2007/11/24


4     3章  うらみ
火の始末。
電気の消し忘れ。
すべてをチェックした私は、玄関へと向かう。
そして、廊下に置いていた荷物を、手にする。
その時、階段から足音が聞こえた。
私の目が、上へと注がれる。
 
「麗美(レミ)ちゃん!支度できた?」
 
私に笑顔を向けてそういうのは、憧れの匠(タクミ)さん。
 
「はい。戸締りオッケーです。」
 
と私も、匠(タクミ)さんの笑顔に負けないくらいの笑顔で答えた。
 
あの日・・・。
高熱のせいであり、さらに意外な一面を見てしまったせいで、大混乱を起こしたとはいえ・・・、よりにもよって『あの』陸(リク)とキスしちゃった私。
さらには、彼を求めている自分の心を、知ってしまって・・・。
でも、私はあの時の誓いを、守ってる。
あの日以来、陸(リク)とは触れる所か、全く話もしてない。
というか、正確には、『話せない!』と言った方が、あってるかも!
だって、あの日からずーっと、ずーっと私の横には、匠(タクミ)さんがいるんだもん!
どうしてかは、全くわからない。
でも、家で私が部屋以外の場所に、いるじゃない?
例えば、食事を作ったり、お弁当を作ったり、家事をしたり。
その時もずーっと、匠(タクミ)さんは私の側にいる。
本を持ってきて、側で読んでる。
おしゃべりしたりもするけど、本を読んだり、ニュースを見たりしてる事が多いかな?
だから、私が朝、早起きしてお弁当作ってると、匠(タクミ)さんも起きてきて、リビングにいるの。
最近、陸(リク)の帰りが遅くて、お弁当作ってる頃によく、帰ってくるのよ。
シャワーを浴びた陸(リク)が、キッチンに水を取りに来たり、ゴソゴソしたり、ウロウロしたりはするけど、匠(タクミ)さんがいる手前、『あの事』はもちろん口にはしないし、まして触れ合ったり、他の事を話したりもできない。
せいぜい、「おかえり。」「ああ。」これくらいなの。
結局、まる1ケ月、陸(リク)と会話らしい会話をしてない。
あんな状態で、陸(リク)と終わってたから、すごく気にはなってるし、また取り乱しちゃって心配かけちゃったから謝りたいんだけど・・・それもできないのよね。
でも、最近、それでよかったかも?って、ちょっと思い出してる。
陸(リク)に何か聞かれたり、抱きしめられたら、私はまた気持ちが抑えられなくなるから。
あと5ケ月、何もなくこのまま、無事に過ごさなきゃなんないから。
それが、結果的に匠(タクミ)さんを利用する事になっても・・・。
陸(リク)への気持ちは、封印しなきゃいけないんだから!!
 
私は、靴を履き、外に出ようとした時だった。
 
「あっ!今日提出のレポート、忘れた!
あれ・・・どこにしまったっけ??」
 
と急にあせって、匠(タクミ)さんは階段をのぼる。
そして、「あっ!」というと、私の方に振り返った。
 
「麗美(レミ)ちゃん!探すのに時間がかかるかもしれない。
先に行っといて!!」
 
でも、私は、「平気平気。」と笑顔で答えると、
 
「まだ、早いからここで待ってます。
ゆっくり探してきてぇ〜。」
 
と手を振って、匠(タクミ)さんを見送る。
 
「ごめんね。」
 
と匠(タクミ)さんは、私に手を合わすと、急いで部屋へと駆け上がっていった。
 
「じゃ、座って待ってよぉーっと。」
 
私は、靴を履いたまま、廊下に腰をおろした。
その時、玄関の扉が開いた。
 
「えっ?」
 
って声が自然と出た。
次の瞬間、開いた扉から、入ってきた人を見て私は思わず両手を口に当てて、声を抑えた。
だって、彼を見て、思わず名前を言いそうになったんだもん!!
彼の事を、名前で、しかも呼び捨てで呼んでるなんて、匠(タクミ)さんに知られたら、なんか色々聞かれそうじゃない。
だから、声になった言葉を、必死で手の中におさめたの。
彼の突然の登場に、アタフタしている私と違って彼は、私の姿を見ても、別に驚く風もなく、持っていたヘルメットを床に置くと、ジャケットを脱ぎ始めた。
目をまん丸にして彼を見ている私に、いい加減腹が立ってきたのか、彼はジャケットもその辺に適当にかけると、私の方を見た。
 
「言いたい事があるなら、言えよ!」
 
私は、口を抑えたまま首を振った。
言いたい事?
そんなの・・・あるわけないじゃん。
っていうか、あっても言えないよ。
だって、いいたい事は、たった一つしかないんだから。
 
言いたい言葉を必死で、心の中で浄化しているのに、陸(リク)はそんな事お構いなしで、自分の気持ちを私にぶつけてくる。
 
「それで?今日は、腰ぎんちゃくはいねぇーのかよ!」
 
低くて冷たい声。
屋上で初めて陸(リク)と話した時。
その時みたいに、すごく冷たいというか、なんていうんだろう。
興味がないというか、どうでもいいというか。
心がこもってない・・・そんな声だった。
1ケ月前、私に熱いキスをくれたり、うっとりしてしまうようなドキドキの声で、麗美(レミ)と囁いてくれた彼じゃなかった。
私は、ショックのあまり何も言えなくて、その場でただ呆然と座っていた。
私のその態度が、陸(リク)を余計苛立たせたみたいで、彼は急に自分の髪を、ワーッとかき乱した。
 
