見慣れた部屋に入る。
自分だけの空間に入ると、一気に気分がめいってしまう。
私は、力なくベッドに腰をおろした。
そして、「はぁー。」と、体全体の力が抜けちゃうくらいの深いため息をついた。
すると、本当に体の力が抜けたみたいに私はヘナヘナと、ベッドに横たわった。
陸(リク)と病院で別れてから、もう5時間以上は経っていた。
でも、私の心は止まったままだった。
何もする気が起きなければ、力も入らない。
あれだけ考えて苦しんで出した結論だったのに・・・。
私はもうすでに後悔してた。
その時、ドアが「コンコン」とノックされた。
私は、一瞬ドキっとした。
もしかして、陸(リク)?って。
起き上がっちゃうくらい、驚いた。
けど、ドキドキして・・・それから冷静になって考えて気付いた。
そんなわけないって。
だって、陸(リク)はまだ、帰ってきてないもん。
時計に目をやった。
まだ、9時。
冬真(トウマ)さんの話だと、この時間はまだ、家庭教師のバイトをしてるはず。
そのあとは、いつもの工事現場でバイトをして、きっと今日も明け方に帰ってくるはずだから。
ってことは・・・誰?
相手がわからないにしても、今一番逢いたくない陸(リク)ではない事がわかった私は、安心して、体を起こすと、ドアを開けた。
案の定、そこに立っていたのは、陸(リク)ではなかった。
「匠(タクミ)さん・・・どうかしたの?」
そこにいたのは、匠(タクミ)さんだった。
「う・・・ん。」と匠(タクミ)さんは、曖昧な返事をすると、「あのさー。」と口を開いた。
「陸(リク)と、あれから話した?」
「あ・・・。」
と言ったものの、私はそれ以上何も言えなかった。
あの時の事を思い出したら、胸にまた何かがのしかかってきて、私を苦しめた。
発作みたいな事はなかったけど・・・胸がキリキリと痛んだ。
私は、たまらず胸をおさえた。
「麗美(レミ)ちゃん?」
私を心配する匠(タクミ)さんに、私は無理に笑顔を作った。
「別に何も・・・。
私と陸(リク)は、何も関係ないですから・・・。」
私は必死でそれだけをいうと、「ごめんなさい。」と謝り、部屋に戻ろうとした。
ドアノブに手をかけた私の手を、匠(タクミ)さんがつかむ。
驚いた私は、「な・・・に?」と言いながら匠(タクミ)さんを見る。
匠(タクミ)さんを見て、私はまずこう思ったの。
恐い・・・って。
だって、いつもの優しい顔の匠(タクミ)さんじゃないんだもん。
真剣な瞳で私を見てる。
この瞳・・・。
確か前も見たことがある。
私は必死で思い出して、そして気付いた。
今朝、匠(タクミ)さんが二階に上がっている間に、陸(リク)と私が逢っていた事を知った時の匠(タクミ)さんの顔。
あの時の顔と、一緒だった。
「どうしたんですか?」
恐いけど、頑張って、再度、匠(タクミ)さんに聞く私。
すると、匠(タクミ)さんは、私の手を今度は強く握った。
「麗美(レミ)ちゃん。俺と、つきあって。」
突然の匠(タクミ)さんの言葉に私はまず、こう言っちゃった。
「へっ?」
って。
匠(タクミ)さんに憧れていたのも事実なわけだから、うれしいはず。
それに、陸(リク)に匠(タクミ)さんを好きだと言った手前、これは願ってもないチャンスなのかもしれないけど・・・。
嬉しさとか、返事をどうしようって事より、『何?何が起きたの??』って思ったのよね。
完全に頭の中が大パニックの私に、匠(タクミ)さんは「前にさ・・・。」というと、握っていた手を離して、壁にもたれた。
「前に麗美(レミ)ちゃん、俺に言ったよね?
なんで、ずっと一緒にいてくれるんですか?って。」
私は、匠(タクミ)さんにつかまれていた手を反対の手でにぎりしめながら、うなずいた。
「俺、麗美(レミ)ちゃんが高熱で学校を休んだ日、心配でテストが終わってから、すぐに帰ってきたんだ。」
「えっ?」
私はそういって、匠(タクミ)さんを見た。
「それって・・・。」
と言った私に匠(タクミ)さんは、ちょっと苦笑いをした。
「そしたら、そこにいるはずもない陸(リク)がいた。
そのうえ、二人は抱き合ってキスしてて・・・。」
それを聞いた私は、恥ずかしさで両手を口に当ててしまう。
その姿に、ちょっと、笑った匠(タクミ)さんは、続けた。
「それを見た時は、正直悔しかった。
なんで、陸(リク)みたいなやつに、麗美(レミ)ちゃんが!って。
だけど、それとは別に、俺、麗美(レミ)ちゃんを救わなきゃって思ったんだ。」
「救う?」
「そう。」と匠(タクミ)さんは答えると、
「陸(リク)はなぜか知らないけど、女と本気になれない。
そんなアイツに、麗美(レミ)ちゃんはただ遊ばれてるだけだって。
麗美(レミ)ちゃんの泣く姿なんてみたくないから。
俺が、陸(リク)から守ってやらなきゃ。って・・・。
初めはそんなつもりで、麗美(レミ)ちゃんと一緒にいたんだ。
だけど・・・。」
匠(タクミ)さんはそういうと、もたれていた体を起こすと、私の正面に立った。
「麗美(レミ)ちゃんとこの1ケ月ずっと一緒にいて、麗美(レミ)ちゃんが好きになってた。
陸(リク)の事なんて、関係ないくらい・・・。
今日の陸(リク)と麗美(レミ)ちゃんを見てて、お互いが本気で思い合ってるのもわかってる。
でも、何か原因で、陸(リク)の胸に飛び込めないんだろ?
それが、麗美(レミ)ちゃんを苦しめているんなら、俺が麗美(レミ)ちゃんを抱きしめてあげる。
最初は、陸(リク)の代わりでもいいんだ。
そのうち、俺を好きになってくれたらいいから。
だから、俺と、つきあって。」
私は、何も答えられなかった。
本当は、答えは出てたのに。
私は、陸(リク)が好き。
それは、今の私にとっては、どれだけ時間が過ぎても変わらないって思えるくらい、強いものだった。
だから、いくら匠(タクミ)さんが想ってくれても、私は匠(タクミ)さんを陸(リク)以上に想う事はない・・・そう答えは出てた。
だけど、私は断れなかった。
心のどこかで、匠(タクミ)さんを利用しようと思っていたのかもしれない。
好きな人に好きといえないこの胸の苦しさを、誰かに癒してもらいたいって・・・。
そんな、ずるい事を考えていたんだと思う。
返事をしない私に、匠(タクミ)さんは、私が納得したと思ったのか、私に近付いてくると、私の肩に手を乗せた。
次の瞬間、私の背中にゾゾっと何かが走った。
さっき、手をつかまれても、そんな事なかったのに、肩に触れられた瞬間、冷たい何かが、背中を走った。
ただの寒気とかじゃなくて、心臓が一瞬キューっと縮んでしまうくらいの衝撃だった。
そんな事が私を襲ったと気づかない匠(タクミ)さんは、反対の腕を今度は私の腰に回してきて、私を抱きしめようとした。
その時!私の脳裏に、昼間の事が甦ったの。
それも、信じられないくらい鮮明に・・・。
触れられているのは、匠(タクミ)さんなのに、昼間のあの黒川って人の体温にすり替わる。
すると、急に目の前の匠(タクミ)さんが、恐ろしくて怖くなった。
「いやぁー!!」
私はもう、自分で自分が抑えきれなくなった。
とにかく、何もかもが、昼間の出来事と重なってしまって、何も考えられなくなった。
完全に理性を失っていた。
私は、叫んだと同時に、匠(タクミ)さんを突き飛ばして、彼から離れた。
数歩下がって匠(タクミ)さんから逃げるけど、感覚を失っている足がもつれて、私はその場でしりもちをついた。
まるで、はうようにして、その場からズルズルと階段の方に逃げる。
側にあった柵にしがみついて私は、ガタガタと震えた。
「麗美(レミ)ちゃん!」
突然の私の豹変ぶりに驚いた匠(タクミ)さんは、私の元に近付いてくる。
匠(タクミ)さんの足が一歩私に近付いた時、私はさらに叫んだ。
「来ないで・・・。お願い・・・来ないで!!」
泣き叫ぶ私の声に、リビングにいた母と義父である誠(マコト)さんが、姿を現した。
「何っ!どうしたの!!」
私の声に走って出てきた母は、私の脅えた姿に一瞬呆気にとられる。
ビックリして、何も言えなくて体が動かない母と違って、誠さんは冷静だった。
「匠(タクミ)!何があった?」
だけど、匠(タクミ)さんはそれには答えずに、私に近付いてくる。
「麗美(レミ)ちゃん、大丈夫だから、落ち着いて!」
って。
だけど、私は匠(タクミ)さんの声も、誠さんの声も聞こえてなかった。
ただ襲ってくる匠(タクミ)さんが怖くて怖くて、たまらなかった。
匠(タクミ)さんが私に近付いてくるごとに、私はズルズルと体を後ろへと移動させる。
「いや・・・助けて・・・いやぁ・・・。」
私は必死になって、匠(タクミ)さんに止まってくれるように訴えたつもりだったのに・・・。
でも、匠(タクミ)さんは、足を止めずに私にドンドン近付いてきた。
いつもの場所にバイクを戻して、俺はエンジンを止める。
そして、いつものように、ヘルメットを脱いで俺は、バイクから降りた。
夜風に当たると、素直に出た。
「気持ちいいなぁ〜。」
って。
いつもは、こんな時間に風に当たる事なんてねぇーからさ。
正確には、当たっていても気付かないんだけど。
汗だくで働いてるから、気持ちいいんだかどうだか、わけわかんねぇーんだ。
俺は、上着のポケットから携帯を出した。
「9時半か・・・。」
そして、顔をあげた。
もちろん、空を見たかったわけじゃない。
俺は、そこから唯一見える、麗美(レミ)の部屋につながる窓を見たんだ。
そこからは、明かりが漏れていた。
という事は・・・。
「まだ、起きてるか・・・。」
ため息混じりに俺はそう言った。
まっ、そんな事、見なくてもわかりきっていたんだけどな。
さすがに、この時間には、寝てないだろうと思ってた。
というより、たぶん、今日、麗美(レミ)は眠れないと思うから。
あんなに怖い目にあったんだ。
きっと、夜になれば、怖くて眠れないんじゃないかと思ってさ。
とはいえ、俺にはどうしてやることもできないけど、壁を通してでも、俺がいる。
誰かが起きて自分を見ててくれてる。って思うだけでも、気持ちがやわらぐんじゃないかな?って。
そんな軽い傷じゃない事はわかってる。
でも、ひとりよがりでも、俺は麗美(レミ)の力になりたかったから。
どんなに些細な事でも、アイツが笑っていられるように、俺はしてやりたかったから。
だから、本当は、麗美(レミ)に逢わないように、いつものように深夜のバイトをして、明け方に帰って来たほうがよかったのかもしれないけど、俺は深夜のバイトを今日は休んだんだ。
麗美(レミ)の誰よりも近くで、アイツを見守ってやりたかったから。
とはいえ・・・。
「やっぱ、入りずらいよなぁー。」
と愚痴をこぼす俺。
だけど、自分の家の前でウロウロしてるのは、かなり怪しいし・・・。
しかたない!覚悟を決めて入るか。
俺は、大きく深呼吸をした。
そして、心の中で、自分に掛け声をかけた。
せーの!!
