ゲッチョのコラム



 136   コンマチ
更新日時:
H18年6月28日(水)
月一回の夜間中学の授業。
今日のお題はヘビ。
「知っているヘビは?」
そう聞くと、まず「毒ヘビ」「白ヘビ」。
これに笑いがおこる。ややあって、「コブラ、アカマタ、ハブ、アオダイショウ」と名があがった。
「アカマタとアオダイショウは同じヘビ?」
こんな質問が。
沖縄でヘビの話になると、時々アオダイショウの名が上がる。これは本土のアオダイショウが有名であるだけに、沖縄のヘビに後につけられた新方言とでもいうべきものだろう。
アルコールづけのヘビの標本をならべ、どれがハブかを当てるクイズもしてみた。
「これがハブ」ーまずそう指さされたのがヒメハブ。
「これがハブ」ーイワサキセダカヘビを指してそういう人も・・・。
「これはウミヘビ」ーサダコさんが断言したのはアカマタだった。
ハブもそうそう間近で見ることはないのだ。
「戦争中ヤンバルでよく会いましたよ」
ただしヨシコさんのこんな話も飛び出すところが、さすが・・・であるが。
「冷凍庫にコンマチ入ってたでしょう」
ヒサコさんがそう言う。
「?」
「小さいヘビで、方言でコンマチと言うんですよ。道歩いてたら死んだのが落ちてて・・・農家のおじさんがたたいてたんですかね。すぐセンセイのカオ思い出してスコーレに持って来たんですよ」
ああ・・・。しばらく前、スコーレの冷凍庫に、ガラスヒバアが入っていたっけ・・・。
話はヘビの毒から酵素の働き・・・へと展開するのだけれど、みなの頭の中に残った話は「死んだヘビが落ちてたら拾ってくること」ーということのようだった。

 137   骨の子ら
更新日時:
H18年6月27日(火)
幸い曇天。
梅雨のさ中にもかかわらず、波崎の海岸でのビーチコーミングは天候に恵まれた。
「エイちゃーん!」
中2のコータが叫ぶ。
小4から中2までの20名ほどの子どもたちを引き連れての拾い歩き。コータを始め、ユーダイ、コーキ、リョウタたちとは、もう4年ほどものつきあいとなる。この日、子どもたちが喜んで拾いあったのがエイの卵のうとサメの卵のう。この日はエイの卵のうの方が珍しく、まだ一つも拾うことのできないコータが、願いをかけて叫び始めたというわけ。
「マイ鳥欲しい・・・」
ユーダイはこんなことを言う。
初夏の波崎ーといえば、ハシボソミズナギドリの漂着死体がおなじみだ。この日も、浜につく早々、砂に埋もれたミズナギドリの死体がみつかった。これまたさっそくむしられた羽は子どもたちの手に・・・。数年前から僕の影響で骨取りにハマっているユーダイは、自分でミズナギドリ死体を見つけて、標本用に頭をもぎたい・・・と言っていたわけだ。この願いはしごくあっさりかなえられる。コーキなども、いくつもミズナギドリの頭をもぎとり、しまいには鳥が落ちていても見向きもしなくなっていた。
ハクレンという大型淡水魚の咽頭歯が転がっていれば、「咽頭歯ジャンケン」が始まる。「ウミガメ背甲ジャンケン」もやった。もちろん所有者を決めるためだ。ヘンなお子さまたちである。もっともコーキに言わせれば、「ゲッチョ病がうつってきた」ということになるわけだけど。
「あっゲッチョのシラガ発見。抜いていい?レア、レア」
しまいには、ヒマができると、僕にたかってカミノケやらスネゲまで引っこ抜き出す(これはおふざけではあるのだけれど)。ともあれ、一年に一回ぐらいしか出会えないけれど、彼らは僕の「骨の学校」の貴重な生徒たちなのだ。
「ゲッチョ初めて骨とったのいくつん時?22?僕なんて小4からだよ。遅いナア!」
ユーダイがこんなことを言う。どうなってゆくかはわからないけど、確かに彼らの行く末は楽しみではある。
ちなみに、彼らが今最も会いたいアコガレの人物は、僕の本に出てくるスギモッチとサトウ君だそうである。
「サトウ君の家に行ってみたい!」
ユーダイらの、こんな夢もまた、いつかかなうだろうか?
本というのはバーチャルなものだけど、彼らとつき合えて、自分の本があるリアルさを創り出せる時もあるのだ・・・ということも教えてもらう。