「俺と、話するのも嫌って事か。
まー、大好きな匠(タクミ)とつきあってるんなら、俺なんかと関わりたくないっていうのも、わからなくはないがな・・・。
匠(タクミ)とよろしくやってろよ!」
 
陸(リク)はそういうと、前かがみになって、靴紐を解き始めた。
私は・・・腹が立ってきた。
 
なんなの?あの言い方!!
私が、匠(タクミ)さんとつきあってる??
そんな事あるわけないし、私は一言もそんな事言ってないじゃない!
それに、よろしくやれって・・・陸(リク)は平気なの?
私が匠(タクミ)さんと、つきあっても平気なの?
 
匠(タクミ)さんの行動もわけわかんないし、やっとこうして話す事ができた陸(リク)もわけわかんなくて、私は思わず・・・切れちゃった。
 
「バシっ!」
 
って音がしたかと思ったら、「いってぇー。」と陸(リク)の声。
痛いのは当たり前!
だって、私ったら、怒りのあまり持っていたカバンを、前かがみになっている陸(リク)の頭に、めがけて投げたんだから。
 
「なんなんだよ!!」
 
と怒りながらそのカバンを拾って、顔を上げた陸(リク)はそこで、動きを止める。
 
「お前・・・・。」
 
陸(リク)はそういったあと、私の頬に手で触れた。
 
「何で・・・泣いてんだよ。」
 
私の思いは止まらなくて、涙が溢れてた。
でも、そうなっちゃえば、気持ちも止まらない。
今度は言葉が出てきちゃった。
 
「陸(リク)、全然わかってない!
陸(リク)なんて、サイテー。大っ嫌い!!」
 
そう叫びながら、陸(リク)の胸をバシバシ叩くけど、すぐに陸(リク)はそんな私を強引に抱きしめた。
私の顔が、陸(リク)の体温を感じる。
私は、たまらず、陸(リク)に抱きついた。
 
「陸(リク)・・・。」
 
そういいながら、さらに強く彼に抱きつく私を、陸(リク)はまるで壊れ物を扱うみたいに優しく抱きしめた。
 
「麗美(レミ)・・・お前、匠(タクミ)とつきあってんのか?」
 
私は首を振った。
また、そんな事言ってる。
なんで?って聞きたいけど・・・聞けない。
だって、今はそれどころじゃないから。
寂しくてポッカリ穴が開いていた私の心が、陸(リク)の鼓動を感じて、暖かさを取り戻すのに必死だったから。
私の心は、陸(リク)の暖かさで、いっぱいになってた。
 
「だったら、なんで、四六時中、お前匠(タクミ)といるんだよ。
家でも、学校でも一緒だろ?
昼飯も、匠(タクミ)と一緒に食ってるし・・・。
学校で、お前と匠(タクミ)がつきあってるって、噂になってるぞ。」
 
それは・・・なんとなく、気付いてた。
だって、陸(リク)のいう通り、匠(タクミ)さんは、学校でも授業を受けてる時間以外は、ずーっと私といるんだもん!
まるで、『監視』されてると言った方が、正しいくらい。
不思議に思った私は、聞いたのよ。
 
「なんで、ずーっと一緒に、いてくれるんですか?」
 
って。そしたら、
 
「一緒に居たいから。俺じゃ、不満?」
 
なんて匠(タクミ)さん、言うんだもん!
私は、匠(タクミ)さんに憧れていたわけだし、不満なわけないじゃない。
それに、匠(タクミ)さんと一緒に居れば、陸(リク)の事を考える暇がなくて、自分の心の奥の気持ちに向き合う時間もないから、正直助かる。って・・・そう思ったの。
でもね、人の気持ちなんて、そんな簡単なものじゃないと知った。
考えちゃいけない。逢っちゃいけない。って思えば思うほど、陸(リク)の事を考えてしまって、そして、逢いたくてたまらなくなる。
安らぎと安心を与えてくれる彼の腕に、抱きしめられたいって、そう心が叫んでしまう。
でも、そんな思いに気付いた私は、苦しむの。
陸(リク)をこんなに求め、親友と母親を裏切ろうとしている自分の冷徹さ。
そして、憧れの人を利用しようとしている自分の残酷さ。
私は、3人の人を傷つけてしまうの?
ううん。もしかしたら、もっともっと傷つけてしまうかもしれない。
陸(リク)にも迷惑が、かかるのは目に見えてる。
今が、一番大事な時なんだから。
ねっ、そういう事を考えていると、ドンドン自分を追い詰めてしまうの。
苦しくて苦しくて、たまらなくなる。
本当は、もっともっと陸(リク)に抱きしめてもらいたかった。
本当は・・・熱いキスをもらいたかった。
でも、私は神に誓ったんだもん。
陸(リク)とはもう、関わらない。
彼には、触れないって・・・。
私は、自分の気持ちを必死で抑えて、陸(リク)の体から自分の手を離し、その手で今度は彼の両腕をつかんで、私は彼の腕から離れた。
 