玄関の扉を勢いよく開けた。
「ただい・・・。」
そこで俺は、言葉をやめた。
そして、次に出た言葉は・・・。
「なんだよ・・・これっ!!」
だって、俺の目にした光景は、予想外も予想外。
信じられない光景だったから。
オヤジと真美(マミ)さんが、廊下に立ち尽くし、階段の方を見てる。
その視線を追うと、そこには、完全に我を忘れて取り乱している麗美(レミ)に、その麗美(レミ)に近付こうとしている匠(タクミ)の姿。
俺は、素早く靴を脱ぎながらオヤジに叫んだ。
「おいっ!一体、どうしたんだよ。」
だけど、オヤジは、「さっぱり、わからないんだ。」と首を振る。
「急に麗美(レミ)の叫ぶ声が聞こえたかと思って出てきたら、麗美(レミ)があんなふうに取り乱してて・・・。」
と真美(マミ)さんも、かなり動揺してる。
「麗美(レミ)が叫んだって・・・なんで?」
俺が、さらにオヤジと真美さんにそう問いただした時だった。
一歩一歩麗美(レミ)に近付く匠(タクミ)に麗美(レミ)は、さらに叫んだ。
「お願い・・・来ないで。・・・来ないで!!」
そして、ドンドン麗美(レミ)は、階段の方へと体を動かしてくる。
このままだと、完全に落ちてしまう。
何となく状況がつかめた俺は、大声で叫んだ。
「匠(タクミ)っ!止まれ!麗美(レミ)に近付くな!!」
だけど、俺の声を聞いた匠(タクミ)は、なぜか急に顔をこわばらせる。
そして、まるで、吐き捨てるように言った。
「俺だって麗美(レミ)ちゃんが好きなんだ・・・。
お前が抱きしめれて、どうして、俺がこばまれるんだよ・・・。」
俺には、よく聞こえなかった。
だけど、そんな事どうでもよかった。
ただ、俺は、目の前にいる麗美(レミ)を救いたかった。
それだけだった・・・。
なのに、匠(タクミ)は俺の忠告を聞かずに、一気に麗美(レミ)に近付き、麗美(レミ)の腕をつかもうとした。
それを感じた麗美(レミ)は、思いっきり腕を後ろにやる。
体勢が完全に後ろにのけぞった。
すでに、階段のギリギリまで、来ていた麗美(レミ)は、もちろんの事ながらバランスを崩した。
「麗美(レミ)っ!!」
俺の叫ぶ声と、麗美(レミ)の、「キャァー!!」って声が重なった。
俺は、宙に浮いた麗美(レミ)の体のどこかに触れようと、必死で手を伸ばした。
運よく腕をつかんだ俺は、麗美(レミ)が階段に打ち付けられる前に、その腕を素早く引き寄せ麗美(レミ)を完全に俺の胸に収めることができた。
麗美(レミ)を強く抱きしめた瞬間、俺の体に強い衝撃と、ものすごい音が襲った。
一体何が起こったのか、俺自身急すぎてわからなかった。
でも、一つだけ俺の脳がわかっている事があった。
それは、絶対にこの腕を離さないという事。
腕の中にいる宝物を守らなきゃ・・・。
俺が、わかっていた唯一の事は・・・それだけだった。
額に冷たいものと、暖かいものが交互に触れた。
一体・・・何?
私は、ゆっくりと目を開けた。
私が目にしたのは、いつも見慣れた部屋の天井だった。
最初は気付かなかった。
でも、徐々に動き出した私の頭が、おかしいという事に気付く。
だって、私はさっきまで、匠(タクミ)さんと廊下で話してて・・・。
そうよ!私、確か階段から落ちて。
音は覚えてる。
体が階段とこすれるすごい音がしてたもん。
でも、不思議と私には全く衝撃がなかった。
だけど、私は恐ろしさのあまり、気絶したんだった。
でも、どうして衝撃がなかったの?
確か、あの時、かすかだけど聞こえた気がしたの。
聞こえるはずもない声が。
陸(リク)の・・・・声が・・・。
「気が付いたか?」
そうそう。この声!
今、聞こえたみたいに、陸(リク)の声がさっき聞こえたような・・・。
って、思った私は、「えっ!!」と言いながら顔を右に思いっきり向けた。
私の機敏な動きに、もちろん陸(リク)は「ククク。」と笑う。
「気を失ってたやつが、そんなに急に頭を動かすなよ。」
陸(リク)はそういいながら、優しく笑う。
「陸(リク)・・・。」
私は思わず涙ぐんだ。
だって、ずっとずっと陸(リク)に逢いたかったから。
匠(タクミ)さんが黒川って人に思えて怖くて怖くてたまらなかった時、私はずっと心で叫んでたの。
陸(リク)、助けてって。
陸(リク)の顔を見て安心したのと、陸(リク)が助けてくれた嬉しさで、私は我慢できなくてたまらず、涙が頬を伝った。
その涙は、私の心の中にある、陸(リク)への想いと同じくらい熱かった。
ただ、黙って涙を流す私に陸(リク)は、体をさらにベッドの方に近づける。
そして、暖かい手を私の頬にあてた。
「お前の悪いくせだな・・・。」
陸(リク)はそういいながら、簡単に私の涙をぬぐうと、今度は私の背中に腕を沿わせて、私の体を起こし、私をベッドに座らせた。
そして、陸(リク)も、ベッドに座ると私の髪を優しくなでた。
「泣きたい時は、声を出して泣けよ。
お前の声も、お前の悲しみも、俺が全部吸い取ってやるから。」
陸(リク)はそういうと、私を自分の胸にユックリと倒した。
陸(リク)の心臓の音が、聞こえた。
「陸(リク)が・・・助けてくれたの?」
陸(リク)は何も言わなかった。
言わないかわりに、私の髪にふれ、とても優しく髪をなでてくれた。
この腕に抱きしめられて、この胸に顔をくっつけていると、さっき私を包み込むように抱きしめてくれていた人だとわかった。
「陸(リク)は・・・怪我してない?」
あれだけすごい音がしたんだもん。
陸(リク)の体が心配になる私。
でも、陸(リク)は、
「日ごろ鍛えてるから、平気。」
と笑いながら答えると、「なー、麗美(レミ)・・・。」とつぶやいた。
「今、麗美(レミ)が誰を好きでも。
俺を愛せなくても、それでも俺はお前が好きだ。
俺は、どれだけお前に拒まれても、お前の側を離れないから。
ずっと変わらず愛す。
そして、いつか、絶対に麗美(レミ)に俺が好きだって、言わせてやるから。」
陸(リク)はそういったあと、自分の胸から少し私を離した。
そして、私にニッコリ笑うと、
「俺に惚れられた事が、運の尽きってな。
俺、結構しつこいから、覚悟しろよ!」
なんていって、さらには、頬に軽いキスをした。
ただ、呆然と陸(リク)を見ている私に陸(リク)は、「よっ!」と声をあげると、ベッドから立つ。
「匠(タクミ)に逢いたいだろ?
