2007/11/24


6     5章  選択
物が、受け皿に置かれる音。
綺麗に磨かれたフロアーに、靴がこすれる音。
そんな音が私の耳から聞こえて、頭がユックリと動き出す。
私は、自然と閉じていた瞳を開けた。
 
「それでは、私はこれで・・・。」
 
そういって一礼した看護師さんは、器具を積んだワゴンを押して病室のドアの方へと向かう。
 
「あっ!そうだ。」
 
私の側にいる人が、何かを思い出したのか、そういうと振り返り、今まさに出て行こうとしている看護師さんを見た。
 
「俺はしばらくここにいるから。
急患が来て何かあったら、呼んで。
あと、陸(リク)にも彼女の容態を伝えといて。
今アイツ、小児病棟にいるはずだから。」
 
「はい。わかりました。」
 
彼女はそういうと病室から出て、ゆっくりと扉を閉めた。
扉が完全にしまってから、彼は私の方に振り返った。
もちろん、彼が振り返った瞬間、私の目と彼の目はバチーンとあった。
普通なら、驚くでしょ?
寝てると思っていた人が、起きて自分の事をジッと見てたんだから。
でも、彼は全然違った。
驚くどこから、ひるむこともなく、平気も平気。
さらには、私に優しくニッコリと微笑んじゃうくらいの余裕があった。
 
「気分は、どう?」
 
彼はそういいながら、点滴が注がれている手首に、ソッと触れると、脈を測る。
それも、ごく自然に・・・。
私は前にも、冬真(トウマ)さんにこうやって点滴を打ってもらったり、そして脈を測ってもらったりした。
だけど、あの時となぜか気分が違ってた。
というより、見る目が変わったというべきかな。
今の冬真(トウマ)さんは、あの時と違って、白衣を着てる。
白衣を着ると、まだ若いのにそういうのは関係なく、とても立派で頼りがいのあるドクターに見えた。
そんな冬真(トウマ)さんを見ていると、私は未来の陸(リク)を重ねた。
陸(リク)も数年後は、こうして患者を見る側に回る人になるんだ。
そう感じたら、陸(リク)の夢は本当にすごくて素晴らしい夢なんだと実感した。
と同時に、そんな彼に私が迷惑をかけちゃいけないんだという事実も、いやと言うほど感じた。
今、ここで、陸(リク)の足をひっぱっちゃいけない。
私とは生きる世界が違う。
陸(リク)の夢を応援しなきゃって・・・。
そんな事を頭で思っても、心はいつもの事ながらついていってくれない。
胸が苦しくて、しめつけられるような苦しさが私を襲う。
私は、たまらず点滴をしていない方の手で、胸を押さえた。
そのしぐさで、全てを理解したのか、急に冬真(トウマ)さんは、私の頭を優しくなでながら、とても優しい口調でこう言った。
 
「少し、意識して呼吸してみようか。」
 
その意味がわからない私は、「えっ?」と言いながら冬真(トウマ)さんを見る。
だけど、冬真(トウマ)さんは、「すって〜・・・はいてぇ〜・・・・。」と言い出すんだもん。
ついつい私もそれに、つられてやっちゃったの。
すぅ・・・・・はぁ・・・・・ってね。
それを何回が繰り返していたら、不思議と胸の重石みたいな物はなくなってた。
自然と胸に当てていた手も下にブランと落ちてたくらいだから。
 
「ちょっと、ベッドあげるよ。」
 
冬真(トウマ)さんはそういうと、リモコンでベッドの2分の1を45度くらいに上げた。
 
「もう、意識して呼吸しなくていいよ。
普通にしてごらん。」
 
冬真(トウマ)さんに言われるがまま私は普通の呼吸法に戻した。
意識してる時は、全く気付かなかったんだけど、普通に呼吸をして気付いた。
この体勢・・・。
私は、ある事に気付いて、たまらず冬真(トウマ)さんをビックリした目で見た。
そんな私に冬真(トウマ)さんが答えてくれる。
 
「この体勢って、呼吸するんのに楽だろ?」
 
私は、深く深くうなずいた。
そうなんだよ!
さっきまで、意識して呼吸してても、やっぱり息がしづらい感じは多少はあったのね。
でも、こうやって、上半身を少し起こしていると、とても楽。
スムーズに呼吸ができるというか。
 
「どうして・・・なんですか?」
 
と聞くと、
 
「この体勢は、酸素や二酸化炭素が通る道が、自然と開かれるんだよ。
だから、出入りがしやすい。
陸(リク)と一緒にいてなる発作も、過呼吸症候群みたいな物だから、対処法は一緒で、陸(リク)がやったように、ようは二酸化炭素を体内に入れてやれば、楽になるはずだ。
だけど、見るからに発作みたいなものじゃなくて、今みたいに胸が締め付けられるとか、少し呼吸がしづらいとか、そういう程度なら、意識して呼吸をしたり、こうやって体勢を変えるだけで、簡単に解決できるから。
覚えておくといいよ。」
 
なんて言ってくれたけど、そのあとすぐに、「まっ、でももう発作は起きないだろうな。」と付け足すと、私のすぐ側に腰をおろした。
 
「どういう・・・事ですか?」
 
冬真(トウマ)さんの言った言葉の意味が気になって私は、たまらず彼に聞いた。
ドキドキしている私と違って冬真(トウマ)さんは、「だって。」と軽い口調で言うと、私を見てニッコリ笑う。
 
「麗美(レミ)ちゃんが、陸(リク)といて拒否したくなる原因がわかったから。」
 
「えっ!!」
 
驚きのあまり私は右手で、自分の口を覆った。
 
うそっ!何で?どうして??
絶対に、陸(リク)に知られちゃいけなかったのに。
何で!!
 
そればっかりが私の体中を走り回った。
あからさまにオロオロしてしまう私に、冬真(トウマ)さんは私の足を軽くポンポンと叩いた。
もちろん、お布団の上からだったので、「あっ、あたった?」くらいの感触だったんだけどね。
だけど、叩かれた事を認識した私の目が、自然と冬真(トウマ)さんの方へと移動した。
 
「安心して。わかったのは、俺だけだから。」
 
冬真(トウマ)さんはそういうと、立ち上がり窓際まで移動する。
少し開かれた小窓から、入り込んでくる少し暖かな風を顔で気持ちよさそうに受けながら冬真(トウマ)さんは、目をつぶる。
そして、ユックリと口を開いた。
 
「俺の予想だけど・・・。
麗美(レミ)ちゃんさー、誰かに陸(リク)を好きになっちゃいけない。
もしくは、思い合っちゃいけない!って言われてんじゃないの?
例えば・・・。」
 