「麗・・・美?」
 
陸(リク)は不思議そうな顔で、私を見た。
 
お願いだから、そんな顔しないでよ!
本当の事、言っちゃいそうになるでしょ!
匠(タクミ)さんとはつきあってない。
私が好きなのは、陸(リク)なんだって・・・。
 
そんな思いが私の胸をいっぱいにする。
でも、私はそれを、必死で消しゴムで消した。
そして、新たな思いを、心に刻む。
 
「匠(タクミ)さんとはつきあってない。
でも、匠(タクミ)さんは、私の憧れだったから・・・。
早く、匠(タクミ)さんに告白される事を・・・陸(リク)も祈ってて!」
 
なんていって、私は無理に笑顔を作る。
こんな事を、言いたいんじゃない。
でも、本当の事は言えない。
誰も、傷つけたくないの。
そして何より、陸(リク)を振り回したくないから・・・。
陸(リク)・・・ごめんね。
 
私は一瞬目をつぶり、心の中でそう強く思った。
そして、すぐに目を開けると、先に外に出ていようと思い、
 
「じゃーね。」
 
と陸(リク)に声をかけると、陸(リク)の横をすり抜けて、玄関のノブへと手をかける。
あともう少しで、ドアノブがつかめそうだった私の右手が、急に遠ざかる。
そして、私の左手が急に何かにひっかかったかのように、強く後ろにひっぱられた。
 
「な・・・に?」
 
私はたまらず後ろを振り返った。
 
「んっ!・・・・。」
 
それ以上の言葉は、でなかった。
ただ感じたのは、陸(リク)の体温。
1ケ月前に感じた、陸(リク)の熱くて力強い唇だった。
この感触。この温度。この熱い吐息。
感じる全てが、私の心を熱くさせた。
心にしまっていた彼への思いが、フツフツと呼吸をし出す。
冷たく冷(ヒ)やされていた思いが、少しずつ熱を持ってくるのが自分でも感じれた。
恐くなった私は、力いっぱい彼をおしのけると、強引に唇を離した。
本当だったら、「何するのよ!」と言って「バシ。」と平手打ちをするのかもしれない。
でも、そんな事出来なかった。
だって、嫌じゃなかったんだもん。
もちろん、それもある。
あるけど、今は、そうじゃなくて、必死すぎで余裕がなかったの。
熱くなりだした彼への思いを、また冷たくする為に、私は今必死になって自分の気持ちを押し殺していたから。
私は、何も言わないで、とりあえず、この場から早く出ようとする。
だけど、そんな私をまた彼は、強引に自分の方に向けると唇を近づけてくる。
 
「お願い・・・やめて!!」
 
彼の腕の中でもがく私を逃がさないように、陸(リク)は腕にさらに力を入れる。
そして、「フッ。」と笑うと、「よくいうよ。」と言って私の顔のすぐ近くで止まると、私に話しかけてきた。
 
「俺のキス・・・イヤじゃなかっただろ?」
 
陸(リク)はそういうと、また私にキスをしてくる。
私は必死で抵抗をして、なんとかすぐに逃(ノガ)れられた。
 
「イヤに決まってるでしょ!
こんな強引な事する、陸(リク)なんて、大嫌いっ!」
 
って強気で言ってみるけど、陸(リク)は私の口を今度は右手で抑える。
 
「んー・・・んー!!」
 
と叫ぶけど、陸(リク)の手で抑えられてしまって、うなり声しか聞こえなくなってしまった。
それでも必死で叫ぶ私を、陸(リク)は少しおかしそうに見てた。
 
「デカイ声出すなよ。
匠(タクミ)に気付かれるだろ。」
 
陸(リク)はそういうと、私の頬に軽いキスをした。
それは、さっきとは違う、強引で強くて、奪うようなキスじゃなくて、暖かくて優しいキス。
1ケ月前にくれたキスを思い出すような・・・そんなキスだった。
だから、私は叫んでもがいていたのに、ピタっとやめて、くいいるように陸(リク)を見てた。
そんな私を陸(リク)はまた、おかしそうに少し笑って見ると、「そんなに驚くなよ。」と口にする。
そして、抑えていた手を取ると、さらにイタズラっ子みたいな顔になる。
 
「さっきの優しいキスもいいけど、麗美(レミ)は、激しいキスの方が感じるだろ?」
 
それには、「はぁ?」とバカ面。
そして、それだけではとどまらずに反撃!
 
「そんなわけないでしょ!」
 
でも、間髪をいれずに、陸(リク)は言い返してくる。
 
「だって、さっき、メッチャ、俺のキスに、感じてたじゃねぇーか!」
 
「感じてません!」
 
と精一杯抵抗してみるけど、陸(リク)は相変わらず軽く笑ったまま、言葉を続けた。
 
「お前、匠(タクミ)の事なんて、何とも思ってないんだろ?
お前が好きなのは、俺だろ?」
 
ドキってした。
バレてるって・・・。
でも、私は、頑張って否定する。
力が入りすぎて、明らかに不自然すぎる程の否定だったけどね・・・。
 
「そんなわけないでしょ!
私は、陸(リク)が嫌いだって言ってるじゃない!
匠(タクミ)さんは、私の憧れの人なの!
理想の人なんだから!!」
 
「だったら、匠(タクミ)の事、好き?」
 
「そうよ!す・・・。」
 
ダメだ・・・言えない。
 
私は、途中で口を閉じてしまった。
嘘でも、好きな人の前で、他の人が好きだなんて・・・言えないよ。
そんな事、私にはできない。
胸が苦しくて、たまらず涙ぐむ私の頭を、陸(リク)は優しくなでてくれた。
 