 138   「このほしのまん中で」
更新日時:
H18年6月21日(水)
ステキな写真集に出会った。
竹内弘真さんの『このほしのまん中で』だ。
スコーレでふと目にとまり、パラパラめくって、思わずひきこまれた。
アンゴラは内戦に苦しんだ国だ。
その歴史の中で生きる子ども達のポートレート写真集である。
一人一人、真っ正面を向く彼ら、彼女たちの視線に目をそらさないほどの生き方をしているかと問われている気が何度もしてしまう。
彼ら、彼女らは「子どものまち」という学校に通っているという。竹内さんが、その子どものまちと関わりあうようになり、写真集を出版するようになったいきさつが、写真集にはさまれた一片の文章に綴られていた。
2001年、子どものまちの生徒たち60人が反政府ゲリラによって拉致された時の話だ。
生徒たちは子どものまちを支援するNGO(国ではない)たちの必死の努力で、キセキ的に全員解放される。が、竹内さんはこの過程であるショックを受ける。
生徒たちが拉致された時、真っ先に「まずダメだろうな」と思ってしまった・・・と正直にその時の思いを回想しているのだ。
その時の判断とは一体何か。
竹内さんは自問する。
それまでの知識が、結果として「もうダメだろう・・・」という判断を生みだしたとしたら、それは何て「冷たい知識なのか・・・」−。竹内さんはそんなふうに書いている。そこから彼のアンゴラ通いが始まった。まず1人1人、そこにいるであろう人を思い浮かべられる想像力を勝ち取るために。
この文章を読んで、僕はショックを受けた。
僕の持っている知識は、果たして「冷たい知識」だろうか、それとも「あたたかい知識」だろうか。
スコーレを振り返る。
ホッシーが「小さな学校を作りたかった」と言う時のその一言。ホッシーはいつもぶっきらぼうにしか語らないけれど、その一言の中にも、竹内さんの語ることと、同じような問題提起があるように、今さらながら気づいた。
「国民一人一人」
「県民一人一人」
そんな言葉をよく聞く。その時、そのことを口にする人は、一体どれだけのリアルな顔を思い浮かべているのだろう。
メデイアの発達は一方向的な視覚化を進めた。
「中心」にいる人は、さも皆を知っているように映る。
が、現実はギャップを広げる方向にあるのだろう。
まずもって自分は「あたたかい知識」をはぐくんでいるだろうか。その言葉から受けたショックをこそ、忘れたくない。写真集をめくり終わり、竹内さんが自由の森の卒業生であることを知った。

 139   ヒュウガゴキブリタケ
更新日時:
H18年6月27日(火)
「走るとこに土の道が失くなった。ホント、なさけない」
サブローさんが言う。
梅雨の屋久島。
雨の中、照葉樹の森にゴキブリに生える冬虫夏草を追う。
ゴキブリから生える虫草は世界的に見ても珍しい。日本では宮崎から、エサキクチキゴキブリに生える冬虫夏草が見つかった(拙著『わっ、ゴキブリだ!』参照)。さらに去年、偶然、屋久島でもこの虫草が生えることを見つけた(同『冬虫夏草の謎』参照)。
日本産のゴキブリ虫草には、ヒュウガゴキブリタケという名が仮につけらられている。去年屋久島で、僕やヤマシタさん、ワッシーらがこの虫草を見つけた時は、すでに発生後期でボロボロだった。
「来年6月にゴキタケ祭りしましょう!」
元気娘ワッシーがその時叫んだとおり、梅雨の屋久島へとやって来たのだ。
期待どおりのゴキタケは生えていた。白い子実体を伸ばしたゴキタケは優雅ですらある。朽ち木をくずして、黒いゴキブリの体が見えたときはカンドーものだ。ゴキタケは数ある虫草の中でも、ボリュームや珍しさなどピカ1のものだろう。
ヤマシタ三の事前調査のかいもあって、今回4日間で14本ものゴキタケを見つけることが出来た。
ただし、あるときにはあるが、ないときにはない。
基本的には照葉樹林帯。まずこれが屋久島の中でもあまりまとまって残されていない。さらに急斜面ではダメ。さらにさらに発生の見られる一帯でも、発生木は沢や林道など、やや開けた場所に近いものという条件があるよう。この林道も未舗装で、両側から樹冠がおおうような昔ながらの林道だ。
こうした林道もへった・・・とサブローさんは言うのだ。
日本の照葉樹の超エッセンス。
4日間の調査を終え、ゴキタケをそんなフレーズで振り返る。

 140   サンゴアメンボ
更新日時:
H18年6月17日(土)
「オカでーす。ゲッチョセンセの家、流れてませんか?」
いつものごとく、トートツに関西のオカ君から電話が入った(彼は「骨の学校3」に登場する)。
このところ沖縄は大雨。土砂災害もボチボチ起こっている。こんなニュースを目ざとく見つけて、オカ君はわざわざ電話をくれたのだ。
彼は新潟の震災の時も、とるものもとりあえずボランテイアに駆けつけた人。見た目は、どヤンキーだけど、何が大事か・・・ということは決して見逃さない人物である。
ドワーッ・・・。
スコールのような雨がカサをたたく。
こんな最中、僕が何をやってたかといえばスギモッチと海岸にいた。昨年来、ずっと追い求めていたマボロシの海のアメンボを、ついにスギモッチが発見したのだ。これはサンゴアメンボ。昭和九年、当時の九州帝国大の昆虫学者、江崎悌三が石垣島で初めて、日本産の成虫を記録したもの。この時代の沖縄の昆虫史に興味のある僕には、ぜひにもあってみたいアメンボだったのだ。オカ君には悪いが、とっても浮世離れしている僕なのである(心配して、損ちゃうか・・・とオカ君が言いそうだ)。
明日からはまた、屋久島でゴキブリに生えるキノコを追う・・・。
 



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