匠(タクミ)を呼んできてやるよ。」
陸(リク)はそう言ってドアの方に歩きかけて、「あっ、そうだ。」と何かを思い出したのか振り返った。
「匠(タクミ)には、ちゃんといっておいたから。
黒川のせいで、今は男が怖いんだって。
あせらず、ゆっくりするよう、くぎ刺しといたから。
もう強引に迫ってくる事もないだろうから、安心しろ。」
そして、彼はドアノブに手をかけた。
かけて・・・動きを止めた。
「れ・・・み?」
陸(リク)は戸惑いながらそう言って、振り返った。
そりゃ、驚くよね。
だって、私、今陸(リク)に抱きついてるんだもん。
両腕で陸(リク)の体を、ギューって抱きしめてるんだから。
不思議と、陸(リク)に触れても、触れられても平気だった。
それは、きっと私が心から陸(リク)を好きだからなんだと思う。
陸(リク)は私が、抱きついて平気な事に驚くかな?って思ったんだけど、そんな事にはふれずに、別の事を心配してくれた。
それは、本当に陸(リク)らしかった。
だって・・・。
「だから・・・。急に動くな。って、何回言えばわかるんだよ。」
って。
私の体の事を心配してくれた陸(リク)は、呆れた口調でそういった。
そして、私の腕をつかんで、私を自分の体から離すと、強引に私をベッドに座らせた。
「陸(リク)・・・。」
私は陸(リク)をまるで、すがるような目で見てた。
ずっとずっと言いたくて、仕方なかった言葉。
それを本当に言っていいのか、私は心の中で葛藤してた。
その葛藤を終わらせてくれたのは、陸(リク)のこの言葉だった。
「何?」
そう。たったこれだけの言葉だった。
彼の得意な甘い囁きでも、彼がいつも見せる自信に満ち溢れた言葉でも、もちろん愛の言葉でもなかった。
そんなものじゃなくて、ただ私に聞いてきた言葉。
でも、その一言に、彼の想いがつまってるのが、わかったの。
何でも聞き入れてくれる。
全ての私を受け入れてくれる。
そんな強さと優しさが、彼の言った言葉からは、伝わってきた。
私は、『素直な自分』になる決意をした。
自分から陸(リク)に抱きついた。
「陸(リク)・・・。
私、陸(リク)が大好きだよ。」
やっと言えた言葉だったのに、陸(リク)ったらなんて言ったと思う?
「そんなの、初めからわかってたよ。」
って。ちょっと、腹が立った私は、右手で彼のお腹に軽いパンチをする。
それには、陸(リク)も「アハハ。」と声を出して笑う。
「でも、何で急に認める気になったんだ?」
陸(リク)はそういうと、さらにこう言った。
「せっかく、匠(タクミ)が好きだっていうお前のいう事を、一応信じてさ、俺は、祝福してやろうと思ったのに・・・。」
って。そして・・・。
「悩み損じゃねぇーかよ。」
とまで言う始末。
「そんなに言わないでよ。
私だって、いっぱいいっぱい苦しかったんだから・・・。」
とすねると、「すねんなって、わかってるよ。」と陸(リク)はすぐに謝り、私を抱きしめてくれた。
「それで?聞かせてくれよ。」
もちろん、「何を?」と言っちゃう私。
「何を?って、決まってるだろ?
俺を拒み続けた理由を、聞かせろよ。
それを聞けば、麗美(レミ)が起こしてた発作の原因だってわかるんだろ?」
「それは・・・。」
と口にした私は、そのあとユックリと、彼に真実を話した。
お母さんに反対されていた事。
そして、お母さんを裏切る行為は、軽蔑していたお母さんと同じ立場に自分がなることであり、そうなる自分が怖くてたまらなかった事。
だけど、実は、もう1つ怖いことがあったの。
でも、それは口にしなかった。
なんか、言い辛くて・・・。
だけど、陸(リク)はまるで、それがわかったみたいな答えを私にくれた。
「心配するな。」
初めはさっぱり意味がわからなかった。
なんで、そんな言葉を私に言うの?って。
でも、そのあと、陸(リク)は私の左頬に、自分の右手を合わせると、私をまるで安心させるような笑いを見せた。
「麗美(レミ)が、真美(マミ)さんと同じように、家族じゃなくて男を選んだ。
結果的にそれが、誰も認めてくれなくて、麗美(レミ)が軽蔑されたとする。
今の麗美(レミ)自身が、真美さんを軽蔑しているようにな。
例え麗美(レミ)がそういう対象の人物になっても、俺は絶対にお前を嫌いになったりしないから。
ずっと、ずっと変わらず麗美(レミ)を愛すから。
だから、不安になったら、誇りに思えばいい。
失ったものの代わりに得た物がある。
永遠の愛を手に入れたって。
それを、誇りにしろ。」
私は、陸(リク)の言葉に、素直な自分の感想を言った。
それはね、
「まいった。」
って。
だって、陸(リク)は私の不安をちゃんとわかってるんだもん。
本当・・・まいったよ。
陸(リク)のすごさに、ちょっと笑っちゃう私に、陸(リク)も笑いながら、
「俺って、すごいだろ?」
と自慢を始めた。
そして、さらには・・・。
「どう?俺にますます惚れた?」
と強気な言葉。
「そんなわけないでしょ!」って、いつもの私なら、かわいくない返事をしてたと思う。
でも、今の私は自分でも、驚いちゃうくらい、素直なんだー。
だから、陸(リク)の言った言葉も、もちろん否定しなかった。
「陸(リク)さえ、いてくれたら、それでいいよ。」
私の答えに彼は満足したのかな?
すごく嬉しそうに笑うと、顔を近づけながらこういった。
「俺も、麗美(レミ)がいてくれたら、それだけいい。」
そのあとは、もちろん、彼の想いがこもったキスをもらった。
やっと心が通じ合えた。
もう、陸(リク)への想いを我慢しなくて済む。
その喜びで私は、幸せいっぱいだった。
いっぱい過ぎて、私はすっかり忘れてたの。
彼の想いを抑えてた、もう一つの理由があったこと。
『嫌な予感』があった事を・・・すっかり忘れていた。
私は、目を開けた。
時計を見る。
午前5時になる、10分前。
さすがに、1ケ月以上も、こんな生活を過ごしていると、目覚ましがなくても起きれるようになった。
しかも、起きるまでの間の5時間は全く目を覚ます事無く、爆睡してるんだから、それもすごいけど。
私は起き上がってベッドに座るけど、思わず身震いしてしまった。
さすがに、11月半ばとなると、この時間は冷え込む。
私は、側に置いていた上着を羽織る。
その時、窓の隙間から、バイクの音が聞こえた。
「あっ、帰って来た!」
私は、ベッドから起き上がると、窓際に立つ。
そして、窓をのぞくと、陸(リク)がヘルメットを脱ぎながら、玄関のドアを開けて中に入る姿が見えた。
私は、急いで窓際から今度は、全く逆方向にあるドアに向かって移動した。
そして、ドアを開ける。
すると、ちょうど階段を登りきった陸(リク)と出逢った。
陸(リク)は、私の顔を見ると何も言わずに笑いかけ、私が支えているドアに自分の手を添えると、中へ入ってくる。
そして、扉を閉めると、私を優しく抱きしめた。
「ただいま。」
耳元で囁く陸(リク)。
隣は陸(リク)の部屋で、その向こうが匠(タクミ)さんの部屋だから、匠(タクミ)さんには少々の声は聞こえないし、もし聞こえても私たちの事を知ってるから、大丈夫なんだけど。
でも、私の部屋は、階段にもっとも近いから、誠さんやお母さんがトイレとかに出てきた時に、もしかしたら聞こえるかもしれないから、この部屋で話す時は、とぉーっても小声なの。
ほとんど、耳元で話してるって感じ。
「おかえり。」
私も陸(リク)の胸でそうささやく。
すごく冷たい陸(リク)の上着を肌で感じると、寒い中走ってきたんだと知る。
普通だったら平気なんだろうけど、私は今の今まで、暖かいお布団の中にいたわけで、そんな状態から、外の冷たさを感じたら、もちろん・・・。
「クシュン。」
となっちゃったんだよねぇ・・・。
「大丈夫か?」
と私を心配する陸(リク)に、「うん・・・平気。」と強がっては見るけど・・・寒いもんは寒い。
我慢しきれずに、身震いまでしてしまった私。
それには、陸(リク)も、笑ってる。
「10分したら、俺の部屋に来いよ。」
陸(リク)はそういうと、私を強引にベッドに座らし、さらには私を押し倒すと、お布団をかけた。
「り・・・く?」
と不思議顔で聞く私の額に、陸(リク)は優しくキスをした。
「お前に風邪ひかれたら、困るから。」
そういうと、今度は私の唇に、熱いキスをくれた。
「体暖めてくるよ。
そしたら、今度は俺が、麗美(レミ)を暖めてやるから。」
なんていいながら、すっごいいたずらっ子みたいな笑みを浮かべている陸(リク)。
私はというと・・・。
「なんで、そんな恥ずかしいセリフ、平気な顔で言えるの?」
と呆れちゃう。
でも、陸(リク)は、「恥ずかしい?どこが?」と全くわかっていないみたい。
という事は・・・根っからのプレイボーイなんだと知る。
「じゃ、時間がもったいないから、俺行くわ!」
と陸(リク)は笑いながらそういうと、部屋を出て行った。
私は、お布団の中でうずくまる。
冷えた体を暖めながら、陸(リク)が言った10分を、時計とにらめっこしながら待った。
少し、暖かさが復活した私は、ベッドから脱出すると、そーっとドアを開けた。
一応、キョロキョロと見渡して、お母さんと誠さんがいないかをチェックした上で、部屋から出る。
そして、音を立てないように、扉をこれまたソーっと閉めた。
廊下のきしむ音を極力出さないように前に進んで、隣の部屋へと向かう。
ノックしたら音が聞こえるから、そのまま入れ。と陸(リク)にいつも言われているから、私はそのままドアノブを回して、陸(リク)の部屋のドアを開けた。
開けて、中を見渡したけど・・・心の中で、「まだかぁー。」と残念なささやきをしちゃう。
でも、ま、そのうち戻ってくるし、いっかー。入っちゃえ!!という事で、そのまま部屋の中に入った。
音を立てないように扉を閉めると、ちょっと緊張して息を殺していた自分の気持ちがゆるむ。
「はぁー。」
とちょっとため息をついて安心した所で、私は陸(リク)の部屋の奥へと入った。
陸(リク)の部屋で一番落ち着くのは、陸(リク)の机かな?