「もういい・・・。」
 
陸(リク)のその言葉に私は、陸(リク)を見上げた。
涙でたまっていた瞳から、水滴が下に流れ落ちた。
その玉を目で追った陸(リク)は、「俺って・・・サイテーだな。」とボソっというと私に目を移した。
 
「お前のこと、泣かしてばっかりだ。」
 
少し悲しい顔で陸(リク)はそういうと、また私の髪をなでる。
なでながら、「でもな・・・・。」と言うと、今度は私をとても優しい顔でみつめた。
 
「俺・・・知りたいんだよ。」
 
陸(リク)の言葉に、私は目で訴えた。
『何を?』って・・・。
それを理解した陸(リク)は、続けた。
 
「麗美(レミ)が、本当は誰を好きなのか。
そして、麗美(レミ)が、あんなに脅(オビ)えている物は、何なのか。
それに、麗美(レミ)!
お前、俺に隠してることあるだろう?
それが、原因で、お前素直になれないんじゃないのか?
俺は、本当の麗美(レミ)が・・・。
麗美(レミ)の全てが知りたいんだ。」
 
陸(リク)はそういったあと、「俺に時間をくれ。」と真剣な声で言ったかと思ったら今度は、真剣な瞳でこう言った。
 
「二人でちゃんと話がしたい。
だから、今日、昼休みに、屋上に来てくれ。」
 
でも、私は首を振った。
その姿に、ピンと来た陸(リク)。
 
「匠(タクミ)のことを、気にしてるのか?」
 
私は、頷いた。
 
「友達と飯喰うとか、言えばいいだろ?」
 
陸(リク)はそういったあと、強引に私を自分の胸へと抱き寄せた。
 
「頼むよ、麗美(レミ)・・・。
必ず、来てくれ。」
 
耳元で囁いた彼の声が、私の心にしみわたった。
私は何も考えないまま、素直に彼の胸の中でシッカリとうなずきながら、「うん。」と答えてた。
そして、そのまま今度は、顔を上げて彼を見上げた。
それに気付いた陸(リク)も、少し腕を緩めると、私を見る。
 
「本当は・・・。」
 
って言いかけて、私は口を閉じた。
 
「何?」
 
陸(リク)は、優しく聞いてくる。
でも、私は、「ううん。なんでもない。」と、目をそらしてごまかした。
 
危ない、危ない。
陸(リク)の優しい囁きと、暖かい腕で、たまらず本音を言いそうになってしまった。
私は、間一髪の所で、自分を踏みとどまらせた。
なんだけど・・・それを、また陸(リク)が崩しにかかる。
 
「言えよ!何だよ。」
 
私は、「何でもないって。」と、あくまで笑ってごまかすけど、「麗美(レミ)・・・。」と陸(リク)は私の名前を呼ぶと、私の頬に右手を沿わしてきた。
 
「言ったろ?本当のお前が知りたいって。
それは、麗美(レミ)の心が知りたいって事なんだよ。
頼む。俺に、本当の麗美(レミ)を見せてくれ。」
 
ずるいよ。そんな真剣な顔で言わないでよ。
私が一番心が動いちゃう『陸(リク)の体温』を、私に感じさせないでよ。
 
なんて心で愚痴っちゃうけど、愚痴った所で心は決まってる。
今、陸(リク)に対して想っている思いは、もうブレーキが利かなくなった。
私の顔に触れている陸(リク)の手に、私は左手を合わせると、彼のぬくもりを、頬と手のひらに感じた。
そして、ソッと目をつぶった。
 
「本当は、さっき帰って来た陸(リク)をみて、すぐに言いたかった言葉があったの。
でも、どうしても言えなくて飲み込んで、我慢したの。
だから、陸(リク)に何も声がかけれなかった。」
 
「何を、言おうとしたんだ?」
 
陸(リク)の言葉に私は目を開ける。
「ん?」と優しく聞いてくる陸(リク)を見ていると、自然と口が開いた。
 
「陸(リク)のぬくもりを、ずっと感じたかったって・・・そう言いたかったの。」
 
そう言ったあと、私は自分から陸(リク)に抱きついた。
そして、次に言った言葉は・・・。
 
「陸(リク)・・・。ずっと、こうしたかった。」
 
って・・・。
何も考えてなかった。
知らない間にそう口走ってた。
頭で考えるよりも、心の叫びが、口を通して言葉になってた。
私の言葉を聞いた陸(リク)は、私の頭を優しくなでながら、強く私を抱きしめた。
そして、今まで聞いたことがないくらい、優しくてつやのある色っぽい声で言ってくれたの。
 
