最終更新日:H19年4月15日




 11月23日   主のいない城(For You)
約束の日。
約束の時間。
約束の場所。
私はここにいるよ。
あなたの大切なモノ達も、ちゃんとここにいる。
でも、何でかな?
いるはずの、あなたの姿がない・・・。
 
ずっと、ここにいると思ってた。
変わらずあなたは、元気でいてくれると・・・。
それが、当たり前だと・・・思ってた。
 
ねぇー、覚えてる?
あなたが、丹精こめて作ったプチトマトを、ハウスに入って食べたよね?
初めてハウスに入った私。
初めて自分でトマトを採った私。
初めて洗わず、そのままの新鮮なトマトを食べた私。
あの味もあなたの笑顔も、鮮明に覚えてるよ。
 
あなたは、たくさんの自分の宝物を見せてくれたよね?
大きく育ったスイカを、カラスに食べられて、それを阻止する為に、大きな網をかぶせてた。
あのとてつもなく広い土地に、たった一人で網を張って。
大きなナスや、さつまいもをもらったね。
 
「今度は、だいこんを一緒に抜こうな。」
 
あなたはそう言ってた。
私は、すごく楽しみだったんだよ。
指折り数えて・・・。
 
でも、あなたは、ここにはいないね。
私は、一人・・・あなたの大切なモノ達の前に立ってる。
主がいないのに、大きくスクスクと育っている野菜たち。
かぶら。丸大根。大根。春菊。ほうれん草。チンゲン菜。ゆず。キュウイ。
だけど・・・。
 
なんでかな?
土から見えてる大根は、あなたが戻って来るまで、また土にいると言い張って、あまり姿を見せてくれなかったんだよ。
 
なんでかな?
霜対策のために、念入りにつけられたハウスの中で、綺麗な姿で育っていた春菊は、どうやっても、ハウスが取れないの。
まるで、あなた以外には、取られたくないみたいに・・・。
 
なんでかな?
キュウイは、太陽に近い位置にばっかり、大きな身を宿してるの。
ちょうど、あなたの身長で採れる位置に、彼らはいるの。
鳥もそれは、なぜか、奪わない。
鳥ですらも、あなたの帰りを待っているかな?
 
ねぇー、あなたは今どこをさまよってる?
体は病院。
心も病院。
呼吸も病院。
だけど、意識は?
あなたの記憶は?
前触れもなく、突然旅立ってしまった、あなたの一人旅は・・・。
今、いったい、どのあたりを横断しているのでしょう。
今は、ゆっくり、色んな場所を渡ってきていいよ。
みんな信じてるから。
あなたが目覚めた時、あなたは、何も失っていない。
自由も記憶も、失っているかもしれないけど、目に見えないものは何も失っていないから。
あなたを心から慕う、たくさんの人の心は、絶対に失われないよ。
だから、戻ってきてね。
迷わず、間違わず。
あなたを待っているモノたちがいる場所へ。
あなたが愛している畑へ・・・。
 
 
 


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