そこまで言った冬真(トウマ)さんは、目を開けると、私の方に顔だけを向けて私を見る。
その瞳に、全てを見透かされているようで、私は冬真(トウマ)さんに降参した。
 
「そうです・・・冬真(トウマ)さんの予想通り。」
 
そして、下を向く私に、さらに彼は言う。
 
「お母さんに、くぎをさされたの?」
 
私はただうなずいた。
「そっかー。」と冬真(トウマ)さんはいうと、「さっきね。」と少し声のトーンを上げて話を始めた。
 
「麗美(レミ)ちゃんの友達の由梨華(ユリカ)ちゃんが、見舞いに来たんだ。」
 
「由梨華(ユリカ)が?」
 
冬真(トウマ)さんは、うなずいた。
 
「俺、丁度休みで家にいてさ。
それで、匠(タクミ)くんからの連絡で、すぐに学校にいけて、麗美(レミ)ちゃんと陸(リク)だけを乗せて、こっちに来たんだ。
まだ、授業中だったからさ。
一緒に来るって聞かなかった由梨華(ユリカ)ちゃんを、匠(タクミ)くんに託して置いてきた。
だから、心配で、授業が終わったら、すぐにきたみたいだよ。
でも、麗美(レミ)ちゃんがグッスリ眠っていたから、また夜にでもメールするから。っていって帰って行ったんだけどね。」
 
冬真(トウマ)さんはそういうと、また風を受けながら、気持ちよさそうな顔をする。
そして、そのままの状態で続けた。
 
「その時に、由梨華(ユリカ)ちゃんに聞いたんだ。
麗美(レミ)ちゃんのトラウマの事をね。」
 
「えっ!」
 
と驚く私に、冬真(トウマ)さんは、「大丈夫。聞いたのは、俺だけだから。」とすぐに添えてくれた。
 
「由梨華(ユリカ)ちゃんの話を聞いて、俺はすぐにわかったよ。
陸(リク)を求めるという事は、陸(リク)と愛し合うという事。
つまり、それは、母親に言われた事を裏切って陸(リク)を選ぶ事であり、そうすることっていうのは、かつて母親が自分にした事とダブル。
大切な家族を裏切ってまで、愛に走った母親と自分は同じ事をしてしまう。
母親をきらってしまう以上に、自分がいやになる・・・。
それで、発作か出てしまう。
俺は、ピンときたんだけど・・・どう?
回答的には満点??」
 
すごく深刻な話のはずなのに、冬真(トウマ)さんったら、すっごくオチャラケテいうものだから、私はたまらずプッと笑っちゃったの。
そして、こうも言っちゃった。
 
「花丸!!」
 
って。
それには、冬真(トウマ)さんも、プッと噴出し笑いしてた。
さらに、お互いアハハと大笑いまでしちゃって・・・。
しばらく、笑っていた私と冬真(トウマ)さんだったけど、先に笑を止めたのは冬真(トウマ)さん。
私の丁度正面にあるソファーに腰をおろした冬真(トウマ)さんは、足を組みとてもリラックスな態度を取った。
 
「麗美(レミ)ちゃんさー・・・。」
 
冬真(トウマ)さんのその呼びかけに、私は少し笑いがおさまったけど、まだ涙目のままで、「はい・・・。」と返事をした。
そして、見た冬真(トウマ)さんの顔はさっきとはまた違った、顔つきをしていた。
 
「どうしたんですか?」
 
と改めて聞く私に冬真(トウマ)さんは、少し顔から力を抜き、さっきほどは真剣な顔つきではなくなった。
でも、今からマジメな話をしようとしているのは、充分うかがえた。
それくらい、冬真(トウマ)さんの顔は、真剣だった。
 
「今の麗美(レミ)ちゃんの心を陸(リク)に言ったとして。
麗美(レミ)ちゃんもわかっているとは思うけど、きっと陸(リク)は迷わず麗美(レミ)ちゃんを抱きしめると思うよ。
全てをアイツは受け入れるはずだ。
苦しんでいる麗美(レミ)ちゃんごと、アイツは愛してくれる。」
 
私は、ただ黙って首を一回コクンと振った。
それを見た冬真(トウマ)さんは、こんな質問をしてきた。
 
「でも、それって、陸(リク)が医者になる人であるから。
『救いたい。』って気持ちが人よりもあるから。
だから、自分をそのまま受け入れてくれるって・・・・そう思ってる?」
 
それには、言葉で答えた。
 
「違う・・・んですか?」
 
って。
すると、冬真(トウマ)さんは、「アイツはそんなに優しい男じゃないよ。」と笑いながら首を振る。
 
「じゃあ・・・どうして?
私を、好きでいてくれるから?だから?」
 
「それもあると思うけど、一番の理由は・・・。」
 
私はいつの間にか、冬真(トウマ)さんの方に向かって身を乗り出していた。
陸(リク)の真意が知りたくて、まるで冬真(トウマ)さんにすがっていた。
私の必死の様子に少し笑う冬真(トウマ)さんだったけど、それに対して深くは触れずに、そのまま続けてくれた。
 
「陸(リク)自身が、トラウマをかかえているからだよ。」
 
予想もしなかった冬真(トウマ)さんの言葉にもちろん私は繰り返した。
 
「陸(リク)が・・・トラウマ??」
 
私と違って、私のこの反応は冬真(トウマ)さんには予想通りだったみたいで、クククと笑ってた。
でも、私は笑えない。
一体どういうことなのか、知りたくて知りたくてたまらなくなった。
 
「冬真(トウマ)さん!教えて!一体陸(リク)のトラウマって、何なんですか!!」
 
あまりに体を前に前にするものだから、点滴が心配になった冬真(トウマ)さんは、ソファーから腰をあげると、私の元へと戻ってくる。
そして、私のベッドをまた、水平に戻す。
 
「なんで・・・。」
 
と文句をいう私に、「暴れすぎだから!」と笑いながら叱る冬真(トウマ)さん。
 
「もう、呼吸も戻ったし息苦しくないだろ?
だったら、こっちの体勢の方がいい。
点滴もその方が落ちやすいしな。
一応、精神安定剤の点滴だから。
話してて、眠くなったら、寝ていいからね。」
 
なんていうけど・・・。
 
「寝ない!」
 
とたんかを切る私。
だって、陸(リク)の事が知りたいんだもん!
寝てられるわけないじゃない!!
もちろん、私はそういいたかったよ。
でも、さすがに、そこまでは言わなかった。
ぐっと堪えたのに。
冬真(トウマ)さんには伝わったのかもしれない。
 
「まっ、そう興奮しないでよ!
ちゃんと、話してあげるから。」
 
と笑いながらそういって、私の頭を優しくなでると、また私のすぐ側にあるイスに腰をおろして、私のすぐ側で話をしてくれた。
 
「陸(リク)が、高1の時だから、もう2年前になるか・・・。
アイツが、保健医の先生とやってる所がバレて、停学処分をくらった話、麗美(レミ)ちゃん知ってる?」
 
私はうなずいた。
 
「さすがに、有名話になってるか。
ある意味、陸(リク)の武勇伝みたいなもんだからな。」
 
と笑う冬真(トウマ)さんに、「でも・・・。」と私は口を開く。
 
「その保健医の先生は、無理やり陸(リク)に犯されたんですよね?
それで、先生もやめちゃったって・・・。」
 
でも、冬真(トウマ)さんは、首を振る。
 
「それって・・・違うって事・・・ですか?」
 
私のその言葉には、冬真(トウマ)さんは答えなかった。
ただ、その代わりに、2年前の『真実』を教えてくれた。
 
「陸(リク)はあの通り、色気はあるし、背だってでかいし、かっこいい。
その辺の大人の男よりも、充分楽しませてくれる。
見るからにそう思えるし、期待もする。
そして、憧れてしまう。
彼女も例外じゃなかったんだ。」
 