「俺も、ずっと、こうしたかったよ。」
 
って。
そのあと、陸(リク)は自分の口を、私の耳元に近づけた。
 
「麗美(レミ)が俺を呼ぶ『陸(リク)』って声が、耳から離れなくてさ。
麗美(レミ)を感じたくて、たまらなかったよ。」
 
そこまでいうと、陸(リク)はまた私に唇でふれてくる。
今度は、私も素直な気持ちで彼を求め、そして受け入れた。
もちろんお母さんと由梨華(ユリカ)には、申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
だけど・・・もう、抑え切れなかったの。
陸(リク)を求めてしまう自分の気持ちに・・・。
私が思う罪悪感をも飲み込んでしまった陸(リク)への思いに、正直驚いていた。
でも、それを考えている暇はなかった。
陸(リク)と重なった唇からは、ドキドキと陸(リク)の温度とそして、彼が私を少しは想ってくれているのだと伝わる想い。
色んな物が感じれたうれしさと、彼を感じれた感動とで、私の心は乱れていた。
お互いが求めて、そして、舌をからめる熱くて激しいキスをしていたけど、しばらくして陸(リク)から唇を離した。
息が上がっている私をよそに陸(リク)は、私の唇に、チュッチュと軽いキスを繰り返しながら、こう言った。
 
「匠(タクミ)が、もうじき降りてくる。
アイツにみつかると、厄介だから・・・ここまでにしとくか。」
 
そして、唇を離すと、少し笑う。
 
「続きは・・・屋上でな。」
 
そういうと、私の額に軽いキスをした陸(リク)。
なんだけど、すぐに、「ダメだ・・・やっぱ、無理。」なんていったかと思ったら、また唇を重ねてきた。
私の意志は知らん顔?って思っちゃうけど・・・でも、いいや。
私も、もう少し陸(リク)を感じていたかったから。
でも、今度のキスは、陸(リク)が一方的に私に、熱い想いを注いだだけで、私が返そうとした瞬間に、唇を離されてしまった。
 
「これ以上進むと、さっきみたいに我慢できなくなるからな。」
 
そして、私から離れると陸(リク)は、「じゃーな。」と言って靴を脱ぐ。
そのまま2階にはあがらずに、バスルームへと歩いていった。
 
「ごめん、待たせて。」
 
陸(リク)の姿が完全に見えなくなった時に、丁度タイミングよく匠(タクミ)さんが、2階から降りてきた。
 
「ううん・・・大丈夫。」
 
陸(リク)のキスで、心も体も熱くなってテンションが上がっていたけど、必死でそれを抑えて隠しながら、私は匠(タクミ)さんに答えを返した。
 
「じゃ、いこうか。」
 
といって匠(タクミ)さんは靴を履こうとした。
そして、ある物に気付いた匠(タクミ)さん。
「えっ?」といって驚き、そしてすぐに私を見た。
 
「陸(リク)が、帰って来たの?」
 
私は、「うん。」とあくまで平気で答えた。
だけど、匠(タクミ)さんは、急にすごい剣幕で私に問いただしてきた。
 
「何を話した?いや・・・何かされた?」
 
腕をつかまれ、大声で言われて私は、恐くて首をすくめてしまう。
 
何?何なの?
 
これが、私の思いだった。
どうして、匠(タクミ)さんは、陸(リク)の事になると、こんなにめくじらたてるの?
一体・・・何?
って思うんだけど、恐くて聞けなかった。
恐くて黙っている私に、さらに匠(タクミ)さんは、問いただしてくる。
 
恐いよぉー。陸(リク)!助けてぇー。
 
と心で叫んだ時だった。
 
「朝っぱらから、兄妹喧嘩かよ!」
 
シャワーを浴びていたはずの陸(リク)が、さっきと同じ服装のまま、こちらに近付いてきた。
陸(リク)の声に、匠(タクミ)さんは私から手を離すと、陸(リク)をすごい鋭い目つきで見た。
 
「お前、今麗美(レミ)ちゃんに何かしただろ?」
 
だけど、陸(リク)は、「いや、何も。」と平然と答えて、私たちの横を通り過ぎ階段を何段か登った。
 
「おい、陸(リク)!」
 
とさらに叫ぶ匠(タクミ)さんに陸(リク)は、登っていた足を止め、面倒くさそうにこちらに振り返った。
 
「くどい!そんな事より、さっさといけ!
朝っぱらから、うるせぇーよ!
こっちは、残業させられて、クタクタなんだからさ。
寝るから、お前らは邪魔!!
早く、行け!!」
 
といいながら、さらに、両手で「シッシ。」といいながら、私たちを追い出すポーズをした。
 
「そこまでいうなら・・・信じるけど。」
 
と匠(タクミ)さんもしぶしぶ答えると、今度は私を見た。
 
「じゃ、行こうか。」
 
その言葉に私は、「はい。」と答えると、いつもみたいに先に匠(タクミ)さんを外に出す。
そして、私もドアへと一歩足を進めるけど、何か背中に視線を感じたので、匠(タクミ)さんが外に出たのを確認してから、後ろを振り返った。
やっぱり・・・期待していた通り、陸(リク)の瞳が私を見ていた。
 
「じゃー・・・ね。」
 
と口にしたあと、私は心の中で言った。
『お昼に逢いに行くから』って。
きっと、その言葉は、目で陸(リク)に訴えていたのかもしれない。
急に陸(リク)は優しく笑うと、
 
「ああ。『また』な。」
 
って答えてくれた。
その『また』は、すぐにくる『また』だと知る。
匠(タクミ)さんに嘘をついているのも、申し訳ないって気持ちはある。
でも、陸(リク)とどうしても話がしたい。
実際、何をどう話すかなんて私にもわからないし、本当はこれ以上陸(リク)に関わらない方がいいのかもしれない。
だけど、もう遅い。
私の心は、走り始めてしまったから。
だったら、逃げててもしかたない。
とりあえず・・・前に進もう。
そう思ったの。
 
