この本の中にいる花や虫たちとの出会いは、私にたくさんの喜びを与えてくれました。花をもとめて野山を歩くようになり季節の花をみつけるとそれだけで幸せな気持ちになりました。風が吹き、季節の匂いを肌で感じ、大きく息を吸うとなんだか自分が新しい自分に生まれ変わった気がするのです。
大地に根を張って力強く咲く花たちにいっぱい元気をもらいました。
”あの器にあの花を生けたい”
”あの花とあの花はお似合いだ”
”あの花に似合う器が欲しい”
想いはどんどんふくらみます。
花の命は短くて、健気に咲くその命の輝きを私は写真に残すことにしました。そして、そこで虫たちと出会ったのです。少し足を止めるだけで今まで気がつかなかった大きく豊かな世界がそこにはありました。
一生懸命生き、次に命をつないでいくために虫は花を求め、花は虫を呼ぶ。そして命を終えるとみんな土にかえり、その中からまた新しい命が誕生する。そんな営みがくり返されていたのです。
どれだけの花に出会ったでしょう。どれだけの虫に出会ったでしょう。それぞれが、それぞれの色や形をし、それぞれの役目をはたしている。
どの花もどの虫もそれぞれの色や形を持ち、輝いている。小さな体の中に大きな力をもって。
そしてみんながそれぞれを必要としている。それでも今 地球上では1年に40.000種の生物が絶滅していると聞きました。
20年前には1年に1.000種、100年前には1年に1種の生物が絶滅していたといいます。その速さ、その数はおどろくばかりです。(数字はネットワーク「地球村」代表 高木善之氏著「地球村宣言」<ビジネス社>より)
1年前(1996年秋)花展に生ける花を探して田んぼのあぜ道をある歩いていました。
何かに呼ばれた気配にふりかえり私は一瞬目を疑いました。そしてその花に出会ったのです。
「昔はどこにでも咲いていた」という花を花屋さんでしか見たことがなかったのです。
まるで楽しくダンスをしているように吾亦紅(ワレモコウ)が揺れていました。やっと恋人に出会えた時のように嬉しくて嬉しくてなりませんでした。
それから何度かそこに足を運びました。
そしてまた目を疑ったのです。ほんの近くに測量をしている人を見たのです。その後ブルトーザーが近くまできました。
「もうここで会えないの・・・・・・・」不安で胸がつぶれそうになりました。
悲しいことに、私が出会った花で次の年にはもうそこで見ることができなくなったものは すでにいくつもあるのです。
こんな不安な思いや悲しい思いはもうしたくありません。
これから先もずっとずっと命の営みをくり返していってほしいのです。
あの吾亦紅に出会った時の喜び、そして感じた不安、あの時、あの場所でこの本を作りたいと思いました。
(幸い農家の人がそこを守っていてくれて、今年もそこで吾亦紅に会えそうです)
この本を作るにあたり関わっていただいた全ての人に、この場を借りてお礼申し上げます。
ありがとうございました。
私が感じた喜びや幸せが見て下さった皆さんに少しでも伝わればと願っています。
1997年8月
佐伯京子