「彼女って・・・。」
 
「当時、保健医をしていた先生だよ。」
 
私はドキってした。
それって・・・。
深く聞こうとした。
でも、冬真(トウマ)さんの口が、私の言葉よりも先に言葉を発した。
 
「彼女はどんどん陸(リク)に惚れていった。
そして、陸(リク)に迫ったんだ。
そんなに年は離れていなかったけど、母親の愛を知らずに生きてきた陸(リク)に取って、年上の彼女の側は居心地がよかったんだろうな。
アイツも、どんどんのめりこんでいったよ。」
 
冬真(トウマ)さんはそこまでいうと、私の事を、急にジッと見た。
何かをいいたいとか、そういうんじゃなくて、観察してる感じ?
そう思った私は、冬真(トウマ)さんが気にしている事に気付いた。
 
「大丈夫ですよ。取り乱したりしませんから。
続けて下さい。」
 
笑顔で答えた私だけど、冬真(トウマ)さんは、「う・・・ん。」と言う物の、次の言葉がなかなか言い出せないみたいだった。
そうされると、余計にわかってしまうのに。
その先、どんな事が言われるのか、だいたいの想像をしちゃった私。
だから、覚悟は出来ていた。
それでなのかは、わからないけど、本当に私の心は信じられないくらい穏やかだった。
 
「本当に大丈夫ですから。続けて下さい。」
 
再度そう言って、冬真(トウマ)さんに頼む私に、冬真(トウマ)さんも決断してくれたのか、返事の変わりに話を続けてくれた。
 
「丁度、俺が夏休みで、こっちに1週間帰国した時だった。
アメリカは、こっちよりも時期が早いから。
で、その時、アイツに言われたんだ。
高校を辞めて、働く。
そして、18になれば、すぐに結婚するってな。」
 
もちろん、胸がズキーンってなった。
というより、何かが刺さった。
でも、その一方で、やっぱり・・・って、思ったの。
陸(リク)がそんなに求めた人なら、結婚を考えても仕方ないんだって。
覚悟はしていたから、そんなに取り乱さずに私は聞けた。
とはいえ、何も答えられなかったけどね。
何も言わないけど、平常心で聞いている私を見届けたうえで、冬真(トウマ)さんはさらに話を進ませた。
 
「もちろん、アイツには、夢があったから、俺は反対したんだ。
だけど、アイツはいくら言っても聞かなかった。
夢は、結婚してからでも、頑張ればつかめるかもしれない。
でも、彼女は今手放したら、二度と手に入らないって。
俺は、アイツの一途さに負けたんだ。
でも、俺がアメリカに戻る前日の事だった。
幸せの絶頂にいたアイツを、ならくの底に突き落とす事件が起きたのは。
しかも、アイツを突き落とした張本人が、アイツが信じていた彼女だったんだからな。」
 
冬真(トウマ)さんはそういうと、「あの時・・・。」と語りだした。
 
「いつもみたいに誰もいなくなった保健室で、陸(リク)と先生は愛し合っていたらしい。
そこに、とっくに帰ったと思っていた、教頭先生が、突然入ってきた。
その時、彼女はどうしたと思う?」
 
私はただ、首を振った。
 
「大声で叫んで、教頭にしがみついて言ったらしいよ。
『葛城(カツラギ)くんが・・・無理やり・・・。』って。」
 
「そんな・・・。」
 
私はそれ以上はいえなかった。
確かに、陸(リク)の受けたショックを考えれば、もちろん、いたたまれない思いだった。
でもね、それ以上にいいたかったのは、その保健室の先生に言いたいの。
なんで?結婚まで陸(リク)が考えたって事は、彼女もその気があったって事でしょ?
なのに、どうして、そう簡単に陸(リク)を裏切れるの?
それが、私には信じられなくて、怒りと疑問が私の頭をいっぱいにして、言葉らしい言葉が言えなかった。
 
「その日以来、彼女は一度も学校にも、陸(リク)の前にも姿を現さなかった。
そして、陸(リク)は、あの時の事を、俺以外には、一言も誰にも話さなかったらしい。
それからだよ。
アイツが、噂どおり、女を何とも思わなくなったのは。
自分が不利にたてば、自分の地位を守る為に平気で相手を裏切る。
愛だの、恋だの、言葉なんて、何も利益をもたない。
信じるのは、自分だけ。
誰も好きになんてならない。
夢を実現させる為だけに生きるんだ!
って・・・それが、アイツの口癖になったよ。」
 
冬真(トウマ)さんはそういうと、私の腕に触れた。
いつの間にか点滴が終わっていた。
冬真(トウマ)さんはなれた手つきで、処理を行いながら、口を開く。
 
「アイツは、ずっと心の中で唱えていたはずなんだ。
誰も好きにはならない。
愛してたまるか!って・・・。
だけど、麗美(レミ)ちゃんにどんどん惹かれて行って、自分でも止まらなくなっていた。
アイツも、自分の心の傷を乗り越えて、やっと麗美(レミ)ちゃんを好きだって、認識できたんだと思う。
アイツもアイツなりに、苦しんで麗美(レミ)ちゃんを求めたんだと思うから。
だから、アイツなら、同じように、苦しんで何かを飛び越えてそして、陸(リク)を選んでくれた麗美(レミ)ちゃんを、抱きしめてくれて、愛してくれると思うよ。」
 
冬真(トウマ)さんはそういったあと、最後に私の頭にまた触れて、今までで一番優しい手つきでなでた。
そして、私の目を真っ直ぐに見つめた。
 
「陸(リク)が、麗美(レミ)ちゃんに思いを告白したら、それは陸(リク)が色んな思いと向き合って、やっとの思いで出した言葉だから。
何よりも、どんな言葉よりも、強くて信じられる物だから。
だから、それを聞いたら、麗美(レミ)ちゃんも何も不安に思わなくていいからね。
何も考えずに、素直に陸(リク)への思いをアイツに伝えたらいいんだよ。
何も、心配しなくていいから・・・・ねっ!」
 
冬真(トウマ)さんは、そういうと、優しくニッコリ笑う。
 
「アイツ今、小児科病棟で、子供をみてる。
アイツがあやす姿、見に行こうか!」
 
私は、「はい。」と返事をして笑顔で答えた。
 
 
 
 
 
私がいた病室は特別病棟だったので、一般病棟から棟が離れていた。
だから、病室から出た私は、冬真(トウマ)さんに連れられるまま、陸(リク)がいる一般病棟へと、ひたすら歩いていた。
大きな自動ドアを出たら、そこは、あきらかにさっきとは違うフロアーだった。
高級なじゅうたんがあるわけでもなければ、設置されている部屋の間隔も、そんなに広くない。
一般病棟に入ったんだ。
私がそう思った時、前を歩いていた冬真(トウマ)さんが、急に足を止めた。
 
