15:50発のケーブルに乗車しようと吉野山駅に急ぐことにしたが、如意輪寺から中千本の桜の木に埋まる谷道で道を間違えて、とうていそれには間に合いそうにないと判ると、行きそびれた吉水神社にも寄っていくことにした。それにしても、満開の中千本の美しさはいかばかりであろうか。
商店街の道から一旦下ってまた登った所にある吉水神社に着いたのは午後4時前であった。吉水神社こと吉水院は後醍醐天皇が行宮と定めた所で、故事来歴に富む建物である。いわく「義経潜居の間」、いわく「弁慶思案の間」、「後醍醐天皇玉座」、そして秀吉花見の本陣等々、所蔵する文化財は吉野随一の名に恥じない豊富さであった。吉野のもう一人の主役、役行者の像にもここで初めてお目に掛かった。木造のこの建物がよくこれまで保存されてきたものと感心しないではおれない。時間に追われて吉水神社を拝観しなかったら、きっと後悔したことであろう。焼失した勝手神社がここに仮住まいしていた。
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