 
 
昼休みの前の4限目の今。
急に自習になって、教室は少しだけおしゃべりの声が聞こえていた。
席が前後の私と由梨華(ユリカ)は、もちろんさっさと課題をすませちゃって、おしゃべりタイム。
話題はもちろん、陸(リク)の事。
私は、思い切って、由梨華(ユリカ)に全てを話そうと思ったの。
そして、話したんだ。
陸(リク)への本当の気持ちに、気付いてしまった事。
そして、彼と交わした屋上でのキス。
高熱で寝込んだ時に助けてもらって、キスを貰った事。
あと、今朝の事と、昼休み逢う事になってる事。
由梨華(ユリカ)は黙って、全てを聞いてくれた。
そして、最後に、「本当にごめん。」と深々と頭を下げた私に、由梨華(ユリカ)は、「いいよ。」と簡単に私を許した。
それには、拍子抜けしちゃった私。
 
「なんで・・・いいのよ。」
 
とまで言っちゃったくらい。
でも、由梨華(ユリカ)は、「だって。」と言うと、「予想はしてたから。」と口にする。
 
「そう・・・なの?」
 
と聞く私に、
 
「正確には、『麗美(レミ)が陸(リク)先輩を好きになれば、いいなー。』って思ってたんだけどね。
二人、お似合いだもん!性格が相性よさそうだし!」
 
なんて言う。
そういえば、前に由梨華(ユリカ)言ってたっけ。
陸(リク)が私のトラウマを、撃退してくれる人だって。
裏を返せば、私が陸(リク)に惹かれているんだと、由梨華(ユリカ)は私よりも前に気付いていたって事?
でも・・・。
 
「もっと、責めてくれていいのに。」
 
って言うけど、反対に、「何を責めるのよ!」とまで言われちゃった。
「だって・・・。」と言葉につまる私に、由梨華(ユリカ)はニッコリと笑う。
 
「言ったでしょ!
陸(リク)先輩は、私の憧れだって。
で、恋愛対象なら、匠(タクミ)さんだって!
でも、実は今、本気で二世をねらってるのよね!」
 
それには、「ん?」と言って私は、止まった。
今、『二世』って言わなかった?
それって、もしかして・・・。
 
「あのさぁー。その二世って、もしかして・・・。」
 
と、しどろもどろになりながら聞く私に、由梨華(ユリカ)は、「もちろん!」というと、
 
「梅澤病院の息子よ!」
 
だって。
 
「やっぱりねぇー。」
 
とつい口にでちゃった。
 
「やっぱりねぇー。って・・・どういう意味よ!!」
 
そういえば、冬真(トウマ)さんの事は、由梨華(ユリカ)には言ってなかったんだった。
「実はね・・・。」と私は、陸(リク)と冬真(トウマ)さんが、大の親友である事。
そして、私も、梅澤病院の副院長の息子の冬真(トウマ)さんに逢っちゃった事を、全て白状したの。
もちろん、第一声は、
 
「どんな人だった?」
 
って、すっごい身を乗り出して聞かれちゃった。
 
「とても優しくていい人だったよ。」
 
と答えると、「そうなんだよねぇー。」といきなり、由梨華(ユリカ)は語りだした。
 
「病院の看護師さんに聞いたのよ!
そしたら、院長の息子の春(シュン)さんは、女性にはあまり興味がないみたいで、女性に対しては冷たいらしいのよ。
で、副院長の息子の冬真(トウマ)さんは、面倒みがよくて、優しくて、人からウケがいいって言ってた。
だから、私は、冬真(トウマ)さんを狙おうかと思ってたんだけど、まさか麗美(レミ)が逢ってたなんて。
じゃーさ、陸(リク)先輩とつきあったらさ、冬真(トウマ)さんを紹介してよ!」
 
それには、「無理かも。」と答えた私。
 
「何でよ!!」
 
と少し怒り気味の由梨華(ユリカ)が恐いけど、私はビクつきながら頑張った。
 
「だって、私は陸(リク)とはつきあわないから。」
 
もちろん、「はぁ?」と由梨華(ユリカ)はマヌケな声を出す。
 
「何なのよぉ〜。」
 
と言ってみるけど、「それは、こっちのセリフ!」と強く言われた。
シュンとする私に、由梨華(ユリカ)は、「もしかしてさ・・・。」と口にすると急に真剣な顔つきになる。
 
「おばさんに言われた事、気にしてるの?」
 
その言葉に素直な反応をしてしまう私は、ドキっとして言葉を失った。
私の態度で、「そっかー。」とため息混じりに言った由梨華(ユリカ)。
とても悲しそうな彼女の顔を見ると、たまらず聞いちゃった。
 
「なんで、由梨華(ユリカ)がそんな顔するのよ。」
 
って。
すると由梨華(ユリカ)は、「だってさ。」と口にすると・・・。
 
「せっかく、好きだって思えた人じゃない。
それに、きっと陸(リク)先輩だって、麗美(レミ)の事好きなんだと思うよ。
二人とも想い合ってるのにさ、つきあえないなんて、悲しすぎるじゃない。」
 