「小児科病棟は、5階だから。」
 
そして、エレベーターのボタンを押した。
エレベーターが丁度ここに辿り着いて、扉が開いた時、遠くから声がした。
 
「冬真(トウマ)先生!!」
 
その声に、冬真(トウマ)さんは振り返る。
もちろん私もつられて振り返った。
小走りに走ってきた看護師さんは、息を切らせながら冬真(トウマ)さんに話す。
 
「今、オペ室から連絡があって、早急に摘出した細胞の組織検査をしてほしいと、雪(ユキ)先生が。
すぐに、組織検査室へ行って下さい。」
 
「組織検査って・・・。俺、今日休みだって。
春(シュン)はどうしたんだよ!アイツ、今日いるはずだろ?」
 
でも、看護師は首を振りながら、
 
「春(シュン)先生は、昨晩の便でアメリカです。
あちらで、調べたい事があるからと、1週間は戻ってきません。」
 
と即答されてた。
 
「そういえば、言ってたなぁー・・・。
あれ、昨日からだっけ?」
 
と口にしながら、少しバツが悪そうにする冬真(トウマ)さん。
自分しかする人が居ないとわかった冬真(トウマ)さんは、しぶしぶ了解した。
 
「わかった。すぐ行くよ。
親父にもそう言っといて。」
 
冬真(トウマ)さんはそう答えて、看護師を送り出した。
そして、私の方を向くと、「悪いな。」とまず謝った。
 
「エレベーターに乗って5階まで行って降りたら、そのフロアーが小児科病棟だから。
で、そこの、『エンジョイフロアー』ってのがあって、そこに陸(リク)が子供たちと一緒にたわむれているはずだから。
場所は、表示があるから、それに従っていけば辿り着くから。」
 
冬真(トウマ)さんはそういうと、エレベーターに私を乗せた。
 
「ちゃんと陸(リク)と向き合うんだよ。」
 
最後に冬真(トウマ)さんはそう言って笑顔を送ると、エレベーターの扉を閉めるボタンを押した。
閉まる扉の隙間から私は急いで言った。
 
「色々ありがとうございました。」
 
って。
そして、私を乗せたエレベーターは5階へとあがった。
 
 
 
 
音がして、エレベーターが開いた。
私はそこに降り立ち、表示を見た。
冬真(トウマ)さんが言ったように、エンジョイフロアーはこっちと矢印がかいてある。
私は、それに従って歩いた。
歩いたんだけど、しばらくして私の足取りはゆっくりになる。
最初は意気揚々に軽い足取りだったのが、今は重くて、だんだんとスローダウン。
そうこうしているうちに、とうとう止まっちゃいました。
だって、行けども行けども、そんなフロアーはないし、何よりここ、広すぎるよ!!
自分が来た道するらもわからなくなった私。
これ以上、やみくもに動くのは危険だと感じた私は、まず来た道を思い出そうと考えた。
止まったまま辺りをぐるっと一周してみる。
来たのは、あっちかな?
私は、止めていた足を急に動かした。
そのせいで、向こうから勢いよく走ってきていた子供とぶつかった。
私の足にあたったその子は、勢いあまって、フロアーにしりもちをついた。
 
「あいてててぇー。」
 
というその子と、その子と一緒に走っていた妹。
その子も転んで、お尻をなでてた。
 
「ごめんねぇー。大丈夫?」
 
しゃがんでその子に話しかけた私。
 
「うん。大丈夫!」
 
と男の子は元気よく答えると、立ち上がり妹の手をひっぱった。
 
「僕、何歳?」
 
そんなに大きくないだろうに、すごくしっかりしている男の子。
そして、何よりかわいい。というよりは、かっこいい顔をしているのが、すごく気になった。
絶対、両親は美形なんだと思わせる・・・そんないでたちだった。
 
「僕は3歳で、妹はうーんと、2歳。」
 
その子がそう答えた時だった。
 
「すいません!うちの子が、走り回ってご迷惑かけてしまって。
お怪我はないですか?」
 
後ろでそんな声がして私は、その子から目をそらして、後方を見た。
背が高くて、細身で、それでいて、お金持ちの奥様って感じを匂わせるような上品な人。
着ている服がブランドものとか、派手とか、高級とか、そういうんじゃなくて、その人がかもしだしている雰囲気自体が、上品そのものだった。
私は、今までそんな人、見たことなかったから、思わずあっけ。
ただ、呆然とその人をくいいるように見ていた。
一方、その人を見たその男の子は、「ヤッベー。」と舌を出して険しい顔をすると、やっと立ち上がった妹の腕を乱暴につかむ。
 
「梅紅(メグ)!ママにつかまっちゃう。逃げるぞぉー!!」
 
と叫ぶと、妹の腕をつかんだまま、また廊下を猛ダッシュ。
 
「わぁー、わぁー。」
 
と発狂しながら、妹も連れ去られるように走って行く。
 
「こらっ!霙(ヨウ)!!待ちなさい!!」
 
私の目の前まで来ていた綺麗な人は、逃げるわが子を必死でつかもうとしたけど、ちょっとの差で、逃げられてしまう。
 
「私が、捕まえてきましょうか?」
 
たまらず私はそういっちゃう。
だって、この人に、フロアーを走るなんて・・・きっと無理。
というか、してほしくないんだもん!
雑誌から出てきたような、本当に素敵な人だから。
 
「とんでもない。私がつかまえますから。
本当にごめんなさいね。」
 
彼女がそういって、一歩子供たちのもとへ歩き出そうとした時だった。
 
「あっ!」
 
彼女はそういうと、踏み込んだ足をそこで止めた。
私も気になって、彼女が見た前方を見ると・・・。
子供たちが走っているちょっと先にある角から、白衣を着た男の人が出てきた。
髪は短くて、上に立ててる感じのスタイル。
背は、高いけど、そんなに細くもなく太くもなく・・・けど、どちらかといえば、ガッチリした感じの体系の人だった。
手には、何か書類みたいな物を持っていて、それを見ながら歩いているから、もちろん走っている子供たちの姿なんて目に入っていない。
 
「ぶつかる!!」
 
たまらず目をつぶって首をすくめる私に、隣にいた綺麗な人は、「大丈夫。」と優しく笑う。
「えっ?」と私は言って、隣に目を向けると、彼女は前方を指差す。
その指に導かれるかのように私が見ると・・・。
 
「わぁー!パパめっけー!!」
 
男の子は、そういって速度を落とさないまま、その男の人の足にしがみつく。
突然起った事に、その人は、「えっ??」と言いながら足を止めて、自分の足を見る。
すると、自分を見上げている子供の笑顔。
 
「霙(ヨウ)!お前・・・。」
 
と言った彼に、もう一つの衝撃が!!
 