そこには、すごく難しい本がいっぱいあって、ハッキリ言って私には全くわからないんだけど。
でも、それを見てると落ち着くっていうか・・・笑える。
だって、机の棚には、全く教科書がないんだよ。
参考書だってないんだもん。
あるのは、受ける大学の過去の問題集と、あとは医学書ばっかり。
それも、心臓関係のね。
これだけ、ズラズラっとあったら、絶対に誠さんや、匠(タクミ)さんも気付いているとは思うんだけど、なぜか不思議と誰も気付いていないのよね。
陸(リク)いわく、
「匠(タクミ)は、自分以外には、あまり興味を持たないんだよ。
とくに、俺とは昔から考え方も合わなかったから、話もろくにしねぇーし。
まして、部屋になんてここ何年も入ったことねぇーんじゃないかな?」
って。
でも、双子なのに、不思議だった私は、聞いたんだー。
「どうして、双子なのにそんなに仲が悪いの?」
って。そしたら、「双子だからだよ。」って笑われちゃった。
それ以上は聞いても笑って教えてくれなかったけど、普通の兄弟と違って、双子って全く同じだけ生きてるわけで、出来る、出来ないが普通の兄弟に比べると一目瞭然じゃない。
だから、もしかしたら、昔から比べられていて、それが、二人を常に競わせる結果になっちゃったのかな?とか・・・。
勝手に思ったりしてたんだけどね。
「あっ!」
陸(リク)の机を見ていた私は、ある物を見つけて、たまらず笑顔になりながらそれを手に取った。
それは、とても小さな小瓶。
中の液体をこぼさないように、私は細心の注意を払って、その蓋を開けた。
「ポン。」と小さな音を立てて開いたその小瓶から、一気にある香りがふわぁーっと飛び出してきた。
小瓶の口に鼻を持っていかなくても、この距離でも充分、におえるくらいの香りだった。
私は、目をつぶって、その香りをさらに堪能する。
これは、いつも陸(リク)がつけている香水。
この香りをかいでいると、陸(リク)を思い出すかな?って、実はすっごい軽い気持ちと、あといたずらな気持ちで、この小瓶を開けたの。
陸(リク)にまだ、抱かれていない私の体から、自分の香水の香りがしたら、陸(リク)はどんな顔するかな?って。
驚くかな?って・・・そんな、遊び心でこの蓋を開けたのに・・・。
今の私にはそんな余裕なくなってた。
手に持っている小瓶をいつのまにか、両手で強く握り締めてた。
この香りに包まれてると、まるで陸(リク)に抱かれているような錯覚さえも起こしてしまうくらい・・・私は陸(リク)をこれ以上ないくらい、求めてた。
抑えきれなくなった私はたまらず、口にする。
「陸(リク)・・・。」
って。
すると、急に後ろから暖かい腕が、私の体に触れた。
「えっ!」と驚いて目を開けて振り向こうとした私の横顔に、陸(リク)は自分の顔をくっつけてきた。
そして、これ以上くっつかないくらい、私を強く強く抱きしめた。
「なんで、そんなもん、持ってんの?」
ちょっと意地悪みたいな口調で陸(リク)はそういうと、私の右頬や、耳や首に軽いキスをたくさんしてくる。
初めはイタズラのつもりだったんだといいたかったけど、ただでさえ、余裕がなくなってきていたのに、陸(リク)にこんな事されたら、完全に自分を抑えられなくなった私は、自分から彼の唇に強引にキスをした。
「陸(リク)が遅いから、陸(リク)の香りに抱かれてたの!」
とかなり挑戦的な言葉を言っちゃった私。
私は本当に、早く陸(リク)を感じたかったの。
だから、こういえば、普通なら答えてくれるって、そう思ったのに・・・。
相手が陸(リク)なんだもんね。
これくらいの攻めじゃ、その気にはさせられなかったみたいで、陸(リク)はさっきと変わらず余裕の表情で笑うと、私の体から手を離し、香水の入った小瓶を私の手の中から、ヒョイと抜き取った。
そして、蓋をすると、片方の腕は私の腰に戻し、もう片方の手で、それを机に戻した。
「麗美(レミ)さー、わかってないよな・・・。」
突然陸(リク)に言われて、もちろん、「何が?」って答える。
だって、本当にわからないんだもん。
振り返って陸(リク)の顔を、ジッと見る私の姿に、陸(リク)は、「フッ。」と声を出して笑うと、私の顔にふれてくる。
「香水ってのは、人間の体について初めて、『香(カオリ)』って物に、変化するんだ。
そして、それは、その人間によって、さまざまだ。
だから、俺の体から香る香(カオリ)は、この世で一つしかない。
元の香水の香(カオリ)をかいでも、それは、俺じゃないよ。」
陸(リク)はそういったあと、今度は私の耳元に自分の唇を近づけた。
彼の熱い息がかかって、平常心じゃいられなくなりそうになった。
「麗美(レミ)を抱くのは、香水じゃない。
俺自身って事、忘れるな・・・。」
まるで、囁くように言った陸(リク)は、そのまま唇を私の耳にくっつける。
そして、そのまま腕を緩めて、私の体を少し陸(リク)の方に向ける。
陸(リク)の唇が、私の耳から、今度は顎に行き、首筋におりて、胸へと移動して・・・。
あとは、あまり覚えていない。
陸(リク)の舌が辿った道が、どんどん熱くなって、自分でもコントロールできなくなるくらい、体が熱くなっていくんだもん。
立っている事だって出来なくなった。
「もう・・・ダメ・・・。」
たまらずそう言ってしまった私。
いつもの陸(リク)なら、こんな迫り方はしないけど、もしこうなっても、私がギブアップしたら、絶対ベッドに連れて行ってくれたはずなの。
でも、今日の陸(リク)は・・・とぉーっても意地悪だった。
私の声は聞こえているはずなのに、完全に無視して、動きをやめない。
やめないどころか、今度は下をせめてきた。
私を支えていない方の手を、私の中に入れてきた。
もちろん、体全体がビクと反応する。
そして、次の瞬間私は完全に腰砕けになっちゃって、崩れた。
正確には、崩れそうになったのを、陸(リク)が抱きかかえてくれた。
「大丈夫かよ。」
と笑いながら言った陸(リク)は、完全に力が抜けた私を、両腕で抱きかかえると、ベッドに私をおいた。
仰向けになっている私の上に、陸(リク)が乗ってくる。
だけど、さっきの意地悪で、私は口をとがらす。
その顔に、陸(リク)は笑いながら、私の鼻をキュっとつまむ。
「そんな顔してたら、もっといじめるぞ。」
それには、反撃。
「何よ!普通にしてても、意地悪するくせに!」
たまらず、大きな声を出しちゃった私に、陸(リク)は少し驚く。
「バカッ!うるせぇーよ!!」
と怒られて、「あっ!・・・。」と慌てて口を両手でふさいだ私。
その姿に、陸(リク)は声を出して笑う。
「もともとは、陸(リク)が悪いんだからね。
意地悪するから・・・。」
あくまで陸(リク)が悪いと主張してみたけど、「お前が悪いんだよ。」となぜか私が悪くなっていた。
「なんでよ!!」
と聞くと・・・。
「先に浮気したのは、お前だろ?」
「浮気??」
思いっきり首をかしげてる私に陸(リク)は、「そう。」と口にしながらまた、私の体中を愛撫する。
「俺をまたずに、香水に走っただろ?
あれに抱かれようとしたから、立派な浮気だろ?」
それって・・・。
「強引過ぎない??」
と呆れるけど、「ちっとも!」と平然と切り返された。
「あのねぇー。」とため息混じりに言った私に、陸(リク)は愛撫をやめると、私の顔を見た。
「香水は、麗美(レミ)を包み込む事しかできないだろ?
でも俺は、お前を激しく抱く事も、感じさせる事も、いかせる事もできる。
どっちの男を選ぶ?」
「だから〜。」
と文句を言おうとしたけど、陸(リク)のあまりに真剣な顔に私は、続きを飲み込んだ。
そんなに真剣な顔で言われたら・・・私も真剣に答えちゃうよ。
「どうなんだよ!!」
答えをせかしてきた陸(リク)に、私は心の中でちょっと笑っちゃったの。
だって、目の前の陸(リク)は、まるで嫉妬に狂ってるみたいなんだもん。
しかも、相手が香水なんだから。
それも、自分の愛用のよ!
くだらなくて笑っちゃうけど・・・。
だけど、こんな彼の言葉も、態度も、表情も、あらゆるもの全てが、私を熱くさせ幸せにしてくれた。
私は、自然と笑顔になって、さらには彼に自分から上半身を起こして抱きついた。
「そんなの、陸(リク)を選ぶに決まってるじゃない!」
そして、軽く彼の唇にキスをした私は、離してすぐにこう言った。
「今日は、どれをしてくれるの?
激しいの?感じさせてくれるの?それとも、いかせてくれるの?」
口にしながら、笑っちゃった。
それには、陸(リク)も笑いながら答える。
彼の答えは、想像してたけどね。
案の定・・・。
「もちろん、トリプルで!!」
って。やっぱりね。
そして、彼はいつも以上に私を、熱くさせ、私をかき乱した。
しばらくして、私は早々に彼におねだりをしてしまった。
「陸(リク)、お願い・・・からめて・・・。」
その言葉に陸(リク)は、「おい!まだ、早いって。」と笑いながら言って、またもや無視。
彼は彼で、いつものペース・・・いや、それ以上に私をせめてくるんだけど・・・。
ダメ・・・もう、無理だって!!
