薬物治療(抗ガン剤) *
退院して2日後の12月13日より、再び「抗ガン剤」による「リンパ腫瘍」叩きが始まる。自宅に帰って余計なストレスがなくなり、至極落ち着いた気持ちで、外来での治療を受けることが出来た。通常は2週間に1度の点滴なのだが、白血球等の回復(造血)に時間がかかるため、私の場合は採血して様子をみながら、この辺でいいだろうという時点の3週間〜4週間ごとにしようということになった。血液内科外来に設けられた治療用ベッドで3時間半横になる。余計な雑念を入れないために (こうしないと悪い結果ばかり想像してよくないからである)携帯ラジオを聴きながら、終了するまでの時間を費やした。治療薬は最初から同じの「ABVD(前述参照)」である。
薬による副作用には、いままで書いてきたことの他に、悪寒と発汗があった。これは退院して外来で点滴治療を受けた後に、必ず出てきた症状で、最後に治療を中止するまで続いた。まず悪寒だが、風邪を引いたときと同じようなぞくぞくする感じがなかなか取れず、そんな状態が4,5日、いや1週間くらい続く。こんな時は何をする気も起こらない。外気は寒い。しかし、室内は暖房を効かしているのだが、全く関係なくて、肩からすっぽりと厚い布団を掛けて、やっと落ち着くといった案配である。
これはどういうことだろう? こんな時は我慢せずに身体を暖かくしていた方がいいことが判る。「・・・で、これは風邪熱からきているのかな?」 と体温を計ってみると36.5分と平熱なので、尚、訳が分からなくなる。風邪からくる寒気ではないのだ。それにしてもぞくぞくしてやりきれない。また、それと平行するように脂汗をかいた。それも食事を摂り始めると、額から頭にかけてねっとりと汗ばんでくるのだ。
身体が熱いからではない。知らずのうちにじっとりしてくるのである。そのたびにタオルでふきふき食事をとった。別段気分が悪くてそうなるのでもないし、とにかく汗が出てくるのである。「何でこう汗がでるのかなあ〜。おかしいなあ〜」 こんなせりふが、朝、昼、晩の食事を摂るときに出てくる私の口癖になってしまった。この原因は、おそらく医師にも判らないだろう。いったい何時になったらこんな症状が取れるんだろう? と、いささか憂鬱になる。この脂汗は一応の治療が終わるまで続いた。
外来で受けた「抗ガン剤」の副作用は、これでもか、これでもかと私を襲う。その強烈な吐き気のために、食事はまったく摂る気になれない。「くそーっ」と思いつつも何回も絶食して、牛乳、ヨーグルト、それに梅干しだけをかろうじて口にしていた。その後、1週間というものはまず駄目である。ある時などは 「もうこんな状態が続くんなら、死んだ方がましだよ」といって妻に心配をかけたりした。
それと比例するかのように体力が落ち、体重も日毎に減ってくる。(今までで丁度1亜0s減った) 正直なものだ。人間食べないとどうにも勝負にならない。体調が回復しないのだ。だから、何らかの都合で食事が摂れず、チューブで栄養を摂っている人は目に見えて衰弱してくる。現にこれで亡くなっていった同僚も多い。例え量は少なくても、口から摂った栄養とでは、雲泥の差がでてくるものだと、つくずく思い知らされた。物が食べられるということは本当に有り難いことだと身にしみて感じた。
点滴後、8日目、9日目を過ぎると、どうやら気分も少しずつ良くなり、毎日の食事もなんとか摂れるようになってくる。やれやれである。そこで、心して体力回復のために何でも摂るようにする。しかし、毎回やられるこの吐き気の厳しい気持ち悪さだけは何とかならないものだろうか。この苦しさは本人だけにしか判らない。生と死の狭間にあっての駆け引きだから、避けられないものなのだろうか。
医師の中には、こんな患者を診ても 「多少の副作用はしかたないよ」 と、涼しい顔をしている人もいるが、もうすこし患者の立場にたって対処してほしいものである。まあ、自分からみれば他人事であるからだろう。・・・が、医者という人格を誇りにするので在れば、こういった細かいことえの配慮として、癒しの言葉のひとつも考えて欲しいと思うのだが、これも贅沢であろうか。この副作用からくる云い知れぬ苦しみを、メリット、デメリットの秤にかけて、有効な分だけ利用できれば、この病魔から救われる患者はどのくらいあるか計り知れない。1日でも早く、病理薬学会での研究の成果が待たれる所以である。
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