「・・・けぇー!!」
 
と叫んだその声に彼は、目を移す前にこう言った。
 
「梅紅(メグ)・・・お前まで・・・。」
 
呆れた口調で言った彼は、手に持っていた書類を丸めると、白衣のポケットに入れた。
そして、梅紅(メグ)ちゃんを抱っこして、抱きかかえる。
 
「あー、ずるぅーい!!なんで、梅紅(メグ)だけぇー!!
僕もだっこしてよぉー!!」
 
と彼の足をつかんでユラユラしながらせがむけど、彼は知らん顔。
そんなやり取りを見ていた彼女は、とてもおかしそうに笑った。
でも、その笑顔が、すごく幸せなんだと物語ってた。
 
「あのお子さんのお父さんって、ここの先生だったんですね。」
 
と口にした私に、「ええ。」と彼女は笑うと、「あっ、そういえば・・・。」と急に何かを思い出したのか、私の方に体ごと向いた。
 
「何かを、お探しではなかったですか?
病院の事なら、だいたいはわかりますから。
お困りでしたら、力になりますよ。」
 
その言葉に、私は素直にすがる事に。
 
「あの実は・・・。」
 
すると、彼女は、「ちょっと、わかりにくいですものね。」と優しく微笑むと、私たちが向いている方向とは逆を向いて指をさした。
 
「このまま真っ直ぐ行くと、壁が黄色いカラーになっているフロアーに出ます。
その辺が、エンジョイフロアーなんですよ。
そこまで行けば、子供たちの声が聞こえてくるので、わかるかと思います。」
 
丁寧に教えてくれた彼女に私は、深々と頭を下げた。
 
「ありがとうございます。」
 
私の言葉に彼女は、「いいえ。」と言うと、
 
「こちらこそ、騒々しくてごめんなさいね。」
 
といって、軽く頭をさげた。
 
「それじゃぁ、これで。」
 
彼女の言葉に私も、「はい。」とまた頭をさげる。
立ち止まって彼女を見送る私とは違って、彼女はそのまま真っ直ぐに夫と子供の元へと向かった。
 
「ねぇーねぇー、パパ!今日、僕ハンバーグ食べに行きたいよぉ!」
 
とすがる霙(ヨウ)くんに彼は、冷たく「ふーん。」というと、
 
「行ってもいいけど、霙(ヨウ)と梅紅(メグ)は、水だけな。」
 
それには、「えぇー!!なんでぇー!!」とまた大声で叫ぶ霙(ヨウ)くん。
もちろん、2歳の梅紅(メグ)ちゃんは理解していないだろうけど、お兄ちゃんの真似をして、「キャァー!!」と叫んでるし。
すると、彼は、腕に抱いている梅紅ちゃんの鼻をつかむ。
そして、もう一方の手で、霙(ヨウ)くんの鼻をつかんだ。
 
「なぁにずんだよぉー。」
 
と文句をいう霙(ヨウ)くんに、彼は少し怒り口調で言う。
 
「ママのいう事を守らなかったバツだ。
病院は走っちゃダメだって、いつもママに言われてるだろ!
しかも、大声出すし・・・。
ママを困らす霙(ヨウ)にも梅紅にも、おいしいものは食べさせねぇー。
ママに二人のハンバーグ、食べさせてあーげよっと。」
 
そういって、笑う彼に霙(ヨウ)くんも梅紅ちゃんも反省した様子。
 
「あら?パパの前だと、静かになるのね。」
 
とクスクスと笑いながら登場した彼女に、霙(ヨウ)くんはすぐに頭を下げて謝った。
 
「ママ、ごめんなさい。」
 
って。
それを見ていたマネっこの梅紅(メグ)ちゃんも、「しゃい。」と言ってペコっと頭を下げた。
もちろん、私の所にまで聞こえているんだから、事のいきさつを彼女だって知っている。
子供たちが、ハンバーグが食べたいばっかりに、一応謝っているって事もわかっているはずなのに、彼女はあくまで気付かないフリをする。
 
「霙(ヨウ)も、梅紅も、おりこうさんねぇー。
えらい、えらい。」
 
そういって、二人の頭を優しくナデナデしてあげてた。
それで、ご機嫌になった二人は、また仲良くテンションがあがる。
降りようとゴソゴソ動き出した梅紅ちゃんを、彼が下に降ろす。
そんな梅紅ちゃんの手をつないだ霙(ヨウ)くんは、
 
「病院では静かにするんだぞ。そーっとだぞ。」
 
なんて言って二人で、「そーっと、そーっと。」といいながら、抜き足差し足で、フロアーを進んで行く。
 
「おいおい。そんなんで歩いてたら、店閉まっちまうぞ!」
 
と笑いながら突っ込む彼に、「ねぇー。」と彼女は声をかける。
 
「海(カイ)、もう仕事終わったの?」
 
だけど、彼は、「それがさ。」と少し申し訳なさそうな顔をする。
 
「明日の早朝のオペの打ち合わせを雪としたかったんだけど、アイツまだオペ室なんだ。
あと、30分くらいはかかるかもな。
アイツラ、待てるかな?」
 
と心配そうにいう彼に、「大丈夫でしょう。」と彼女は笑顔で答える。
 
「今海(カイ)が脅したから、静かに待ってるんじゃないかな?
でないと、レストランでお水だけでしょ?」
 
「なんだよ。聞こえてたのかよ。」
 
と笑いながら彼は、彼女の腰に手を添えると、一緒に歩き出した。
 
「それにしても、うれしいー!!」
 
と両手を叩いて喜ぶ彼女に、「何が?」と不思議そうに彼は聞く。
すると・・・。
 
「私だけ、ハンバーグ3つも食べれるんでしょう!
あ〜、楽しみだわぁー!」」
 
とウキウキの彼女。
だけど、そんな彼女に、予想外の冷たい一言。
 
「やめとけ。」
 
それには、普通に「えっ?なんでぇ?」と彼女は目をパチクリさせながら聞く。
普通は、3つも食べれないでしょ!って思うけど、彼はそういう突っ込みはしないで、別の突っ込みをしたのよね。
それは・・・。
 
「太るぞ。」
 
って。それには、彼女の平手が彼のお尻を襲う。
そんな二人を見ていたら、自然と笑顔になった。
心が温かくなった。
私も、いつか陸(リク)と、あーいう幸せを絵に書いたような未来を歩みたい。
そう思った。
だけど、私の中で不安はあった。
あれだけ、冬真(トウマ)さんに言われたけど、それでも、私は「やっぱり陸(リク)を選んじゃいけない。」ってそういう思いがある。
それは、ただたんに、お母さんの事・・・だけじゃないような気がするの。
もっと、なにか・・・。
もっと、重大な何かが私に訴えているような気がしてならない。
陸(リク)を、選んじゃいけない!って・・・。
 
 
 
 
さっきの人に言われた通り、私は真っ直ぐ真っ直ぐ歩いた。
そしたら、黄色い壁が出てきた。
そこに一歩踏み込んだら、彼女の言った通り、奥のほうから子供の声が聞こえてきた。
私はそれに、吸い込まれるかのように、足を運ばせた。
 
私が目にした場所は、20畳くらいはありそうな大きな部屋がドーンとあって、そこで、子供たちがたくさんいた。
おままごとをして、遊んでいる子供。
ビデオを見ている子供。
お絵かきをしている子供に、滑り台をすべっている子供。
あとは、積み木をしたり、絵本を読んだり、折り紙を折ったり・・・。
とにかく、たくさん子供はいるんだけど、みんなで一緒に遊ぶんじゃなくて、それぞれ好きな事をして遊ぶ。
やりたくなったら、「まぜてぇー。」とそこに入り込む。
そういう空間だった。
キョロキョロと見ていた私の眼が、一人の人物の姿を発見した。
あぐらをかいて座り、紙飛行機を作っている彼。
それを、まだかまだかと待っている5人くらいの子供に囲まれて、彼はセッセと作ってる。
 