私は、必死になって陸(リク)に頼む。
「陸(リク)・・・お願い・・・。
早く・・・もう、ダメなの・・・。」
私の必死の助けに、陸(リク)も私の限界をわかってくれたのか、
「ったく・・・。感じ過ぎだって。」
と笑いながら愚痴を吐くと、熱くなっている私の顔に右手で触れる。
陸(リク)の体だって熱い。
でも、それでも、陸(リク)の手が気持ちよく思えるくらい、私は完全に頭に血が上ってる状態だった。
「すっげぇー、熱いな。」
と笑う陸(リク)に、「いいから・・・早く・・・。」とせかす。
「はいはい。」と、答えた陸(リク)は、私の口に舌を突っ込んできた。
お互いの舌を完全にからめる。
その状態で、陸(リク)はまた私に攻めを開始する。
必死で我慢していた私の思いが、一気にあふれてきた。
陸(リク)の体に私の声を・・・いや、悲鳴を流し込んだ。
陸(リク)と、想いが伝わりあってから、この1ケ月、私たちはほとんど毎日、こうやって陸(リク)の部屋で明け方に愛し合ってた。
なぜ陸(リク)の部屋、限定かというと、私の部屋ですると、トイレに起きてきた時に、もしかしたら、声が聞こえるかも?って可能性があったのと、あと私の部屋は、お母さんが掃除をしに、入ってくるから。
陸(リク)の髪の毛とか、まー色々あったら、困るしね。
陸(リク)の部屋は、やっぱり入りづらいのか、お母さんは一度も入ったことがないから、だから、陸(リク)の部屋でなんだ。
だけど、陸(リク)の部屋は、隣に匠(タクミ)さんがいるでしょ?
壁とは逆方向に匠(タクミ)さんは寝てるし、陸(リク)のベッドは、私の部屋側にあるから、いえば両端と両端状態なんで、少々の声は聞こえないみたいなんだけど、それでもやっぱり声は抑えてる。
声を出さないように、必死で我慢して、それでも無理なら、クッションで口を抑えて、必死で耐えているんだけど、陸(リク)いわく、
「お前は、感じすぎなんだよ。」
らしい・・・。
だから、絶対に、5〜6回くらい、いっちゃうくらいの声を上げちゃいそうになる時があって・・・。
それを、防止するのに、陸(リク)があみだしたのが、さっきのあれ!
お互いの舌をからめて、声を押し殺す。
あーすると、『声』が出せなくなるから、いえばうめき声みたいになっちゃうの。
それを、陸(リク)の口を通して、陸(リク)の体の中に通すから、あまり外には漏れない?
本当なのかは、わかんないけどね・・・。
まっ、匠(タクミ)さんに、聞こえてない事を祈って、それで頑張ってるんだけど。
でも、だいたいそれって、後半なんだけど、今日はテンションが上がりすぎちゃったのか、まだ陸(リク)が入れてないのに、せがんじゃって・・・。
だって、陸(リク)の指だけで、いきそうになっちゃったんだもん!!
だから、陸(リク)が、しぶってしてくれなかったのよね。
でも、必死で我慢してたせいで、顔が真っ赤になっちゃって、それでホントだと信じてくれたみたいで、やってくれた。
耐えていた想いを発散した私は、自分から舌を離す。
そんな私に陸(リク)は、さらに熱いキスを何度も何度もしてきた。
「どうしたの?」
と聞いた私に陸(リク)は、「もう1回、からめよ。」と言い出す。
陸(リク)から、そんな事言ったことなかったから、少し驚いた。
目を真ん丸にする私に陸(リク)は、少し笑うと、私の頬にキスをしながら、お得意の耳でささやく。
「俺も我慢できなくなってきた。
一気に、やらせて。」
そういったあと、私を見てニッコリ。
「えぇー!!」
とブーイングの私を完全に無視して、「ほら、早く。」とベーっと自分は舌を出す。
「う・・・ん。」と出し惜しみする私に、「ならいいよ。」と陸(リク)は舌を引っ込めると、私の腰に手をあてると、いきなり入れてきた。
「一人で、耐えて下さい。」
と笑顔でいいながらも、行動は起こす。
それには、もちろんギブアップ。
「あっ・・・待って・・・陸(リク)・・・・。
んっ・・・あぁ・・・・。」
手をバタバタさせてクッションを探す私。
声が出そうなのをなんとか、それくらいでとどめて、そして、慌てて陸(リク)を止める私に、彼ったら大爆笑してんのよ。
信じられないでしょ。
「笑ってないで・・・止めてよ・・・。」
と必死に訴えると・・・。
「たく、しょうがねぇーな。
もう、待ったはナシだぞ。」
と陸(リク)は笑いながらいうと、「ん!」と言って私に舌を出す。
ここまで、来いって事なのね・・・。
こっちに来てよ!!って言いたいけど、これ以上怒らせると正直怖いので、仕方ない。
私は、彼に言われるがまま、自ら彼の口へと向かった。
「うん。わかった。こっちは大丈夫だから。
じゃーね、おやすみぃー。」
私はそう言って、耳に当てていた受話器を放すと電源を切った。
今の電話は、お母さんから。
何かと言うと・・・。
その時、今度は私の携帯電話が鳴った。
「あっちも、こっちもうるさいなぁー。」
と文句をいいながら、机の上の携帯を、手を伸ばして取る。
着信を見た途端、怒っていた顔が一気に消えて笑顔になる。
「もしもし、陸(リク)?」
声のトーンだって上がっちゃう。
世間は、今年最後の月の12月を迎えた。
そして、今日陸(リク)と匠(タクミ)さんは、センター試験を受けに行っていた。
もう、8時過ぎだから、試験はとっくに終わっているんだけど、陸(リク)はそのまま冬真(トウマ)さんと待ち合わせをして、地方に行ってるの。
なんか、そこで心臓の手術をするらしくて、それを見学に2人して行ってるの。
私も、最近、陸(リク)に聞いて知ったんだけど、冬真(トウマ)さんって、内科医だから、当たり前の事ながら『内科のみ専門』だと思ってたのね。
そしたら、なんと冬真(トウマ)さんは両方いけるとか。
陸(リク)の話だと、冬真(トウマ)さんが通っていたアメリカのスクールは、言えば医者のスペシャリストを育成する場所なんだって。
だから、そこでは、普通では学べない技術はもちろん、いろんな分野も幅広く習得できるとか。
なので、冬真(トウマ)さんは、研究者的な分野が得意だったので、それと内科全般を極めたらしい。
そして、一応、父親が外科医って事もあって、自分も外科医としても働けるようにしとこうか。って事で、外科医の方も勉強したんだとか。
だから、外科医としても働けるらしいけど、冬真(トウマ)さんは、
「自信がないから、身内以外には秘密だからね。」
と口癖のように言ってる。
でも、陸(リク)は、
「俺が、医者になるのを待っててくれてるんだと思う。
俺が医者になれば、アイツと2人で、向こうに行って心臓外科のスペシャリストになる。
別にアイツと決めたわけじゃないけど、たぶんアイツもそう思ってくれてると思う。
なんてな。」
と言ってたけど・・・。
なんか、いいよね。
お互いが信頼しあってる仲って、なかなかありえない事だから・・・。
すごく、うらやましかったりした。
「ねぇー、陸(リク)!センター試験どうだった?」
と一応聞いてはみたけど、
「別に。」
と答えられた。
別にって・・・。もっと、『頑張ったよ!』とか、『余裕!』とか・・・色々あるでしょ!
確かに、最近は、学校にも来ないで、家で勉強してたみたいだから、もともと出来る陸(リク)が、それだけ必死になったんだから、『別に。』で終わっちゃう事なのかもしれないけど・・・。
たぶん、これ以上この事に触れても、話は広がらないと思うので、話題を変える事にした。
「今、松山にいるんだっけ?」
「ああ。こっち雨だけど、そっちは、どう?」
そう言われて、私は窓際に立ち、カーテンをめくる。
傘をさして歩いている人の姿が、チラホラ見えた。
「こっちも、降ってるみたい。」
と答えた私に、
「今夜は、どしゃぶりになるって、さっき天気予報で言ってた。
そっちは、雷がなるかもな。
完全に冬到来ってやつかな。」
なんて陸(リク)は笑いながら答えるけど、私はそれを聞いて笑えなかった。
「えぇー!!雷なるのー!!」
絶叫に近い声で叫んだ私に、陸(リク)は、「ボリュームがデカイ!」と鋭い突っ込みを・・・。
でも、それどころじゃないんだけど・・・。
完全にへこむ私に、「なー。」と陸(リク)はいうと、
「匠(タクミ)は?」
と突然言い出す。
雷で頭がいっぱいの私は、そんな事、聞いちゃいない。
私と陸(リク)との間が、沈黙になる。
「おい、麗美(レミ)!聞いてんのかよ!!」
たまらず指摘した陸(リク)に、「へっ?」と答えた私。
「あのな〜。」と言いながら、大きなため息をついた陸(リク)は、もう一度質問を口にする。
「匠(タクミ)はいねぇーのか?」
「ああ、匠(タクミ)さんなら、今日は友達の所に泊まりに行ったよ。
とりあえず、第一関門突破だから、一旦生き抜きするよ!って。
何か用だったの?
携帯、鳴らしてみたら?」
とちゃんと答えたのに、「鳴らすか!」と怒られた。
えぇー、何で怒るのよぉー!!
と心の中で嘆いていた私に、陸(リク)は次の質問をしてくる。
「オヤジと、真美さんは?
まだ、仕事?」
さっきから、陸(リク)の言ってる事の意味がわからない私は、「ねぇー。」と口にすると、反対に質問した。
「さっきから、どうしてみんなの話ばっかりするの?
せっかく、電話くれたのにぃー。
もう、みんなの話はいいよぉー。」
とすねたんだけど、「くだらない、やきもちやいてる場合か!」とまたもや怒られた。
「さっきから、機嫌悪くない?
