いよく、ピョーンと跳ね上がる。
 
「もちろん、呼ぶよ!!
それより、アリシエさん元気?」
 
うれしそうにいった私に、「ああ。」と答えた冬真(トウマ)さんは、笑いながら私の髪に触れる。
 
「お前、アリシエとかなり打ち解けたみたいだな。
外人には抵抗があるかと思っていたけど、アリシエは別だったか?」
 
そういわれたら・・・そうだ。
アリシエさんは、外人だったのに・・・。
全く、そんな感じがなかったよ。
 
「だって、アリシエさん、日本語で話してくれてたから。」
 
って言って、気付いた。
 
「ねぇー、どうして、アリシエさんって、あんなに日本語が上手なの?」
 
実はずっと気になってたんだけど、アリシエさんに聞くのも悪い気がして聞けなくて。
七葉(ナナハ)ちゃんに聞こうにもタイミング逃しちゃってね。
すると、「あー、だって。」と答えた冬真(トウマ)さんは、すごい事を言った。
 
「アリシエは、混血だから。」
 
って。「えっ?」と驚いた私に、彼は詳しく教えてくれた。
 
「オフクロさんが、日本人なんだよ。
だから、日本語がペラペラなんだ。
ちなみに、アイツの奥さんも日本人だよ。」
 
「そう・・・なんだー。」
 
でも、納得かも。
日本人女性の扱いになれてるもんねぇー。
きっと、アリシエさんの奥さんは、それはそれは、アリシエさんに大切にされているんだろうなー。って思う。
思わずウンウンと頷く私に、
 
「変なヤツだな。」
 
とおかしそうに笑った冬真(トウマ)さんは、ポケットからタバコを出すと、それを加えた。
そして、少し小窓を開けると、タバコに火を灯し、煙を外にフゥーと吐いた。
そのしぐさと香りをかいだら、つい私ったら、笑っちゃって。
 
「何笑ってんだよ。」
 
と不思議がられたけど私は、何も言わず、そのまま、強引に冬真(トウマ)さんの唇を奪って、舌を絡ませるキスをした。
実はこれがすっごく好きなの。
ディープキスがって事じゃなくて・・・この味が。