「ねぇー、陸(リク)せんせぇー。まだ、できないのぉ?」
 
とせかす子供。
 
「うるせぇーな。よく飛ぶように作ってんだから、黙って待ってろ!!」
 
と言葉は悪いけど、とても嬉しそうな陸(リク)の顔を見ていると、私もちょっと笑ってしまった。
 
「よし、出来た。」
 
陸(リク)はそういうと、青い飛行機を黙って待っていた6歳くらいの男の子に渡した。
そして、さっきまだ?とせかしていた男の子には、赤い飛行機を手渡した。
 
「ありがとー。ねぇー。裏庭に向かって飛ばそうよ!
競争だぞー!」
 
と言って、青い紙飛行機を持った子は、スリッパを履いて部屋を出て行く。
それについて、他の3人も「待ってぇー。」と急いでスリッパを履く。
 
「おいっ!走るなよ!」
 
と顔をのぞかせて声を出した陸(リク)に、「はぁーい。」と返事をしながら、小走りにその子たちは裏庭につながる窓の方に消えていった。
 
「健(ケン)くん、待ってよぉー。」
 
赤い紙飛行機を持っている子も急いで、スリッパを履いて彼を追いかけようとした。
その彼の腕を陸(リク)が素早くつかむ。
 
「なぁーに?」
 
と不思議そうに聞く彼に、陸(リク)はニッコリ笑うと、彼の持っている紙飛行機を奪い取り、彼に投げ方を指導し始めた。
 
「ここをこうやって持って、それで、こういう感じで放すんだ。
わかったか?」
 
「うん。」とうなずいた彼だけど、どうして陸(リク)がそんな事を自分にだけ言ったのか不思議だったみたい。
 
「どうして、僕にだけ?」
 
と聞くと、
 
「だって、お前いつも、健(ケン)に負けてんだろ?」
 
陸(リク)はそういいながら、その子の頭を優しくなでた。
 
「今日は勝てるように、お前の飛行機は、スペシャルにしておいた。
あとは、投げ方次第だな。
健闘を祈る!」
 
それを聞いた彼は、満面の笑みで、「ありがとう、陸(リク)せんせぇー。」というと、
 
「よぉーし、頑張るぞー。」
 
なんて言いながら、歩きながら「こうだっけ?あれ?どうだっけ?」と投げ方を練習しながら、お友達が待つ場所へと歩いて行った。
 
「ねぇー、陸(リク)せんせぇー。」
 
また、後ろで声がして、陸(リク)は「あ?」と言いながら振り返った。
今度の子も、さっきの子と同じくらいの年の男の子だった。
でも、さっきの子よりも、落ち着いて見えた。
だって、その子が手に持っているのは、算数のドリルなんだもん。
 
「ねぇー、ねぇー。陸(リク)せんせぇー。
これ、教えてよ!」
 
「なんだよ。」
 
と言いながらのぞいた陸(リク)。
それを見て、すぐに持ってきた子供の顔を見上げて絶句。
しばらく、陸(リク)は動かなかった。
でも、その子からしたら、イライラして仕方なかったのかも。
陸(リク)に教えてほしいのに、陸(リク)ったら何も言わないから・・・。
 
「もう!早くぅー、教えてよぉー。」
 
としまいには、ドリルを陸(リク)にぶつける彼。
 
「いってぇーな。」
 
と言いながら、陸(リク)はそれを拾い、テーブルに置きながら言った。
 
「お前、これ、小2の算数だぞ。」
 
確かに、さっきチラッと見えたけど、確かに小学校2年用になってた。
でも、この子・・・見るからにそんなにいってるようには、見えないんだけど・・・。
すると、その子は、「わかってるよ!」と文句を言いながら、鉛筆を握って、陸(リク)の膝に座った。
そして、顔を上げて、陸(リク)を見上げた。
 
「僕、来年から1年生になるけど、学校になかなかいけないでしょ。
だから、今のうちに勉強しておかないと。
みんなに負けたくないから。
それにね、僕には、夢があるんだ。
そのために、僕頭がよくないといけないから。」
 
「ふーん。」と陸(リク)は答えると、ドリルをパラパラとめくる。
そして、彼が一生懸命今までやったものを、さかのぼって目をやる。
近くで、お絵かきをしていた子のクレヨンから、赤を拝借。
 
「ちょっと、貸してな!」
 
陸(リク)の頼みに、「うん、いいよぉー。」と笑顔で答えた彼女に、「サンキュ。」とこれまた笑顔で答えた陸(リク)は、ドリルの添削を始めた。
 
「それで?」
 
丸をつけながら、陸(リク)はそう口を開いた。
陸(リク)のチェックを見ていたその子は、陸(リク)の言葉に「何?」と言うと、また陸(リク)の顔を見上げる。
 
「大介(ダイスケ)の夢って、何?」
 
すると彼はちょっと、照れくさそうに言った。
 
「お医者さんになりたいんだ。」
 
って。それには、陸(リク)の手が止まる。
そして、大介くんに目を向けると、「マジで?」と口にした。
「マジで。」と答えた大介くんに陸(リク)は、すっごい笑顔になる。
手に持っていたクレヨンを置くと、大介くんの頭を両腕でつつみこんで、強く抱きしめた。
 
「痛いよぉー。」
 
と嫌がる大介くんに、陸(リク)は、「マジ、すげぇー。」と叫びながら、大介くんを抱きしめたまま左右に腕を揺らす。
 
「痛いってばー。」
 
と叫んで大介くんは、自力で陸(リク)の腕から脱出する。
そんな大介くんを見て、陸(リク)はかなり興奮した口調で言った。
 
「大介が医者になりたいなんて、すっげぇーうれしいよ。
俺たち、ライバルだな。」
 
と笑顔の陸(リク)に、大介くんは、「ライバルじゃないよ。」とサラっと答えた。
「ん?」と聞く陸(リク)に、今度は大介くんが陸(リク)の胸にドーンとつっこんできて、陸(リク)に抱きついた。
 
「僕は陸(リク)先生みたいになりたいんだ。
だから、お医者さんになりたいんだよ。
陸(リク)先生は、僕の目標だから。」
 
大介くんの言葉で、私は鳥肌がたった。
こんなに慕われている陸(リク)が、誇りに思うっていうよりは、正直恐かったの。
だって、これは、陸(リク)が一生懸命生きてきた証。
だけど、私は、何もないもの。
夢もなければ、人に感謝されることすらもしてない。
陸(リク)や冬真(トウマ)さんや、由梨華(ユリカ)に心配をかけてるだけ。
この上、私が陸(リク)に思いを告げたら、陸(リク)に負担をかけてしまう。
それでなくても、時間がない彼なのに、さらにそれを奪ってしまう。
私は、彼の為にどうする事が一番いいのだろう・・・。
私はいつの間にか、そう考えてた。
彼を諦めるとか、正直になるとか、そういうんじゃなくて、彼が医者になる為に私がすべき事はなんだろう・・・・って。
 