何よっ!!」
と今度は喧嘩口調になっちゃうけど、陸(リク)は・・・完全に無視。
「それで、オヤジたちは、どこにいんの?」
あくまで、自分の意見を突き通すつもりね。
ハイハイ、わかりましたよぉーだ。
心の中でアッカンベーをして、私はしぶしぶ答える。
「二人は、今日デートだったの。
夕食食べて帰ってくる。って言ってたんだけど、さっき電話があって、明日仕事休みだし、久しぶりにホテルでユックリするって。
だから、今日は私、一人なのよ。」
ちゃんと答えたのに、陸(リク)ったら・・・。
「バカじゃねぇーか!!」
と逆ギレ。
「私に怒らないでよ!」
と文句を言うけど、
「お前に怒ってんじゃねぇーの。
オヤジと真美さんに、怒ってんだよ。」
「なんで??」
「わざわざ、俺たちがいない時に、お前を一人にする事、ねぇーだろ!
一軒家に一人って、ホント無用心な事しやがって。」
でも、私は声を出して笑っちゃう。
「平気よ。私、17歳だよ。
ちゃんと、戸締りしてお留守番できるから。」
「ホントに、大丈夫なのか?」
真剣な声で念を押す陸(リク)に、私は元気な声で答える。
「大丈夫!心配しなくていいから。
それより、陸(リク)は、しっかり病院で勉強してきてよ!
戻ってくるの、明日の昼だっけ?」
話をごまかす私に陸(リク)は、「ああ。」とだけ答えた。
その時、陸(リク)の後ろで冬真(トウマ)さんの声がした。
「陸(リク)、俺医局に行ってるから、すんだら来いよ。
他のクランケのカルテとレントゲン、見せてくれるって。」
冬真(トウマ)さんの声に、「ああ。悪い。」と陸(リク)は答える。
「ねぇー、陸(リク)。」
聞こえるかな?と半信半疑で声をかけてみたけど、すぐに、「ん?」と答えてくれた。
「私の事は心配いらないから、陸(リク)はそっちでの時間を大切にして。」
私の言葉に、「そうだな。」と陸(リク)は答えると、
「じゃ、何かあったら、すぐ電話してこいよ。」
と添えると、お互い、「おやすみ」と挨拶をして、電話を切った。
「ホント、心配性なんだから。」
私は笑いながら、携帯をみつめた。
陸(リク)が何をそんなに心配していたのか、私は全然わかってなかった。
だって、陸(リク)が『あの事』を知ってるなんて、知らなかったから・・・。
でも、陸(リク)の心配は、その数時間後的中したんだよねぇー。
だってさ、その数時間後の今・・・。
私を『ある物』が襲ってるの。
それはね・・・。
「キャァー!!」
私はたまらず叫んで、お布団の中に隠れる。
カーテンを閉めていて、自分もお布団の中に隠れてる。
なのに、外で光っている稲光(イナビカリ)は、これだけシャットアウトしているのに、まだしつこく、私の目に飛び込んでくる。
さらには、音。
雷が光った直後に鳴り響く音が、もう怖いのなんのって。
地響きがしてるんだよ。
いくら耳を塞いでも、完璧に聞こえちゃうこの音。
私は、泣きながら必死で耐えてた。
早く、雷、どっかいけぇー!!
何度も何度もそうつぶやいていた。
雷の音は、完璧に聞こえるけど、お布団をかぶったりして、防御はしてるから、他の『音』を私は聞き逃してたみたいで、ちっとも気付かなかったのよね。
訪問客がいた事を・・・。
それに、気付いたのは、その訪問客のありえない登場の仕方でだった。
ベッドの側にある窓ガラスから、変な音が聞こえた。
手の甲で、「コンコンコン」とノックしているような音。
私は、恐々お布団から顔だけを、ヒョコっとのぞかせた。
でも、カーテンがかかってるから、もちろん窓の向こうは見えない。
それに、何より、この窓は、バルコニーがあるわけじゃないから、人が立てる場所なんてないし、ここ2階だし、近くに木だってないし・・・。
人がそこにいるわけないよね。
空耳、空耳。
私は自分に言い聞かせて、また顔をお布団の中にひっこめてまるまる。
だけど・・・。
「コンコンコン。」
また、聞こえた。
今度はさっきよりも、しっかりと聞こえたような気がする。
怖いけど・・・見てみる??
自分にそう聞いてみるけど・・・やっぱ怖いよね。
でも、気になるし・・・。
私は、またお布団から顔を出した。
そこから、ジッと目を凝らして窓を見る。
だけど、ぶ厚いカーテンが邪魔して見えるわけがない。
カーテンを開けに行こうかどうしようか、迷っている時だった。
また、雷が強い光を発した。
「ひゃぁー!!」
と叫んで私は一旦は、また布団にもぐったんだけど、すぐに顔をあげた。
「う・・・そ。」
外が光ったせいで、カーテンの向こうの景色が一瞬見えた。
そこには、あるはずもない『影』が映ってた。
それが、誰かはわからない。
でも、きっと、『彼』だと私は直感して、迷わずベッドから飛び出ると、カーテンを勢いよくあけた。
そこには、全身ずぶぬれの人が居た。
私は急いで、窓のロックを解除して、窓を開けた。
風がきつくて、わずかしか開いていないのに、すごい雨風が入ってきた。
「離れてろ。」
その人は私にそういうと、私を後方に押した。
私が離れてから彼は、「よいしょ。」と言いながら、窓から器用に、私の部屋の中に降り立った。
そして、すぐに窓を閉め、カーテンも閉めた。
「わりぃーな。少し部屋、濡れちまったな。」
と陸(リク)はいいながら、すぐ側に置いてあったバスタオルを取る。
「これ、借りるぞ。」
っていいながらも、すでにずぶぬれの体を、そのタオルで拭く。
濡れた体を拭きながら、陸(リク)は、「うー、さぶぅー!!」と震えだす。
「麗美(レミ)が、さっさと開けねぇーから、完全に冷えちまったじゃねぇーかよ。」
と愚痴る陸(リク)に、私はユックリと近付く。
「どうして、戻ってきたの?
だって、帰ってくるの、明日だって・・・。
それに、こんなところから・・・。」
夢を見てるんじゃないかと思った。
雷が怖くてしかたなくて、私は陸(リク)を恋しく思った。
それが、見せてる夢?
もしくは、幻影??
でも、その幻は、答えをくれる。
「お前さ、雷が大嫌いだろ。
だから、お前を一人にできなかった。それだけ。
で、ここからの登場は、いくらインターホンならしてもお前出てこねぇーし、鍵を開けてもチェーンがかかってて入れねぇーしな。
結構、苦労したんだぞ。
匠(タクミ)の部屋のベランダまで登って、そこから、壁を横に進んできたんだからな。
工事現場で身につけた筋肉が、役に立ったよ。」
なんて言って、震えながら笑う陸(リク)。
この嵐の中、壁を歩いた。って・・・。
呆れて物が言えないよ。
怪我しなくてよかったけど、無謀でやんちゃの彼にちょっと、参ってしまう。
「携帯鳴らしてくれたら、よかったのに・・・。」
私は棚から、もう一枚バスタオルを取ると、陸(リク)の頭からそれをパサっとかぶせる。
そして、丁寧・・・ではないなー。
ちょっと、乱暴にだけど、陸(リク)の髪の水滴を拭う。
「今、携帯使えねぇーんだよ。」
ちょっとバツか悪そうに言ったり陸(リク)にもちろん、「なんで?」と問いただす。
「さっき麗美(レミ)と話したので、充電が切れちまって。」
「もう、なんの為の携帯よっ!!
泊まりの時は、ちゃんと、充電器持って行ってよね!」
なんていいながら、また手は乱暴になる。
陸(リク)はまるで、子供みたいに、「反省しまーっす。」と口にして笑ってた。
なんだけど、笑顔から急に、ちょっと険しい顔になる。
「ダメだ・・・。マジで、さみぃー。」
と言ったかと思ったら、自分が羽織っていたタオルの端で、口を抑えて震えた。
「ちょっと、風呂入ってくるわ。
話の続きは、あとな。」
陸(リク)はそういうと、私が触れている手もそのままで、強引に歩き出した。
だけど、私は、陸(リク)が側からいなくなるのが怖かった。
だって、こうしてる今も、外からは光と音が私を襲ってるの。
平気に陸(リク)と話してるけど、本当は怖くて怖くてたまらない。
陸(リク)がいなくなったら、耐えられないよ・・・。
側を通り過ぎかけた陸(リク)の腕を、私は強引につかむ。
「麗美(レミ)?どうした?」
驚く彼には答えずに、私はそのまま彼に抱きついた。
「おいっ、お前も、濡れるぞ!」
自分から私を急いで離そうと、私の体に手をかけた陸(リク)に、「いいよ。」と私は答えて、さらに陸(リク)にくっついた。
そんな私を陸(リク)は、「知らねぇーぞ。」と言いながら、抱きしめてくれた。
陸(リク)の肌に顔が触れた私は、信じられないくらい冷たく冷えた陸(リク)の体に驚いて、体を離して彼を見上げた。
「陸(リク)、なんでこんなに冷たいの?」
「だから、さっきから、言ってんだろ。
半端じゃねぇーくらい、さみぃーんだって!」
確かに、この雨風に打たれていたんだもん、そりゃ寒いよね。
この大事な時期に風邪なんて引いたら、大変。
私は陸(リク)から完全に離れた。
「すぐ、お風呂入れるよ。
ちょっと、待ってて。」
そして、部屋から出ようとする私の腕を、「待て。」と陸(リク)がつかむ。
「風呂はいいや。」
そういいながら、陸(リク)は私を後ろから抱きしめる。
「一人になるのが怖いんだろ?」
的を得た陸(リク)の言葉に、私はごまかす言葉も浮かばず、黙ってしまった。
そんな私に陸(リク)は、ちょっとだけ笑うと、
「こんなに冷えてるけど・・・麗美(レミ)なら暖められるだろ?」
そういいながら、私にキスをしてきた。
でも、この冷え方は異常よね・・・。
「けど、風邪引いたらどうするの。」
だけど、陸(リク)は、「なら、麗美(レミ)が看病してくれ。」なんていって、全然本気にしてくれなくて、私はあっというまに、彼に押し倒されていた。
「今日は、誰もいない。
いくらでも、声を出していいんだ・・・。
すぐに熱くなりそうな気がしない?」
そんなすごいセリフを、本当にうれしそうに言わないでくれる?
