| 壱の1〜14 |
 |
1.麗かや園児の声のとほくより
2.籠の影小鳥の影や春障子
3.啓蟄や天水桶に水あふれ
4.山笑ふ母の故郷に転居せむ
5.物置の陰に見つけし蕗の董
6.引越しの荷物の一つ雛人形
7.引つ越しの荷を積み終えし春の昼
8.ふらここの順を待ちゐる童かな
9.里帰りせし身を入るる春炬燵
10.知らぬ町の知らぬ人びと春の暮
11.移り来れば休耕田に蛙鳴く
12.鶯の谷渡りてふ聞きゐたり
13.母と住むつひの住処の草若葉
14.遠蛙聞きつつ我は安眠す
|
|
|
|
 |
| 弐の1〜12 |
 |
1.春の風邪やらねばならぬ事のあり
2.猫の背に日向の匂ひ春の午後
3.わが膝の上に猫来る余寒かな
4.軽やかに雀降りたる春の土
5.窯出しの器歪みぬ春日向
6.まず一花ほころび初めし辛夷かな
7.啓蟄や母の元気な声聞こえ
8.朝の雨桃の蕾のふくらみぬ
9.亡き父のことを知りたる彼岸かな
10.花の雨籠の九官鳥黙し
11.石畳濡れ春の雨まだやまず
12.フルートを吹かむと思ふ春の宵
|
|
|
|
 |
| 参の1〜11 |
 |
1.何事かおきていゐさうな雛の部屋
2.春の風邪蜂蜜ジュウス飲みにけり
3.猫の背に春雪つけてもどりきし
4.チューリップの赤きを添へし遺影かな
5.春雨に石灯籠の濡れて来し
6.軒下に子雀の鳴く朝かな
7.はにかみし少女の笑顔花りんご
8.薄氷にゆがみし貌のわれ見たり
9.朧夜のあめつち鎮みゐたりけり
10.壺すみれ薄紫に咲にけり
11.春の蝿カーテン裏にゐたりけり
|
|
|
|
 |
| 四の1〜12 |
 |
1.過ぎし日のことの思ひで母子草
2.香草に夢中なりけり四月馬鹿
3.独り居の昼餉にせむと山椒摘む
4.菜園のハーブの蕾夏近し
5.ゆで卵きれいに剥けず春の風邪
6.つながぬ長距離電話春の宵
7.父の墓参らぬままに彼岸過ぎ
8.春の昼子犬かさなり眠りをり
9.春月や忘れてをりし誕生日
10.柱鳴る音に目覚めて凍返る
11.雛祭不惑なかばとなりにけり
12.春の宵とりのこされているやうな
|
|
|
|
 |
| 五の1〜8 |
 |
1.在りし日の父想いをり花のもと
2.通ひ路やその朝桜夕桜
3.塗畦の少し曲がりてつづきをり
4.蛙の声徐々に近づく家路かな
5.吾猫の老ひを気遣ふ余寒かな
6.踏切に我ひとり待つ春の夜
7.卒業生ならむ日だまりの五六人
8.強東風やパート仕事の愚痴こぼし
|
|
|
|
 |
| 六の1〜12 |
 |
1.春荒や昼餉になにをつくらふか
2.したたかもまぬけも朧月夜かな
3.昼風呂に春日うつろふ薄暮かな
4.闇の夜の風さそひしや花辛夷
5.花冷えに寄りそふ猫の丸さかな
6.石壁に春光まろく昼の風呂
7.小気味好とて春雷を聞きいたり
8.静かさや鶯けちょと鳴きしぶり
9. 猫の尾のゆらりゆらりと菜種梅雨
|
|
|
|
 |