「なー、大介。」
 
自分に抱きついていた大介くんを離しながら、急に陸(リク)はそう切り出した。
不思議そうな顔で陸(リク)を見ている大介くんに、陸(リク)は言った。
 
「目標はいいんだけど・・・。
俺、まだ医者じゃねぇーから。
まずは、来年、医大に受からねぇーとな。」
 
そういいながら、大介くんの頭をクシャクシャにする陸(リク)に、「いだい?」と彼は聞く。
 
「そう。医者になる為の学校だよ。
そこに入るには、いっぱい勉強して、難しい試験で丸をもらわないと入れないんだ。
その試験が、来年にある。」
 
「らいねんって?」
 
「大介が、小学校に行くだろ?
その頃かな?」
 
「じゃあ、僕が1年生になったら、陸(リク)先生も1年生なの?」
 
仲間だというのが、うれしかったのかな?
目を輝かせながらいう大介くんに、陸(リク)はプッと声を出して笑う。
 
「そうだな。一緒だな。」
 
と笑った陸(リク)だったけど、「ねぇー、じゃーさ・・・。」と、急に深刻な口調になった大介くんに、陸(リク)の笑いはすぐに止まった。
 
「何?悩み事?」
 
とわざと明るく言う陸(リク)だけど、大介くんの深刻さは晴れなかった。
 
「陸(リク)先生は、まだ先生じゃないんだよね?」
 
「そうだな。」
 
と答えた陸(リク)に、「だったら・・・。」と言った大介くんは、今度は陸(リク)をジッと見る。
 
「僕の病気は、誰が治してくれるの?
とぉーっても難しい病気なのに。
陸(リク)先生じゃなかったら、誰が治してくれるの?」
 
いつのまにか、陸(リク)の腕を強くつかんで、すがるようにそういった大介くんに、陸(リク)は少しだけ考えた。
だけど、答えが出た陸(リク)は、優しく大介くんに笑いかける。
 
「俺が、治してやるよ。」
 
「陸(リク)・・・先生が?」
 
不安な目で陸(リク)を見ていた大介くんの瞳が、徐々に元気を取り戻してくるのが、私にもわかるくらい、陸(リク)の言葉は大介くんの心の闇を消した。
 
「ただし、俺が医者になるまで、どれだけ頑張っても6年かかるんだ。
それでもって、大介の病気を治すまでの力も持たなきゃなんないから・・・。」
 
陸(リク)はそう言って、指で数を数えると、大介くんの前に両手をかざした。
 
「8年待ってくれ。
大介が14歳になったら、俺が病気を治してやる。」
 
「8年って・・・すごく長い?」
 
首をかしげる大介くんに陸(リク)は、「そうだなー。」と言うと、
 
「今度1年生になるだろ?
大介が、中学校2年生になった時だな。」
 
それを聞いたら、ピンときたみたい。
 
「それって・・・僕がお兄さんになるくらいだよね。」
 
大介くんの答えに、笑いながら頷いた陸(リク)。
 
「それくらいまでは、自由にはできないにしても、今と問題なく生活できるはずだから。
そのかわり、高校生になったら、好きなことさせてやるからな。
お前の好きなサッカーもできるし、ジェットコースターにも乗せてやる。」
 
それを聞いた大介くんは、「ホント?」と陸(リク)にせまる。
「ああ。」と答えた陸(リク)は、「だから。」というと、大介くんにまるで言い聞かせるように言った。
 
「無理はするなよ。
今まで通り、我慢しなきゃいけないことは、我慢する事。
中学校2年生まで、元気で生きろ。いいな。」
 
「うん。わかったー。約束するぅー。」
 
大介くんはそういうと、陸(リク)と指きりげんまんをした。
8年後の未来を約束した2人の儀式。
それを、見ていたのは、こんなに子供がいたのに、私だけだった。
この何気ない目撃が、あとで役に立つなんて・・・。
この時の私は、全然予想もしてなかった・・・。
 
 
 
 
 
自動ドアが開く。
私は、そこから外へと出た。
重い足取りで病院を後にした。
私は結局、陸(リク)に声をかける事ができなかった。
だって、私の中で答えがでなかったから。
陸(リク)の為に、私が今するべき事は何か・・・。
わからないままだったから、声をかける事ができなかったの。
 
「帰って、ユックリ考えよう・・・。」
 
私は、つぶやいて、ユックリと歩いていた。
もう少しで病院の門を出ようとした時だった。
 
「麗美(レミ)!!」
 
その声に私の足は、ピタリと止まった。
振り向けなかった。
だけど、足も・・・動かなかった。
その人は、私が止まっている間にドンドン距離を縮めてきて、やがて私の腕をつかむと、私を自分の方に向けた。
必死で走ってきたのか、少し汗をかいて、息もあがっている彼を見ると、たまらなく愛おしく思えた。
でも、私は彼への思いをなんとか踏みとどまらせた。
 
「今、バイト中じゃないの?
いいの?出てきちゃって。」
 
あくまで冷たい口調でいう私だけど、陸(リク)はそれには特に触れてこなかった。
気付いていたはず。
いつもの陸(リク)なら絶対に、「なんだよ。つんけんしてさ。」とか言い返してくるはずなのに、今の陸(リク)は何も言わないで、ただ優しく笑ってた。
 
「具合、よくなったみたいだな。」
 
そういいながら、私の髪に触れようと右手を差し伸べてきた。
私は、たまらず、一歩後ろに下がる。
 
「麗美(レミ)?」
 
私に届かなかった右手を握り、陸(リク)は力なくその手を下ろす。
その場にいたたまれなくなった私は、早々に去ることを選んだ。
 
「じゃ、私、帰るね。
バイト、頑張って。」
 
そう言って陸(リク)に背を向けて、勢いよく走り出した。
 
「麗美(レミ)!」
 
陸(リク)の呼びかけに私はまた、足を止めてしまった。
ダメ。止まっちゃダメだって!!
自分に言い聞かせて、やっとの思いで、次の一歩を出した時だった。
 
「俺、お前が好きだ。」
 
彼のその言葉は、私の全てを止めた。
だって、そうでしょ?
普通でも、好きって言われる事は、幸せな事で、何も考えられなくなるくらい嬉しい事だもん。
まして、陸(リク)の好きは、冬真(トウマ)さんに聞かされていたように、深い意味をもつんだもん。
嬉しくないわけないよ。
心が震えるに決まってるじゃない。
私は何もいえなかったし、動けなかった。
ただ、その場で立ち尽くしてた。
そんな私を、陸(リク)は優しく後ろから抱きしめた。
私の顔に自分の顔をくっつけて、私の存在を確認する陸(リク)。
そして、私の耳元に唇を持ってくる。
 
「麗美(レミ)が何かに脅えているのもわかってる。
その原因が俺なんだっていうのも、わかってる。
俺の存在が麗美(レミ)を苦しめているのも理解してる。
それでも俺は、おさえられないんだよ。
お前を求める俺を・・・抑える事ができないんだ。」
 