呆れながらも、呆然と見ている私に、やっぱり陸(リク)は知らん顔。
さっさと濡れた服を脱ぎ捨てると、お布団も濡れちゃうからと、全裸になる。
「いくら濡れるからって・・・。」
と文句をいうけど、
「電気つけてないから、いいだろ。」
って、そういう問題でもないだろうけど、もういいや。
そんなこと、どうでもよくなっちゃうくらい私は、早く陸(リク)と一つになりたかった。
「夢・・・見てるみたい・・・。」
陸(リク)の感触や、体温を感じるたびに、私はずっとそう思ってて、たまらず口にしちゃった。
でも、陸(リク)は、「夢か・・・。」と口にすると、
「俺も夢見てるみたいだな・・・。」
と言い出した。
「何?」と目でうかがうと・・・。
「ずっと、夢だったから。
麗美(レミ)の声を聞くのが・・・。」
「声?」
すると、陸(リク)は、少し意地悪な笑をした。
そして、私のツボを攻撃する。
もちろん、「あっ・・・・。」って声が出ちゃうのは当たり前。
それをみた陸(リク)は、すごく楽しそうに笑ってる。
「今日は、我慢しなくていいんだ。
麗美(レミ)の声を聞きながら、愛し合える・・・。
想像しただけでも、ゾクゾクするよ。」
なんていいながら、陸(リク)はいつもよりも激しく、それでいて熱い攻めで私を愛してくれた。
耐える事になれすぎて、私はうまく声が出せなかった。
「出すようにするんじゃなくて、出ちゃうようにしてやるよ。」
陸(リク)は余裕の笑顔を私に送ると、私にマジックをかける。
陸(リク)の言った通り、意識しなくても、自然に声が出てた
いつもと変わらない攻めのように思えたのに・・・。
なんでいつもと違う態度というか、乱れ方を私がしたのか、自分の事なのに、全然わかんなかった。
でも、陸(リク)の言った通り、また違うエッチになってた。
今まで、声を出さないようにしなきゃ。って事を考えしすぎて、心から楽しめてなかったのかな。
それは、それでまたよかったのかもしれないけど・・・。
こうやって、余計な事を考えないで、心も体も頭も全て、陸(リク)の事だけ。
愛し合う事だけで、いっぱいにして、精一杯楽しめるこの快感を、私は心から、気持ちいいと思った。
「ねぇー・・・陸(リク)・・・。」
すぐ側にいる陸(リク)に話しかけた私。
陸(リク)は、「ん?」っていいながら、優しく私の髪をなでてくれた。
「私が雷を苦手って、どうして知ってたの?
私、言ってないよね?」
実は、ずーっと疑問だったんだよねぇー。
でも、聞くタイミングを逃して、今になっちゃたんだけど・・・。
陸(リク)にいっぱい愛してもらって、私も愛していたら、いつの間にか、雷さんはどっかに行ってた。
雨もやんで、外からは全く何も音が聞こえないくらい、静かだった。
「いつだったかな?
忘れたけど、真美さんがオヤジに話してるのを聞いた事があって。」
「そうだったんだー。」
とつぶやいた私に、「何?残念だった?」と陸(リク)は笑う。
「どういう意味?」
と彼を見上げて聞くと、
「麗美(レミ)を見てて気付いたとか・・・そう思ってたかな?って。」
「見てても気付かないでしょ。」
と笑いながら答えたら、「確かに・・・。」と陸(リク)もマジメに答えたものだから、私はさらに笑っちゃった。
そんな私を、陸(リク)は急に自分の方に寄せると、抱きしめた。
足だって、私の体にからませて、強く強く抱きしめた。
どうしたの?って本当は聞きたかったけど、こうやって陸(リク)をこれ以上ないくらい、近くに感じていると、私もすごく安心したし、幸せに思えたから、何も聞かなかった。
しばらく、私たちはお互い何も言わないまま、そのままでいた。
先に口を開いたのは、行動を起こしてきた、陸(リク)だった。
「俺、昔、女に裏切られた事があるんだ。」
誰の事を言っているのか、すぐに気付いた私は、「うん。」とだけ答えた。
私の答えに、陸(リク)は、私の顔をのぞきこむ。
「うん。って・・・・。お前、知ってるのか?」
私はうなずくと、「ちょっとね。」と言葉を濁した。
でも、勘のいい陸(リク)だけに、気付いちゃったみたいで、
「冬真(トウマ)か・・・。」
と口にした。
私にしゃべっちゃった事を怒るのかな?って、ちょっと心配したけど、大丈夫だったみたいで、陸(リク)は平気な顔で、「語る手間がはぶけたな。」なんて、予想外の言葉を言ってのけた。
それには、反対に私が拍子抜けしちゃったんだけど、そんな私を陸(リク)はさらに強く抱きしめながら、私の顔に自分の顔をくっつけてくる。
「もう、女はこりごりって、思った。
もう、裏切られるのはごめんだって。
でも、麗美(レミ)に逢って、お前を本気で好きになって、俺よかったなって思ってるよ。」
そして、陸(リク)はさらに、私の顔に自分の顔をくっつけてきて、私のぬくもりを感じ取る。
「裏切られる事を怖がって、麗美(レミ)を諦めなくてよかった。」
陸(リク)のその言葉は、なんかとても弱くて、私は彼を抱きしめたくなった。
彼に、元気を与えたくなった。
だから、言ったの。
「私は、陸(リク)を裏切らないよ。」
って。そして、今度は私が、陸(リク)にくっつく。
「何があっても、ずっとずっと私は陸(リク)を想い続ける。
どんな時でも、私は陸(リク)を選ぶから。
絶対に、陸(リク)を裏切らないから。」
そういった私に陸(リク)は、素直に「ありがとう。」と言った。
その唇で、私にキスをしてくれたんだけど、そのあと陸(リク)は私の上におおいかぶさると、そのまま倒れてきて、私の胸に顔をうずめる。
私の心臓の音を聞いて、落ち着いたのかな?
急に陸(リク)は、とても穏やかな声で話し出した。
「麗美(レミ)。1つだけ覚えておいてほしいことがあるんだ。」
私は陸(リク)の髪を優しくなでながら、「何?」と聞いた。
「もし、この先、俺を選ぶ事で、麗美(レミ)の幸せがなくなってしまう事があったとしたら。
その時は、迷わず俺を捨てろ。」
陸(リク)の言葉に、私の手は止まった。
動きが止まった私を、陸(リク)が見上げる。
「なんで・・・そんな事、言うの?」
そう言ってる側から、すでに涙目になる私に、「まー、聞けって。」と陸(リク)は笑うと、私の髪を乱暴にクシャーと乱し・・・自分は、また私の胸へと顔をくっつけた。
「俺は、麗美(レミ)に幸せになってほしいんだ。
ずっとずっと、笑顔で笑っていてほしい。
だから、麗美(レミ)がそうなる為に、俺を選ばないって事は、俺を裏切った事にはならない。
反対に、俺を裏切ってないって事になるんだ。
意味、わかるか?」
私は、「なんと・・・なく。」と鼻をすすりながら答えた。
陸(リク)のせいで、結局泣いちゃった私は、鼻水まで出てきちゃったんだから。
「よし。偉いぞ!」
と陸(リク)は言ったかと思ったら、顔を上げて、私の頬やまぶたにたくさんのキスをくれた。
「でも、どうして、そんな事、急にいうの?