そんな事言われたら、私まで悲しくなってきちゃうでしょ!
なんて、心で文句をいいながらも、由梨華(ユリカ)の優しさが嬉しかったりした。
だから素直に言えた。
 
「ありがとうね。」
 
って。それには、「ん?」と不思議そうに聞いてくる由梨華(ユリカ)。
私は、悲しい顔とは一変して由梨華(ユリカ)に、微笑みかけた。
 
「陸(リク)を好きだと認める事は、お母さんと由梨華(ユリカ)を裏切る事だって思ってたから。
その由梨華(ユリカ)が、認めてくれて・・・すごく、うれしい。
由梨華(ユリカ)に思い切っていってよかった。」
 
「そっかー。」
 
と由梨華(ユリカ)は答えただけだった。
しばらく、私たちの間に、穏やかな空気が流れたけど、急に由梨華(ユリカ)が何かを思い出したように、「そういえばさ!」と言い出した。
 
「何?」
 
「麗美(レミ)さ・・・今日行くんでしょ?」
 
そういって、人差し指を上に向けた由梨華(ユリカ)。
 
「うん。陸(リク)と向き合おうと思ってる。」
 
「それって、気持ち伝えるの?」
 
だけど、私は「わかんないよ。」と首を振った。
 
「行って、何を言うのかもわからない。
でも、逢いたいって思うから・・・いく。」
 
私の答えに由梨華(ユリカ)は、少し黙っていた。
だけど、「あのさー。」と言いにくそうに口を開いた。
 
「思うんだけど・・・。」
 
「何?」
 
「陸(リク)先輩に、全て話してみたら?」
 
「全てって・・・何を?」
 
「だから・・・。」
 
由梨華(ユリカ)の言い分はこうだった。
陸(リク)を好きな気持ちも、それを突き通せないのは、母親に反対されている事。
母親みたいになってしまう自分が怖い事。
全てを話しても、陸(リク)はちゃんと受け止めてくれるんじゃないかな?って。
諦める必要はないと思う・・・。
彼女はそう言った。
 
「そんなのわかってるよ。」
 
私は、ちょっと声を出しながら笑っちゃった。
私の答えと笑いにビックリしたのは由梨華(ユリカ)。
「へっ?」と言って少し黙る。
そして、我に返ったのか、急に大きな声で叫んだ。
 
「わかってるって!!じゃーなんでよ!!」
 
その声に、周りの生徒がこっちを向く。
 
「もう!!由梨華(ユリカ)うるさいって!!」
 
と由梨華(ユリカ)を小声でしかりつけて、軽く腕を叩いた。
「あっ!」と気付いた由梨華(ユリカ)も、恥ずかしそうにするものの、「だって、麗美(レミ)が変な事いうから・・・。」と人のせい。
呆れ果てる私を無視して、由梨華(ユリカ)は続ける。
 
「で?陸(リク)先輩の行動を予測してて、どうして踏み込まないの?」
 
「そんなの決まってるでしょ!」
 
私はハッキリそう口にすると、「邪魔、したくないから。」と答えた。
 
「じゃ・・・ま?」
 
私はうなずいた。
陸(リク)の夢が医者になる事っていうのは、由梨華(ユリカ)には言ってない。
これは、冬真(トウマ)さんが教えてくれた、大切な陸(リク)の夢だから。
誰にも知られたくないの。
だから、詳しくは言えないけど・・・。
 
「今、陸(リク)は進路の事で忙しいから。
彼のリズムを崩したくないの。
私とつきあうと、それだけ時間が余計にいるじゃない?
それに、さらに、お母さんの事とか私の精神的面とか、色々気にしてくれてたら、陸(リク)に負担がかかっちゃうから。
彼の足をひっぱりたくないんだぁー。」
 
だけど、由梨華(ユリカ)は、「陸(リク)先輩は、そうは思わないと思うよ。」と言ってくれるけど、私は「いいの。」と由梨華(ユリカ)に強く言った。
 
「私には、陸(リク)との未来はない。
ない方がいいんだよ。
もし、もしも・・・陸(リク)が私を好きでいてくれたとしても、大学に行けば私の事もすぐに忘れられると思う。
出逢いがたくさんあるはずだから。
陸(リク)を好きになってくれる人がたくさんいるだろうから。
それで、いいの。」
 
私がそう言った時だった。
4限目が終わるチャイムがなった。
私は、お弁当の袋を持つと立ち上がる。
 
「じゃ、上に行ってくるよ!」
 
由梨華(ユリカ)と話したおかげで、私は自分の中で答えが出た。
今から屋上に行って、陸(リク)に私が言うべき言葉。
それが、心の中で決まった。
私が、陸(リク)になんていうのか、悟っている由梨華(ユリカ)はとても複雑な顔で私を見ていた。
 
「ほらっ!由梨華(ユリカ)も、放送室行くんでしょ?
途中まで一緒にいこう!!」
 
彼女の腕をつかんで、彼女を強引にひっぱってみる。
 
「わかったから、ひっぱらないでよぉー!!」
 
なんていって、彼女もいつもの明るい彼女に戻る。
私と由梨華(ユリカ)は、教室を後にして、途中まで一緒に廊下を歩いた。
 
 
 