陸(リク)はそういったあと、私を抱きしめている腕にさらに力を入れて、私を強く抱きしめた。
 
「麗美(レミ)の苦しみは、俺が背負うから。
だから、麗美(レミ)。もう逃げるのはよさないか?
俺は、お前が好きで好きでたまらないし、お前が必要なんだよ。
その気持ちに、これ以上嘘はつきたくないんだ。
だから、麗美(レミ)も、正直になってほしい。
俺への本当の気持ち・・・教えてくれ。」
 
私は陸(リク)の腕に触れた。
陸(リク)のぬくもりを感じれば、私の中で答えがでる。
いや・・・勇気が出るかも!ってそう思ったの。
グダグダ悩んでいる私を吹き飛ばしてしまうくらいの、陸(リク)への強い思いが出てきてくれるんじゃないかって。
それが、素直な私を引き出してくれるかもって・・・。
私は、そんなズルイ事を考えたりしたの。
だけど、そうは、うまくはいかなかった。
これだけ陸(リク)に言われても、なんでだろう?
心の奥底で、ひっかかっている何かがあるの。
陸(リク)の胸に飛び込んだら、取り返しのつかない事が待ってるような。
恐ろしい結末が待っているような、そんな気がしてならない。
だから、この時の私も、やっぱり素直に慣れなかった。
だけど、私はもう、これ以上平行線は嫌だと思ったの。
陸(リク)にここまで言われても、私は陸(リク)の胸には飛び込めない。
だったら、もう決着をつけなきゃ。
本当に、これで、陸(リク)にさよならをしよう。
私は、自分の中で、決断した。
だから、私は、人生で最初で最後の・・・そして、最大の嘘を陸(リク)についた。
 
「陸(リク)・・・何か勘違いしてない?」
 
私は、そういうと、陸(リク)の腕を自分の体から離した。
そして、彼の方へと向き直る。
 
「私は、初めから言ってるでしょ?
陸(リク)じゃなくて、匠(タクミ)さんが好きなんだって。
だから、いくら陸(リク)に告白されても、私はあなたを選ばない。
あなたは、私にとって、『サイテーな人』。
それ以外、何もないわ。」
 
平然さを装って必死で言ったのに、陸(リク)は全然信用してくれない。
怒るどころか、呆れるどころか・・・笑ってる。
 
「ちょっと!!」
 
と怒る私に、「だって、うそ臭い演技するから。」と大笑いしながら陸(リク)はそういう。
これじゃ、頑張った意味がないじゃない!
私は、仕方なく次の手段へと走った。
 
「陸(リク)にキスされたのも、匠(タクミ)さんにやきもちをやかせる為。
さっきのキスは、さすがに匠(タクミ)さんもやきもちやいてくれただろうから。
帰って告白してみようかな?」
 
と笑う私に、「だったら。」と陸(リク)は言い返してくる。
 
「匠(タクミ)がいない時のキスは、どう説明する?
俺を好きじゃないなら、どうしてしたの?」
 
絶対そうくると思った。
それも・・・残酷な嘘だけど、突き通してみせる。
私は、言いたくない言葉を、胸が張り裂けるような思いで口にした。
 
「匠(タクミ)さんとキスする時の予行練習よ。
ほら。ただされる子だったら、飽きられたらイヤでしょ?
他の男だと、あとあと面倒そうだったけど、陸(リク)は女遊びしてるし、キスぐらいたいしたこと無いだろうし。
だから、利用させてもらったの。
おかげで、それなりに、理解できたしね。」
 
私は、そういったあと、陸(リク)の右手をつかんで、強引に私と握手をさせた。
 
「これで、終わり。
これからは、兄と妹という事で、よろしく。」
 
私はそういうと、彼の返事を待たずに手を離した。
そして、逃げるように門へと向かって走る。
 
「おいっ、待てよ、麗美(レミ)!」
 
陸(リク)の手が、私の腕をつかむ。
 
「もういいでしょ。離してよ!」
 
って、腕を思いっきり振るけど、陸(リク)は私の手を離さない。
 
「もう、いい加減にしてよ!」
 
そう怒鳴った私に、「それは、こっちのセリフだ。」と陸(リク)はすぐに言い返してきた。
陸(リク)の怒鳴り声に私は、思わず陸(リク)に釘付けになる。
そんな私を、少しせつない目で見ながら、陸(リク)は言った。
 
「こんな茶番劇で、納得するわけねぇーだろ!
本当に匠(タクミ)が好きだっていうなら、この腕を振り払ってみろよ。
嫌いな男がつかんでる腕なら、何が何でも逃げたいだろ?
逃げてみろよ。
俺が嫌いだって、態度で俺にわからせろ。
嘘の言葉じゃなくて、態度で・・・。」
 
陸(リク)はそういったあと、まるでつぶやくように言った。
 
「どうやったら、お前は俺に心を開いてくれるんだ・・・。」
 
陸(リク)のその言葉は、私の心に突き刺さった。
私は陸(リク)を、こんなにも傷つけてる。
私がしたかった事ってコレ?
陸(リク)の未来を考えて出した答えが、陸(リク)を傷つけて・・・。
私は一体何をしているの?
あれだけ、心に誓ったのに。
ちゃんと決めたはずなのに、また私の心は揺らいだ。
 
「陸(リク)・・・私・・・。」
 
私がそう言いかけた時、5階の窓から声が聞こえた。
 
「陸(リク)せんせぇー。早くぅー!!」
 
その声に、陸(リク)は振り返る。
私も窓に目を向けた。
さっきの飛行機を作ってもらっていた男の子に、あと大介くんも居た。
彼らを見て・・・私は、「そうだった。」と心の中で言った。
大介くんと陸(リク)の約束を、守らせなきゃいけなかったんだって。
私は、つかまれている陸(リク)の腕を、強くひっぱり自分の力で抜け出た。
 
「これで、わかったでしょ?
私は、あなたを好きじゃない。
そして、私の心は、これよ。
これが、真実の私の心。」
 
私はそう言って陸(リク)に背を向けた。
 
「麗美(レミ)・・・。」
 
と言った陸(リク)に私は、背を向けたまま言った。
 
「陸(リク)、忘れたの?」
 
私の言葉に陸(リク)はないも言わなかった。
私はそのまま続けた。
 
「『お前は、最低だ』。
陸(リク)が私に言った言葉よ。
陸(リク)のいう通り、私は最低の女。
これが、私の本当の姿よ。
それじゃ・・・。」
 
私は、そういうと走り去りたい気持ちを抑えて、歩いてその場を離れた。
門を出て、少しだけ歩いたけど、たまらずその場でしゃがみこんだ。
陸(リク)が、まだそこに立っているから、私は必死で口を抑えた。
 
「せんせぇー。」
 
と叫ぶ大介くんに、
 
「うるせぇーよ。今戻るから、待ってろ。」
 
と陸(リク)は答えると、病院に向かって歩いていった。
それを感じた私は、抑えていた口を開放する。
叫び声と、止めどなく流れる涙。
私には、止める事ができなかった。
ひたすら私は、泣きじゃくった。
自分でも気付かないうちに、私は言ってた。
彼に永遠にいう事もない言葉を・・・。
 
「陸(リク)・・・好き・・・。
だから・・・行かないで・・・。」
 
って。
何度も何度もそう言ってる自分が居た。
 
 
 
☆☆☆ 5章 END ☆☆☆
 



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