まるで、どこかに行っちゃうみたい・・・。」
そこまで、口にしたら、また涙が襲ってきた私。
口を閉じて、涙を堪えた。
「泣くなよ!どこもいかねぇーから。」
陸(リク)はそういって、私を抱きしめてくれる。
そのままで、陸(リク)は「だけどな・・・。」と口にすると、突然そんな事を言い出した真意を語った。
「冬真(トウマ)と、よく言ってるんだ。
『時間がありそうで、ないのが人生』って。」
「それ、前に聞いたよ・・・。」
確か、私が高熱で倒れた時、冬真(トウマ)さんが点滴してくれて。
その時に、陸(リク)と言ってた言葉だ。
「よく、覚えてたな。」
陸(リク)は笑うと、
「冬真(トウマ)は医者として。
俺は、医者になりたい者として、それなりに、人の命ってのに、関わってきたつもりだ。
冬真(トウマ)は、救えない自分の無力さに向き合ってきただろうし、俺は、今は何も出来ない自分の無力さにイライラしたりして・・・。
だけど、立場は違うにしても、俺たちは、感じてることがある。
それは、結局『寿命』には、かなわないって事。」
「寿命?」
「そう。人は、生まれた時に、その人生の時間が決められているというだろ。
俺は、それは、確かにな。って思うんだ。
それに、長く生きた人も、短かった人も、結局苦楽は、平等だって。
短い人生でも、濃い内容を歩み消えた命と、同じだけの内容を、長い時間をかけてゆっくり歩み消える命・・・。
結局は、得たものは、一緒・・・みたいなさ。
だから、その人の寿命は、生まれた時に決まってて、その人の生きていく速さもその時に決まる。
だから、寿命には、誰もさからえないんだと思う。
それを感じた冬真(トウマ)も俺も、あの言葉が口癖になったんだ。」
「時間がありそうで、無いのが人生?」
「そう。」
陸(リク)はうなずきながら答える。
「結局、人はさ、いつ死ぬか、わからないんだよ。
だから、生きてるその時々の時間を、大切にしなきゃいけない。
もちろん、俺は、麗美(レミ)を置いて、死ぬつもりなんてない。
夢だってあるし、大介との約束もあるからな。
でも、寿命には、さすがの俺も勝てないから。
何が起こるかわからないからさ。
だから、こうやって、麗美(レミ)に触れて、麗美(レミ)の顔が見れてる時に、俺の想いを伝えておきたかった。」
「陸(リク)・・・。」
そう口にしたら、また涙が出てきちゃった。
頬を伝う涙を陸(リク)は、優しくぬぐってくれる。
「今なら、こうやって麗美(レミ)が泣いても、涙をぬぐってやれるし、抱きしめてやる事もできるから。
だから、好きなだけ俺を思って、泣いていいぞ。」
そんな事言われたら・・・。
「反対に、泣けないよ。」
と涙声で愚痴る私。
それには、陸(リク)も笑いながら、私を優しく抱きしめる。
陸(リク)の優しさや、陸(リク)の息づかいに、陸(リク)の体温・・・。
陸(リク)の存在を示す物を感じれば感じるほど、私はどんどん、せつない気分になっていった。
陸(リク)が、悲しいこと言うから・・・。
だから、私は、沈んだ気持ちを切り替える為に、話を変えた。
「あ・・・ねぇー、陸(リク)。
聞きたい事があったんだけど・・・。」
涙をぬぐいながら言った私に、「ん?何?」と陸(リク)は、軽く聞いてくる。
あれだけシリアスな話を自分からしといて、陸(リク)ったら、全然平気なんだもん。
一人で泣いていた私が、とぉーってもバカに思えてきた。
こんなこと言ってても、陸(リク)の方が絶対長生きするんじゃないの?とさえ思えて、ちょっと心の中で、怒ってしまう私。
ついつい怒りのせいで、陸(リク)を放置していた私に陸(リク)は、「おいっ!」と突っ込みを・・・。
「あー・・・ごめん。」と一言謝った私は、本題に入った。
「冬真(トウマ)さんって、好きな人いるの?」
突然すぎる私の質問に、「何だよ急に。」と陸(リク)はおもいっきり驚く。
確かに・・・ちょっと、突然過ぎたよね。
自分で言ってすぐに、反省する私。
ちょっと、しょぼんとする私に、「で?なんで、そんな事、聞くんだ?」と陸(リク)は私の髪にふれながら、少し優しい口調で聞いてきてくれた。
だから、言いやすくて、私はそのまま理由を口にすることが出来た。
「由梨華(ユリカ)がね、冬真(トウマ)さんの事が好きみたいで。
それで、この間、告白したんだって。
お友達からでもいいから、一度デートしてほしいって。」
「また・・・無謀な事を・・・。」
私に触れていた手を止めちゃうくらい、陸(リク)は驚いて、さらには首を振りながらそう言ったの。
「無謀って・・・そう?普通でしょ?
好きなら告白して、デートの誘いするでしょ。」
って反発してみるけど、「普通ならな!」と陸(リク)は言って笑うと、
「相手は、あの冬真(トウマ)だぞ!
アイツが、好きでもない女と、デートなんてするわけないだろ。
軽く・・・ってのが、できねぇーやつなんだから。」
それはね・・・わかるよ。
陸(リク)とは全然違うもん。
冬真(トウマ)さんは、マジメな人そうだし、軽い気持ちで女性と遊んだりつきあったり、しなさそうだもんね。
陸(リク)の意見に私も、すごく納得したから、つい「うんうん。」と大きくうなずいちゃって。
それを見ていた陸(リク)は、ちょっとおもしろくなかったのかな・・・。
「それって・・・俺が、不真面目っていいたいのか?」
「まーね。」と勢い余って答えちゃって、次の瞬間、「あっ!」と我に返る。
「ご・・・めん。」
速攻謝って、そーっと陸(リク)を見た。
絶対怒ってる。もしくは、また意地悪される・・・。
それは、覚悟してたんだけど、意外や意外。
陸(リク)は、「別にいいよ。」とおかしそうに笑うと、
「荒れてたのはホントだし、冬真(トウマ)より女を知ってるのも事実だから。」
と優しい言葉。
「でも、今は、俺の方がマジメだな。
一人の女に、こんなにハマって一途だし・・・。」
そう言ってキスをくれるけど、私はすぐに、陸(リク)に返す。
「だけど、冬真(トウマ)さんも、一途みたいだよ。」
それには、「ん?」と陸(リク)は首をかしげて聞いてくるから、私は由梨華(ユリカ)から聞いた事を言ったの。
「由梨華(ユリカ)がね、冬真(トウマ)さんをさっき言ったみたいに誘ったんだけど、『好きな人がいるからごめん。』って断られたって。」
私はそこまでいうと、さらに陸(リク)の方に顔を近づけて接近する。
「なんだよ!」
と少し驚く陸(リク)に、私はやっと本題に入った。
「好きな人がいるって話・・・ホントだと思う?
それとも、由梨華(ユリカ)を断る為の、口実だったのかな〜?」
でも、陸(リク)は、「へぇ〜。」と笑いながら言うと、
「冬真(トウマ)に好きな人ね・・・。」
と意味深な言い方をして、口を閉じた。
「ねぇー、どうなの?
ホント?嘘?」
ハッキリしない陸(リク)に、イライラしてきた私は、さらに陸(リク)に迫る。
あまりにしつこい私が、うっとおしくなったのか、「近いよ。」と少し怒り口調で言うと、私を自分から少し離した。
「まー、直接、聞いた事はねぇーけど・・・。
でも、好きなヤツはいるんじゃねぇーの?
本人がそう言ってるわけだし。」
「陸(リク)は誰か心当たりないの?
あの人かな?みたいな・・・。」
「まーね。あてはあるけど・・・。」
それには、「えぇー!!そうなのぉー!!」と私はテンションがあがり、盛り上がる。
「ねぇーねぇー、誰、誰!」
だけど、
「冬真(トウマ)の事で、そんなに盛り上がるなよ。」
と呆れられた。
だってぇー・・・。
「私たちの事、いつも助けてくれてたでしょ。
だから、冬真(トウマ)さんが、好きな人いるんだったら、うまくいけばいいのになぁ〜って。
私にできることがあったら、力になりたいなぁ〜って思ったの。」
そういって、ある事に気付いた私は、「でも・・・。」と言って、一人で笑っちゃった。
私の行動に、「ん?何笑ってんだよ!」と陸(リク)も言いながら、私がウケちゃってるからその姿がおもしろかったみたいで、笑ってる。
「自分で言ったものの、よく考えたら、私の力はいらないよねぇーって思って。」
「なんで?」
「だって、あの冬真(トウマ)さんだよ。
嫌う女性なんているわけないよ。
きっと、冬真(トウマ)さんが、好きな女性も冬真(トウマ)さんを好きに決まってる。
私の出る幕ないなぁ〜って思って。
そしたら、おかしくってぇー。」
口にしたらまたおかしくて笑っちゃう私。
そんな私を陸(リク)は、なぜか笑うのはやめて私を抱きしめた。
「陸(リク)?」
不思議に思った私は、顔を上げて陸(リク)を見る。
陸(リク)はというと、私を優しい眼差しで見てた。
そして、ただ一言、
「どうかな?」
と言った。
「それ・・・どういう意味?」
でも、陸(リク)はそれには答えずに、「あのさー。」と言うと、こんな事を言った。
「冬真(トウマ)には、何も聞くなよ。
好きなヤツの事も、その由梨華(ユリカ)って子を断った事も。
知らない顔、しておけ。
その方が、アイツの為だから。」
さっぱり意味がわからない私は、「なんでぇ?」と聞いた。
別に、そんな事、わざわざ言わないけど、でも、あえて口止めされることもないような・・・。
だから、余計にそうする理由が気になったの。
教えてよ!って目で訴えてた私に、陸(リク)は降参したのか、「わかった、わかった。」と面倒くさそうにいう。
「冬真(トウマ)が好きな人が、俺の思っている人なら、冬真(トウマ)の恋は、報われない恋だから。」
「報われない・・・恋・・・。」
口にしたらすごく悲しい言葉だと知る。
あの素敵な冬真(トウマ)さんが、報われない恋・・・。
「どうにかならないの?」
と陸(リク)にすがってみるけど、「無理だな。」と冷たい一言。
「無理って・・・。」
と絶句する私に陸(リク)は、
「かわいそうだけど、アイツは永遠に、片思いだな。」
「永遠に・・・。」
なんか急に肩の力が抜けちゃった感じ。
とても、寂しい気分になった。
と同時に、私はたまらず陸(リク)にしがみついた。
「どうした?」
陸(リク)はそういいながらも、私の気持ちに答えてくれて、私を抱きしめてくれる。
「私だったら、そんなの耐えられないかも・・・。」
真剣に言ったのに陸(リク)は、「お前はそうはならないだろ?」と笑いながら言うと、私の顔を見る。
「だって、お前が好きな陸(リク)は、お前に惚れてる。
片思いにはならない。だろ?」
「確かに・・・。神様に感謝しなきゃ。
陸(リク)が私を好きになるなんて・・・そんなすごい奇跡を起こしてくれた事に。」
と笑う私に、陸(リク)は「奇跡か・・・。」と口にすると、
「麗美(レミ)が俺を好きになったって事の方が、奇跡かもな・・・。」
とボソっと言うと、
「俺の方が、感謝すべきだな・・・。」
と言って私にキスをする。
二人がこうしていられるように『奇跡』を与えてくれた神様に感謝をするように、私たちはまた激しく熱く、愛し合った。
☆☆☆6章 END☆☆☆
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