由梨華(ユリカ)と別れてから、屋上につながる廊下を歩いた時だった。
 
「ねぇー。」
 
と後ろで声がした。
私は、自分とは思わなかったけど、一応気になったので振り返った。
すると、そこには、1年先輩のお姉さんが3人いた。
明らかに私を見てる。
 
「何か?」
 
と言いながら、3人の顔を見て、気付いた。
前に、陸(リク)とキスをしていた3年生だ!
あと2人は、彼女のトリマキ!!
っていうか、なんでこの人たちが、私を呼び止めるわけ?
そんな事を思っていると、陸(リク)とキスをしていた人が私の方に近付いてきた。
 
「陸(リク)から伝言よ。
屋上は人が多いから、倉庫の裏に来てほしいって。
案内するわ。」
 
と言うと、私の腕を乱暴につかむ。
 
「えっ!ち・・・ちょっと待って!!」
 
っていうけど、私の話なんて聞いてくれない。
早足でドンドン、進んでいく彼女。
下履きに履き替えて、私は強引に外に連れ出された。
 
「本当に、陸(リク)がそんな所にいるの?」
 
と、その人に聞くけど、彼女は、「いけば・・・わかるわ。」と口にするだけ。
でも、すっごい顔が恐いし、何か怒ってる?
いやな予感がした私は、彼女の腕を力任せに振り回して、自分の手を開放した。
 
「私、やっぱり戻ります。」
 
そういって、振り返ろうとした私の両腕を今度は、トリマキの二人がつかむ。
 
「いいから、来なさいよ!」
 
恐い彼女はそういうと、目の前の倉庫の扉を乱暴に開けた。
 
「待たせたわね。」
 
彼女はそういうと、中に入っていく。
 
「いや、俺たちも今来た所。」
 
って声が聞こえるけど・・・陸(リク)の声じゃない。
それに、『俺たち』って・・・何?
 
足に力を入れて、先に進まないように抵抗はしてみるけど、トリマキの人が、力任せに私を引きずって、中へと運ぶ。
中に入った私は、息を飲んだ。
 
だって、中には陸(リク)どこから、知らない人たちが、いるんだもん。
そう・・・『たち』だよ。
 
「一体・・・何なの?」
 
彼女にそういうと、彼女は私の方を、冷めた目で見るとこう言った。
 
「おしおきよ。」
 
って。
 
「なっ!!」
 
としか言い返せない。
驚きで言葉がついてこない私と違って彼女は、平然とした口調で言った。
 
「あなたと関わってから、陸(リク)は変わったわ。
私はもちろん、他の女とも一切関わらなくなった。
彼は、何も言わなかった。
でも、絶対にあなたが原因なのよ。
一緒に暮らしてるみたいだしね・・・。」
 
「そ・・・それは、親同士が再婚したから。」
 
って抵抗してみるけど、「だまりなさい!」と平手打ちされた。
そんな事されて、私が黙ってると思う?
完全にキレた私は、もちろん反撃返しよ。
 
「ふざけんな・・・。」
 
下を向いてボソって言った私の声が聞き取れなかったのか、彼女は、「何?」と顔をしかめて私に聞いてきた。
私は、下げていた顔を上げると彼女をにらむ。
 
「ふざけんな!って言ったのよ!」
 
「なんですって!」
 
と返してくる彼女に、私はさらに暴言を吐く。
 
「陸(リク)が、あんたや他の女に関わらなくなったのは、あなたたちの責任でしょ?
私は、関係ないわ。」
 
「なんですって!!」
 
頭に来たのか、彼女はまた私に手をあげようと、右手を振りかぶった。
その手を、彼女と話していた男がつかみとると、彼女を止めた。
 
「もういいだろ?
あとは、俺たちにまかせろよ。」
 
彼は、そういうと、彼女の手を離し私の方に近付いてきた。
そして、私の頬を右手でさわった。
今朝陸(リク)が触ってくれたところから、他の人のぬくもりを感じる。
考えただけでも、いやになった。
 
「触らないでよ!」
 
って首を振ってみるけど、彼は声を出して笑う。
 
「悪いけど、ここにいる俺たちは、陸(リク)が嫌いなんだよ。
アイツが、好きなお前を、ボロボロにしてやったら、アイツが悔しがるだろ?
その顔がみたいんで・・・悪いけど、アンタは俺たちにやられるんだよ。」
 
そして、今度は右手を私の服に触れてくる。
 
「いや・・・やめてよ!!」
 
って必死で抵抗するけど、いつのまにか腕は男につかまれていて、びくともしなかった。
 
「アイツに好かれた事と、コイツラに嫌われた事を、うらむんだな。」
 
そして、彼は「な?」と彼女を見た。
 
「そうね。先輩にたてついたら、どうなるかその体で知るといいわ。」
 
彼女は、みくだすような眼差しで、私を見てそういうと、
 
「じゃ、ようしゃなく犯しちゃって。」
 
と言い捨て、倉庫からトリマキと共に出て行った。
私は、強引に床に倒された。
私の服に触れていた彼の手が、ドンドン中に入ってきて、やがて彼の唇が私の胸に触れた。
私は足をばたつかせて、抵抗するけど、男5人がかりではどうしようもない。
泣き叫ぶ私の声が、倉庫中に響き渡った。
そして、心で必死で叫んでた。
 
陸(リク)・・・助けて・・・。
 
って・・・。
 
 
 
☆☆☆3章 END☆☆☆
 
 



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