時計の長針が12をさす。
只今21:00ジャスト。
同僚はみんな帰宅の準備。
「お疲れ様です。」
みんなを笑顔で見送る私。
一人になると私は財布を片手にその場を後にする。
残業で居残りの私は、夕食を買うために近くのコンビニへと足を運ぶ。
思ったよりも肌寒い空気が私の気持ちを沈める。
今からたった一人での残業。
ブルーになるのは当然だ。
そんな自分にご褒美を。と、夕食とは別にお菓子を買ったりする。
だけど、店を出て真っ暗な夜道をプラプラ歩いているとやはり気持ちは重い。
歩くたびに買ったばかりのお弁当が音もなく揺れる姿を見ているとさらにむなしくなる。
空を見上げた。
真っ暗な空。
星も出ていない。
これじゃ、余計気持ちが沈むと目線を下におろす。
その時だった。
やけに左側が明るい。
自然と顔が左を向く。
「うわ〜、すっげ〜!!」
思わず足を止め見とれてしまう。
それは、マンションの花壇に咲きほこっていたツツジだった。
ツツジは元は赤紫のような色をしているのだろうが、月の光を含んだツツジは、真っ赤に見えた。
さらに夜の闇で深緑に見える葉が、余計にツツジの鮮やかさを際立たせていた。
いつも通っている場所なのに、ツツジが咲いていたなんて全く気付かなかった。
周りに目をやってみる。
あちらこちらに設置されている花壇には、すべて美しいツツジが咲きほこっていた。
私は、そのツツジの花壇に囲まれた道をゆっくりと歩んでいった。
まるでツツジのアーケードを通っているかのようだった。
心がなごみ、自然と足取りが軽やかになる。
もちろん行き先は、私を待つ仕事場だ。
だけど、今の私の気持ちは、信じられないくらい晴ればれしていた。
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