「クジラのアタマ、持って帰ってね」
屋久島に行ったとき、ヤマシタさんにそう言われた。
庭先にオキゴンドウの頭骨が置いてある。
話を聞くと、20数年前、島に何十頭ものオキゴンドウが打ち上がったことがあるのだという。重機を使って浜に埋めたそのオキゴンドウの骨が、偶然一部顔を出していたというわけ。
現場へ案内してもらった。
これが大きな玉石の混じるゴロタ浜で、容易に砂が掘れない。よく頭骨を堀り上げたと思う。胴体部がまだ埋まっていたが、肋骨などは劣化していて掘り上げると壊れてしまった。
頭骨を沖縄へもらって帰ったのはいいのだけれど、ボロボロになりそう。考えたあげく、サトウ君に進呈することにした。
サトウ君は必殺技を持っている。それが「樹脂固め」。スズメバチの巣やオサガメの骨なんかを特殊樹脂で固めたものをウレシそうに見せてくれたことがある。きっとサトウ君なら、この骨をかためて有効に使ってくれるだろう・・・。
夜、サトウ君が骨を引き取りに。
「この前もらったネズミイルカの骨も樹脂でいいように固めましたよ」
うちのネズミイルカは、まだベランダの衣装ケースの黒い汁の中につかっている。この前見た時には水面上の頭骨にウジがいっぱい・・・。
「えっウジ?まだいますか」
「う〜んと、小さいやつ」
「そうでしょう。死体も遷移しますよね。最初は動物が食べて、そのうち虫が来ます。僕らがホワイトエンジェルさんと呼んでる虫がまず来て・・・」
ホワイトエンジェルさん・・・つまり大っきなウジのこと。サトウ君的には、肉を溶かし骨をあらわにしてくれる天使さんなのだ。
「あらかた分解終わると、ちっこいウジが現れますよね。その段階っすね」
そう。うちのネズミイルカもニオイも腐敗臭ではなくて、ドブ臭いような感じになった。もうそろそろ引き上げて干すことができそうだ。
「いやー、昨日はサメ釣りに行ってて・・・。朝の4時までやってました。
夏には生まれたてのサメが川にいるんですよ。それ釣ると、夏が来たな・・・と。夏の行事ですね」
こんなことを言う。で、うっかり夕方の6時まで寝てたそう。
「これからウミガメの産卵見に行くんですけど、行きます?」
そう誘われる。うーむ。ごめんなさい。無理です。
相変わらず、サトウ君おもしろい。ワーッと話して、「じゃっ」と言って、オキゴンドウの頭の入ったダンボール箱を手に、サトウ君は去って行った。
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